西川和久の不定期コラム

2014年を振り返る

〜ローエンドが安くなったWindowsマシンと、AtomなAndroidが目立った1年

ついに2万円を切ったWindowsタブレット「Diginnos Tablet DG-D08IW」

 今年(2014年)も残すところあとわずか。そこで2014年に掲載した記事と、筆者の体験談なども織り交ぜながらこの1年を振り返ってみたい。特に今年はアグレッシブなMicrosoftの動きが一番印象に残った感じだ。

Microsoftの大逆襲〜Windowsの0ドルライセンスと、Officeのマルチプラットフォーム対応で反撃に出る〜

 2012年や2013年も振り返る的な記事を年末に掲載しているが、いずれもAndroidやApple/iOSに押され気味でWindows 8は出たもののMicrosoftの影は薄かった。

 理由は簡単で、パッとしないWindows 8に加え、ボリュームゾーンと言われている2〜3万円程度と、5万円前後のデバイスにはWindowsを乗せづらかったからだ。下はAndroidが抑え、5万円前後から10万円のレンジはApple製品、そしてその上がWindowsの主要どころとなっていた。もちろん去年(2013年)も5万円前後で8型のWindowsタブレットは購入可能であったものの、性能や使い勝手と言う面で、今一つ魅力が無かったように思う。

 ところがご存知のように、今年に入って、ある条件(詳細は不明。徐々にハードルを下げている可能性がある)を満たせばWindowsを0円で搭載することが可能になったのだ。さらにWindows 8.1 Updateからはシステムのフットプリントが小さくなり、メモリ1GB/ストレージ16GBでも動作可能に。Windowsボタンも必須ではなくなったようだ。

 つまりAtomプロセッサを搭載したハードウェアであれば、AndroidもWindowsも、同一デバイスで動作し、しかもOS代もかからないのだから価格も同レベルになる。その結果どうなったかは、ここ数カ月の発表の通り。8型のWindowsタブレットが2〜3万円程度で購入可能となった。この円安でなければ、もう5千円程度は下がったかも知れない。

 もちろん安かろう悪かろうではなく、去年と比較して4コア4スレッドのAtomプロセッサで性能向上、液晶パネルの品質もグーンと上がり、Micro HDMI出力を装備など、不満の無い構成になっているものが多い。

 この原稿を書いている時にも、マウスコンピューターから、Atom Z3735F(4コア4スレッド、1.33〜1.83GHz)、2GB/32GB、Office Home and Business 2013をプリインストールしながら、税込みで25,704円の低価格を実現した8型Windowsタブレット「WN801V2-BK」が発表された。もちろんMini HDMI出力付きだ。Micro USBやBluetoothもあるので、自宅ではディスプレイとマウス/キーボードを接続し、超薄型デスクトップとしても機能する。

 Officeやネット中心であれば、これ1台でそこそここなせそうだ(Core Duo辺りでWindows XPを使っている人ならこちらの方が速い上に省エネ)。カジュアルユーザーは待ってましたの逸品だろう。

 さて、ユーザーとしてWindowsマシンが安くなったのは嬉しいが、当のMicrosoftはもうOSでは稼げなくなってしまう。ただ心配は無用。彼らはOSからOffice 365などクラウド系のサブスクリプションビジネスモデルへ大シフトしたのだ。PC 1台売れた時のロイヤリティより、世界中のユーザーから毎月少しずつ使用料が入った方が最後は儲かるとの判断だろう。

 こうなるとOfficeはWindowsだけの専売特許にするより、Mac OS Xはもちろん、AndroidやiOS、Chrome OSなどより多くのプラットフォームに対応すれば市場規模が広がるため、急速にその対応を始めている。現在Android版のみβ版扱い(加えて5.0には非対応)だが、来年(2015年)早々には主要なOS全てでOfficeが使えるようになり、これもユーザーとしては嬉しい限りだ。

 以上2つにより、これまで(バルマー時代)には見られなかったMicrosoftの大逆襲が始まろうとしている。来年は(後半になるが)、Windows 10が出るのでさらに面白そうだ。いっそ、Windows XP以降全てのWindowsから無料でWindows 10にアップグレードできれば、面倒でコストがかかる古いOSのメンテも不要になり、フラグメンテーションも解消しそうだが……。

AtomのAndroid搭載機が多数登場

 これまでAndroid搭載機と言えば、TegraやSnapdragonなど、ARM系のSoCを搭載したものが主流だったが、今年になって一気にAtom搭載機が増えてきた。

 レビューした機種だけ挙げても、au「MeMO Pad 8(AST21)」、デル「Venue 8」、ASUS「MeMO Pad 7」の3機種。当然これ以外に発表された機種は桁違いに多い。

 気になる互換性は、FATバイナリ形式のネイティブアプリ(ARM版とIntel版など、複数のアーキテクチャを1つのAPKにまとめた配布形式)で一部動かないものもあるが、これはIntel版として必要なライブラリがAPKに全て含まれていない時に発生するものであり、Intel版Androidデバイスの根本的な問題ではない。

 Atom搭載デバイスが増えた理由としては、Bay Trail版Atomプロセッサにより、性能やバッテリ駆動時間が向上しつつも単価が下がり、ARMと変わらなくなったのと、Android 5.0で容易に64bit化できるのを見越してのことだと思わる。

 この手のデバイスに使われるARM系の64bit化は最近だが、Atomに関しては、ネットブックの時代からプロセッサ自体は64bitに対応している。この辺りの安心感と、先に書いたようにWindowsとハードウェアを共通化できることもあり(つまり二度美味しい)、Atomプロセッサが選ばれているのだろう。

 技術的に面白そうなのは、AtomはVT(バーチャライゼーション・テクノロジー)に対応しており、メモリとストレージを少し多めに搭載し、Hyper-VやVMwareのような仕掛けを入れれば、Android上でWindowsを起動することも可能になりそうな点だ。実際そのようなデバイスや環境が出るかは不明であるが、ソフトウェアのクラウド化により、OSの垣根が無くなって来ているように、OSもホストが何でゲストが何的な感覚が数年後には今より薄れている可能性もある。

 いずれにしてもAndroid 5.0を搭載したデバイスは、来年が旬となりそうなので、今から楽しみにしているものの1つだ。

個人的なベストデバイス・オブ・ザ・イヤーは!?

Surface Pro 3は登場したが、Surface 3は登場しなかった

 結論から書くと、実は2014年の個人的なベストデバイス・オブ・ザ・イヤーは残念ながら該当無し。最も期待していた「Surface 3」は、先に書いたようにAtom搭載タブレットや2-in-1が激安になり、もはやWindows RTそのものの存在が危うくなってしまい、ついに登場しなかった。見栄えやパネルなどのスペックがSurface 2のまま、Atom搭載機が出れば即買いだったのだが……。

 「Surface Pro 3」は少しかすっているものの、価格や発熱が気になり、購入までは至っていない。他のマシンも強烈に「欲しい!」と思ったものが無く、ハードウェアに関しては、安価なマシンは増えたが、少し寂しい年と言う印象だ。最近出回り始めたCore M搭載機が増えればまた状況も変わってくるだろう。

 このような中、レビューして印象に残ったのは、ドスパラ「Diginnos Tablet DG-D08IW」、パナソニック「Let'snote RZ4」、日本ヒューレット・パッカード「HP Stream 14」、日本エリートグループ「LIVA」の4台。

 ドスパラ「Diginnos Tablet DG-D08IW」は、2万円を切る価格でMicro HDMI出力など全部入りの8型Windowsタブレット。パナソニック「Let'snote RZ4」は、宅急便で届いた時「空箱か!?」と思うほどの軽量ノートPC。日本ヒューレット・パッカード「HP Stream 14」は安価な割に美しい仕上がり(その後出たStream 11は激安)。日本エリートグループ「LIVA」は「これでWindowsが動くの!?」と思うマザーボード(同じ意味ではマウスコンピューターの「m-Stick MS-NH1」も興味はあるが、残念ながら触っていない)。どれも個性的な逸品だ。

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 惜しいのはChrome OS搭載機だろうか。レビューしたのは、日本エイサー「Chromebook C720」だが、ほかのモデルも軽く試す機会があった。OS自体はChrome中心であれば文句無しの使いやすい環境で、起動も爆速だ。ただ気になるのは安価なChromebookは液晶パネルのクオリティが低いことだった。

 この点をクリアしている、IPS式でフルHDのパネルを搭載した東芝の「Chromebook 2」は、残念ながら国内未発表。仮に発表されてもChromebookとしては高価になりそうだ。また先に書いたようにローエンドのWindows搭載機との価格差も無くなり、パーソナル用途としては背中を押す何かが今一つ欠けている。

ASUS Chromebox

 Chromeboxであればディスプレイもキーボードも好きなのを選べるため、この点はクリアできるが、現在唯一のASUS Chromeboxは、3万円越えと、先に挙げたWindowsマシンよりも高く、あえて選ぶ理由が無い。いずれにしてもいろいろな意味で国内販売するのが1年遅かった感じでタイミングが悪い。

今年購入したデバイスは!?

iPhone 6(左)とiPhone 6 Plus(右)

 今年細々購入したものの比較的高価なデバイスは、Apple「iPhone 6 Plus」が唯一。NTTドコモ、au、ソフトバンク版ではなく、Appleストアで販売されているSIMロックフリー機だ。iPhone 5sまではソフトバンク版だったので、個人的にはSIMロックフリーなiPhoneとしては初となる(なお現在急激な円安の影響か販売が止まっている)。

 これまで毎年(5を除く)、予約開始日に並んで、発売日に並んでと、最初の頃は面白かったものの、ここ数年はウンザリしていたのだが、今回は、予約日にオンラインのAppleストアで予約し、発売日に宅急便で自宅へ届き、非常に楽をして購入できた。特別あのお祭り騒ぎが好きなわけでもないので、もし次購入する時も同じパターンにすると思われる。

 さてiPhone 5sからiPhone 6 Plusに乗り換えた感想としては、一長一短と言ったところか。iPhone 6 Plusの大きい液晶パネルは見やすいし、カメラ性能も向上している。ただ大きくて重い。

 iPhone 5sはカメラ性能が若干劣ると言っても、差が出るようなシーンでの撮影は少なくほとんど気にならない。何より小さく軽いのが魅力だ。反面、液晶パネルが小さいので、さすがにこの歳になるとちょっとつらい部分もある。

 SoCの違いによる動作速度差は、主にネット系であればどちらも十分実用範囲。iPhone 6 Plus派、iPhone 6派、iPhone 5s派と、人によって好みが別れるのは十分納得できる。

 iPhone 6 Plus最大の特徴(と筆者は思っている)としては、フルHDで16:9の上、横表示に対応していることだろう。HDMIケーブル接続やApple TVへAir Playした時、画面いっぱいに情報を表示できる唯一のiOSデバイスなのだ(iPadは4:3なので横表示時画面の左右がブランクに、iPhone 6以下は横表示非対応)。映像や写真を表示した時の迫力が全く違うのは言うまでもない。

 また、HDMI対応のディスプレイとBluetoothキーボードを接続すれば(ポインティングデバイス非対応なのは残念だが)簡易デスクトップにもなる。Officeアプリが出たことにより、PowerPointを使ったプレゼンはiPhone 6 Plus 1台で十分こなせるようになり、この点に魅力を感じている人も少なからずいらっしゃるのではないだろうか。ただ残念なのは、Facebookアプリなど、結構有名処が横表示対応していないこと。環境が整えばさらに便利に使えそうだ。

 このほか、ちょっと気になっているのは、Intel EdisonやRaspberry PiといったIoT関連デバイス。この手の超小型PCは昔からあったが、スペックがグングン上がり、かなり楽しめそうな仕様になっている。ただ触りだすと仕事が止まるほどハマりそうなので自主規制中だ(笑)。

 逆に発表前まで買う気満々で購入しなかったのは、「Mac mini(Late 2014)」だ。現在使っているのが2世代古いMac mini(Late 2011)なので、この連載でも何度か「HaswellなMac miniが出れば欲しい」と書いてきたが、4コアのSKUは無く、メモリはオンボードで増設もできず、コストパフォーマンスが非常に悪くなってしまった。現Mac miniは、既にメモリを16GBへ増設済みなので、SSD化して延命するか、融通の利くIvy Bridge版のMac mini(Late 2012)の中古でも買おうか悩んでいる。

 以上、2014年を振り返って思うままに書いてみた。話の中心が、今年後半に集中しているのが何とも興味深い。

 来年は、Windows 10は言うまでもなく、Core Mの普及期、そしてMVNOとSIMロックフリー機の更なる拡大など、久々にソフトウェア的にもハードウェア的にも面白そうな年となりそうだ。多分メインマシンも新調すると思うが、結果何になるのか。現時点では当の本人でさえも全く謎だ。

IntelのEdison
Raspberry Pi
Mac mini

(西川 和久 http://www.iwh12.jp/blog/