14,800円の「GeForce GTX 650 Ti」を試す


 NVIDIAは10月9日、エントリーゲーマー向けGPU「GeForce GTX 650 Ti」を発表した。今回、NVIDIAよりGeForce GTX 650 Tiのリファレンスボードを借用できたので、ベンチマークテストを使ってそのパフォーマンスを探ってみた。

●GK106コア搭載のエントリー向けGPU

 GeForce GTX 650 Ti(以下GTX 650 Ti)は、28nmプロセスで製造されたKeplerアーキテクチャ採用のGPUだ。これまでに登場したGeForce GTX 650とGeForce GTX 640には、エントリー向けGPUコアのGK107が採用されていたが、GTX 650 Tiはミドルレンジ製品のGeForce GTX 660(以下GTX 660)と同じGPUコアをベースにしたものとなっている。

 GTX 650 TiのGK106では、フルスペック版GK106であったGTX 660に対し、192基のCUDAコアなどからなるSMXが1基分削減されたほか、L2キャッシュが384KBから256KBに、メモリインターフェイスが192bitから128bitに削減されている。また、GTX 660がサポートしていた自動オーバークロック機能のGPU Boostはサポートしておらず、GPUコアの動作クロックは925MHz固定となっている。メモリ周りやGPU Boostについては、GTX 650に合わせてスペックダウンされたものと見ることもできる。

【表1】GeForce GTX 650 Tiの主な仕様

GeForce GTX 650 TiGeForce GTX 650GeForce GTX 660
アーキテクチャKepler (GK106)Kepler (GK107)Kepler (GK106)
プロセスルール28nm28nm28nm
GPUクロック925MHz1,058MHz980MHz
Boostクロック1,033MHz
CUDAコア768基384基960基
テクスチャユニット64基32基80基
L2キャッシュ256KB256KB384KB
メモリ容量1GB GDDR51GB/2GB GDDR52GB GDDR5
メモリクロック
(データレート)
1,350MHz
(5,400MHz相当)
1,250MHz
(5,000MHz相当)
1,502MHz
(6,008MHz相当)
メモリインターフェイス128bit128bit192bit
ROPユニット16基16基24基
消費電力110W64W140W

GeForce GTX 650 Tiの概要

●テスト機材

 NVIDIAより借用したGTX 650 Tiのリファレンスボードは、エントリー向け製品らしくコンパクトなボードにシンプルなVGAクーラーを搭載したビデオカードだ。補助電源コネクタは6ピン1系統で、出力端子にはDVI端子2系統とMini HDMIポートを備える。

GeForce GTX 650 Tiのリファレンスボード補助電源コネクタは6ピン1系統ディスプレイ出力端子は、DVI-D、DVI-I、Mini HDMIが各1系統ずつ

 それではベンチマーク結果の紹介に移りたい。今回はGTX 650 Tiの比較対象として、NVIDIAからはGTX 650とGTX 660、AMDからはRadeon HD 7770(以下HD 7770)とRadeon HD 7850(以下HD 7850)を用意した。

 なお、GTX 660については機材調達の都合上、原則GTX 660レビュー時のデータを流用しているが、「ファンタシースターオンライン2 ベンチマーク」実行時のみ、今回用意したASUS製GTX 660搭載ビデオカードを利用してテストを行なった。動作クロックについてはリファレンス相当にダウンクロックして行なっているが、結果を参照する際注意してほしい。

【表2】テスト環境
GPUGTX 650 TiGTX 660GTX 650HD 7850
HD 7770
CPUIntel Core i7-3820
マザーボードASUS SABERTOOTH X79 (BIOS:2002)
メモリDDR3-1600 4GB×4
(9-9-9-24、1.5V)
ストレージWestern Digital WD5000AAKX
電源Silver Stone SST-ST75F-P
ディスプレイ解像度1,920×1,080ドット
グラフィックスドライバGeForce 306.38
Driver BETA
GeForce 306.23
Driver BETA
GeForce 306.23
Driver
Catalyst 12.8
OSWindows 7 Ultimate SP1 64bit

GTX 650搭載のASUS製ビデオカード「GTX650-DC-1GD5」GTX 660搭載のASUS製ビデオカード「GTX660-DC2T-2GD5」

●DirectX 11対応ベンチマークテスト

 まずはDirectX 11(DX11)対応ベンチマークテストの結果から紹介する。実施したテストは「3DMark11」(グラフ1、2、3)、「Unigine Heaven Benchmark 3.0」(グラフ4)、「Lost Planet 2 Benchmark DX11」(グラフ5)、「Stone Giant DX11 Benchmark」(グラフ6)、「Alien vs. Predator DX11 Benchmark」(グラフ7、8)だ。

 GTX 650 Tiは同じくエントリー向けGPUのGTX 650に対し、アンチエイリアシングを適用しないベンチマークテストでは40~50%程度の差をつけている一方で、Unigine Heaven BenchmarkやAlien vs. Predator DX11 Benchmarkでのアンチエイリアシング適用時のスコア差は20~30%程度に留まっている。GTX 650比で2倍のCUDAコアを備えるだけありGTX 650 TiのGPU性能は確かに向上しているが、フルスペックGK106から削減されたメモリ周りのスペックがボトルネックになっていることも伺える結果と言える。

 NVIDIAはGTX 650 Tiの競合製品としてHD 7770を上げているのだが、DirectX 11系のベンチマークテストにおいてはGTX 650 TiがHD 7770を全ての条件で上回っている。その差は数%~40%程度とバラツキのあるものだが、テストによってはHD 7850を上回る結果も記録しており、DirectX 11でのパフォーマンスに関しては完勝と言える内容だ。

【グラフ1】3DMark 11 Build 1.0.3
【グラフ2】3DMark 11 Build 1.0.3(Graphics Score)
【グラフ3】3DMark 11 Build 1.0.3(Combined Score)
【グラフ4】Unigine Heaven Benchmark 3.0(DX11)
【グラフ5】Lost Planet 2 Benchmark(DX11・テストタイプB)
【グラフ6】Stone Giant DX11 Benchmark
【グラフ7】Alien vs. Predator DX11 Benchmark(1,280×720ドット)
【グラフ8】Alien vs. Predator DX11 Benchmark(1,920×1,080ドット)

●DirectX 9/10対応ベンチマークテスト

 続いて、DirectX 9世代とDirectX 10世代のベンチマークテストの結果を紹介する。実施したテストは「3DMark Vantage」(グラフ9、10)、Unigine Heaven Benchmark 3.0(DX10)」(グラフ11)、「3DMark06 Build 1.2.0」(グラフ12、13)、「MHFベンチマーク 【大討伐】」(グラフ14)、「ファイナルファンタジーXIV オフィシャルベンチマーク」(グラフ15)、「Unigine Heaven Benchmark 3.0(DX9)」(グラフ16)、「Lost Planet 2 Benchmark DX9」(グラフ17)だ。

 DirectX 11対応ベンチマークテスト同様、GTX 650 TiはHD 7770に対して概ね優位なスコアを記録している。ただ、一部のテストではHD 7770が逆転するなどスコア差はやや縮んでいる。また、上位のHD 7850やGTX 660には、2倍近い差をつけられているテストもあるなど、上位モデルとの差がDirectX 11対応ベンチマークテストより顕著になっている。

【グラフ9】3DMark Vantage Build 1.1.0
【グラフ10】3DMark Vantage Build 1.1.0(Graphics Score)
【グラフ11】Unigine Heaven Benchmark 3.0(DX10)
【グラフ12】3DMark06 Build 1.2.0
【グラフ13】3DMark06 Build 1.2.0(1,920×1,080ドット、8x AA、16x AF)
【グラフ14】MHFベンチマーク【大討伐】
【グラフ15】ファイナルファンタジーXIV オフィシャルベンチマーク
【グラフ16】Unigine Heaven Benchmark 3.0(DX9)
【グラフ17】Lost Planet 2 Benchmark(DX9)
【グラフ18】ファンタシースターオンライン2 ベンチマーク
●消費電力の比較

 最後に消費電力の測定結果を紹介する。消費電力はサンワサプライのワットチェッカー(TAP-TST5)を利用して、各テスト実行中の最大消費電力を測定した。

【グラフ19】 システム全体の消費電力

 各GPUともアイドル時の消費電力は104~106Wとほぼ横並びの結果となった。一方、負荷時のGTX 650 Tiは、GTX 650より5~20W程度高くなっているが、同じGPUコアをベースにしているGTX 660より40~50W低い消費電力となっている。エントリーモデルとしてはやや高い消費電力ではあるが、GTX 660よりGTX 650に近い消費電力に抑えられている点は評価できる。

 競合製品との比較でみると、HD 7770と比べてGTX 650 Tiの消費電力はやや高い傾向にあるが、これはパフォーマンス差を加味すれば大した差ではないと言える。一方、上位のHD 7850の消費電力はGTX 650 Tiより20~30Wほど高い程度に留まっている。GTX 650 TiはHD 7850と直接競合するわけではないが、DirectX 9対応ベンチマークテストの結果などを鑑みると、ワットパフォーマンス的な魅力ではHD 7850に大きく後れを取っているように見える。

●DirectX 11対応ゲームに適したエントリーモデル

 以上、GTX 650 Tiのパフォーマンスをベンチマークテストでチェックしてきた。同じGPUコアをベースにしたGTX 660とのパフォーマンス差は小さくないが、GK107コアのGTX 650とのパフォーマンス差は大きい。GTX 650 Tiは、GeForce 600シリーズのエントリーモデルからミドルレンジまでの間を埋める製品となりそうだ。DirectX 11をサポートした最新ゲームをプレイしてみるにはちょうど良いビデオカードだろう。

 NVIDIAによれば、GTX 650 Tiの希望小売価格は14,800円とされており、現在の価格で言えばHD 7770とHD 7850のちょうど真ん中あたりの価格で投入されることになる。今後、ゲームプレイを考えてビデオカードを選ぶのであれば、NVIDIA製品はこの価格が1つの基準となりそうだ。

(2012年 10月 9日)

[Reported by 三門 修太]