瀬文茶のヒートシンクグラフィック

CRYORIG「H7」

~CRYORIGブランドのCPUクーラー第5弾となる低背サイドフロー

CRYORIG H7

 今回はCRYORIGよりサンプルの提供があったため、同社の120mmファン搭載サイドフローCPUクーラー「H7」を紹介する。ちなみに、筆者が別途購入した際の価格は5,400円だった。

全高145mmの120mmファン搭載サイドフロー

 H7は、CRYORIGブランドのCPUクーラー第5弾として登場したサイドフローCPUクーラーである。ヒートシンクの全高は145mmで、120mmファンを搭載するサイドフローCPUクーラーとしては、かなり背の低い製品だ。対応プラットフォームはIntelのLGA115xと、AMDのSocket AM2(+)/AM3(+)/FM1/FM2(+)。

 H7のヒートシンクは、3本の6mm径ヒートパイプと、CPUとの接地面に純銅板(C1100)を採用したベースユニット、40枚のアルミニウム製放熱フィンから成る放熱ユニットで構成されている。ヒートシンクの形状は、シングルタワータイプのオーソドックスなサイドフロー型で、メモリスロットとの干渉を回避する形で放熱ユニットを排気方向にずらして配置している。また、放熱ユニットには、吸気側の放熱フィンを六角形型に配置することでエアフローの改善を図る「Hive Fin」デザインを採用した。

 標準搭載の冷却ファンには、CRYORIGブランドの120mm角25.4mm厚ファン「QF120」を採用。PWM制御に対応し、330~1,600rpm(±10%)の範囲で回転数を調整可能。ヒートシンクへの固定には、専用の金属製ファンクリップを利用する。なお、付属のファンクリップは2セット同梱されており、市販の120mm角25mm厚ファンを追加することで、デュアルファン構成での運用も可能。

リテンションキット
ベースユニットに取り付けられた「X-Bar」。3段階に形状を変化させることで、IntelとAMDの各対応環境において、水平および垂直方向の取り付けをサポート
放熱ユニットの吸気側はフィンを六角形状に配置するHive Fin デザインを採用
放熱ユニットの排気側のフィン間隔は同じ。前面のHive Finと組み合わせてJet Fin Accelerationと同等の効果を実現する
メモリスロットとの干渉を回避するため、放熱ユニットは排気側にオフセットして配置されている
冷却ファンのQF120
サーマルグリスとファン固定用クリップ
ファンを取り付けた状態。ファンクリップは取っ手付きで取り付けやすい
メモリスロットとのクリアランス(ASUS MAXIMUS V GENE利用時)
拡張スロットとのクリアランス(ASUS MAXIMUS V GENE利用時)

 周辺パーツとの干渉具合については、テストに用いたMAXIMUS V GENEにおいて、拡張スロット、メモリスロットとも、干渉問題は発生しなかった。120mmファンに最適化された横幅123mmと、放熱ユニットを排気方向にずらしたオフセット設計が功を奏した結果だ。また、全高を145mmに抑えていることで、横幅の狭いPCケースと干渉しにくい点も、H7の特徴と言える。

 リテンションキットは新型の「X-Bar Quick Mount System」を採用。ヒートシンク側に取り付けられたX-Barと、ネジ4本とスペーサー4本、バックプレートのみで、IntelとAMDのマルチソケットをサポートするこのリテンションキットは、マザーボード裏面からのネジ止め方式のリテンションキットである。

 IntelのLGA2011や旧世代のソケットへの対応は省略されたが、これだけシンプルなパーツ構成でマルチソケットに対応しているところから、設計へのこだわりは感じられる。もっとも、それは使い勝手に寄与するものではなく、コストを抑えるための設計だ。扱いやすさに関しては、スペーサーを用いることでネジの脱落防止を図っているが、基板裏面からねじ止めする仕様は、R1シリーズやH5 Universalで採用されているリテンションキットの扱いやすさには及ばない。

冷却性能テスト

 それでは、冷却性能テストの結果を紹介する。今回のテストでは、マザーボード側のPWM制御設定を「20%」、「50%」、「100%(フル回転)」の3段階に設定。それぞれ負荷テストを実行した際の温度を測定した。

 テストの結果、3.4GHz動作時時のCPU温度は54~72℃、ファンの回転数が400rpmを下回るPWM制御20%設定時の温度が高めだが、CPU付属クーラーより13~31℃低い結果であり、おおむね良好な結果と言える。

 オーバークロック動作中のCPU温度については、3.4GHz動作時に高い温度を記録していたPWM制御20%設定で94℃を超えたためテストを打ち切ったが、残る2つの設定で、4.4GHz動作時に72~76℃、4.6GHz動作時に82~86℃を記録した。冷却ファンが約1,560rpmで動作するフル回転時の結果を基準に考えると、約860rpmまで回転数の落ちる50%設定時の結果が優秀なものに見えてくる。このあたりは、吸気側のフィンピッチを広くとるHive Finデザインの効果であると言えるかもしれない。

 動作音については、風切り音が聞こえ始める境界が1,000rpm付近にある。そこから1,200rpm程度までの動作音増加は少ないが、1,300rpmあたりから風切り音が急激に増加する。CPUクーラーに静粛性を期待するなら、少なくとも1,200rpm以下で運用すべきだろう。800rpm程度まで絞れば、ほぼ動作音はなくなるので、可能であればその程度まで絞って使いたい。

低背サイドフローとして出来の良いヒートシンクだが、リテンションに注意が必要

 140mmファン搭載のCPUクーラーが珍しくなくなった現在、一回り小さい120mmファン搭載CPUクーラーには、拡張スロットをはじめとする、周辺パーツとの干渉を回避するデザインが期待される。CRYORIG H7は、この期待に見事に応える製品であり、145mmという背の低さもあって、多くの環境で利用できることだろう。冷却性能もヒートパイプ3本という構成の割には悪くない。

 筆者がH7を使って残念に感じたのが、新型リテンションキット「X-Bar Quick Mount System」だ。従来のCRYORIG製品、特にR1とH5に関しては、完成度の高いリテンションキットとヒートシンク設計が見事に噛み合い、ファンを外すことなく大型ヒートシンクをマウントできる、素晴らしいものだった。これが裏面ねじ止めという、扱いにくいものに変更されたことが残念でならない。

 ほかのCRYORIG製品より安価に設定されたH7の販売価格だが、その代償としてCRYORIG製品最大の魅力の1つであった、完成度の高いリテンションキットが失われた。H7の購入を検討する場合、低背サイドフローのメリットと合わせて、取り付けで手間取る可能性も考慮すべきだろう。

CRYORIG「H7」製品スペック
メーカーCRYORIG
フロータイプサイドフロー
ヒートパイプ6mm径×3本
放熱フィン40枚
サイズ(ファン搭載時)123×98×145mm (幅×奥行き×高さ)
重量(ファン搭載時)711g
付属ファン120mm角25.4mm厚ファン「CRYORIG QF120」
電源:4ピン
回転数:330~1,600rpm
風量(最大):49CFM
ノイズ:10~25dBA
サイズ:120×120×25.4mm
対応ソケットIntel:LGA 1150/1155/1156
AMD:Socket FM2+/FM2/FM1/AM3+/AM3/AM2+/AM2

(瀬文茶)