マイクロソフト、中古PCに正規ライセンスを提供
~中古PC市場の健全な発展を目指す

Microsoft Authorized Refurbisherのロゴマーク

4月24日 発表



 マイクロソフト株式会社は24日、中古・再生PCに対して、正規Windowsオペレーティングシステムのライセンスを再提供する「Microsoft Authorized Refurbisher(MAR)プログラム」を発表した。

 日本国内では、年間159万台の中古PCが流通しているが、そのうち、OSなどが搭載されていない「ネイキッド」の状態で流通されているものが約7割に達しているという。

マイクロソフト コマーシャルWindowsビジネス本部・中川哲本部長

 「企業から排出される使用済みPCの場合、個人情報保護などの問題もあり、OSを含めてデータをすべて消去した形で排出されたり、一方で、リカバリディスクを紛失した形で排出されることが多い。結果として、OSがないまま中古PCとして流通されることになる。これを購入したユーザーは、パッケージOSを購入しなければならず、コストが高くなるという問題があった。また、OS無しのユーザーが、第3者からOSを別途購入する際、リスクを認識せずに非正規品や偽造品を購入してしまう例がある。なかには偽造品を利用したことで、マルウェア、ボットが混入していた報告もある。このプログラムを利用することで、こうした問題を回避できる」(マイクロソフト コマーシャルWindowsビジネス本部・中川哲本部長)としている。

 MARプログラムを利用することにより、再生PC上に偽造ソフトウェアなどがインストールされるリスクを軽減。違法コピー防止の活動を加速するとともに、ユーザーが安心して再生PCを利用できる環境を構築できる。

 また、同社では、同プログラムを通じることで、再生PCの流通が活発化し、それが環境・循環型社会へ貢献につながり、ソフト会社としても環境貢献できるとしている。

再生PC流通の仕組み現状の再生PCの製造と販売のプロセス。新たなパッケージOSでコストがかかり、非正規のOSを購入してしまう危険性がある
MARプログラムによって、安全性を高めながら安価に再生PCが購入できるMARプログラムの詳細

マイクロソフトの法務・政策企画統括本部統括本部長 伊藤ゆみ子執行役

 マイクロソフトの法務・政策企画統括本部統括本部長である伊藤ゆみ子執行役は、「再生PC向け正規Windows OSのインストールプログラムの提供によって、再生PC事業者の販売拡大、中古PC市場の活性を目指すほか、マイクロソフトが従来より取り組んでいる不正ソフトウェア防止の一環になると考えている。違法コピーの防止、偽造ソフトウェアの脅威からユーザーを保護し、セキュリティ更新プログラム、各種ダウンロード、アップデート、機能拡張などWindows本来の機能やサービスを活用できる」などとした。

 同プログラムでは、再生PCの大規模な販売実績を持つこと、適切なPCの再生プロセスおよび流通、販売に関する専門的な知識を保有していること、安全や環境基準に関する法規制の順守などの一定条件を満たした再生PC事業者から出荷される中古PCに対して、Windows OSのセカンダリライセンスを提供。これをインストールして、再販することができる。

 提供の対象となる再生PCは、新製品としての出荷時に、正規のWindows OSがインストールされていたPCであること、PC初期出荷時点に添付されていた正規Certificate of Authority(COA)のラベルが貼付されていること、再生企業による適切なデータ完全消去、動作検証、故障修理がされているものとなる。

 OSがインストールされ、リカバリディスクなどが添付されているものは、このプログラムを利用せずに、中古PCとして再販できる。

 MARプログラムに参加するのは、アンカーネットワークサービス、川上キカイ、ソフマップ、ティーズフューチャー、デジタルリユース、東電環境エンジニアリング、パシフィックネット、ブロードリンク、ヤマダ電機の9社。

MARプログラムに準拠した中古PCは、初期出荷時に貼付されているCOAラベルとともに、MARプログラムのCOA(手前)を貼付するMARプログラムに参加する9社MARプログラムに参加する各社と、マイクロソフトおよびRITEA関係者

 マイクロソフトは、これらの企業が再生する中古PCに対して、OSのリカバリメディアとCOAラベルを再提供する。提供するのは、Windows XP Professionalと、Windows XP Home Edition。いずれも、日本語版、英語版、中国語版を用意する。

 「現在中古PCの約8割がWindows XPによるもので、最もニーズがあるOSだといえる。だが、ニーズを見ながらTablet Editionなどへの対応も検討していきたい」(中川本部長)。

 提供に関わる費用は、「リカバリメディアや流通費用などの実費程度であり、きわめて安価なものである」(同)としている。

 参加企業は、4月25日から正規Windows OSをインストールした再生PCを販売する。これらのPCには、初期出荷時に貼付されているCOAラベルとともに、MARプログラムのCOAを別途貼付する必要がある。また、MARプログラムのCOAには、再生PC事業者の名前を明記している。メーカーごとに提供されているドライバについては、ドライバセットとして、マイクロソフトがメディアで提供。再生事業者各社が対応することになる。

 同プログラムに準拠した再生PCに関するサポートは、OSに関しては、マイクロソフトのウェブサイト(ライセンス情報)および有償サポートによって提供。また、再生事業者によるサポートも用意される。

 MARプログラムは、2008年から米国市場で開始。当初は3社でスタートしたものが14社にまで広がっている。日本は世界で2番目の制度導入となるが、数年前からヤマダ電機を通じて、日本の市場に最適化した仕組みを模索するため試験的な運用を行なってきた経緯がある。その経験からドライバをセットにして再生事業者に提供する仕組みを構築した。

 また、日本では、同プログラムとは別に、2002年から全国16のコミュニティMAR加盟会社を通じて、NPO法人に対して、再生PCを寄贈する支援プログラムを実施している。

 今年中には、カナダ、オーストラリア、オランダでも、MARプログラムが実施される予定だという。

RITEAの小澤昇常務理事・事務局長

 中古PCに関連する企業が加盟する一般社団法人中古情報機器協会(RITEA)の小澤昇常務理事・事務局長は、「現在、日本国内における中古PCの市場規模は、2007年度実績で158万9,000台。前年に比べて、30%増となっている。これを製造することにより排出されるCO2に換算すると、19万1,239トンのCO2排出量削減につながっており、太さ30cmの樹木が1年間に吸収するCO2で、123万3,000本に当たる規模となる」と中古PC市場の大きさを説明。

 続けて「MARプログラムによって、Windowsインストール済み中古・再生PCが市場に多く提供できること、中古・再生PCの購入者が広がり、市場が拡大すること、中古品市場に一部残っている不正コピー使用などの悪いイメージを払拭できることが期待できる。また、中古・再生PC市場が拡大することで、現行使用PCの下取り売却が容易になり、新品PCへの早期買い換え促進に貢献できるといったメリットもある。販売されている中古PCのうち、約4割が発売から3年以内のものであり、その点からも、買い換えの受け皿を作ることで、業界の発展に寄与すると考えており、MARプログラムに全面的に賛同する」とした。

 今回、MARプログラムに参加する企業は、すべてRITEAの会員会社である。

(2009年 4月 24日)

[Reported by 大河原 克行]