瀬文茶のヒートシンクグラフィック

Cooler Master「Hyper 212X」

~MTBF 16万時間の高信頼性ファンを搭載したサイドフロー型

 今回は、Cooler MasterのサイドフローCPUクーラー「Hyper 212X」を紹介する。購入金額は5,980円だった。

Cooler Masterの定番モデル「Hyper 212」の4代目

 今回紹介するHyper 212Xは、Cooler Masterが2007年に発売したサイドフローCPUクーラー「Hyper 212」から続くHyper 212シリーズの4代目となる製品だ。

 初代Hyper 212は放熱部を2ブロックに分けることでエアフローの改善を図った製品であったが、その後継である「Hyper 212 Plus」では2ブロック式の放熱部は廃止され、ヒートパイプダイレクトタッチ方式採用のCPUクーラーへと変更された。以降、マイナーチェンジを重ね、4代目として発売されたのが「Hyper 212X」である。

 ヒートシンク本体は、ヒートパイプが直接CPUに接地するヒートパイプダイレクトタッチ方式採用のベースユニットと、4本の6mm径ヒートパイプ、57枚のアルミニウム製放熱フィンで構成された、オーソドックスなレイアウトのサイドフロー型ヒートシンクだ。Hyper 212Xでは、放熱フィン中心部に窪みを設ける「Air-Guide」、ヒートパイプ周辺の放熱フィンにスリットを設ける「X-Vents」など、エアフローを改善する新技術が追加された。

 Hyper 212Xには付属ファンとしてPWM制御に対応した120mm角25mm厚ファンが同梱されている。このファンの回転数は600~2,000rpm(±10%)という広い範囲をカバーしており、静粛性と冷却性の両方をカバーし得るスペックを備えている。また、ベアリングに耐摩耗性に優れたPOM樹脂(ポリアセタール)を採用したことで、平均故障間隔(MTBF)16万時間という高い信頼性を実現している。製品の摩耗や劣化を考慮しないMTBFを耐用年数とするのは語弊があるのだが、PC用のDCファンとして優れた数値であることは確かである。

 ファンのヒートシンクへの取り付けには、専用の樹脂製ブラケットを用いる。ブラケット自体をファンにネジ止めし、ヒートシンクを挟み込む形で固定するタイプであり、ヒートシンクへの着脱は一般的な金属クリップ式よりも容易に行なえる。ブラケットは付属ファンに取り付けられているもののほか、追加ファン用のブラケットが同梱されており、追加でケースファンを用意すればデュアルファン構成での運用が可能となる。

Hyper 212X本体
付属品一覧
付属の120mm角25mm厚ファン。PWM制御対応
ファンの固定には専用の樹脂製ブラケットを用いる
ベースユニットには、Hyper 212 EVOで導入された、ヒートパイプをギャップ無く配置する「Continuous Direct Contact」技術を採用
放熱フィンの中央部にV字状に配置された窪みが「Air-Guide」
ヒートパイプの周囲に設けられたX字状のスリットが「X-Vents」
メモリスロットとのクリアランス(ASUS MAXIMUS V GENE使用時)
拡張スロットとのクリアランス(ASUS MAXIMUS V GENE使用時)

 周辺パーツとの干渉については、120mmファン向けに最適化されたヒートシンクであるため、ある程度余裕がある。今回テストに用いたASUS MAXIMUS V GENEとの組み合わせでは、メモリスロット、拡張スロットとも、干渉問題が発生することは無かった。

冷却性能テスト結果

 それでは、冷却性能テストの結果を紹介する。今回のテストでは、マザーボード側のPWM制御設定を「20%」、「50%」、「100%(フル回転)」の3段階に設定し、それぞれ負荷テストを実行した際の温度を測定した。

 冷却性能テストの結果を確認していくと、3.4GHz動作時のCPU温度は55~64℃となっている。これは、CPU付属クーラーより21~30℃低い結果であり、CPU付属クーラーからの大幅な冷却能力向上が期待できる。一方、オーバークロック動作時の温度については、4.4GHz動作時は72~89℃、4.6GHz動作時は82~88℃を記録した。ただし、最もファンの回転数を絞った20%制御時(約720rpm)については、4.6GHz動作時に94℃を超えたためテストを中止している。

 3.4GHz動作時の結果がハイエンドCPUクーラーに匹敵するほど良好な一方、4.4GHz動作以上にオーバークロックした際の結果は取り立てて優秀という程のものではない。3.4GHz動作時と4.4GHz動作時のファンをフル回転させた際のCPU温度を比較すると17℃もの差がついており、発熱の増大にやや弱い傾向が伺える。

 動作音については、20%制御時(約720rpm)は、軸音、風切り音とも気にならない。PWM制御を50%(約1,170rpm)に設定すると、多少軸音が発生するものの、風切り音は少なく、ケースに収めればさほど気にならない程度だ。この1,200rpm前後の回転数を超えると、風切り音が急激に大きくなっていく。冷却性能テストの結果を考慮すれば、最大回転数が1,200rpm前後になるような調整が出来れば、騒音と冷却のバランスが取れるだろう。

CPU付属クーラーからのステップアップに適したサイドフローCPUクーラー

 冷却性能的に言えば、Hyper 212Xは、オーバークロック時の冷却強化を狙って選ぶ製品というより、CPU付属クーラーをより静かに、より冷えるものへと交換しようと考えるユーザー向けの製品と言ったところだろう。

 数世代に渡ってマイナーチェンジを重ねてきただけあって、ファン固定ブラケットは扱いやすく、リテンションキットの出来も悪くない。Hyper 212Xの特徴としてCooler Masterが強くアピールしている付属ファンについても、実際の耐用年数はともかく、MTBF 16万時間という数字は立派なものだ。静粛性に優れた低回転域から高回転域をカバーできるため、別途ファンを用意しなくても十分使い物になる。

 惜しいのは、他社の競合製品と比較すると割高な5,980円という価格だ。性能面や外観的な美しさで突出しているわけではないHyper 212Xを検討する際、一番のポイントとなるのはやはり付属ファンの信頼性の高さだろう。付属ファンの信頼性に対して、価格に見合うだけの魅力を感じるか否かが、Hyper 212X選択の分岐点となりそうである。

Cooler Master「Hyper 212X」製品スペック
メーカーCooler Master
フロータイプサイドフロー
ヒートパイプ6mm径×4本
放熱フィン57枚
サイズ120×79×158mm(幅×奥行き×高さ)
重量492g(ヒートシンクのみ)
対応ファン120mm角25mm厚ファン×1
電源:4ピン(PWM制御対応)
回転数:600~2,000rpm±10%
風量:24.9~82.9CFM(±10%)
サイズ:120×120×25mm
対応ソケットIntel:LGA 775/1150/1155/1156/1366/2011
AMD:Socket FM2/FM1/AM3系/AM2系

(瀬文茶)