石井英男のデジタル探検隊

「ヒューマンアカデミー キッズサイエンス ロボット教室」見学記

~ロボットクリエイター高橋智隆氏監修の教材で学べる小学生対象のロボット教室

 最近、理科実験教室やロボット教室、プログラミング教室など、主に小中学生を対象とする理系教室が増えている。小学校1年生と4年生の子どもを持つ筆者も、こうした教室には以前から興味があり、体験会に参加させたりしている。今回は、小学生向けロボット教室の中でも全国屈指の規模を誇る「ヒューマンアカデミー キッズサイエンス ロボット教室」の授業を見学する機会を得たので、その様子を紹介したい。

今回取材させていただいた、東京都品川区大崎にある学習塾「ペガサス大崎教室」。ヒューマンロボット教室以外に、速読トレーニングなども開講している

全国約600教室、5,000人を超える生徒が受講中

 今回、見学させていただいた「ヒューマンアカデミー キッズサイエンス ロボット教室」(以下ヒューマンアカデミーロボット教室)は、教育事業を運営するヒューマンアカデミー株式会社が事業展開しており、主にフランチャイズで展開している。ヒューマンアカデミーロボット教室は、2009年6月にスタートしたが年々教室数が増え、5年目となる今年は、全国約600教室で、5,000人を超える生徒が受講するまでに成長している。

 ヒューマンアカデミーロボット教室の教材は、「ロビ」や「キロボ」などで有名なロボットクリエイター高橋智隆氏が監修しており、小学校低学年からロボットの製作を通じて、理数系の基礎力を学べるように作られている。ロボットは、レゴに似たオリジナルブロックを組み合わせて製作するが、単にマニュアル通りに作るだけでなく、自分で試行錯誤しながらカスタマイズすることで、観察力や集中力を身に付けることができ、空間認識能力も養われる。

 カリキュラムは、ベーシックコース、ミドルコース、アドバンスコースの3つに分かれており、ベーシックコースとミドルコースは、それぞれ1年半の期間で毎月1体、全18体のロボットを製作する。アドバンスコースは、光センサーや音センサーが加わり、より高度な動きをするロボットを製作するコースで、1年で6体のロボットを製作する。基本的に授業は月2回、隔週で行なわれ、ベーシックコースとミドルコースでは、1回目の授業でマニュアルを見ながらロボットを組み立て、2回目の授業で課題に応じて自分でカスタマイズを行なうことになる。

小学校低学年でも集中してロボット製作に取り組む

 今回は、東京都品川区大崎の学習塾「ペガサス大崎教室」で、ヒューマンアカデミーロボット教室の様子を取材させていただいた。ペガサス大崎教室のように、以前から学習塾や英語教室などを開いていた教室が、ヒューマンアカデミーロボット教室も併せて開講する例が多いとのことだ。塾長の眞庭由香氏は、もともとロボットが好きとか、ロボットに詳しかったわけではないが、こうしたロボット教室をヒューマンアカデミーが展開していることを知り、試しに始めてみたところ、生徒達の関心が非常に高かったので、継続して開講しているとのことだ。

 見学時に受講していた生徒は、小学校1年生から5年生までの合計8名で、小1~小3の6名はベーシックコース、小4と小5の1名ずつがミドルコースに取り組んでいた。1回の授業は90分間で、まずは各自が持ってきたオリジナルブロック教材からロボットの製作に必要なパーツを選んで、机に並べ、マニュアルを見ながらロボットを製作していく。今回のベーシックコースで製作するロボットはからくり人形の「茶運び人形」をモデルにした「モッテクテク」、ミドルコースで製作するロボットは壁に沿って走る「ウォールフォロワー」である。

 先生は眞庭氏と小林氏の2名体制で、きめ細かい指導を行なっていた。最初に先生がロボット製作のポイントを解説し、その後は生徒が自分たちのペースでマニュアルを見ながらロボットを製作していく。ギヤなどもバラバラになっており、ギヤボックスも自分で組み立てる必要があるのだが、早い子は1時間もかからずロボットを完成させ、早速動作テストを行なっていた。

受講中の生徒の様子。左の女性が塾長の眞庭氏、右の男性が小林氏。一番後ろに座っている小4と小5の男の子はミドルコースを受講中。前に座っている6名は小1~小3で、ベーシックコースを受講中である
教材一式は、専用バッグに入れて持ち運べるようになっている
まず、マニュアルを見ながら、今回ベーシックコースで製作するロボット「モッテクテク」に必要なパーツをバッグから取り出して並べる
こちらは、ミドルコースを受講している男の子の様子。今回製作するロボットは「ウォールフォロワー」である
生徒8名に対し、先生は2名体制であり、きめ細かい指導が行なわれている
生徒達は小学校低学年が中心だが、皆真剣にロボット製作に取り組んでいた

試行錯誤しながら課題をクリアするためのロボットに改良

 今回は、大きめの缶コーヒーを製作したモッテクテクで先生のところまで届けるというのがベーシックコースの課題として設定されていた(こうした課題については、それぞれの教室が独自に設定をしている)。モッテクテクは、腕の部分に荷物を載せるとスイッチがオンになって動きだし、荷物を取り上げると停止するというロボットだが、二輪のロボットなので、前後のバランスが悪いと倒れてしまう。そのため、荷物の重量に合わせて、ロボット自体もカスタマイズしてやらないと、うまく缶コーヒーを届けることができない。ある男の子が製作したモッテクテクは、そのままでは、缶コーヒーを載せると前に倒れてしまったが、余ったパーツをロボットの後ろに付けることで、ロボットの重心を後方に下げ、缶コーヒーを載せても倒れないように改良していた。

 このように、試行錯誤しながら課題に取り組むことで、てこの原理や重さの釣り合い、摩擦力といった理科的な知識を自然に学べるように、カリキュラムが作成されている。マニュアルは、カラー写真が多用されており、説明も丁寧で分かりやすい。漢字にはふりがなが振られているので、小学校低学年でも大丈夫だ。また、ロボットの仕組みを理解しているか確認するための問題も用意されている。

ロボットが完成したら、動作テストを行なう。真っ先に完成させたのは小1の女の子だ
ロボットが完成してもそれで終わりではない。自分のアイデアでカスタマイズを行なう。先ほどの女の子は、腕にパーツを追加して、荷物が落ちにくいように改良した
マニュアルはカラー写真が多用されており、説明も丁寧だ。ロボットの仕組みを理解しているか確認するための問題も用意されている
こちらはマニュアル通りに製作したモッテクテクの基本形。これをベースにカスタマイズしていく
男の子が組み立てたモッテクテク。缶コーヒーを載せたら前に倒れてしまった
先ほどの男の子がモッテクテクを改良。後ろにパーツを追加し、缶コーヒーを載せても前に倒れないようにした。見事に缶コーヒーを運ぶことに成功

 今回は、6名の生徒がモッテクテクを製作したが、それぞれのカスタマイズによって個性が出ており、1つとして同じロボットはなかった。生徒は低学年が中心であったが、真剣にロボット製作に取り組んでおり、しかも楽しそうだったことが印象に残った。生徒たちは、ヒューマンアカデミーロボット教室を勉強というよりは、遊びの延長として捉えているのであろう。生徒に好きなことは何か訊いてみたら、「工作をすること」や「絵を描くこと」という回答が多かった。

 無料で体験授業を受けることもできるので、ヒューマンアカデミーロボット教室に子どもを通わせてみたいと思った方は、近くに教室がないか調べてみてはいかがだろうか。

 また、アドバンスコースを卒業した生徒のために、2013年9月より、小中学生を対象としたロボティクスプロフェッサーコースが開講されている。ロボティクスプロフェッサーコースのカリキュラムは、fuRo(千葉工業大学未来ロボット技術研究センター)の所長である古田貴之氏が総監修および総製作を行なっており、将来ロボット博士を目指したいという要望に応えられる本格的なコースとなっている。ロボティクスプロフェッサーコースについては、以前発表会の様子をレポートしたので、そちらをご覧いただきたい。

今回、生徒達が製作したモッテクテク。カスタマイズによってそれぞれ個性が出ており、1つとして同じロボットはない

(石井 英男)