Hothotレビュー

世界最薄/最軽量の革新的2in1「YOGA BOOK」

~デジタイザペン付属で2,048段階の筆圧検知に対応

YOGA BOOK with Windows

 レノボ・ジャパンから登場した「YOGA BOOK With Windows」は、通称YOGAスタイルとも呼ばれる360度回転ヒンジを備えた2in1 PCである。YOGA BOOKには、OSにAndroidを搭載したモデルも用意されているが、ここでは、Windows 10 Homeを搭載したWith Windowsモデル(以下、YOGA BOOK Windows)を使用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。

 なお、YOGA BOOK Windowsには(Android版も)、LTE対応モデルとLTE非対応モデルの2モデルが用意されているが、ここではLTE非対応モデルを試用した。

閉じた状態でも厚さ9.6mmの世界最薄筐体を実現

 YOGA BOOK Windowsの筐体色は、ThinkPadの伝統を汲むカーボンブラックであり、上面、底面ともフラットで非常にシンプルかつ洗練されたデザインだ。まず、目にして驚くのがその薄さだ。YOGA BOOKでは、通常のクラムシェルノートPCでキーボードにあたる部分をクリエイトパッドと呼んでいるのだが、そのクリエイトパッド側の厚さは約5.55mm、ディスプレイ側の厚さは約4.05mmで、閉じた状態でも厚さは9.6mmしかない。また、本体重量もわずか約690gと非常に軽く、10.1型ディスプレイ搭載の2in1 PCとして世界最薄、最軽量を誇る。

 ディスプレイ部とクリエイトパッド部を繋ぐヒンジには、同社のYOGA 3 Proなどにも使われていた独自のウォッチバンドヒンジが採用されている。このウォッチバンドヒンジは、見た目が美しいだけでなく、360度どの角度でも自由に固定でき、動きも滑らかだ。

YOGA BOOKの上面。フラットでシンプルなデザインだ
YOGA BOOKの底面
YOGA 3 Proにも使われていたウォッチバンドヒンジが採用されている
試作機の重量は、実測で681gであった
ウォッチバンドヒンジは360度開くため、このように180度開いて、水平にして使うこともできる

触れることで文字が浮き出してくるHaloキーボードを搭載

 YOGA BOOKの最大の特徴が、キーボードにも手書き入力用パッドにもなるクリエイトパッドの装備だ。クリエイトパッドは完全にフラットで普段は黒い板のように見えるが、触れることで、キートップの枠や文字が光って浮き出して表示される。このキーボードは、Haloキーボードと呼ばれており、表示されるキートップの位置自体は固定だが、タイピングのくせを学習し、キー検知エリアをリアルタイムに調整する機能を備えている。

 Haloキーボードは、画面に表示される仮想キーボードと同じく、タッチパネルを採用しているため、触れるだけで入力され、キーを押し込むことはできない。その代わり、キーにタッチすると、キーボード全体が震える触感フィードバック機能を備えているため、キーを入力したかどうかが分かりやすく、一般的な仮想キーボードに比べると入力効率は高い。もちろん、物理的なスイッチを備えた物理キーボードとまったく同じ感覚で入力できるわけではないのだが、慣れてくればかなり高速な入力が可能になるだろう。

キーボードにも手書き入力用パッドにもなるクリエイトパッド。表面は完全にフラットだ
キーボードはHaloキーボードと呼ばれており、クリエイトパッドに触れることで、キートップの枠や文字などが光って浮き出す。主要キーのキーピッチは約18.1mmだが、右側の「け」や「む」などのキーピッチは約12.5mmと狭くなっている
Haloキーボードで入力を行なっているところ。キーにタッチすると、キーボードが震える触感フィードバック機能を搭載
クリエイトパッドの右上のペンボタンに触れることで、ペン入力モードとHaloキーボードの切り替えが可能

CPUとしてAtomを搭載、液晶は1,920×1,200ドットのIPSパネル

 基本性能を見ていこう。CPUとして、Atom x5-Z8550を搭載。基本動作クロックは1.44GHzだが、Burst Technologyにより最大2.4GHzまでクロックが向上する。メモリは4GBで増設はできない。また、ストレージとしては、64GBのフラッシュメモリが搭載されている。PCとしての基本性能は、低価格Windowsタブレットよりは上だが、Core m搭載の2in1 PCよりは低いといったところだ。

 液晶ディスプレイは10.1型で、解像度は1,920×1,200ドットのWUXGAである。フルHD液晶よりも縦が120ドット分広く、IPSパネルを採用しているため、視野角が広い。発色やコントラストも優秀であり、表示品位も満足できる。もちろん、タッチパネル搭載で、10点マルチタッチに対応する。

 また、液晶上部には、前面カメラとして200万画素カメラが搭載されており、クリエイトパッドの右上には、背面カメラとして800万画素カメラが搭載されている。

液晶は10.1型で、解像度は1,920×1,200ドットのWUXGAである。IPS液晶を採用しているので、斜めから見ても視認性が高い
液晶上部には、前面カメラとして200万画素カメラが搭載されている
背面カメラは800万画素で、クリエイトパッドの右上にある

専用メモパッド「BOOK Pad」とメモ用紙に書きながら手書き入力ができるリアルペンが付属

 専用メモパッド「BOOK Pad」とリアルペンが付属し、手書き入力が可能なこともYOGA BOOKの売りだ。手書き入力に対応した2in1 PCはほかにもあるが、YOGA BOOKのリアルペンは、2,048段階の筆圧検知に対応するほか、ペン先をボールペンに換えることが可能である。BOOK Padと組み合わせることで、メモ用紙にボールペンでメモを取るのと同時に、その文字やイラストなどをPC上に取り込むことができる。

 リアルペンを使うモードはクリエイトモードと呼ばれており、その名の通り、メモを書きながらアイデアを練るクリエイターや講義メモを取る学生などにも最適だ。クリエイトパッドの右上にあるペンのアイコンをタッチすることで、Haloキーボードとペン入力モードを切り替えることが可能だ。ペン入力モードに切り替えると、自動的にOneNoteなどのペン入力対応アプリが立ち上がるようになっている。リアルペンは、ワコム社の最新技術「feel IT technologies」が採用されており、クリエイトパッドから10mm程度浮かせた位置でも反応する。

 下の動画では、液晶を上にして横画面で使っているが、90度回転させて液晶を左にして縦画面で使うこともできる。ペン先の交換は、ペンのキャップの穴を利用して行なう。リアルペンのボールペン芯はオプションとして用意されているので、インクが切れても大丈夫だ。もちろん、BOOK Padの中身の交換用メモパッドもオプションとして用意されている。電磁誘導方式のスタイラスでは、ペンにも電池が必要なものが多いが、リアルペンは電池が不要なことも嬉しい。

 ペン先を標準ペン先にした場合はBOOK Padを置かずに、直接クリエイトパッドの上にペンを走らせて書くことができる。BOOK Pad+ボールペン芯での手書き入力は、普通のメモ用紙にボールペンでメモを取るのとまったく同じ感覚なので、従来のペン対応のタブレットや2in1 PCでの書き味に違和感がある人でも、YOGA BOOKなら快適にペンを利用できるだろう。BOOK Padを使わずに直接クリエイトパッドにペンを走らせる場合でも、ペン先の滑りがよく、精度や反応についても満足できた。

 また、リアルペンはディスプレイ側の操作はできないが、ディスプレイは10点マルチタッチ対応であり、導電性のある鉛筆などをペンとして使えるAnyPenにも対応している(こちらは筆圧検知には非対応)。

付属の専用メモパッド「BOOK Pad」
BOOK Padの表紙を開くと、黄色いメモパッドになっている
中身のメモパッドを留める蓋は磁力で固定されるようになっており、簡単に交換できる
BOOK PadをYOGA BOOK本体に載せたところ。BOOK Padは磁力でYOGA BOOKに固定されるので、滑り落ちるようなことはない
リアルペンと呼ばれるペンが付属する
リアルペンの交換用ボールペン芯
リアルペンのキャップを外したところ
リアルペンの標準ペン先。このままクリエイトパッドに手書き入力が可能
上が標準ペン先で、下がボールペン芯
キャップの上面に穴が空いており、ペン先の交換に利用する
ペン先をキャップの上面の穴に差し込んで、キャップを斜めにして引っかけて引き抜く
ペン先を外しているところ
ボールペン芯に換えたところ
クリエイトモードで、付属のBOOK Padに手書き入力をしているところ
ペン先を標準に戻せば、Book Padを使わずに直接クリエイトパッドの上にペンを走らせて手書き入力が可能

ヒンジを開く角度によって4つのモードで利用できる

 YOGA BOOK Windowsは、ほかのYOGAシリーズと同じく、4つのモードで利用できる。モードの名称は、従来のYOGA 3などとは多少異なっており、クラムシェルノートPCのように開いて使うモードが「タイプモード」、液晶を300度以上開いて、ヒンジを上にして置くモードが「ウォッチモード」、液晶を360度開いて反対側まで折り返して使う「ブラウザモード」、液晶を180度開いてリアルペンで手書き入力を行なう「クリエイトモード」の4モードとなる。

液晶を300度以上開いてヒンジを上にして置くと、動画の視聴などに適した「ウォッチモード」になる
液晶を360度開いて反対側まで折り返すと、タブレットとして使える「ブラウザモード」になる
通常のノートPCのように使うタイプモードから、ブラウザモードに変形させているところ

インターフェイスは必要最小限

 筐体が薄いこともあり、インターフェイスは必要最小限のものが搭載されている。Micro USBポートとMicro HDMI出力を1つずつ搭載するほか、MicroSDカードスロットとマイク/ヘッドフォン端子が用意されている。ただし、microSDカードスロットは、SIMカードスロットと同じトレイを利用するようになっており、ピンを使わないとカードの交換ができないため、頻繁に着脱するには向かない。Micro USBポートは電源端子も兼ねており、付属のACアダプタを接続して充電を行なえる。

 ワイヤレス機能としては、IEEE 802.11ac/a/b/g/n対応無線LAN機能とBluetooth 4.0をサポートする。LTE対応モデルでは、FDD LTE Band 1/3/5/8/9/18/19とTDD LTE Band 38に対応しており、最大下り150Mbps、上り50MbpsでのWWAN通信が可能である。また、センサー類は豊富に搭載しており、光センサー、加速度センサー、近接センサーのほか、GPSとGLONASSにも対応している。

右側面には、電源ボタンと音量ボタン、マイク/ヘッドフォン端子が用意されている
右側面のボタンと端子のアップ
左側面には、Micro USBポートとMicro HDMIポートが用意されている
左側面の端子部分のアップ

実測で約12時間のバッテリ駆動時間を実現

 ACアダプタもコンパクトで軽く、携帯性は優秀だ。公称バッテリ駆動時間は約13時間とされているが、実際にバッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとに無線LAN経由でのWebアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ(電源プランは「バランス」、液晶輝度は「中」)、11時間55分という結果になった。公称には多少及ばないが、無線LANを常時有効にした状態で、約12時間の駆動時間を実現していることは高く評価できる。1日持ち歩いて使う人でも、安心して利用できるだろう。

ACアダプタもコンパクトで軽い
ACアダプタの出力はUSBポートになっている
USB-MicroUSBケーブル経由で給電を行なう

ベンチマーク結果はそこそこだが、使用感は悪くない

 参考のためにベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークソフトは、「PCMark 8」、「ドラゴンクエストX ベンチマークソフト Ver.1.4K」、「ファイナルファンタジー XIV 蒼天のイシュガルドベンチマーク」、「CrystalDiskMark 3.0.3b」、「CrystalDiskMark 5.1.2」である。比較用として、NEC「LAVIE Tab W TW708/T1S」、日本HP「HP EliteBook Folio G1」、レノボ・ジャパン「ThinkPad X1 Yoga」の値も掲載した。

 結果は下の表に示した通りで、さすがにCore m5やCore i7を搭載した製品に比べると、ベンチマークスコアは半分から4分の1程度と低いが、Atom Z3735Fを搭載したLAVIE Tab Wに比べると1割から8割程度高くなっている。実際にYOGA BOOK Windowsを使って、Mobile Officeでの文書作成などを行なってみたが、ベンチマークスコアほどの性能差は感じず、画像のレタッチや動画編集といったCPU負荷が高い作業でなければ、そうストレスを感じることはなかった。

【表】ベンチマーク
YOGA BOOKLAVIE Tab W TW708/T1SHP EliteBook Folio G1ThinkPad X1 Yoga
CPUAtom x5-Z8550(1.44GHz)Atom Z3735F(1.33GHz)Core m5-6Y54(1.1GHz)Core i7-6500U(2.5GHz)
GPUIntel HD GraphicsIntel HD GraphicsIntel HD Grapics 515Intel HD Graphics 520
PCMark 8
Home conventional1,1331,0182,1062,590
Home accelerated1,5881,0243,1673,167
Creative conventional1,5678342,3412,694
Creative accelerated1,6739103,6604,036
Work conventional1,5481,3082,8532,794
Work accelerated1,2641,0414,0743,995
ドラゴンクエストX ベンチマークソフト Ver.1.4K
1,280×720ドット 最高品質1,834未計測4,6227,048
1,280×720ドット 標準品質2,195未計測5,6328,339
1,280×720ドット 低品質2,066未計測6,6089,644
1,920×1,080ドット 最高品質803未計測2,7353,822
1,920×1,080ドット 標準品質1,231未計測3,4924,950
1,920×1,080ドット 低品質1,100未計測3,9985,979
ファイナルファンタジーIXV 蒼天のイシュガルドベンチマーク
1,280×720ドット 最高品質470未計測1,1141,812
1,280×720ドット 最高品質(DirectX 9相当)534未計測1,4572,326
1,280×720ドット 高品質(デスクトップPC)454未計測1,2531,976
1,280×720ドット 高品質(ノートPC)840未計測1,5412,416
1,280×720ドット 標準品質(デスクトップPC)1,193未計測2,1783,449
1,280×720ドット 標準品質(ノートPC)1,096未計測2,3613,462
CrystalDiskMark 3.0.3b
シーケンシャルリード120.5MB/s123.6MB/s479.3MB/s1,848MB/s
シーケンシャルライト33.98MB/s35.83MB/s385.0MB/s1,535MB/s
512Kランダムリード93.25MB/s106.8MB/s248.8MB/s1,350MB/s
512Kランダムライト26.77MB/s20.79MB/s337.7MB/s1,517MB/s
4Kランダムリード13.15MB/s14.34MB/s31.59MB/s50.39MB/s
4Kランダムライト12.25MB/s5.478MB/s78.38MB/s133.1MB/s
4K QD32ランダムリード33.30MB/s30.94MB/s332.3MB/s490.6MB/s
4K QD32ランダムライト13.82MB/s5.538MB/s184.6MB/s400.6MB/s
CrystalDiskMark 5.1.2
シーケンシャルリードQ32T1131.1MB/s未計測515.1MB/s2,519MB/s
シーケンシャルライトQ32T141.92MB/s未計測455.7MB/s1,542MB/s
4KランダムリードQ32T138.99MB/s未計測264.7MB/s500.3MB/s
4KランダムライトQ32T116.98MB/s未計測220.9MB/s248.1MB/s
シーケンシャルリード140.5MB/s未計測481.9MB/s1,598MB/s
シーケンシャルライト34.60MB/s未計測397.0MB/s1,546MB/s
4Kランダムリード15.00MB/s未計測32.92MB/s52.80MB/s
4Kランダムライト11.66MB/s未計測92.42MB/s144.6MB/s

手書き機能重視の軽いセカンドマシンを欲しいという人に最適

 YOGA BOOKは、キーボードと手書きパッドの2通りに使えるクリエイトパッドを備えた2in1 PCであり、従来の物理キーボードを備えた2in1 PCとタブレットの中間のような製品だ。キーボード入力の効率は、やはり物理キーボードの方が上だが、慣れればHaloキーボードでもそこそこの速度で入力できるようになるだろう。YOGA BOOKの最大の魅力は、ボールペンにもなるリアルペンと、導電性のあるペンならなんでも操作できるAnyPenへの対応である。特に、BOOK Padとボールペン芯との組み合わせは、紙のメモにボールペンで書くのとまったく同じ感覚でメモを取れるので非常に快適だ。

 価格も今回試用したLTE非対応モデルで52,800円、LTE対応モデルで59,800円と、機能を考えればリーズナブルである。Atom搭載ということもあり、メインマシンとして使うには非力だろうが、重量も軽く、バッテリ駆動時間も長いので、手描き機能重視の軽いセカンドマシンを探している人には特にお勧めしたい製品だ。