モバイラーが憧れた名機を今風に蘇らせる

第7回

富士通「LOOX S80C/W」

~質実剛健なCrusoeミニノートをBeOS後継のHaikuで蘇らせる

 冒頭でいきなりこう言っては失礼かも知れないが、今、“富士通のPC”と聞くと、すぐに家庭向けの15.6型ノートを思い浮かぶ人が多いだろう。2015年夏モデルは15.6型しか一新しなかったし、この2~3年これと言った小型モバイル機を発売していないので、当然と言えば当然だ。

 ところがよくよく富士通のモバイルPCの系譜を辿ると、モバイルへの“ただならぬ執着心”が分かる。直近ではWindows 8.1を搭載した280gの5.54型タブレットの発表が記憶に新しいところだが、2010年には500gを切るAtom搭載のクラムシェルノート「LOOX U/G90」、2007年には液晶が回転し今で言う2-in-1に当たる「LOOX U50WN」などをリリース。変わり種としては、Windows 7が利用できる携帯電話「F-07C」も発売していた。いずれもモバイルへの執着心があるからこそ産まれたとも言える“尖ったマシン”だ。

 超小型のPCのみならず、B5ファイルサイズのノートにも意欲的だ。例えばLOOX U50WNと同様に液晶が回転しタブレットにもなる「LOOX P」の重量はわずか990g。モバイルの王道とも言える主力の10型クラスでは、光学ドライブを搭載しながら重量を約1.37kgに抑えた「LOOX T」辺りも魅力的。Ultrabookの策定がなかった時代にも優に20mmの薄さを切っていた「LOOX Q」も印象的である。

 そんなわけでモバイラーの諸兄にとって、富士通はかなり縁のあるメーカーだと言えるだろう。今回ご紹介する「LOOX S80C/W」も、A5ファイルサイズで重量890gという可搬性を実現した、モバイラーのためのマシンなのだ。

LOOX S80C/Wの3大魅力

LOOX S80C/W

 それではLOOX S80C/Wの仕様を見ていこう。CPUにはTransmetaのCrusoe TM5800 800MHzを搭載。メモリは256MBを備えている。ビデオチップはATIのMOBILITY RADEON(8MB)を採用。標準搭載のHDDは40GBで、OSにWindows XP Home Editionをプリインストール。液晶は1,024×600ドット表示対応の8.9型ワイド。発売は2003年1月18日で、価格はオープンプライス、店頭予想価格は15万円前後であった。

 LOOX S80C/Wの魅力はざっくり言って3つある。1つ目は先述の通り890gという軽量性だ。そもそもLOOX Sシリーズは、2000年に発表されたCrusoe搭載モバイルノート。初代に当たる「LOOX S5/53W」は、重量980g~990gであったのだが、2001年11月に「LOOX S8/70W」としてブラッシュアップされ、この時880g~890gへと100gの軽量化が図られた。当時CrusoeとWindows XPを搭載したノートPCとしては、世界最軽量を実現している。

 その後、ソニーの「バイオU」の登場により、世界最軽量という座を奪われた(バイオUは820g)。しかし実用的なキーボードのサイズや、後述するAirH"IN搭載であることを考慮すれば、ビジネスマンにとってこの70gの差の価値は十分にあると言えるのではないだろうか。

本体右側に通気口が見えるが、ファンは搭載されていない

 2つ目の魅力は、ファンレスである点だ。Crusoe搭載マシンと言えば、これまでに東芝の「Libretto L2」や「バイオU」などを取り上げてきたのだが、本体サイズに関わらずいずれもファンを搭載していた。そのいずれからも性能を向上させながらも、2000年代以前の小型モバイルPCと同様のファンレスを実現できた点は評価できるだろう。

 ファンレスであるメリットは、駆動時の騒音を抑えられるだけでなく、ファンの分の消費電力も抑えられるので、バッテリ駆動時間の延長に貢献できる点だ。しかしそのトレードオフが筐体の温度である。LOOX Sでは内部に大型の放熱ヒートシンクとヒートパイプを採用するとともに、底面に熱を伝えにくい布地を貼り付けることで、肌で触れた時の体感温度を下げることに成功している。

AirH"INで、128Kbpsの通信に対応する

 そして3つ目がAirH"INである点だ。LOOX S80C/WはAirH"の128Kbps通信に対応したモジュールを内蔵しており、当時のDDIポケットが提供していたPHS回線を利用したインターネットサービスをネイティブで利用できる。今となってはWiMAXやLTEモジュールを搭載する場合、内蔵が当たり前だが、当時はPCカード型のモデムや、携帯電話と繋げての通信が当たり前だったので、珍しい装備と言えるだろう。

 しかもLOOX S80C/Wはオンライン契約に対応しており、電話番号は登録時にDDIのサーバーからダウンロードされる仕組みだ。よって今のWiMAXと同様、PCを購入してから一度もキャリアのショップに行くことなくインターネット環境を構築できる。当時としては非常に画期的だったのだろう。さらに、電波状態や新着メールを、液晶横に備え付けられたLEDで確認できるというユニークな機能も備えている。

 ちなみに姉妹モデルの「LOOX S80C」は、AirH"INモジュールの代わりに、IEEE 802.11b準拠の無線LANを内蔵している。つまりいずれを選んでも無線による通信が可能であったわけで、通信に関しては充実しているモデルだった。まさに動きまわるモバイラーのための設計だったと言えるだろう。

 キーボードは86キーで、キーピッチは約16mm、キーストロークは約2mmとタッチタイピングは非常に快適。ポインティングデバイスはスティック型の「クイックポイント」で、操作感はやや硬いがホームポジションから手を動かさずにポインタを移動できるので重宝する。液晶はTNだが、高輝度バックライトを搭載しており明るくて見やすい。とにかくモバイラーが求める使い勝手の部分に関しては一通りクリアしている。

本体左側面。AirH"のオン/オフボタンがあり、メール着信LEDなども内蔵されているため、クリアパーツとなっている
特徴的な本体天板
本体背面。USBを2ポート備えているほか、Ethernet端子もある。左はアナログRGB出力だが、今回変換アダプタを入手できなかった
バッテリは本体前面に装着されており、パームレストの一部がバッテリとなっている
16mmピッチを誇るキーボードは非常に快適だ
液晶は180度以上開く
液晶の輝度は高く、非常に見やすい

高剛性の筐体を分解してみる

 本製品を手にしてすぐに実感できるのは筐体の堅牢性の高さ。キーボードや液晶の内側のフレームこそプラスチック製のようだが、底面と天板にはマグネシウム合金が用いられており、非常に高い剛性を誇る。液晶側をつまんで持ち上げてもたわみがないし、非常にがっちりした底面も安心感がある。モバイル機にふさわしい作りとなっている。

 分解は底面からネジを外して行く。本機の底面中央にはAirH"INモジュールが収められており、ユーザーが容易に取り出せないよう、そのカバーは3本の3つ又型ネジで留められている。ただし分解するためにはこのカバーの中にあるネジにアクセスする必要があるため、どうしても開かなければならない。

 一方HDDを収めるベイにはネジがなく、HDDを絶縁材でくるんで収納するだけの仕組みとなっている。こう書くと少し不安に思われるかも知れないが、耐衝撃を謳うパナソニックのLet'snoteも同様にHDDはネジ留めされていなかったりするので、本機だけが特殊というわけではない。

 ネジを全て外し、キーボード上部、ヒンジ付近の1枚パーツを取り外すことでキーボードを取り外せる。それから見えるフラットケーブルを順に外し、液晶を留めている背面のヒンジのネジを2本取り外せば、完全に内部にアクセスできる。フラットケーブルがやや多い印象だが、これは液晶下部のインジケータもモノクロ液晶だからだろう。メンテナンスはしやすい方だ。

 マザーボードとご対面になる前に見える、マザーボード全体を覆う放熱板が非常に印象的である。本機はさすがファンレスを実現するために、大きな放熱板を用いて放熱面積を稼いでいるのだろう。ただしフィン状に放熱板を並べて放熱面積を稼ぐと言ったヒートシンクのような構造は見られず、あくまでも1枚板を少し折り曲げたりプレス加工したりして、それに放熱口まで伸びるヒートパイプを1本加えた程度である。もっとも、これまで取り上げたファン付きのCrusoe機もフィンを備えていなかったので、このぐらいの面積さえあればCrusoeやその周辺が冷やせる、ということだろう。

 本機はCPUのみならずGPUやチップセットにも放熱板が接触しており、メモリを除くシステム全体をこの1枚の放熱板で放熱している。面積が広いため熱が集中することなく、使用中は筐体のどこを触っていても熱いと感じさせない辺り、設計の素晴らしさが伺える。

AirH"モジュールを収めたところのカバーは3つ又型のネジで、容易に開かないようにしている
AirH"モジュールが収められている。Ethernetコネクタのケーブルが接続されたままなので、扱いには注意したい
HDDのカバーを開けるとすぐにHDDにアクセスできる。ネジは装着されていない
基板表面を覆う大きな放熱板
ヒートパイプは排気口まで伸びている
放熱板を取り外したところ
本体底面の一部は布のような生地で覆われており、本体の熱を肌で感じにくいような仕組みとなっている

バイオUとほぼ同じ構成

 さていよいよマザーボードとご対面だ。まずはCPUだが、TransmetaのCrusoe TM5800 800MHzを搭載している。本連載で3回目の登場となるTransmetaのCPUだが、正直なところ本連載の趣旨に合うマシンはTransmeta搭載ばかりなので致し方がない(笑)。

 本機のCPUはバイオUと同様、いわゆる第2世代のCrusoeで、Code Morphing Software(CMS) 4.2を採用し、CMSの使用メモリをTM5600/5400の16MBから24MBに拡張させることで性能向上を図った。また、「Crusoe Persistent Translation Technology 1.0」を採用し、Windows XPの起動時間を短縮できるという。Crusoeはとにかく性能に制限があるCPUだったので、こうした地道な努力で体感性能を向上させていたのだ。

 メモリは256MB固定で、この辺りはLibretto LシリーズやバイオUシリーズに一歩譲る。採用されているチップはSamsungの「K4S511632D-KC75」で、133MHz駆動のSDRAMである。チップ4枚で256MBを実現しているので、1枚あたり64MBという計算になる。

 チップセットはALiの「M1535」で、これはLibretto L2と同じものだ。このためHDDインターフェイスはUltraATA/66までの対応となる。ビデオチップはATIの「MOBILITY RADEON M6-C8」。バイオUに採用されているM6-M(MOBILITY RADEON-M)と何が違うのか不明だが、メモリは同じく8MB内蔵していると見られる。

 そのほかのチップを見ていこう。CPU右下にあるSigmaTel製の「STAC9767T」はヘッドフォンドライバを内蔵したAC'97オーディオコーデックである。近くにスピーカー/ヘッドフォンアンプとなるRohm Semiconductor製の「BH7884」の装備も見られる。

LOOX S80C/Wの基板
TransmetaのCrusoe TM5800 800MHz
Samsungの133MHz駆動SDRAM「K4S511632D-KC75」を4枚搭載
チップセットはALiの「M1535」
ビデオチップはATI製の「MOBILITY RADEON M6-C8」。M6-Mとの違いは不明だが、ほぼ同等だと見られる
SigmaTel製のAC'97オーディオコーデック「STAC9767T」

 CPU付近の「MAX1718」はMaxim Integrated製のIntelモバイル電圧ポジショニング用/CPU向けステップダウンコントローラだ。同チップは以前に紹介したInterLink XPにも搭載されている。近くにTexas Instruments製の2フェーズDC-DCコントローラ「PS5120」があり、基板裏面にも2フェーズの電源回路がある。電源回路はタンタル固体コンデンサが使われており、信頼性が高い。

 メモリ上部にある三菱製の「M38869M8A-CO2HP」は740ファミリコアを採用した8bitのマイコン。シリアルI/O、A/D変換、D/A変換、システムデータバスインターフェイス、ウオッチドッグタイマーなどを内蔵し、アナログ信号の処理に好適とするもの。残念ながらここでは用途が分からない。基板右下の富士通製の「CG47323」も検索には引っかからず、正体不明だ。

 一方背面を見ていくと、Mini-PCIスロット下部に富士通製の「29F160TE-90PFTN」が見える。16Mbitの容量を持つフラッシュメモリで、BIOSが格納されていると思われる。その隣にもう1つ富士通製の「MB89577」があるが、こちらも8bitのマイコンであり、用途は不明だ。

 PCカードスロット付近の「PCI1410」はTexas Instruments製のPCカードコントローラ。ちなみに本製品は現在生産が中止されており、後継として「PCI1510」が用意されている。隣の「bq3285LDSS」はTexas Instruments製のリアルタイムクロックである。PCカードスロットの真下に装備されているIntegrated Circuit Systemsの「9248AC-188」はクロックジェネレータのようである。

 全体的に見渡すと、ほぼ同じ構成のバイオUやLibretto L2より部品数が若干多く、もう少し配置を洗練できたのではないかという気がするのだが、基板サイズに大差はなく、HDDをどう配置するのかでそれぞれのフットプリントが決まった、と言っても良いだろう。

Maxim Integrated製のIntelモバイル電圧ポジショニング用/CPU向けステップダウンコントローラ「MAX1718」
Texas Instruments製の2フェーズDC-DCコントローラ「PS5120」
電源回路は2フェーズと見られる
タンタル固体コンデンサなどで固められており、信頼性は高そうだ
三菱製の「M38869M8A-CO2HP」。8bitマイコンだが、用途は不明
富士通製IC「CG47323」。こちらも用途は不明だ
基板底面
富士通製マイコン「MB89577」。用途は不明
富士通製の16Mbitフラッシュメモリ「29F160TE-90PFTN」。BIOSを格納していると見られる
Texas InstrumentsのPCカードコントローラ「PCI1410」
Texas Instruments製リアルタイムクロック「bq3285LDSS」
Integrated Circuit Systems製のクロックジェネレータ「9248AC-188」
おそらくEthrenetの物理層だが、刻印が剥がれてしまい確認できなかった
AirH"モジュール(表面)
AirH"モジュール(裏面)
液晶の開閉を検出するスイッチの基板などは別となっている
スピーカーは左右に1基ずつ備え付けられている
液晶側にAirH"のアンテナが収められているほか、インジケータ用のケーブルもあるためコネクタは合計3つ接続する必要がある

Puppy Linuxがインストールされる

 今回はヤフオクでわずか2,000円で落札できた。しかもACアダプタや拡張用バッテリが付属したものである。落札したものにはPuppy Linuxがインストールされており、前のユーザーはこれを使っていたようだ。

 ただしリカバリCDがなく、OSを純正のWindows XPにするためには別途ドライバなどを自力で揃える必要がある。ところが富士通はプリインストールの純正のドライバを一切公開しておらず、プリインストールドライバに対する差分バージョンのみを提供している。

 当時はいろいろハードウェアメーカーとの折り合いや独自開発の部分もあったと思われるし、プリインストールのドライバを公開していないのは富士通に限らずソニーや東芝なども同じ状況であるが、パナソニックのLet'snoteのように、例えカスタマイズが入ったとしてもOSをゼロからでもインストールできるようドライバを公開しているメーカーもあるので、見習って貰いたいところではある。

 そんなこともあってか、前ユーザーは軽量LinuxディストリビューションであるPuppy Linuxをインストールして使っていた。ただ筆者が試したところ、「うーん軽量Linuxという割にはちょっと動作が重いな」という印象だった。

 Crusoeである上にメモリも256MBしかないので動作には期待していなかったのだが、アプリケーションの起動やデータのローディングの処理ではなく、常時描画がワンテンポ遅れている印象だ。「あ、X Window Systemがプロトコルで会話しているな」ぐらいにはラグが分かる。とにかくモッサリしている感じだ。

BeOS後継のHaikuで蘇らせろ

 とりあえずPuppy Linuxのままでは少しストレスがあるので使いたくないし、Windows XPをインストールするのもバイオUと同じ内容になってしまうので芸がない。そこでほかの軽量Linuxディストリビューションもいくつかインストールしてみたのだが、Puppy Linuxと体感で大差がなくイマイチだった。やはりCrusoeとメモリ256MBの制限は大きい。

 どのOSがいいかな~などと選定していくうち目に着いたのが、かの「BeOS」の後継のオープンプロジェクトである「Haiku」だった。

 そもそもBeOSは元々PowerPC上で動くOSとして開発され、Mac OSの後継を狙っていたのだが、ご存知の通りMac OS XがNEXTSTEPをベースとしたものとなったため、1998年にIntel x86向けバージョンをリリース。その後バージョンを重ねたが業績が芳しくなく、2001年にPalmに知的財産を売却したのである。筆者もBeOSを知っていたものの試したことがなく、気になる存在であった。

 HaikuはそのBeOSの流れを汲むOSであり、BeOSの設計を元にオープンソースのプロジェクトで開発が進められた。2001年に発足したにもかかわらず、2009年でようやく初のリリース、そして最新のリリース「Haiku R1/Alpha 4.1」も2012年11月14日止まりであるのだが、ナイトリービルドが用意されていることから、未だ開発は進められているようだ。

 Haikuは高度なマルチスレッド/マルチタスクによる高性能処理が特徴であるとされている。その一方でシステム要件としてはPentium II 400MHz以上、メモリは最小128MB以上、HDD空き容量は700MBあれば良いとされており、本機のような今となっては非力なシステムでも十分走らせられそうだ。

 こうした“マイナー”なOSは通常、デバイスのドライバを揃えるのが大変で、ハードウェアの新旧を問わず、動作にたどり着くまで非常に苦労することが多いのだが、Haikuに関してはインボックスでかなり網羅しているらしく、LOOX S80C/Wでは内蔵のAirH"INモジュール以外、ほぼ問題なく動作する。プラグ&プレイでUSBマウスやUSBメモリもきちんと認識するので、まさに「今風のOS」に相応しい。

 インストールだが、今回はHaiku R1/Alpha 4.1ではなく、ナイトリービルドのhrev49162を使用した(執筆時点ではhrev49325が最新)。LOOX S80C/WはUSBのCD-ROMブートに対応しているのだが、筆者手持ちのUSB光学ドライブでは起動できなかったため、また“偉大なる”VMWareの力を借りてインストール。ダウンロードしたISOイメージを光学ドライブとしてマウントし、別途入手した100GBのIDE HDDをUSB変換経由でVMWareの仮想ローカルディスクとして接続した。

 インストールの手順の詳細は、日本語のドキュメントが公開されているので、詳細はそちらに譲るが、基本的に最初に言語として日本語を選んでから、インストール先設定の画面で「パーティションの設定」を選び、Intel Partition Mapを作成してから領域を確保、それからBe File Systemを選んでフォーマット、その後インストールといった手順を踏む。領域確保とフォーマットが2段階の手順なので最初は戸惑ったのだが、この辺りはMS-DOSと同じ考えを持ち込めば良い(つまりFDISKとFORMATは別)。

 なお筆者の環境ではAirH"INモジュールが有効な状態だと有線LANが接続できず、BIOSで無効にすることでインターネットに接続できた。

 余談だが、HaikuはインストールせずともCDなどから直接起動して利用できる。インストールにチャレンジする前に1回、全てのデバイスなどが問題なく動作するかどうか、試してみると良いだろう。

インストール中の画面。パーティションを切っているところ
Haikuをインストールした直後の画面

動作は全く問題ないが……

 こうしてCrusoeでなおかつHaiku搭載ノートPCとしてはおそらく世界最軽量を実現したのではないかと思われるLOOX S80C/W。確かにPuppy Linuxと比較して快適なのだが、使い道はなかなか困る。

 Haikuは標準でほぼ最小限のアプリしかインストールされておらず、この状態では日本語入力すらままならない。できることと言えばMP3やMIDIなどの音楽の再生、メールの送受信程度である。

 しかしHaikuにもWindowsストア、Playストアに相当する「Haiku Depot」を用意しており、そこからアプリを選んでインストールできる仕組みが用意されている。日本語入力は「Canna」があるし、WebブラウザはFirefox 2に相当するとされる「BeZilla」、PDF閲覧ソフト「BePDF」がある。

 とは言え、オフィスの文書や写真を編集するようなソフトや、ゲームは皆無に等しい。またWebを閲覧するにも、今どきメモリ256MBだとHDDにスワップしすぎてしまい、快適とは言いがたい。まあ、Haikuをインストールできて、これまで筆者が体験したことのない別のOSの世界を垣間見れたというだけでもよしとしよう。

マルチタスクに最適化したHaiku。スレッドの動作優先度を細かく設定できる
Haikuのアプリは「HaikuDepot」(Applications以下)を用いてインストールできる
日本語入力のCanna。ただし、インライン入力はできない

Crusoeの限界を見た

 このコラムで既に3台もCrusoe搭載機を紹介したのだが、2000年前後はとにかくTransmetaが元気だった時代だったのだから、これは避けて通れない道だ。しかし使っているといずれも性能に限界が見えてきて、600MHzや800MHzと言った高い周波数に期待して、ちょっとでも現代的な処理をさせようとするとガッカリさせられるというのが本当のところ。結果的に、Pentium MMX 200MHz~Pentium II 300MHzの2D、簡易3Dゲーム程度なら快適に動かせると言った印象だ。

 その点ビクターの「InterLink XP」は、同時期に出たミニノートとしては画期的な処理性能だった。当時CrusoeノートではなくInterLink XPを選んだ筆者は実に幸運だったと改めて認識させられる。しかしCrusoeが登場しなければ、IntelLink XPに載せられる超低電圧版のPentium IIIも登場しなかった--そして今に至るUプロセッサの登場もなかった可能性があるわけで、そういった意味ではモバイルの歴史の中では重要なプロセッサだ。

 さてLOOX S80C/W自体の評価だが、当時筆者にとって富士通と言えばNECと並ぶ「2大事務用機」というイメージがあって、製品に関しては全くのノーマーク状態だった。実は今回のLOOX S80C/Wは筆者にとって初めて“買った”富士通のPCなのだが、質実剛健でなかなかしっかりしたマシンで満足度が高い。おそらく数年後に、このコラムにもLOOX UやF-07Cなどが登場することになるだろう。

 ちなみに今回もシリコンディスク化を図らなかったのだが、「mobio NX MB12C/UD」の回と同様、microSDカード→PQI AirCard→CF変換→IDE変換で繋げていったものの、マシン上からHDDとして認識されなかった。少なくともmobio NXでは認識していたので、BIOSの作りの違いによる“相性問題”だろう。久しぶりにPCで相性問題にぶち当たったのだが、これで頭を抱えるのもクラシックPCを直す醍醐味だ。

【表】購入と復活にかかった費用(送料/税込み)
LOOX S80C/W2,000円
合計2,000円

(劉 尭)