特集
新ダイを採用したAMD「Radeon HD 7790」を試す
(2013/3/22 13:01)
AMDは3月22日、Radeon HD 7000シリーズの新モデル「Radeon HD 7790」を発表した。今回、AMDより同GPUを搭載したビデオカードを借用できたので、ベンチマークテストでパフォーマンスを測定した。
新設計のコアを採用する新ミドルレンジGPU
今回発表されたRadeon HD 7790(以下、HD 7790)は、Radeon HD 7000 シリーズで採用されたGraphics Core Next(GCN)アーキテクチャを採用したGPUで、28nmプロセスで製造されている。
HD 7790のGPUコアは、これまでに登場したRadeon HD 7700シリーズで採用されていた「Cape Verde」ではなく、「Pitcairn」(Radeon HD 7800シリーズ)とCape Verdeの中間に位置する規模の新設計GPUコアを採用している。HD 7790のGPUコアは、64基のStream Processors(SP)と4基のテクスチャユニットから成るCompute Unit(CU)を14基備える。合計896基のSPと56基のテクスチャユニットを備えるGPUコアは、1.0GHzで動作する。
メモリインターフェイスは128bitで、HD 7790は1.5GHz(6.0Gbps)のGDDR5メモリを1GB備える。メモリ周りの仕様は「Cape Verde」寄りだが、搭載メモリの動作クロックが高いため、従来のRadeon HD 7700シリーズに比べ、メモリバス帯域幅は3割ほど強化されている。
Radeon HD 7790 | Radeon HD 7770 GHz Edition | Radeon HD 7850 | |
---|---|---|---|
アーキテクチャ | Graphics Core Next | ||
プロセスルール | 28nm | 28nm | 28nm |
GPUクロック | 1,000MHz | 1,000MHz | 860MHz |
Streaming Processor | 896基 | 640基 | 1,024基 |
テクスチャユニット | 56基 | 32基 | 64基 |
メモリ容量 | 1GB GDDR5 | 1GB GDDR5 | 2GB GDDR5 |
メモリクロック(データレート) | 1,500MHz (6.0Gbps相当) | 1,125MHz (4.5Gbps相当) | 1,200MHz (4.8Gbps相当) |
メモリインターフェイス | 128bit | 128bit | 256bit |
ROPユニット | 16基 | 16基 | 32基 |
Radeon HD 7790搭載のSapphire製ビデオカードでベンチマークを実行
今回、AMDから借用したRadeon HD 7790搭載ビデオカードは、Sapphireの「HD 7790 1G GDDR5 PCI-E DL-DVI+DLDVI-D/HDMI/DP DUAL-X OC VERSION」だ。2基の大口径ファンを搭載したVGAクーラーを備えた同製品は、HD 7790を1,075MHz、メモリを1.6GHz(6.4Gbps)へと、それぞれオーバークロックした製品だ。
ベンチマークテストでは、Radeon HD 7790のリファレンスクロックまでダウンクロックした際のスコアと、「HD 7790 1G GDDR5 PCI-E DL-DVI+DLDVI-D/HDMI/DP DUAL-X OC VERSION」のオーバークロック動作時のスコアをそれぞれ測定した。
また、比較対象として、「Radeon HD 7770 GHz Edition」(以下、HD 7770)のリファレンスボードと、NVIDIAの「GeForce GTX 650 Ti」(以下、GTX 650 Ti)搭載ビデオカード「GTX650TI-DC2T-1GD5」を用意した。なお、GTX 650 Ti搭載製品はGPUクロックをオーバークロックした製品だが、テスト時はGTX 650 Tiのリファレンスクロック相当にダウンクロックしている。
GPU | HD 7790 | HD 7770 | GTX 650 Ti |
---|---|---|---|
CPU | Core i7-3770K(3.5GHz、Turbo Boost:オフ) | ||
マザーボード | ASUS P8Z77-V (BIOS:1805) | ||
メモリ | DDR3-1600 8GB×4(9-9-9-24、1.5V) | ||
ストレージ | Western Digital WD5000AAKX | ||
電源 | Silver Stone SST-ST75F-P | ||
グラフィックスドライバ | 12.101.2.1-130313a-154550E-ATI | Catalyst 13.3 Beta | GeForce 314.21 Driver BETA |
OS | Windows 7 Professional 64bit SP1 |
DirectX 11対応ベンチマークテスト
それではまず、DirectX 11対応ベンチマークテストの結果から紹介する。実施したテストは「3DMark - Fire Strike」(グラフ1、2)、「3DMark 11」(グラフ3、4)、「Unigine Heaven Benchmark 4.0」(グラフ5)、「Stone Giant DX11 Benchmark」(グラフ6)、「Lost Planet 2 Benchmark DX11」(グラフ7)、「Alien vs. Predator DX11 Benchmark」(グラフ8)。
HD 7790はDirectX 11対応ベンチマークテストにおいて、HD 7770よりおおよそ3割程度高いスコアを記録し、GTX 650 Tiとはテストによって優劣が分かれる結果となった。
登場当初よりRadeon HD 7000シリーズの方が高いスコアが出る傾向にあると言われる3DMarkのFire Strikeでは、GTX 650 Ti相手に約2割、Extremeプリセットなら5割も高いスコアを記録する一方で、Lost Planet 2 Benchmark DX11では1割ほど後塵を拝する。
GTX 650 Tiとの優劣はテスト条件によりけりという結果だが、HD 7790の方が大きくスコアを離されるテストが少ない分、DirectX 11対応ベンチマークでは優勢に見える。GTX 650 Tiに対して明らかに一段劣るスコアとなっているHD 7770に対し、概ね3割程度のスコアアップを果たしたHD 7790は、GTX 650 Tiと互角以上に渡り合えるパフォーマンスを持っているようだ。
DirectX 9/10対応ベンチマークテスト
続いて、DirectX 9世代とDirectX 10世代のベンチマークテストの結果を紹介する。実施したテストは「3DMark Vantage」(グラフ9、10)、「3DMark - Cloud Gate」(グラフ11)、「3DMark06」(グラフ12、13)、「3DMark - Ice Storm」(グラフ14)、「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク ワールド編」(グラフ15)、「PSO2ベンチマーク」(グラフ16)、「MHFベンチマーク 【大討伐】」(グラフ17)、「Lost Planet 2 Benchmark DX9」(グラフ18)、「Unigine Heaven Benchmark 4.0(DX9)」(グラフ19)。
DirectX 10世代のベンチマークテストである「3DMark Vantage」では、僅差ではあるものの、描画負荷の低いPerformanceで優勢だったHD 7790が、描画負荷の高いExtremeプリセットでGTX 650 Tiに逆転されている。ただ、今回実施したテストで、このような傾向を示すテストは少数派であり、「3DMark06」や「ファイナルファンタジーXIV」のように、描画負荷が高まると、HD 7790がGTX 650 Tiに対して優位となるテスト結果が目立つ。
テスト項目によってGTX 650 Tiとの優劣は分かれているが、HD 7790がGTX 650 Tiに大きく劣るスコアが少ない一方で、「PSO2ベンチマーク」や「Lost Planet 2」などのように、3~4割程度のスコア差をつけているテストがあるため、全体的にはHD 7790が優勢な印象だ。
消費電力の比較
最後に消費電力の測定結果を紹介する。消費電力はサンワサプライのワットチェッカー(TAP-TST5)を利用して、各テスト実行中の最大消費電力を測定した。
アイドル時の消費電力については、HD 7790が54Wで比較製品の中で最も高い数値だった。とはいえ、最もアイドル時消費電力が低かったHD 7770との差でも3Wしかなく、この程度は製品の個体差で覆るので、アイドル時の消費電力はほぼ同程度と考えていいだろう。
各テスト実行中の消費電力では、リファレンスクロック設定時のHD 7790が全てのテストで、GTX 650 Tiより低い消費電力を記録した。比較製品中もっとも低い消費電力を記録しているHD 7770と比較すると、各テスト実行中の消費電力は2~9W高い数値ではあるものの、ベンチマークでのスコア差を考えれば、HD 7790の方がワットパフォーマンス的には分があるようだ。
HD 7790、GTX 650 Tiとも、ボードベンダーオリジナルのオーバークロックモデルであるため、リファレンスモデル同士の比較では多少結果が異なる可能性はあるが、HD 7790の消費電力はGTX 650 Tiと大差ない数値と考えていいだろう。
ミドル~ミドルハイの間を埋める、GTX 650 Tiの対抗馬
以上のテスト結果を踏まえると、HD 7790がRadeon HD 7000シリーズのミドルレンジ~ミドルハイの間を埋める製品として、また、NVIDIAのGPUラインナップにおいて同じ位置付けのGTX 650 Tiの対抗馬として、理想的な性能とワットパフォーマンスを実現した製品であるといえよう。
現在、ミドルレンジGPUの価格競争は激化しており、GTX 650 Tiを搭載したビデオカードは1万円台前半、HD 7790の上位モデルであるRadeon HD 7850搭載製品も1万円台後半で販売されている。これら既存の製品に対抗できる販売価格で登場すれば、HD 7790は性能、消費電力、価格の3拍子揃った製品となる。魅力ある価格での登場に期待したい。