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NEC、製品/部品の個体を識別できる「物体指紋認証技術」を開発
~スマートフォンで撮影するだけで真贋判定や流通/品質管理が可能
(2014/11/10 14:21)
NECは10日、スマートフォンで物体を撮影してサーバーデータと照合することで、トレーサービリティや真贋判定、品質管理を実現する世界初の「物体指紋認証技術」を開発したと発表した。
製品や部品の製造過程において、まったく同一の金型を使用していても、表面に自然発生する微細な紋様(物体指紋)が異なる。そこで、製造過程で製品や部品の物体指紋をサーバーに登録しておけば、後からスマートフォンのカメラを通して認証ができるようになる。
想定されているソリューションは、シリアル番号を付けられないネジやボルトなどの量産品の流通管理、ブランド物の真贋判定によるブランドの保護、部品の保守/点検作業における作業ミスのチェックなどが挙げられる。
加えて、独自の特徴抽出方式を採用することで、数個のサンプルから同一の金型から製造されたものかどうかも判断できる。これにより全品の製造元を判別できるとしている。
必要となるスマートフォンのカメラだが、「現在市場に出回っている主流のスマートフォンの画素数であれば問題なく対応できる」としている。使用する際には、カメラにマクロレンズ付きで判定部品を取り付けられるアタッチメントを付けて利用する。
対応素材は現時点で金属、プラスチック、セラミックなど、表面が比較的ザラザラした製品。変形して元の形に戻らないような状態の物の判別は不可。一方鏡面加工の製品でも解像度を上げていけば理論上可能だが、現時点のスマートフォンのカメラでは対応できるレベルではないので、別のソリューションになるとしている。
素材の経年劣化についてもある程度考慮されているが、経年劣化しにくい構造(例えばネジであれば締め付ける時に工具と干渉しない部分)を採用すれば解決できる。
この技術は物体指紋の特性を活かすることで、汎用性と低コストを実現するとともに、極めてセキュアな認証が可能。同社の検証によれば、約1,000本のボルトで総当り認証(100万回)行なったところ、エラーは0だったとしており、認証率は100%を達成した。
10日に都内で開かれた記者説明会では、NEC 情報・メディアプロセッシング研究所 所長の山片茂樹氏が開発の背景について説明。「全世界での模倣品被害総額は約80兆円とされており、模倣品の被害を受けた企業における1社あたりの平均被害額は1.9億円に上る。また被害件数や模倣対策費も増加傾向にある」とする。
加えて、「部品の量産化に伴い、部品の不良や作業ミスが重大事故や製品欠陥の要因に繋がる。こうした現場で部品の管理や点検作業には膨大なコストと時間がかかる」と指摘。物体指紋認証技術を応用すれば、これらの問題を解決できるとした。
「NECは指紋認証技術、顔認証技術、被写体の高速認証技術で実績があり、これらの技術を融合/進化させたのが今回の技術。物体認証と生体認証は基本的なパターンやアルゴリズム存在するため、同一のものではなく、開発に2年もの時間を費やしたが、今回その基礎技術が完成した」という。
今後はパートナーと協業し、より多くの種類の物体で検証を推めるとともに、実証実験を推進し、2015年上期中にソリューション化して販売開始をするとしている。