マイクロソフト、Windowsの偽造対策を強化
~再生PC向けのライセンス施策拡大も発表

3月15日 発表



 マイクロソフト株式会社は15日、Windowsの偽造対策と、再生PCの販売に関するライセンス施策の強化を行なうことを発表した。

●著作権保護に対する取り組みと成果
伊藤ゆみ子氏

 同日行なわれた説明会では、同社執行役 法務・政策企画統括本部長 弁護士の伊藤ゆみ子氏が、同社のソフトウェア著作権侵害に対する取り組みを説明した。同社では、偽造ソフトの撲滅を目指し、教育・啓発、エンジニアリング、法的対応という3つの柱に基づき活動を行なっている。

 教育・啓発とは、偽造ソフトを使わないようサイトを通じて呼びかけたりする活動。本日付けでも新たなページを立ち上げている。エンジニアリングとは、偽造を防止/回避するような技術の開発/実装。法的対応は、不正の取り締まりや、偽造業者への民事/刑事訴訟申し立ての直接貢献などを差す。3番目については、日本でも業界団体と連携した民事損害賠償請求や、刑事告訴、また著作権保護のための法制度の提言などを行なっているという。

 また、伊藤氏は、メーカー製Windowsリカバリメディアの偽造品をオークションサイトで販売していた業者(計5名)の摘発や、ゲーム、音楽を含むビジネスソフトの違法アップロードの一斉摘発といった具体的成果についても言及した。さらに、これらの摘発後、オークションサイトでの非正規メディアの出品数は著しく減り、2010年2月の出品数は前年同月の2割弱となっているという。

違法製品の販売だけでなく、ファイル共有者からも逮捕者が出たこれらにより、違法な出品は大きく減少した

 これら「非正規メディア」の内容としては、PCメーカーが添付するリカバリメディアを偽造したもの、出品商品に違法なアクティベーションマニュアルや手順書が添付されたもの、出品商品に不正なプロダクトキーが添付されたものなどがある。特に最近は、プロダクトキーが印刷された「Certificate of Authenticity (COA)」ラベルのみやプロダクトキーのみの販売例が増加している。

 これらの不正な製品の販売サイトは、正規品であるかのような写真や説明書きを載せており、購入して手元に届いて初めて、偽造品であることが分かる場合もある。特に不正なプロダクトキーが使用された中古PCについては、ユーザーが気づきにくい。

 当然こういった偽造品の販売は著作権法に違反するが、伊藤氏は、悪意のあるツールが仕込まれている、ソフトの機能不全、犯罪組織への資金提供に繋がるといったリスクがユーザー側にも潜在することを指摘した。

●Windowsの偽造対策と再生PCの販売プログラムの強化
中川哲氏

 マイクロソフトでは、今後も、偽造品の出品監視とオークションアカウントの削除強化や、捜査当局への情報提供、協力などを引き続き行なうが、本日付けで発表したWindowsの偽造対策と、正規ライセンス購入に向けた誘導について、コマーシャルWindows本部本部長の中川哲氏が説明を行なった。

 まず、Windowsの偽造に対しては、Windows 7向けに「Windows Activation Technology Update for Windows 7 (WAT Update)」をWindows Updateを通じて配布する。Windowsには、プロダクトキーが正規のものであることを確認するためにアクティベーションの仕組みを採用している。今回のアップデートは、これを回避するツールなどに向けた対策となる。

 Windows XPとVistaでは、同様の対策として「Windows Genuine Advantage (WGA)」が組み込まれている。これにより、WGAのアップデートを行なった際に、不正なプロダクトキーの検出が行なえる。

WAT Updateの概要

 今回のWAT Updateでは、さらに推し進め、PCのローカルに不正なキーやアクティベーション迂回コード約70種以上ののデータベースを保持し、90日ごとに確認を行なう。また、アクティベーション回避ツールがシステムに加えた変更などの修復も一部行なう。

 なお、偽造品であることを知らずに購入し、WAT Updateなどで被害が発覚した場合、マイクロソフトでは無償で正規品に交換する救済プログラムを用意している。

 もう1つの発表が、再生PC向けとなるプログラムの強化。

 マイクロソフトでは、リカバリメディアを紛失したなど、元の正規ライセンスが確認できない中古PC向けに、専用のOS新規インストールライセンスを提供している。この提供を受ける登録リセラーである「Microsoft Authorized Refurbisher (MAR)」は当初の9社から、途中メディエーターが増え、今回日本IBMも参入している。MARの詳細については、関連記事を参照されたい。

 また、MARが扱える対象OSの種類が、当初のWindows XP Home Edition/Professionalのみから、Windows Vista Home Basic/Premium、 Vista Business、7 Home Premium、7 Professional、Server 2003へと拡大された。ただし、元OSがVistaの場合、新規インストールされるのは7となる。

 このMARとして認定を受けるには、マイクロソフトとの細かな契約が必要なのだが、それができない中小規模業者向けに、「Microsoft Registered Refurbisher (MRR)」というプログラムが新設された。

 MRRになるには、マイクロソフトの専用サイトで登録するだけで良い。その後は、マイクロソフトの正規代理店を通じて、MRR用のライセンスを購入できるようになる。

 ちなみに、MARが販売する再生PCには、新規インストールするOSのライセンスを証明する2つ目のCOA(ピンク系)が添付される。MARが扱う、COAにはプロダクトキーが刻印されているが、MRR向けには刻印がない無地のCOAが提供される。MRRとなる業者は、再生PCの元のCOA(ブルー系)にあるプロダクトキーをサイト上で入力すると、2つ目のCOA用のプロダクトキーがPDFで入手できるようになっている。ただし、MRRが購入できる新規ライセンスはXP Home Edition/Professionalのみとなる。

 なお、これらの作業は業者側が行なうものであり、ユーザーは2つ目のCOAが添付されていることを確認するだけで、正規ライセンスに基づいていることを判断でき、自身でインストールなどを行なう必要はない。

MARが扱うことのできるOSの種類が増えたMRRというプログラムも開始MARとMRRの違い
MRRが行なう作業の流れMARとMRRが販売する再生PCには元のCOA(ブルー系)に加え、もう1つのCOA(ピンク系)が貼付される

(2010年 3月 15日)

[Reported by 若杉 紀彦]