モバイラーが憧れた名機を今風に蘇らせる

第2回

ソニー「バイオU」

〜モバイルゲーム機顔負けの“いちばん かわいい バイオ”

バイオU

 デバイスを持ち運ぶモバイラーにとって、デバイスの大きさと重さは常に付きまとう課題である。理由は単純で、これらの条件は持ち運びやすさに直結するからだ。

 今回ご紹介する「バイオU」(型番:PCG-U1)は、まさにその大きさと重さという課題を解決した超小型のクラムシェルノートPCである。しかもただ単にパーツを小さくまとめただけではなく、小ささゆえの使いにくさを改善する工夫と技術が多数盛り込まれた、意欲的なモデルである。

Libretto Lシリーズと対極にあるバイオU

 それでは、まずバイオUの仕様についてご紹介しよう。CPUにはTransmetaのCrusoe TM5800(867MHz)を採用。メモリは256MB(128MBのモジュールを交換することで最大384MB)、ビデオチップにはATI MOBILITY RADEON-M(8MB)、20GB HDD、1,024×768ドット(XGA)表示対応6.4型TFT液晶などを搭載する。

 OSにはWindows XP Home Editionを搭載。発売は2002年4月27日。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は15万円前後であった。

 当時の記事の説明によれば、バイオUの“U”は、「Ubiquitous」、「Ultimate Mobile」、「Unique」、「Useful」、「Ultra Compact」、「User Friendly」といった言葉の頭文字から来ており、「ユビキタスネットワーククライアントを目指して開発された」という。

 昨今「ユビキタス」という言葉は頻繁に聞くが、至る所に存在する=遍在するということを表す。平たく言えばバイオUは、ネットワークのクライアントとして普遍することを目指して開発されたわけだ。

 それもそのはず、バイオUの本体サイズはわずか184.5×139×30.6〜46.1mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約820g。スマートフォンがなかった時代、常時持ち運ぶフル機能を持つネットワーククライアントには適した大きさだったと言えるだろう。

 ただしこの手の小型PCは、バイオUが初というわけではない。フルWindowsが動く端末としては、1996年には東芝が「Libretto 20」を発表しているし、Windowsはプリインストールされないが、ユーザーがその気になればWindowsをインストールできてしまうPCとして日本アイ・ビー・エムの「Palm Top PC 110」があった。だがこれらはいずれも2002年当時は正統後継機がなく、そのぽっかり開いた隙間に入り込んだのが、バイオUだったと言えるだろう。

東芝のLibretto 20
Palm Top PC 110

 本コラムの第1回で取り上げたLibretto Lシリーズは、ビジネスにおける実用性を重視しため、特徴的であった本体サイズを切り捨てた。18mmのキーピッチは快適な操作性を実現してくれたが、旧Librettoにあった“趣味のPC”としての意味合いが薄れてしまった。

 一方でバイオUは、実用性の高いキーボードを切り捨てて本体サイズを突き詰め、実用性よりも趣味性に徹底した。F1〜F12のファンクションキーと1〜0の数字キーの間に、使用頻度が低いNumLockやPrintScreen、カギ括弧や円マークなどのキーを“無理やり”詰めたキー配列からも、趣味志向の設計思想が伺える。

ゲーム機のように操作できるモバイルグリップ・スタイル

 ただ、使い勝手を完全に切り捨てたわけじゃないのがこの機種の面白いところだ。バイオUは、両手で本体を左右から掴んで、ポータブルゲーム機のような操作体型「モバイルグリップ・スタイル」を提唱している。このため各種インターフェイスもこのモバイルグリップ・スタイルに合わせて最適化されている。

いつでもどこでも、両手でガッチリ掴んでしっかり使えるモバイルグリップ・スタイル

 キーボードに関しては、独自のThumbPhrase(サムフレーズ)と呼ばれる日本入力を提供。本体に用意されたThumbPhrase専用ボタンを押すと、ThumbPhraseソフトウェアが起動。1/2/3/Q/W/E/A/S/D/Z/X/Cという12個のキーを、テンキー付き携帯電話のボタンに見立てて言葉を入力できる。入力は逐次予測され、右側のジョグダイヤルで選択、押し込むと選ぶという、いわゆる“ケータイ打ち”をPCで実現した。当時としては、本体の小ささを逆手に取った画期的な方法と言えるだろう。

 入手当初、「世の中は右利きのユーザーが多いので、果たして左手でケータイ打ちができるのか」と疑問を抱いていたのだが、実際に打ってみると思いのほか高速に入力できた。タイピングに関して言えば、実用性は高い。しかしいかんせん辞書が貧弱なため、文節切り替えやなかなか出てこない予測変換の単語でイライラさせられるのが残念である。

 ポインティングデバイスに関しては、PSPのアナログパッドのように右手の親指で上下左右に倒して移動させながら、左手の親指で左右のクリックをするという方式を採用。ThumbPhraseと組み合わせることで、両手で本体をしっかりホールドしたまま操作ができるわけだ。

 バイオUはPalm Top 110やLibretto 20では実現できなかった、「モバイルグリップ・スタイル」という言葉を定着させられるだけの、ハードウェアからソフトウェアまで一貫したプラットフォームを提供したことは、大いに評価したいところである。むしろ、「ユビキタス」を実現するためには(つまり万人に受け入れられるためには)、このぐらいは工夫が必要だったのかもしれない。

バイオUのキーボード。数字の上に利用頻度が低いキーを配した異色の配列。
ThumbPhrase入力時は、1/2/3/Q/W/E/A/S/D/Z/X/Cという12個のキーを、テンキー付き携帯電話のボタンに見立てて入力を行なう
当時のソニー製品に一貫して搭載されたジョグダイヤルを備える。ボリュームや起動調節も、専用ユーティリティによって対応。ショートカットキー押下後に回すことで操作する
両手で左右を挟んで使う際、右手でポインタ移動、左手でクリック操作。そのためボタンも大きめに配置されている。その隣には、ThumbPhrase起動ボタンを備えており、すぐにThumbPhraseに移行できる
ThumbPhraseボタンを押下すると、使い方の説明が表示される
ThumbPhraseを使い入力しているところ
本体右側面。メモリースティックスロットが見える。なお、メモリースティックPROは非対応のため、256MB以上のメモリースティックが使えない(泣)
右側面には音声入出力とPCカードスロットを搭載。左右ともに丸みを帯びているためホールドしやすい
落札品の天板は年代物としては比較的綺麗であった

筐体内の空間を立体的に利用して部品を高密度実装

 バイオUの素晴らしさは何と言ってもその本体サイズという一言に尽きる。フットプリントに関して言えば、前回紹介したLibretto L2のほぼ半分である。

 小型化のためにまず、バッテリを筐体外に追いやって、本体底面に付ける形にしたことで、フットプリントを大幅に削減。搭載HDDを2.5インチから1.8インチタイプに変更することも小型化に貢献している。

 基板実装においても工夫が見られる。例えばPCカードスロットの下にメモリのチップを実装したり、液晶やキーボードのケーブルを接続するコネクタを縦にしたり、HDDの上にメモリースティック関連の基板を装着したりと、少しでもスペースを削減する工夫がみられる。Libretto L2の基板と比べると、とにかく厚み方向の空間を活用することで省スペース化を図った印象的だ(もっとも、Libretto L2はキーボードのサイズを優先したため、ここまで工夫する必要がなかったとも言える)。

小型のために、インターフェイスの多くを背面に搭載している。もっともこれはモバイルグリップスタイルを考えた場合、理に適っている
バッテリを筐体内から追い出すことでフットプリントを抑えた
搭載される1.8インチタイプのHDD。東芝製だ
内部にも小型化のためにさまざまな工夫が詰め込まれている
メモリースティックスロット基板の下に1.8インチHDDを隠している
ヒートパイプでCPUの熱を基板スペース外に逃す

 CPUには、TransmetaのCrusoe TM5800 867MHzを搭載。Crusoeの中では比較的高速なクロックで動作するモデルとは言え、現代的な処理は荷が重い。例えば、Windows XPにService Pack 3をインストールするだけで1時間、そこからさらにWindows Updateをさせようとしたところ、実に2時間近い時間を費やした。PC Watchのトップページを開こうにも1分以上掛かる。Webを利用することが前提の現代において、Crusoeの性能では全く使いものにならないと思った方が良いだろう。

 チップセットはALiの「M1535+」。Libretto L2に搭載されたM1535のリビジョンアップモデルであり、新たにUltraATA/100に対応しているのが特徴だ(M1535はUltraATA/66まで)。ただし、依然としてAGPのサポートがなく、ビデオチップとはPCI接続となる。

 そのビデオチップだが、旧ATIの「MOBILITY RADEON」(M6-M)が採用されている。こちらもLibretto L2に搭載されている「Savage IX」と同様、8MBのメモリが内蔵されており、フットプリント低減を実現している。ただRADEONというブランドを冠しているものの、ハードウェアT&Lエンジンは備えておらず、機能的にはデスクトップ向けの「RADEON VE」に近い。

 このほか、メモリはInfineonの「HYB39S256160CT-7.5」、PCMCIAコントローラにリコーの「R5C475II」、ネットワークコントローラにRealtekの「RTL8100BL」、IEEE 1394コントローラにTexas Instrumentsの「TSB43AB22A」を搭載するなど、当時のPCと相変わらず半導体メーカーのオールスターキャストといったところだ。

Crusoe TM5800 867MHz。アルミのフレームに囲まれており、ヒートシンク圧着によるダイの破損を防ぐ
メモリはInfineonの「HYB39S256160CT-7.5」
ALi製チップセット「M1535+」。UltraATA/100に対応している
MOBILITY RADEON(M6-M)。8MBのビデオメモリを内包する
ネットワークはRealtekの「RTL8100BL」
IEEE 1394コントローラであるTexas Instrumentsの「TSB43AB22A」
リコー製PCMCIAコントローラ「R6C475II」
右はTexas Instrumentsの「F741580GGB」。メモリースティックコントローラと見られる。左のSST製「39VG200A」は4MbitのMulti-Purpose Flashとなる
ルネサス製マイコン「H8S/2149」。何に使われているのかは不明だ
こちらはメモリースティックスロットの基板に搭載されるNEC製マイコン「μPD789176」。こちらも用途不明

 ちょっと変わったところとして、電源周りがほぼLinear Technology製のICで固められている点が挙げられる。例えば「LTC1708EG-PG」はDC/DC電源レギュレータ、「LT1769CGN」はCC/CVバッテリチャージャー、「LTC1628CG」はシンクロナイズステップダウンスイッチングレギュレータ(電源ノイズを軽減し、フェーズコントローラの電源要求を低減)である。おそらくこれらも基板の小型化に貢献しているのだろう。

電源回路周りの拡大。「LTC1708EG-PG」はDC/DC電源レギュレータ、「LT1769CGN」は2A CC/CVバッテリチャージャー
PCカードスロットに隠れているのだが、Linear Technologyの「LTC1628CG」はシンクロナイズステップダウンスイッチングレギュレーターである
Cypress製の100MHzクロックジェネレータ+モバイル向けパワーマネジメントIC「IMIC9716IBT」
手前に見えるのはO2Micro製マルチDIMMセレクタ「OZ998S」。奥のTexas Instruments製「bq3285」はリアルタイムクロックICである
Fujitsu Microelectornics製「MBM29F016」。16Mbitフラッシュメモリとされており、BIOSを格納していると見られる
データシートがないのだが、Pulseの「H0023」はどうやらEthernetトランスフォーマーらしい

5,000円で購入したジャンク品の問題点を洗い出す

 今回は、ヤフオクにて「起動時にNTLDR is missingが表示されて起動しない」とされるジャンク品を5,000円で落札した。ACアダプタは付属しているものの、リカバリCD-ROMなどは一切付属していない。

 外観は細かい傷などはあるものの、状態は比較的良い方だ。おそらく非常に大事に使われてきたことだろう。底面のゴム足と、液晶フレーム四隅のゴムは溶けていたが、これはどうやらこのバイオU特有の症状で、どうしようもないようだ。我慢して使うか、自作で何とかするしかない。

 背面のインターフェイスポートの状態は良好であったのだが、カバーの爪が1つ取れており、ちょっとした拍子ですぐカバーが開いてしまう。またマウスのクリックボタン付近のフレームも、爪が折れていて操作時に浮き上がるのが気になるほか、「B」のキーのパンタグラフが外れているらしく、キータッチに違和感がある。

拡張ポートカバーの爪が片方折れていた
クリックボタン付近のフレームが浮き上がってしまっていた

 加えて、起動すると電源LEDやHDDアクセスLEDに連動して本体から高周波のジリジリ音が聞こえてくるし、ファンもグリスが切れているようで、回転するとガラガラ鳴る。12年経過していても電源が投入できること自体驚きなのだが、やはり直したいところではある。

 そして実際、NTLDR is missingと表示されて起動しない。そもそも、故意にHDDのデータを削除して完全にフォーマットしてしまった可能性もあるので期待していなかったのだが、ソニーはバイオU用のオリジナルドライバやユーティリティをホームページで公開していないため、Windows XPをクリーンインストールしてしまうと、せっかくのモバイルグリップ・スタイルを活かすことはできなくなってしまう。

 いっそのことLibretto L2と同様、所持しているライセンスでWindows Millennium Editionをインストールして利用しようとも試したのだが、ドライバもユーティリティも入っていない状態だと、液晶の輝度すら変更できないことが分かった。Windows MEでの運用を早々諦め、Windows XPでどうにかすることにした。

今回は原始的な(?)方法で修復

 まずは外装から。“さまざまなテクニックを駆使して製品を直す”というのが本記事のコンセプトである。バイオUの拡張ポートカバーやクリックボタンのフレームなど、メーカーの部品保有期間が過ぎて「もう手に入らないパーツ」の補修……と言えば、そう、当然3Dプリンタの出番である。

 時代をリードするPC Watchとしては、当然その3Dプリンタを推したいところなのだが、5,000円の物の補修のために、3D CADソフトや10万円の3Dプリンタを導入するのは、将来的にいろんな使い道はあると言えどもナンセンスである。加えて、電源周りのジリジリ音は、3Dプリンタを持ってしても直せそうにない。というわけで、ヤフオクで出品されていたもう1つのバイオUをドナーとして2,000円で落札して、拡張ポートカバーおよびマザーボードを移植することにした。

ヤフオクでドナーとしてもう1台購入
カーソルキーが1つ外れていた
ポインティングデバイスのキャップがなく、操作しにくい
ドナーの拡張ポートカバーの爪は完全だった

 バイオUは本体が小さいためネジが比較的少なく、意外と分解しやすい。具体的な分解方法については、弊誌ライターの笠原一輝氏が自腹で購入したバイオUでレポート済みのため、そちらを参照されたい。拡張ポートカバーは筐体とは別部品で、マザーボードを取り外せばすぐに交換できるようになっている。一方クリックボタンのフレームは、どうやら単純にデザインパーツのようで、特に深い意味はないため、ドナーを使わずアロンアルフアで接着することにした。

 溶けたゴムに関しては、液晶上部と本体下部の接触部分に関しては、適当な厚みのゴムを適当な大きさに切り、両面テープで接着することにした。一方液晶下部の2カ所は、ネジを隠すのが主目的のようなので、こちらは100円ショップで購入した工作用粘土で埋めることにした。

 浮いたキートップは、一回完全に分解して、部品をハメ直す。なお、これだけ小型でありながらキーはしっかりとしたパンタグラフ方式。そのため部品はとても小さく、作業はしにくい。また、パンタグラフの部品はプラスチックのため、無理な力を加えると折れてしまう可能性もある。作業の際には十分注意したい。

まずはバッテリを外す
底面のネジを外す
キーボード手前2カ所の爪を外す
キーボードのフラットケーブルを外す
そのほか、見えているケーブルを全てコネクタから外す
拡張ポート両脇に隠しネジがあるので外す
液晶を開いて、上面のカバーを取り外す
キーボード手前の爪を外す
ポインティングデバイスのフレームにも爪が入っているので慎重に外す
本体を分解できた
基板上の矢印のネジ、およびヒートシンクのネジを外すと……
メインボードを完全に取り出せる
液晶側にも基板が残っている。今回分解しなかったのだが、ヤマハ製のサウンドチップはこちらに入っていると思われる

 ファンのガラガラ音を改善するために、潤滑用の固体グリスを塗ることにした。まずファンを基板から取り外して、ファンの保護カバーを外す。ファンの羽を軽く持って慎重引き上げると、分解することができる。今回は量販店などで手軽に手に入るタミヤのミニ四駆用潤滑グリス「GP.383 ミニ四駆 Fグリス(フッソ樹脂配合)」を塗布した。塗布後、ガラガラ音がするのは相変わらずだが、音質がソフトになり、静かな環境でもさほど気にならなくなった。

ファンを取り外し、カバーを開く
フィンを持って慎重に引き上げる
ファンを分解することができた
今回利用したタミヤ製のミニ四駆用グリス
軸の部分にたっぷり塗る

 さて最後にOSのインストールである。実は今回ドナーとして落札したバイオUだが、リカバリのCD-ROMと、リカバリに使える純正アクセサリのPCカード型CD-ROMドライブが付属していた。ドナー本体はOSの動作自体は全く問題ないが、キーが1個欠損しているほか、ポインティングデバイスのキャップがなく、実用面ではやや厳しい。背面カバーの爪が破損していなかったのは、正直なところラッキーなだけだった。つまり、このドナーを落札したお目当ては、このリカバリCD-ROMとCD-ROMドライブだったのだ。

 というわけで、リカバリしようと思ったのだが、とりあえず修復しようとしているバイオUのHDDを抜き出して、1.8インチHDD用外付けUSBケースに繋いでメインPCで確認したところ、まだOSが入っている状態であることが分かった。しかしCドライブのルートディレクトリにWindows XPの起動に必要なNTLDRとntdetect.comとが見当たらない。つまり「NTLDR is missing」の文字列は読んで字のごとく、NTLDRがなかったのである。そこでWindows XPのCD-ROMからNTLDRとntdetect.comをコピーしてあげたところ、あっさり起動した。

 原因は不明だが、おそらくなんらかの拍子でNTLDRが消失してしまったのだろう。ともあれ、この状態で使えるわけだし、リカバリの手間とService Packを当てる時間が大幅に短縮できたので、よしとしよう。リカバリCD-ROMを使うのは、またの機会になるだろう。

ドナーマシンに付属していたPCカード接続のCD-ROMドライブとリカバリCD-ROM
PCカードを本体底面に収納できる
PCカードに加え、イジェクトピンも収納しているという、実に憎い作り

 バイオUは両手で掴んで移動中にバリバリ使ってなんぼデバイスなので、やはり振動に弱いHDDではなく、SSDにしたいところだ。しかし今どき1.8インチのIDE SSDを買うというのはなかなかハードルが高い。ところが、入手してから「バイオUをリカバリする」と社内で言いふらしたところ、AKIBA PC Hotlineから、幸運にもかつてASUSの「Eee PC 900」で使用していたMtron製1.8インチSSD「Mobi 3000」を譲り受けることができた。今回はこれを使っていくことにした。

 しかし、今回譲り受けたMobi 3000は東芝のピンコネクタタイプではなく、ZIFタイプとなっているので、そのままでは接続できない。そこで、今回も我らが最強の味方(?)、“変換名人”の「IDE-ZIFB18B」を利用することにした。

 なお、ZIF側は問題なく入るのだが、コネクタ側は両端の出っ張りがバイオUのフレキシブルケーブルのキーと干渉してしまう。これはどちらかを切るしかないわけだが、今回はIDE-ZIFB18Bの両端をニッパで切断することにした。なお、どちらのZIFもコネクタも逆挿入できてしまうので、シルク印刷をしっかり確認してピンが逆にならないよう十分注意したい。

 ただ、このままではSSD+変換基板の厚みにより本体へ収納できなくなってしまうので、SSDのトップカバーを取り外すことで対応した。その際、基板とケースが接触してショートしないよう、なんらか絶縁体を挟むなどの工夫が必要だ。

Mtron製1.8インチSSD「Mobi 3000」。これを“殻割り”して、変換名人の「IDE-ZIFB18B」を介して接続
Mobi 3000のベンチマーク。UltraATA/100にふさわしい数値が出ている

ニンテンドーDS顔負けのDSマシンに仕上げる

 SSD搭載で大幅に強化されたように思えるバイオUだが、実のところWindows XPにおける実用性は低い。SSDがいくら高速で、メモリが384MBと十分でも、先述の通り、Webを中心とする現代的な利用法にCrusoeの性能がまったく追いつかない。特にAdobeのFlashコンテンツがあると、もうマシンが止まったのではないかと思えるほどだ。

 しかし、モバイルグリップ・スタイルと、高精細なXGA液晶を活かす使い方なら既に思いついている。そう、Libretto L2の横長画面には適さなかった2Dゲームのプレイだ。

 筆者は小学校の頃、親にスーパーファミコンやPlayStationなどのコンソールゲーム機を買ってもらえなかったが、PCを買ってもらっていた(PC-9821V12)ので、当時のコンソールゲームよりもPCゲームの方が馴染み深い。とりわけ旧コンパイルのゲーム付属雑誌「DiscStation」シリーズのゲームには思い入れがある(PC-98版もプレイしていたが、個人的に買い始めたのはWindows版のVol.12から)。バイオUならば、DiscStationのゲームを入れて、電車内でもどこでも楽しめると考えたわけだ。

 結果から言えば、この使い方が筆者にとって最高だった。液晶が数世代前のため、輝度がやや足らず、太陽光下では視認性が低下するが、屋内では問題なくプレイできる。ドットピッチが狭いこともあり、全画面表示しても画質の低下が気にならない。またWebには貧弱なCrusoeだが、DiscStationのゲームをプレイするには十分だ。

 そして何より当時PC-9821V12にPermedia 2を増設して、Pentium MMXのオーバードライブプロセッサを買ってまでしてようやく快適にプレイできるDiscStationが、手のひらでプレイできるようになったのは感慨深い。ニンテンドーDSユーザーを目の前に、「これが最新のDS(DiscStation)だけど、何か」と威張ってみたりしている。

 余談だが、コンパイルという会社が既に消滅しているため、DiscStationは販売されていない。しかしD4エンタープライズが展開しているゲーム配信サービス「アミューズメントセンター(AC)」の月額制会員サービス(月額500円)を登録すれば、「Project EGG」のページからPC-98用のDiscStationゲームの一部がダウンロードできるほか(エミュレータ付きでWindows上で実行可能)、「COMPILE STATION」からWindows用ゲームの一部が無償でダウンロードできる。PCのレトロゲームに興味があるのならば、検討してみる価値はあるだろう。

解像度が高い液晶でDiscStationのプレイにもってこい。写真はVol.16に収録された「魔導物語 魔導師の塔」(C)コンパイル
手で持ってプレイすることもできるし、机に置いてゆっくりプレイすることもできる。写真はVol.14に収録された「幻世酔虎伝」(C)コンパイル

いちばん かわいい バイオ

 バイオUを社内でいろんな編集部に持って行き見せると「ああこれあったね、いいよね、やっぱりこれだよね」と言って人がゾロゾロ集まってくる。だが意外にもヒットしたのは“懐かしい”と思う年寄り(失礼)ではなく、筆者と同様、発売当時が学生で、とても自分のお金では買えなかった30歳前後の若者だ。「僕は、今業界で一番必要とされているのは、こういうフォームファクタを生み出すイノベーションだと思うんですよ。誰も作らなかったフォームファクタって、絶対それを必要としている人がいると思うんです。みんなタブレットで何がいいんですかね」と小一時間説教。気づいたら飲み屋で11時までイノベーションの話をしていた。

 写真の子に見せたところ、「え〜何これかわいい。パソコンなの? 新しいモデルですか? こんなにちっちゃいの? へ〜キーボード打ちやすい!」と感心。後に出た某キーボード付きPDAと並べて使わせたところ、「こっちの方(バイオU)が全然いいです。パソコンならあたしこっちにします」と笑う。

 若手の広報担当者に見せると「えっ、それなんですか!? もしかして今度VAIOから出る新しいモデルですか!?」と驚きの様子を隠せない。いやいや、さすがに同じ業界と言えども、未公開の製品をそんなに簡単にあなたにお見せすることはできません。「あなたが中学生の頃……そう、12年前に、PCは既に完成の域に達成していたのですよ(キリッ)」と誇ってみせる。

 偶然イベントで出会ったVAIOの担当者にも本機を見せ、「懐かしいでしょ? そこに展示されているプロトタイプも結構ですが、僕はこういうのが欲しいんですよ。是非とも、是非ともこれの後継を……あ、VAIO type Pみたいなのもお願いしますが」と強くプッシュしてみた。ソニー傘下時代はタブレットのトレンドに則した製品開発をしていたというのだが、「VAIO株式会社になって身軽になったので、頑張ります」と張り切ってくれた。

 とにかく、バイオUを持ち歩いていると、常に注目の的になる。素晴らしいイノベーションは、時代や世代を超えても語り継がれるものだ。

 ちなみにバイオUは後に、CPUが強化された「バイオU3」、さらにIntelのCeleon 600MHz搭載のなった「バイオU101」へ進化を遂げたのだが、その後はさらなる小型化を目指して「バイオ type U」(VGN-U50)でキーボード非搭載となる。VGN-U50後継の「VGN-UX」シリーズで再度キーボードが復活したのだが、キーボードがスライド式となり、クラムシェルではなくなってしまっている。

 バイオU登場当初、「いちばん ちいさい バイオ」という謳い文句であったのだが、type Uでその座を受け渡してしまったため、シリーズ全体で見れば最小ではない。しかし、初代バイオの象徴でもあった紫のカラーリングを残し、クラムシェル型のバイオをギュッと小さくしたような本機は、間違いなく「いちばん かわいい バイオ」だ。

【表】購入と復活にかかった費用(送料/税込み)
バイオU 6,377円
バイオU(ドナー) 2,400円
変換名人 IDE-ZIFB18B 1,080円
GP.383 ミニ四駆 Fグリス 329円
合計 10,186円

(劉 尭)