イベントレポート

SDカードのアプリ性能を保証する「Application Performance Class 2」が追加

~エンタープライズ機器での利用も想定。1.8Vの低信号電圧仕様も

追加された「Application Performance Class 2」の仕様。アクセス性能がランダムリード4,000IOPS以上、ランダムライト2,000IOPS以上、シーケンシャルアクセス10MB/Sec以上となる

 SDカードに関する規格策定を行なうSDアソシエーションは2月27日(現地時間)、スマートフォンやウェアラブルカメラなどのモバイル機器でアプリのパフォーマンスを高めるために設定された「Application Performance Class」の新規格となる「Application Performance Class 2(A2)」を発表した。

 低価格スマートフォンなどでは、内蔵ストレージ容量が少なく、microSDカードで容量を拡張することも少なくないが、一般的なmicroSDカードはシーケンシャルアクセスに特化しており、ランダムアクセス速度が遅いため、アプリケーション利用時の性能が低下するという問題があった。そこで、ランダムアクセス速度を高めて、スマートフォンでのアプリケーション性能を高めようとして設定された規格が「Application Performance Class」だ。

 2016年11月に発表された「Application Performance Class 1(A1)」では、ランダムリード1,500IOPS以上、ランダムライト500IOPS以上、シーケンシャルアクセスが10MB/s以上というアクセス速度が定義されている。

 それに対しA2では、ランダムリード4,000IOPS以上、ランダムライト2,000IOPS以上、シーケンシャルアクセス10MB/s以上と、A1に対して2倍以上のランダムアクセス速度への対応を定義している。

こちらは「Application Performance Class 1」の仕様。A2では、ランダムアクセス性能がこちらの2倍以上となっている

 これは、A1がエントリー向けやミドルレンジスマートフォンなどで求められるアプリ性能を保証することを意味するのに対し、A2はコンシューマ機器だけでなく、エンタープライズ向けの機器も含めた、より高性能な機器での利用を想定した規格となるからだ。

 また、コマンドキューイングや、キャッシュ機能、セルフメンテナンス機能への対応も実現される。これにより、ランダムアクセスや複数タスクからの同時アクセス時のアクセス性能が向上し、ストレージデバイスとしてもより利用しやすくなる。

 加えて、A2対応のSDカードは、「低信号電圧(LVS)」と呼ばれる規格にも対応している。LVSは信号電圧が1.8Vと従来のSDカードの3.3Vよりも低く抑えられ、SDの最新仕様「SD 6.0」で定義されている。LVSに対応するA2対応SDカードの登場によって、SDカード対応機器側もLVSにのみ対応するSDコントローラを採用し、高性能かつ低消費電力化を実現可能になるとしている。

 従来のインターフェイスとの互換性も確保されており、LVS対応のSDカードは従来のSDカードスロットでも利用可能。逆に、LVS対応SDカードスロットではLVS対応SDカードのみの対応となる可能性が高いそうだが、UHS-II対応SDカードについては、UHS-IIモードであれば利用可能となる。なお、LVS対応のSDカードには、「Lv」というシンボルが刻印される。

 A2対応SDカードの登場時期は、現時点では未定とのことだ。

A2対応SDカードでは、「低信号電圧(LVS)」にも対応。ホスト側コントローラの低消費電力化が実現可能となる
LCS対応SDカードには、「Lv」マークが刻印される

 このほかSDアソシエーションのブースでは、A1対応microSDカードもいくつか展示していた。まず、Western Digitalが「SanDisk Extreme microSDXC」のA1対応モデルを発表し、展示した。

 こちらは、1月のCES 2017に合わせて発表されたA1対応microSDカード「SanDisk Ultra Premium Edition」よりも上位に位置付けられる製品で、容量は最大256GBまでサポート。そして、既存のSanDisk Extreme microSDXCは、順次A1対応モデルへと切り替わるとのこと。発売時期は米国で2017年3月を予定しており、価格は256GBモデルが199.99ドル。日本でもその後遅れて販売を予定しているそうだ。

 また、東芝のA1対応microSDカードも展示されていた。「EXCERIA PRO」シリーズのA1対応モデルで、16GB、32GB、64GB、128GBの4モデルを用意。こちらも、3月以降に順次発売を予定しているそうだが、日本での発売については不明とのことだった。

SanDiskのA1対応microSD新モデルとなる、「Extreme microSDXC」のA1対応モデル。3月以降に米国で販売開始となり、日本でも発売を予定しているという
こちらは東芝の「EXCERIA PRO」シリーズのA1対応モデル。3月以降に順次発売予定だが、日本での販売については不明