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TITAN X採用のマウス製クリエイター向けPC「DAIV-DGX700U4-SP2」

~最上位CPUと最上位GPUで搭載VRの利用や制作にも好適

マウスコンピューター「DAIV-DGX700U4-SP2」

 10月18日より、マウスコンピューター株式会社のクリエイター・エンジニア向けPCブランド「DAIV」に、Pascalアーキテクチャ採用の最上級GPU「NVIDIA TITAN X」搭載モデルが追加された。

 今回、「DAIV-DGX700U4-SP2」を借用することができた。10コア20スレッドCPUのCore i7-6950X Extreme EditionとTITAN Xという、最上級のCPUとGPUを搭載したこのPCの性能について、GPU性能を中心にベンチマークテストでチェックしてみた。

最上級のCPUとGPUを搭載した「DAIV-DGX700U4-SP2」

 冒頭で紹介した通り、今回借用したDAIV-DGX700U4-SP2は、Core i7-6950X Extreme Editionを搭載したLGA2011-v3プラットフォームに、TITAN Xを搭載したハイエンド構成のPCだ。標準構成時の税別価格は519,800円。

 CPUとGPU以外のパーツでは、8GB×8枚構成のクアッドチャンネルDDR4-2400(PC4-19200)メモリ、480GB SSD(SATA 6Gbps)、3TB HDD(7,200rpm/SATA 6Gbps)、80PLUS BRONZE認証の700W電源などを搭載。OSにはWindows 10 Homeがインストールされている。

 また、DAIV-DGX700U4-SP2はパーツ構成のカスタマイズに対応。M.2接続のNVMe対応SSDや、最大128GBのメインメモリを搭載することもできる。

【表1】DAIV-DGX700U4-SP2の主なスペック
CPUCore i7-6950X Extreme Edition(3.0~3.5GHz、10コア20スレッド)
GPUTITAN X (12GB)
メモリ64GB DDR4-2400(8GB×8枚、クアッドチャンネル)
チップセットIntel X99
システム用ストレージ480GB SSD(SATA 6Gbps)
データ用ストレージ3TB HDD(7,200rpm、SATA 6Gbps)
光学ドライブ非搭載 (オプションで搭載可能)
CPUクーラーCooler Master Hyper 212 EVO
電源ユニット700W (80PLUS BRONZE)
OSWindows 10 Home

 筐体にはDAIV-DシリーズのATXタワー型ケースを採用。筐体サイズは190×490×490mm(幅×高さ×奥行き)。フロントパネル上部のハンドルや、ボリューム形状の電源スイッチが特徴的なケースであり、オプションで筐体背面側にキャスターを追加することができる。スタジオなどでの移動を想定したケースであり、クリエイター向けPCであるDAIVブランドならではの仕様だ。

筐体正面
筐体背面
筐体左側面。拡張スロット付近に吸気口が設けられており、稼働中は緑色に発光するTITAN XのGEFORCE GTXロゴが確認できる
筐体右側面。DAIVロゴが刻印されている
フロントパネルインターフェイス。右端のボリュームが電源スイッチ。そのほかにはUSB 3.0×2、音声入出力、電源ランプとストレージアクセスランプを備える
フロントパネル上部のハンドル。ケース後部にキャスターを搭載するオプション(税別1,800円)を選択すれば、フロント側を持ち上げることで、PC本体の移動が楽に行なえる
バックパネルインターフェイス
TITAN Xの画面出力端子。HDMI×1基、DisplayPort×3基、DVI-D×1基
筐体内部
ビデオカードのTITAN X。ガンメタリックカラーのGPUクーラーを搭載し、8ピン+6ピンの補助電源コネクタを備えている

ウルトラハイエンド向けGPUコア「GP102」を採用するTITAN X

 ベンチマークテストの結果紹介に移る前に、改めてTITAN XというGPUについて確認しておこう。

 TITAN Xは、Pascalアーキテクチャに基づき16nm FinFETプロセスで製造されたウルトラハイエンド向けGPUコア「GP102」を採用したGPU。製品名から「GeForce GTX」が外されているが、GeForce GTX 1080の上位製品に位置付けられている。

 TITAN XのGP102コアでは、3,584基のCUDAコアと224基のテクスチャユニットが有効化されており、ベースクロック1,417MHz、ブーストクロック1,531MHzで動作する。ビデオメモリには10Gbps動作の12GB GDDR5Xメモリを搭載し、GPUコアとは384bitのメモリインターフェイスで接続。メモリ帯域幅は480GB/sに達する。消費電力は250W。

 GPUコアが備えるCUDAコアやテクスチャユニットの数は、ハイエンドGPUであるGeForce GTX 1080の1.4倍であり、メモリ帯域幅は1.5倍に達する。ウルトラハイエンドGPUらしい非常に強力なスペックだ。

【表2】TITAN Xの主な仕様
GPUTITAN XGeForce GTX 1080 8GB
アーキテクチャPascalPascal
GPUコアGP102GP104
製造プロセス16nm FinFET16nm FinFET
ベースクロック1,417MHz1,607MHz
ブーストクロック1,531MHz1,733MHz
CUDAコア数3,584基2,560基
テクスチャユニット224基160基
メモリ容量12GB GDDR5X8GB GDDR5X
メモリ速度10Gbps10Gbps
メモリインターフェイス384bit256bit
ROPユニット96基64基
消費電力250W180W
TITAN XでのGPU-Zの実行結果

ベンチマーク。比較用としてGeForce GTX 1080 + Intel Core i7-6700K環境を用意

 それではベンチマーク結果の紹介に移りたい。

 今回、TITAN Xの性能を確認するにあたり、GeForce GTX 1080のベンチマーク結果を参考データとして用意した。

 GeForce GTX 1080の検証データについては、Intel Core i7-6700Kをベースにした検証専用環境で取得したものであり、DAIV-DGX700U4-SP2とは多くのパーツ構成が異なっており、GPU以外の要素がベンチマークスコアに影響を与えている可能性がある点に注意して欲しい。

【表3】テスト環境
GPUTITAN X(12GB)GeForce GTX 1080(8GB)
CPUCore i7-6950XCore i7-6700K
マザーボードIntel X99 チップセット搭載マザーボードASUS Z170-A
メモリ64GB DDR4-2400(8GB×8枚、クアッドチャンネル)16GB DDR4-2133(8GB×2枚、デュアルチャンネル)
システムストレージ480GB SSD256GB SSD(CFD CSSD-S6T256NHG6Q)
データストレージ3TB HDDなし
電源700W 80PLUS BRONZE700W 80PLUS TITANIUM(玄人志向 KRPW-TI700W/94+)
グラフィックスドライバGeForce Game Ready Driver 373.06
OSWindows 10 Home(1607)Windows 10 Pro(1607)
比較用として用意したGeForce GTX 1080のリファレンスカード

ベンチマーク結果

 それでは、ベンチマークテストの結果を紹介する。実行したテストは、3DMark(グラフ1、2、3、4、5、6)、Ashes of the Singularity(グラフ7)、アサシンクリード シンジケート(グラフ8)、The Witcher 3: Wild Hunt(グラフ9)、ダークソウルIII(グラフ10)、ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク(グラフ11)、MHFベンチマーク【大討伐】(グラフ12)、SteamVRパフォーマンステスト(グラフ13)。

 3DMarkでは、DirectX 12テストのTime Spyで約40%、Fire Strikeで約26~38%、Sky Diverで約47%、Cloud Gateで約49%、それぞれTITAN XがGeForce GTX 1080を上回った。

 ただ、3DMarkはCPU性能の測定結果であるPhysics ScoreにマルチスレッドCPUの性能が反映される仕様で、2つの検証環境ではこの部分で1.7倍程度のスコア差が付いている。これが総合スコアに少なからず影響している。

 よりGPUの性能差を反映しやすいスコアであるGraphics Scoreを見てみると、TITAN XとGeForce GTX 1080の差は、Time Spyで約31%、Fire Strikeで約25~33%、Sky Diverで約26%、Cloud Gateで約13%と、総合スコアよりもやや控えめな数字となる。

【グラフ1】3DMark - Time Spy (2,560×1,440ドット)
【グラフ2】3DMark - Fire Strike (1,920×1,080ドット)
【グラフ3】3DMark - Fire Strike Extreme (2,560×1,440ドット)
【グラフ4】3DMark - Fire Strike Ultra (3,840×2,160ドット)
【グラフ5】3DMark - Sky Diver
【グラフ6】3DMark - Cloud Gate

 続いて、DirectX 12とDirectX 11が利用できるAshes of the Singularity: Benchmarkの結果だ。TITAN Xは、DirectX 11では約21~24%、DirectX 12では約31~40%、それぞれGeForce GTX 1080を上回った。

 Ashes of the Singularity: BenchmarkのDirectX 12テストでは、CPUのマルチスレッド性能が最大フレームレートに影響を与えやすくなっており、DirectX 12でTITAN Xが差を広げる結果となった一因に、CPUのマルチスレッド能力の差が少なからず影響している。

【グラフ7】Ashes of the Singularity: Benchmark

 アサシンクリード シンジケートでは、描画負荷の高いプリセットを中心に、フルHDから4Kまでの画面解像度でフレームレートを測定した。GPUを高負荷状態にすることで、CPUの性能がフレームレートのボトルネックになり難くするのが狙いだ。

 TITAN XのGeForce GTX 1080に対するリードは、フルHD解像度(1,920×1,080ドット)で約19~24%、WQHD解像度(2,560×1,440ドット)で約24~27%、4K解像度(3,840×2,160ドット)で約27%。高解像度かつ高い描画品質になるとフレームレートの差は開いていき、どうやら3割弱程度の差まで開くようだ。

【グラフ8】アサシンクリード シンジケート

 The Witcher 3でも、描画設定がもっとも高負荷になるプリセットで、フルHDから4Kまでの画面解像度でフレームレートを測定した。

 ここでのTITAN Xは、フルHD解像度で約22%、WQHD解像度で約25%、4K解像度で約28%、それぞれGeForce GTX 1080を上回った。傾向と数字はアサシンクリード シンジケートの結果に近く、4K解像度における3割弱という差が、TITAN XとGeForce GTX 1080の実力差に近いものと思われる。

【グラフ9】The Witcher 3: Wild Hunt

 ダークソウル3では最大フレームレートが60fpsとなっている関係で、フルHD解像度とWQHD解像度で2つのGPUの間に差は生じていない。4K解像度では44fpsであったGeForce GTX 1080に対し、NVIDIA GTX TITAN Xは60fpsを記録。約36%の差が付いた。

 ただ、この解像度で実際にゲームをプレイしてみると、TITAN Xでも時折50fps台後半までフレームレートが低下することがあり、TITAN Xでも4K解像度かつ最高の描画品質で、60fpsを常時維持するのは難しいようだ。

【グラフ10】ダークソウル3

 ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマークでは、TITAN XがGeForce GTX 1080に、フルHD解像度で約5%、WQHD解像度で約23%、4K解像度で約34%の差を付けた。フルHD解像度でのスコア差が小さいのは、描画負荷の低さからCPUがボトルネックとなり、どちらの環境でもスコアが頭打ちになっているためだろう。

【グラフ11】ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク

 MHFベンチマーク【大討伐】は、CPUのマルチスレッド性能がスコアに反映されやすいベンチマークテストの1つであり、今回の検証では、TITAN Xが全ての画面解像度で70%前後の差を付け、GeForce GTX 1080を圧倒している。

【グラフ12】MHFベンチマーク【大討伐】

 SteamVRパフォーマンステストの平均忠実度では、TITAN XとGeForce GTX 1080はともに最高スコアの11に到達。テストの評価も当然最高評価の「VRレディ」を獲得している。

 この結果は、両GPUがVR環境で同等の実力を持っているということを意味しておらず、あくまでSteamVRパフォーマンステストの測定限界に到達したというものだ。ほかのベンチマークテストの結果からもTITAN XがGeForce GTX 1080を上回る3D描画性能を持っていることは明らかであり、VR環境においてもTITAN Xが優位なことは間違いないだろう。

【グラフ13】SteamVRパフォーマンステスト(忠実度)

 GPU以外にストレージの性能もチェックしてみた。システム用SSDは連続読み込みが556.9MB/s、連続書き込みが483MB/s、4Kランダム読み込みは27.82MB/s、4Kランダム書き込みは101.8MB/sだった。

システムSSDのCrystalDiskMarkの結果
データ用HDDのCrystalDiskMarkの結果

 最後に消費電力の測定結果を紹介する。

 TITAN Xを搭載するDAIV-DGX700U4-SP2のアイドル時の消費電力は66W。ベンチマーク中のピーク消費電力は302~383Wとなっており、おおむね400Wを下回っている。TDP 140WのCPUと250Wのビデオカードを搭載し、80PLUS BRONZE認証の電源ユニットを使っていることを考えれば、この数値は妥当なものだ。

 比較対象のGeForce GTX 1080環境は、アイドル時、ピーク時ともにDAIV-DGX700U4-SP2よりかなり低い消費電力となっている。もっともこれは、データ用HDDなども省略した最小限の構成であることに加え、80PLUS TITANIUM認証を取得した高効率電源を使用しているのだから、当然の結果と言えるだろう。

 DAIV-DGX700U4-SP2はカスタマイズによって、80PLUS PLATINUM認証を取得した850W電源を選択することも可能であり、高効率電源に変更することで、特にピーク電力の削減が期待できる。長時間CPUとGPUに高い負荷の掛かる用途なら、高効率電源に変更も検討してみるのも良いだろう。

【グラフ14】システム全体の消費電力

最上級のCPUとGPUによる性能は圧倒的

 今回はDAIV-DGX700U4-SP2が搭載するTITAN Xの性能に注目して、ゲームにおける性能を中心にチェックした。TITAN Xの描画性能はGeForce GTX 1080を少なくとも3割程度は上回っており、CPUのマルチスレッド性能が発揮されるテストでは、Core i7-6950X Extreme EditionがCore i7-6700Kを圧倒していた。

 DAIV-DGX700U4-SP2は、クリエイター向けPCであるDAIVブランドのPCではあるが、ゲームPCとしての実力も相当なものだ。

 マウスコンピューターでは、DAIVブランドでCore i7-6700KとTITAN Xを組み合わせたDAIV-DGZ500U2-SP3(税別329,800円)を販売しているほか、ゲーマー向けの「G-Tune」ブランドでもTITAN X搭載モデルを用意している。Core i7-6950X Extreme Editionほどのマルチスレッド性能を必要としない用途なら、これらのモデルも検討したい。