やじうまPC Watch

脳の神経回路を機械で正確にマッピングするアルゴリズムが開発

ニューロンの電子顕微鏡画像(画像左)それぞれのニューロンが異なる色づけをされている(画像右)

 ワシントン州立大学は16日(米国時間)、世界初となる脳内でニューロン(神経細胞)によって構成される回路を正確に再現するアルゴリズム開発の成功を発表した。fMRIといった脳画像を用いた研究を促進させることが期待される。

 人間の脳において、ニューロンが形成するネットワーク構造はあまりに複雑で、代わりに研究者らはミミズの脳のシミュレーションを数十年にわたり試みてきた。

 人間では1,000億以上あり、データとして記述するには1,000EB(エクサバイト)は必要とされるニューロンの数に比べると、ミミズのニューロンはわずか302個である。

 にもかかわらず、ミミズのニューロンの研究に数十年が費やされたのは、個々のニューロンを電子顕微鏡写真で観察し、ジグソーパズルのようにネットワーク全体を推測するためである。電子顕微鏡画像には少数のニューロンしか映らず、ニューロン同士が複雑に繋がりあっており、形態もさまざまなことがさらにこの作業を困難としている。

 そこで、この画像の検討を自動化するためのアルゴリズムを開発するコンペティションが2013年にMIT主導のもと開催された。そのなかで、神経学者のチームが人力で判定した模範解答とアルゴリズムが判定した結果が比較されたが、その時点ではアルゴリズムはあまり正確なものとは言えなかった。

 ワシントン州立大学の研究者は、もし専門化と同じくらい正確で、より高速に判定することができれば大幅なコストや時間の削減につながると考え、複雑な脳のニューロンどうしが作る構造を再現するためのニューラルネットワークモデルを開発し、初めて人間並みに正確な判定を実現するアルゴリズムを実現した。

 アルゴリズムは現時点でも優秀ではあるものの、依然ミスはある。また、人間による分析とアルゴリズムによる分析のどちらが優れているかを比較する客観的な指標が存在しないものの、将来的には専門家による手作業をこうしたアルゴリズムが部分的に置き換えるだろうと研究者は期待を述べている。