瀬文茶のヒートシンクグラフィック

RAIJINTEK「MORPHEUS」

~最新GPUに対応する新興メーカーのハイエンドGPUクーラー

 今回は、RAIJINTEKのハイエンドGPUクーラー「MORPHEUS」を紹介する。購入金額は8,078円だった。

TDP 360W対応の超高性能GPUクーラー

 今回紹介するMORPHEUSは、NVIDIAのGTXシリーズとAMDのRadeon R9シリーズなどをサポートするGPUクーラーだ。メーカーのRAIJINTEKは2013年に設立された新興の冷却パーツメーカーで、日本では2014年4月下旬から製品の販売がスタートしたばかりのニューフェイスである。

 MORPHEUSのヒートシンクは、銅製のベースプレートによって受熱し、ベースユニットを貫通する12本の6mm径ヒートパイプによって、129枚の放熱フィンから成る長大なヒートシンク全体への熱輸送を行なう設計となっている。ヒートシンクの全面に光沢感のあるめっき処理が施されており、精緻な作りと相まって、たいへん美しい外観に仕上がっている。

 GPUを冷却するメインのヒートシンクのほか、MORPHEUSにはVRMや電源回路を冷却するためのアルミ製ヒートシンクが同梱されている。これらのヒートシンクは、粘着シートを用いて冷却対象に取り付ける仕様となっている。

 冷却ファンが同梱されていないMORPHEUSだが、実際の運用時には120mm角25mm厚のファンを2基搭載することを前提としている。ファンの取り付けは専用の金属製ファンクリップで行なう。このファンクリップは、25mm厚の120mm角ファンであれば、リブの有無を問わず取り付けることができるが、25mm厚以外のファンは取り付けられない。

RAIJINTEK MORPHEUS製品パッケージ
MORPHEUSヒートシンク本体
12本の6mm径ヒートパイプを搭載。外観からは6本のヒートパイプに見える。
リテンションキット
基板実装部品冷却用ヒートシンク
実装部品冷却用のヒートシンクは粘着シートで貼り付ける
ファンクリップと、ヒートシンク貼り付け用の防振ゴム
ファン搭載時。ファンクリップは25mm厚の120mm角ファンのみをサポートする
ファンを取り付けたMORPHEUSを搭載したビデオカードは、合計4スロット分のスペースを占有する

 25mm厚ファンを搭載したMORPHEUSは、ビデオカード搭載スロットに隣接する3スロット分のスペースを占有する。このため、MORPHEUSを搭載したビデオカードは合計4スロット分ものスペースを占有することになる。4スロットを占有するということは、最上段位置にPCI Express x16スロットを備えるmicroATXマザーボードに、MORPHEUSを搭載したビデオカードを取り付けた場合、残りの拡張スロットが利用できなくなるということである。MORPHEUSがもたらす物理的な制約は非常に大きい。

 また、MORPHEUSに限らず、サードパーティー製GPUクーラー全般に言えることだが、メーカーが掲げる対応GPUは、リファレンス仕様のものを基準としている点に注意を要する。対応表にあるGPUを搭載していても、ビデオカードメーカーオリジナルデザインの基板を採用したビデオカードには取り付けられないことも少なくない。GPUクーラーは、CPUクーラー以上に組み合わせの相性がシビアなので、失敗を避けるなら、事前にビデオカード側の仕様をよく確認しておきたい。

冷却性能テスト

 それでは、冷却性能テストの結果紹介に移りたい。MORPHEUSの冷却性能テストは、GeForce GTX 480搭載のMSI製ビデオカード「N480GTX Lightning L」に取り付けて行なった。冷却ファンは、X-FAN RDL1225S-PWMを2基、VGA用ファンコネクタに変換して搭載している。

MSI N480GTX Lightning L。ストレステストを実行時に、電力リミッター無しでGeForce GTX 480を動作可能な電源回路を備える
MSI N480GTX Lightning Lの搭載GPUクーラー。6mm径ヒートパイプ3本と8mm径ヒートパイプ2本を備えるハイスペックなヒートシンクを備えている

 なお、MORPHEUSはGeForce GTX 480への対応を謳っていないが、MORPHEUSが対応するGeForce GTX 680とGeForce GTX 480のGPUクーラー固定穴位置が同じであるため取り付けることができた。取り付けに関して大きな問題は起こっていないが、対応を謳っていないGPUとの組み合わせである点について、あらかじめご了承いただきたい。

 ストレステストに用いたFurMark 1.13.0.0のBurn-in benchmarkは、GPUに極めて高い負荷を掛けるテストで、MSI N480GTX Lightning L標準搭載のクーラーでは、最高GPU温度82℃、ファンの回転数は3,720rpmまで上昇し、かなり大きな風切り音が発生していた。

 一方、MORPHEUSの結果は、搭載ファンのPWM制御を30%(約810rpm)まで絞った状態で84℃。50%制御(約1,200rpm)では74℃、フル回転時(約1,700rpm)には69℃を記録し、かなり強力なMSI N480GTX Lightning Lの搭載GPUクーラーを軽々と上回ってみせた。フル回転時はそれなりに風切り音が発生していたが、30%~50%制御時の動作音は、MSI N480GTX Lightning Lの標準クーラーより遥かに静かだ。TDP 360W対応という謳い文句も納得のパフォーマンスである。

ビデオカードメーカーのオリジナルクーラーを凌駕する高性能GPUクーラー

 冷却性能テストは、MORPHEUSが正式にサポートしていないGPUでの検証となったが、ビデオカードメーカーのオリジナルGPUクーラーを軽々と凌駕した結果から、MORPHEUSの持つ高い冷却性能が伺える。取り付けさえできれば、ビデオカードの静音化と冷却強化を同時に達成できる。

 ビデオカードのクーラー交換は、標準クーラーを取り外した時点で保証が失効し、想定外の物理的な干渉が起こりやすく、故障のリスクも高い。CPUクーラーの交換に比べ、デメリットが大きいため、どれほど高い冷却性能があると分かっていても、交換作業に踏み切れないユーザーは多いだろう。結果として、保証付きで性能の高いクーラーを搭載したメーカーオリジナルデザインのビデオカードが台頭し、サードパーティー製GPUクーラーは衰退してしまった。

 そんな厳しい状況の中で、新興メーカーのRAIJINTEKがMORPHEUSを発売したことにより、ごく限られた選択肢しか残されていなかったサードパーティー製GPUクーラーに、新たな選択肢が増えたことを歓迎したい。

【表】RAIJINTEK「MORPHEUS」製品スペック
メーカーRAIJINTEK
ヒートパイプ6mm径12本
放熱フィン129枚
サイズ(ヒートシンクのみ)254×98×44mm(幅×奥行き×高さ)
重量(ヒートシンクのみ)515g
付属ファンなし(120mm角25mm厚ファンを2基搭載可能)
対応GPUNVIDIA:650/650Ti/660/660Ti/680/760/770/780/ 780Ti
AMD:R9 290X/R9 290/R9 270X/R9 270/HD 7850/HD 7870

(瀬文茶)