特集

メモリ192bitの高性能ミドルレンジ「GeForce GTX 650 Ti BOOST」ベンチマーク

 NVIDIAは3月26日、Keplerアーキテクチャ採用の新GPU「GeForce GTX 650 Ti BOOST」を発表した。今回、NVIDIAより同GPU搭載のリファレンスボードを借用できたので、ベンチマークテストを用いてその性能を探ってみた。

GK106コアベースのミドルレンジGPU

 GeForce GTX 650 Ti BOOST(以下、GTX 650 Ti BOOST)は、28nmプロセスで製造されたKeplerアーキテクチャベースのGPUコア「GK106」を採用したGPUだ。GTX 650 Ti BOOSTは、同じくGK106コアを採用するGeForce GTX 650 Ti(以下、GTX 650 Ti)と、GeForce GTX 660(以下、GTX 660)の中間に位置することとなる。

 フルスペックのGK106コアは、192基のCUDAコアと16基のテクスチャユニットからなる「SMX」を5基備えているが、GTX 650 Ti BOOSTではこのSMXが1基無効化されているため、GPUが備えるCUDAコアは768基、テクスチャユニットは64基となっている。このユニット数は、下位モデルとなるGTX 650 Tiと同数だ。

 一方、GPUクロックについては、GTX 660と同じ仕様となっており、ベースクロックは980MHz、Boostクロックは1,033MHzで動作する。192bitのメモリインターフェイスや、384KBのL2キャッシュ、1,502MHz動作のGDDR5メモリを備えるなど、メモリ周りについてもGTX 660相当の仕様となっている。

 なお、GTX 650 Ti BOOSTにはメモリ容量の違いで、2GBのモデルと1GBモデルが用意される。販売価格は2GBモデルが169ドル、1GBモデルは149ドルとされている。今回テストを行なうのは2GBモデルだ。

【表1】主な仕様
GeForce GTX 650 Ti BOOSTGeForce GTX 650 TiGeForce GTX 660
アーキテクチャKepler (GK106)
プロセスルール28nm28nm28nm
GPUクロック980MHz925MHz980MHz
Boostクロック1,033MHz1,033MHz
CUDAコア768基768基960基
テクスチャユニット64基64基80基
L2キャッシュ384KB256KB384KB
メモリ容量1GB/2GB GDDR51GB GDDR52GB GDDR5
メモリクロック
(データレート)
1,502MHz
(6,008Mbps相当)
1,350MHz
(5,400Mbps相当)
1,502MHz
(6,008Mbps相当)
メモリインターフェイス192bit128bit192bit
ROPユニット24基16基24基
TDP134W110W140W
GTX 650 Ti BOOSTの主なスペック

リファレンスボードは基板より長大なGPUクーラーを搭載

 今回、NVIDIAより借用したのはGTX 650 Ti BOOSTのリファレンスボードだ。ブラケット部を除けば約173mmという短めの基板には、全長約240mmの大型GPUクーラーが搭載されている。ちょうど、GeForce GTX 670のリファレンスボードと同じような組み合わせだ。

リファレンスボード。コンパクトな基板を大きくはみ出すGPUクーラーを備える
補助電源コネクタは6ピン1系統
ディスプレイ出力端子は、DVI-I、DVI-D、HDMI、DisplayPortを各1系統ずつ

 ベンチマークテストでは、GTX 650 Ti BOOSTの比較対象として、先日掲載したRadeon HD 7790の検証記事より、GTX 650 Ti、Radeon HD 7790(以下、HD 7790)、Radeon HD 7770(以下、HD 7770)のベンチマーク結果を流用した。当然、テストに用いた機材は、HD 7790テスト時と同じものを使用している。

【表2】テスト環境
GPUGTX 650 Ti BOOSTGTX 650 TiHD 7790HD 7770
CPUIntel Core i7-3770K (3.5GHz/Turbo Boostオフ)
マザーボードASUS P8Z77-V (BIOS:1805)
メモリDDR3-1600 8GB×4(9-9-9-24、1.5V)
ストレージWestern Digital WD5000AAKX
電源Silver Stone SST-ST75F-P
グラフィックスドライバGeForce 314.21 Driver BETAGeForce 314.21 Driver BETA12.101.2.1-130313a-154550E-ATICatalyst 13.3 Beta
OSWindows 7 Professional 64bit SP1
HD 7790搭載ビデオカード「HD 7790 1G GDDR5 PCI-E DL-DVI+DLDVI-D/HDMI/DP DUAL-X OC VERSION」。テスト時はリファレンス相当のクロックに調整している。
HD 7770のリファレンスボード。
GTX 650 Ti搭載のASUS製ビデオカード「GTX650TI-DC2T-1GD5」。テスト時はリファレンス相当のクロックに調整している

DirectX 11対応ベンチマークテスト

 まず、DirectX 11対応ベンチマークテストの結果から紹介する。実施したテストは「3DMark - Fire Strike」(グラフ1、2)、「3DMark 11」(グラフ3、4)、「Unigine Heaven Benchmark 4.0」(グラフ5)、「Stone Giant DX11 Benchmark」(グラフ6)、「Lost Planet 2 Benchmark DX11」(グラフ7)、「Alien vs. Predator DX11 Benchmark」(グラフ8)。

【グラフ1】3DMark - Fire Strike Default / 1,920×1,080ドット
【グラフ2】3DMark - Fire Strike Default / 2,560×1,440ドット
【グラフ3】3DMark11 v1.0.4 Performance / 1,280×720ドット
【グラフ4】3DMark11 v1.0.4 Extreme / 1,920×1,080ドット
【グラフ5】Unigine Heaven Benchmark 4.0 (DX11 / 1,920×1,080ドット)
【グラフ6】Stone Giant DX11 Benchmark
【グラフ7】LostPlanet2 DX11 Benchmark 4x AA / Setting:All High
【グラフ8】Alien vs. Predator DX11 Benchmark 1,920×1,080ドット

 DirectX 11系のベンチマークテストでは、主にCPU性能がスコアに反映される3DMarkのPhysicsスコアを除き、GTX 650 Ti BOOSTが比較製品中最高スコアを記録した。下位モデルのGTX 650 Tiとのスコア差は、極端な差のついた3DMark Fire StrikeのExtremeプリセットを除いても、10~40%程度と条件によるバラつきが大きい結果となった。

 スコアを確認してみると、「Unigine Heaven Benchmark 4.0」などの結果から、画面解像度の拡大やアンチエイリアシングの適用など、メモリ負荷が高まる設定を適用した際に、GTX 650 Tiとのスコア差が拡大していることがわかる。GTX 650 Tiでは86.4GB/secだったメモリバス帯域が、GTX 660と同等の134GB/secまで強化されたことが、ベンチマークスコアに反映された結果と言えよう。

DirectX 9/10対応ベンチマークテスト

 続いて、DirectX 9世代とDirectX 10世代のベンチマークテストの結果を紹介する。実施したテストは「3DMark Vantage」(グラフ9、10)、「3DMark - Cloud Gate」(グラフ11)、「3DMark06」(グラフ12、13)、「3DMark - Ice Storm」(グラフ14)、「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク ワールド編」(グラフ15)、「PSO2ベンチマーク」(グラフ16)、「MHFベンチマーク 【大討伐】」(グラフ17)、「Lost Planet 2 Benchmark DX9」(グラフ18)、「Unigine Heaven Benchmark 4.0(DX9)」(グラフ19)。

【グラフ9】3DMark Vantage v1.1.0 Performance / 1,280×1,024ドット
【グラフ10】3DMark Vantage v1.1.0 Extreme / 1,920×1,200ドット
【グラフ11】3DMark - Cloud Gate Default / 1,280×720ドット
【グラフ12】3DMark06 v1.2.1 デフォルト / 1,280×1,024ドット
【グラフ13】3DMark06 v1.2.1 1,920×1,080ドット / 8x AA / 16x AF
【グラフ14】3DMark - Ice Storm Default / 1,280×720ドット
【グラフ15】ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク ワールド編
【グラフ16】PSO2ベンチマーク DX9 / 簡易描画設定:5
【グラフ17】MHFベンチマーク【大討伐】DX9
【グラフ18】LostPlanet2 DX9 Benchmark 4x AA / Setting:All High
【グラフ19】Unigine Heaven Benchmark 4.0 (DX9)

 DirectX 11対応ベンチマーク同様、ほとんどのテストでGTX 650 Ti BOOSTが比較製品中最高のスコアを記録しているが、唯一「Lost Planet 2 Benchmark DX9」のみHD 7790の後塵を拝している。このベンチマークテストでは、GTX 650 TiがHD 7770より低いスコアを記録するなど、他のベンチマークテストに比べてGK106搭載製品のスコアが伸び悩んでいることを考えると、ドライバの最適化などに問題がある可能性もありそうだ。

 GTX 650 Tiとの比較では、大半のテストでは30~40%程度のスコア差をつけており、DirectX 11対応テストに比べてスコア差が拡大している傾向にある。DirectX 9世代のゲームでのパフォーマンスを求めるのであれば、GTX 650 Ti BOOSTを選ぶ価値は十分にありそうだ。

消費電力の比較

 最後に消費電力の測定結果を紹介する。消費電力はサンワサプライのワットチェッカー(TAP-TST5)を利用して、各テスト実行中の最大消費電力を測定した。

【グラフ20】システム全体の消費電力

 アイドル時の消費電力は50W前半でほぼ横並びとなった一方、ベンチマークテスト実行中の消費電力はGTX 650 Ti BOOSTが頭1つ抜けた数値を記録している。GTX 650 Ti BOOSTに続くGTX 650 Tiと比較しても33~50Wもの差がついている。このクラスの製品としては、この消費電力差はなかなか大きなものと言えよう。

充実するミドルレンジ製品群、価格的な魅力を打ち出せるかがカギに

 以上のテスト結果から、GTX 650 Ti BOOSTはGTX 650 Tiより明確に高いパフォーマンスを実現したGPUであることが分かる。一方、パフォーマンスの向上に伴って消費電力も上昇しており、ワットパフォーマンス自体は悪くないものの、GTX 650 Ti比で最大50W近く高い消費電力を記録した点は気になるところだ。

 GTX 650 TiとGeForce GTX 660の間を埋める製品となるGXT 650 Ti Boostの登場によって、NVIDIAのミドルレンジGPUのラインナップはより充実したものとなる。2GB版が169ドル、1GB版が149ドルで販売されるGTX 650 Ti BOOSTが、15,000~17,000円程度の価格で国内に登場するなら、性能的にも価格的にも魅力的な存在となるだろう。上位モデルであるGeForce GTX 660に対して、魅力ある価格での登場に期待したい。

(三門 修太)