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Parrotの第3世代クアッドコプター「Bebop Drone」発表会レポート

~1,400万画素180度視野のカメラ搭載で本格的な空撮が可能

Bebop DroneとSkycontrollerは、レッド、ブルー、イエローの3色が用意されている

 2015年3月12日、仏Parrotは、フルHDカメラ搭載クアッドコプター「Bebop Drone」の国内発売に関する記者発表会を開催した。Parrotは、スマートフォンで操縦できるクアッドコプター「AR.Drone」シリーズや高音質ヘッドフォン「Zik」などの開発・販売を行なっていることで有名であり、2014年7月には、低価格なミニドローンシリーズである「Rolling Spider」と「Jumping Sumo」を発表し、注目を集めた。今回発表されたBebop Droneは、同社のクアッドコプターとして第3世代に相当する製品であり、米国ではすでに販売が開始されているが、日本での認可も取れたため、正式販売が開始されることになったのだ。

 Bebop Droneの基本的なスペックや特徴については、既にニュースが掲載されているので、そちらをご覧いただくことにして、ここでは発表会の様子や筆者が実際に操縦した感想などを中心にレポートしたい。

魚眼レンズの歪みを自動補正して美しい映像を撮影できる

Bepop Droneについてのプレゼンテーションを行なった、Parrot社のJPAC地域担当バイスプレジデント兼マネージング・ディレクターのクリス・ロバーツ氏

 発表会は、アーツ千代田3331の体育館にて行なわれた。アーツ千代田3331は、もともと中学校として使われていた建物を利用しており、2Fに体育館がある。体育館としてはそれほど大きくはないが、天井が高く、クアッドコプターの実演を行なうには最適であろう。

 発表会では、まず、ParrotのJPAC地域担当バイスプレジデント兼マネージング・ディレクターのクリス・ロバーツ氏がBebop Droneについてのプレゼンを行ない、その後、質疑応答と体験操縦の時間が設けられた。クリス氏は、Bebop Droneについて、緊急停止機構や自動帰還機能を備えるなど、安全性には特に注意したと語った。

 Bebop Droneの最大の魅力は、Bebop Drone専用に開発された1,400万画素の魚眼レンズ付きカメラを搭載していることにある。これまでのクアッドコプターは、カメラの視野が狭く、臨場感に欠けることがあったが、Bebop Droneでは180度の視野をカバーしており、アプリによって、その中での視角を自由に制御することができる。

 魚眼レンズで撮影した映像は周囲が歪むが、歪みをリアルタイムで自動補正することが可能であり、操縦しているスマートフォンやタブレットの画面には、歪みのない美しい映像がライブストリーミング配信される。Bebop Droneの飛行は安定しているが、それでも屋外では乱気流などによって揺れることがある。しかし、3軸のデジタルブレ補正機能が搭載されており、そうした揺れの影響を受けずに映像を撮影することが可能だ。Bebop Droneには8GBのフラッシュメモリが搭載されており、カメラで撮影した動画や静止画が保存される。さらに、GPSとGLONASSに対応した全地球衛星測位システムを搭載しており、必要に応じて、「Return Home」ボタンを押せば、離陸時の場所に自動的に戻ってくる。

 操縦には、専用アプリ「FreeFlight 3.0」を利用する。FreeFlight 3.0は、iOS版とAndroid版がすでに無料で提供されており、Windows Phone向けも近日公開予定である。前後左右への二次元的な動きは、スマートフォンやタブレットの本体を傾けることで行なう。左手の親指でバーチャルジョイスティックを操作して高度や旋回のコントロールが可能で、右手の親指でカメラの視角をコントロールできる。さらに宙返りなどのアクロバティック飛行も、ボタンをタッチするだけで可能だ。また、コースなどのフライトデータは、「Drone Academy」と名付けられたクラウドに保存することもできる。

今回発表された第3世代クアッドコプター「Bebop Drone」
安全性を重視した超軽量設計が特徴で、屋内用ハル(バンパー)非装着時の重量はわずか400gしかない
プロペラは3枚羽根で、接触時の緊急停止機能付きである。また、緊急着陸機能やGPSを利用した自動帰還機能も備えている
無線LANを利用して操縦や映像の配信を行なう。IEEE 802.11n/ac準拠で、2.4GHz帯と5GHz帯に対応。MIMOもサポートしている
3軸方向(ピッチ、ロール、ヨー)でリアルタイムに、撮影映像の手ブレ補正(デジタル方式)が可能
1,400万画素の魚眼レンズカメラを搭載しており、180度の視界を実現。見ている視野のコントロールも可能
Bebop Droneは、スマートフォンやタブレットから専用アプリ「FreeFlight 3.0」を利用して操縦する。FreeFlight 3.0は、iOS版とAndroid版がすでに無料で提供されており、Windows Phone向けも近日公開予定である
FleeFlight 3.0の画面。前後左右の動きは、スマートフォンやタブレットの本体を傾けることで行なう。左手の親指でバーチャルジョイスティックを操作して、高度や旋回のコントロールが可能で、右手の親指でカメラの視角をコントロールできる
フライトデータを「Drone Academy」と名付けられたクラウドに保存することもできる

専用コントローラ「Skycontroller」で最大2kmもの遠距離コントロールが可能に

 Bebop Droneでは、新たに専用コントローラ「Skycontroller」が用意されたことも魅力だ。Skycontollerは、スマートフォンやタブレット用の専用ドックであり、4本のMIMOアンテナが搭載されており、通信距離を最大2kmまで延長できる(Bebop Droneのみでの通信距離は最大250m)。Skycontrollerでは、左右に用意されたジョイスティックで操縦が行なえるので、より精密な操縦がしやすくなる。

 さらに、Skycontoller自体にもAndroid OS(バージョン4.3)と専用アプリ「FreeFlight 3.0」が搭載されており、タブレットやスマートフォンがなくても、目視でBebop Droneを操縦できるほか、HDMI出力とUSBポートを備えているため、別途HMDを用意すれば、FPV(一人称視点)での操縦を楽しむことが可能だ。向いている方向の検知が可能なジャイロセンサ付きHMDを利用すれば、ジョイスティックでBebop Droneを操縦しながら、パイロットの頭の動きに合わせて、カメラの視角を変えることもできるようになる。HMDの画面には、Bebop Droneのカメラ映像に加えて、姿勢計やバッテリレベル、速度、高度、距離などのテレメトリ情報が表示される。

専用コントローラの「Skycontroller」を利用することで、さらに長距離までのフライトが可能になる
Skycontrollerは、スマートフォンやタブレット用の専用ドックであり、4本のMIMOアンテナで通信距離を最大2kmまで延長できる。さらに左右のジョイスティックで操縦が可能だ
Skycontoller自体にもAndroid OS(バージョン4.3)と専用アプリ「FreeFlight 3.0」が搭載されている。HDMI出力とUSBポートを備えているため、HMDを接続して、FPV(一人称視点)での映像を見ながらの操縦も可能だ
Bebop Droneは2015年4月発売開始で、Bebop Drone本体のみのパッケージ(税別70,900円)とBebop Drone本体とSkycontollerがセットになったパッケージ(税別130,900円)が用意される
Skycontollerを持つクリス氏。Skycontrollerに装着されているタブレットはパッケージには付属していないので、別途用意する必要がある
Bebop DroneとSkycontrollerは、レッド、ブルー、イエローの3色が用意されている
Bebop Droneの左右に装着されているのが、屋内用ハルで、壁などにぶつかったときにプロペラが破損することを防いでいる
Bebop Droneの底面には対地速度計測用のカメラ(中央左)と高度制御用の超音波センサ(中央右)が用意されている
バッテリはリチウムイオンポリマー電池採用で、11.1V/1,200mAhという仕様である。バッテリ1本あたりの飛行時間は約11分だが、BeBop Droneのパッケージにはバッテリが2本付属する
バッテリは工具などを使わずに簡単に交換できるようになっている

屋内用ハルにより壁などへの衝突から機体を守る

 発表会終了後、Bebop Droneの操縦体験会が開催された。Bebop Droneは、飛行が安定しており、直感的な操縦が可能なため、初めてクアッドコプターを操縦するという人でも、すぐに慣れていたようだ。筆者も少し操縦してみたが、以前操縦したことがある同社のRolling Spiderと操縦感覚はよく似ており、飛行の安定性はRolling Spider以上だと感じた。

 なお、屋内でBebop Droneを飛ばす際は、付属の屋内用ハル(バンパー)を装着することが推奨されている。屋内用ハルは、簡単に着脱できる構造になっており、壁などへの衝突から機体を守るためのものだ。操縦体験会でも、何度か操縦ミスで壁に機体が衝突して墜落するシーンが見られたが、プロペラが破損するようなことはなく、その後も問題なく飛行していた。

 Skycontrollerを利用した、FPVでの操縦にもチャレンジしてみたが、こちらは慣れないと機体がどこを飛んでいるのがわからず、難しいと感じた。ただ、サブスティックで視点を変更して、上空から操縦している自分の姿を見つけるのはとても面白い経験であった。

 最後に、Parrotのスタッフがとっておきの芸を見せてくれた。これは、AR.Droneの上にポップコーンを載せてフライトさせ、上空で宙返りをさせてポップコーンを飛ばして、口でキャッチするというものだ。筆者が見ただけでも、2回成功させており、拍手を浴びていた。もちろん、かなり練習したのだと思われるが、こうした芸ができることも、同社のクアッドコプターの動きの精度と安定性が高いことの表れであろう。

 Bebop Droneは、12,800円で販売されているRolling Spiderとは違って、7万円を超えるため、オモチャとして気軽に購入するにはハードルが高いが、上空から撮影された映像のクオリティは、数十万円を超える業務用クアッドコプターに迫るものがある。例えば、ParrotがYouTubeで公開しているプロモーションムービーの空撮映像は、実際にBebop Droneで撮影されたものだという。少し前までは、一般の人には難しかった空撮を、Bebop Droneさえあれば可能になるというのは非常にワクワクさせられる。もちろん、こうしたクアッドコプターは、使い方によっては人に危害を与える可能性もあるので、人に迷惑をかけない広い場所で細心の注意を払って飛ばす必要がある。今後、この種の飛行物体が増えるにつれ、より一層のモラルが求められるようになるだろう。

3331の2Fの体育館内部でBebop Droneを飛ばしている様子。同時に3機のBebop Droneを飛ばしていたが、問題なくコントロールできていた
発表会では、iPad miniを使ってBebop Droneの操縦体験が可能であった
【動画】体験操縦の様子。飛行は非常に安定しており、初心者でも自由に飛ばすことができた
【動画】宙返りなどのアクロバティック飛行も可能
【動画】同時に3機のBebop Droneが飛んでいる様子
こちらはSkycontroller。アンテナが強化され、最大2kmまでの距離を飛ばすことが可能になる
SkycontrollerにFPV用のHMDを接続したところ。HMDを接続すれば、タブレットやスマートフォンを使わずに操縦できる
FPV体験中の様子。飛行機からの視点で操縦するのはなかなか難しいが、自分が鳥になった気分を楽しめる
【動画】スタッフが、AR.Droneの上にポップコーンを載せ、AR.Droneを宙返りさせて飛ばし、口でキャッチする見事な芸を見せてくれた

(石井 英男)