石井英男のデジタル探検隊
Parrotの第3世代クアッドコプター「Bebop Drone」レビュー
~業務用機に迫る美しい映像に感動
(2015/4/2 06:00)
(2014年)昨年あたりから、ドローンという言葉をよく耳にするようになった。ドローンとは、本来、無人操縦機を意味する言葉だが、一般的には、複数のプロペラを搭載し、高度な制御で安定して飛ぶことができるロボット飛行体を指すことが多い。小型のドローンは、プロペラを4つ搭載していることが多く、クアッドコプターと呼ばれることもある。ドローンを利用すれば、これまでは不可能だった自由なアングルからの空中撮影が可能になるため、スポーツ中継などで活用されているほか、米Amazonは、ドローンを使った荷物輸送の実用化に向けて、実証テストを開始している。業務用ドローンは数十万円から数百万円以上するが、1万円未満で購入できる小型のホビー向けドローンも各社から登場している。
仏Parrotは、スマートフォンやタブレットで操縦できるホビー向けクアッドコプター「AR.Drone」シリーズで有名なメーカーである。そのParrotの最新クアッドコプターが、2015年3月12日に日本国内での発売が発表された「Bebop Drone」である。Bebop Droneは、同社のクアッドコプターとして第3世代となる製品であり、ホビー向けとは思えない性能を誇る。
Bebop Droneの国内販売開始は4月3日の予定だが、今回、いち早くBebop Droneをお借りすることができたので、早速レビューしていきたい。Bebop Droneの基本的なスペックや特徴については、発表会レポートをご覧いただくことにして、ここでは、実際の使用感を中心に紹介する。
バッテリが2本付属しており、合計約22分間の飛行が可能
Bebop Droneは、本体のみのパッケージ(税別70,900円)と本体と専用コントローラ「Skycontoller」がセットになったパッケージ(税別130,900円)が用意されているが、ここでは本体のみのパッケージを試用した。筐体色は、レッド、ブルー、イエローの3色があるが、今回試用したのはブルーモデルである。パッケージの写真も筐体色と同じ色になっているので分かりやすい。
Bebop Droneのパッケージには、Bebop Drone本体、バッテリ2本、充電器、ACプラグアダプタ4種類、予備のプロペラ4枚、マスク、外部バンパー、プロペラ着脱用工具、USB-Micro USBケーブルが含まれており、後は、スマートフォンかタブレットを用意するだけで、Bebop Droneを自由に飛ばすことが可能だ。Bebop Droneを操縦するためのアプリケーション「FreeFlight 3」は、Android用とiOS用が用意されており、無料でダウンロードできる。
バッテリはリチウムイオンポリマーで、充電は約1時間で完了する。フル充電のバッテリ1本で約11分間の飛行が可能だ。
屋内でも外部バンパーを装着すれば安全
Bebop Droneのサイズは280×320×36mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約400gであり、1万円前後の超小型ドローンに比べると大きく、重いが、片手でも気軽に持ち運べる範囲だ。室内よりも、公園などの広い屋外で飛ばすのに向いた製品だが、学校の教室くらいの広さがあれば、室内でも十分楽しめる。室内で飛ばす場合は、付属の外部バンパーを装着することで、壁などに接触してもプロペラの破損を防げる。屋外で飛ばす場合でも、障害物が多い場所では、外部バンパーを装着したほうが安心だ。
専用アプリケーション「FreeFlight 3」による操縦も直感的
Bebop Droneは、無線LANを利用して、操縦やカメラ映像の配信を行なっている。Bebop Droneの無線LAN機能はIEEE 802.11a/b/g/n/ac準拠で、2本の内蔵アンテナによるMIMOによって、最長250mの距離まで安定した通信が可能とされている。なお、屋外では5GHz帯のaとacは利用できないが、外部バンパーを使わない設定にすることで自動的に2.4GHz帯が選択される。
Bebop Droneを飛ばす手順は、次のようになる。まず、Bebop Droneにバッテリを接続し、Bebop Droneの電源を入れる。起動が完了すると短い音がなるので、スマートフォンやタブレットのWi-Fi設定画面を開いて、Bebop Droneと接続する(2回目以降は自動接続される)。無線LAN接続が完了したら、FreeFlight 3を起動し、「FREE FLIGHT」を選択する。なお、Bebop Droneのファームウェアが古い場合は、更新するようにメッセージが表示される。ファームウェアの更新もFreeFlight 3から行なえる。
操作方法は「エース」、「標準」、「ジョイパッド」の3種類から選択できる。Bebop Droneによる動画撮影は、180度の視野がある魚眼レンズの一部を切り出して、歪みをデジタル補正して記録する仕組みになっているのだが、機体を動かさずにカメラの視点を自由に移動できることも魅力だ。操作方法をエースにすると、右側のジョイパッドでカメラの視点を移動できるので、カメラの視点を自由に動かしたい場合は、エースがお勧めだ。他の2つの操作方法でも2本指でスライドすることで、視点の移動が可能である。
エースと標準では、画面をタップしたまま、スマートフォン本体を前後左右に傾けることで、前後左右への移動が可能だ。最大高度や旋回時の最大斜度は、FreeFlight 3の操縦設定画面で変更できる。最大高度は約150mまで設定可能だが、慣れるまでは最大高度を低めに設定しておいたほうがよいだろう。小学生の娘にも少し操縦させてみたが、すぐに慣れたようだ。
Bebop Droneのバッテリ残量は常にFreeFlight 3の画面に表示されており、バッテリ残量が少なくなると、警告が表示される。また、GPSを搭載しており、マップモードにすることで、Bebop Droneの現在位置を航空写真上に表示させることや、自動的に出発地点まで戻らせることも可能だ。
宙返り飛行もワンタッチで可能で、手ブレ補正機能で滑らかな映像が撮影できる
実際にBebop Droneを飛ばした様子は、以下の動画を見てほしいが、最初の動画では何度か360度の宙返り飛行を行なっている。前方や後方、側方への宙返りは、アイコンを選択して、画面をダブルタップするだけで行なえる。屋外で風が多少あっても、安定した飛行が可能であり、デジタル式手ブレ補正機能が搭載されているので、旋回時に機体が傾いても画像はあまり傾かず、滑らかで見やすい映像が撮影できる。カメラ画素数が1,400万画素と高画素であり、そこから切り出してフルHD解像度で動画を記録するため、720pやVGAクラスのカメラを搭載している低価格なホビー向けドローンで撮影した動画や写真とは、画質に雲泥の差がある。動画の画質だけなら、数十万円から数百万円以上の業務用機と比べてもそれほど遜色がないと言える。
動画モードで撮影中に、写真を撮ることも可能だが、その場合写真の解像度はフルHD相当となる。写真モードでは、動画は撮影できない代わりに、4,096×3,072ドットでの写真撮影が可能となる。なお、下の動画を見てもらえばわかるが、プロペラの回転による風切り音はかなり大きい。屋外ではあまり気にならないが、狭い屋内だとちょっとした掃除機並に聞こえる。そのため、本体にマイクは搭載されておらず、動画では音は記録されない(基本的に他のドローンも同じ)。動画撮影中に、宙返りなどを行なった場合、その瞬間のみ画像が途切れ暗転するようになっており、動画が反転して気持ち悪くなるようなことはない。
いくつかBebop Droneで撮影した動画を下に挙げておくが、約7万円で購入できるホビー向けドローンとは思えない、非常に美しい映像を撮影できることに感動した。高度も今回は最大で20m近くまでしか飛ばしてないのだが(初代ガンダムの身長程度)、そこからの周囲の映像はなかなか感動的であった。さらに高度を上げれば、大空を自由に舞う鳥になった気分を楽しめるだろう。
今回は、Skycontrollerは試用していないが、Skycontrollerを使えば、通信距離が最大2kmになり、2本のジョイスティックでの操作が可能になる。さらに、別途HMDを用意すれば、FPV(一人称視点)での操縦を楽しむこともでき、頭の向きを検出可能なジャイロセンサー付きHMDを利用すれば、ジョイスティックでBebop Droneを操縦しながら、パイロットの頭の動きに合わせて、カメラの視角を変えることもできるようになる。リゾート地などで飛ばせば、感動的な体験を得られるだろう。
約7万円という価格は、ホビーとしては決して安いとはいえないが、1万円前後の超小型ドローンとは、飛行性能や安定性、動画の画質などに大きな差がある。カメラの視点移動や宙返りなども、Bebop Droneならではの魅力だ。最近は、ミュージシャンのPVやCMなどでドローンで撮影した動画が使われることが多くなっているが、そうした動画を個人でも撮影したいのなら、Bebop Droneは最適であろう。ただし、くれぐれも、飛ばす場所に注意して、周りの迷惑にかからないようにしていただきたい。