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脳が過去を思い出す仕組みの一端が解明

記憶する皮質から派生する「迂回路」(画像中緑)とCA1(画像中赤)

 理研-MITセンターの研究者らは17日(米国時間)、経験した出来事とそのときの感情を結びつける「エピソード記憶」が記憶されるさいと思い出すさいで異なる回路を経由することを明らかにした。記憶が大脳皮質の各所に貯蔵されることは知られていたが、どのように転送され、呼び出されるかはあまり明らかにされてこなった。

 従来では、記憶は海馬を通じなんらかのかたちで大脳皮質に貯蔵され、同じ回路を通じて記憶が想起されるという説が一般的だった。しかし、この説では説明できない事象として、海馬の一部であるCA1という部位が近傍の大脳皮質に記憶を転送する経路の役割を果たしているにもかかわらず同じ皮質に向かう「detour(迂回路)」が存在することが判明していた。

 もし、記憶を貯蔵するのと完全に逆の過程で記憶が呼び起こされるならば、そのような迂回路は不要であるはずだ。

 研究チームはその点に注目し、遺伝子操作を用いてある恐怖記憶を植え付ける途中に「迂回路」にあたる部位のニューロンを一時的に不活性化したマウスと、記憶を植え付けた後に迂回路を不活性化したマウスの2群で実験を行なった。

 結果、記憶形成時のみ迂回路を不活性化したマウスは問題なく記憶を呼び出すことができたのに対し、記憶後に不活性化したマウスは、記憶途中に不活性化したマウスに対し有意に記憶能力が劣っていることが明らかになった。

 研究チームは迂回路は記憶形成には不要であるが、記憶を呼び出す過程で必要になると考えており、じっさいにべつの実験では記憶の呼び出しにはCA1が不要であるが、記憶の形成に必要だとする整合性のある結論が得られているという。

 記憶が異なる回路を経由するという発見はアルツハイマー病との関連も指摘されており、そうした難病の治療を前進させる可能性がある。