Hothotレビュー
Surface Pro 4を強く意識した2in1「ASUS TransBook 3 T303UA」
2016年10月27日 06:00
ASUSは8月26日に2in1 PC「ASUS TransBook 3 T303UA(以下T303UA)」を発表し、10月中旬より販売を開始した。ASUSは2in1の現行商品としてはASUS Shopで7製品を販売しているが、今回のT303UAは、Microsoftの2in1「Surface Pro 4」を非常に強く意識したモデルに仕上げられている。
T303UAには、本体カラーがチタニウムグレーで「Microsoft Office Home & Business Premium プラス Office 365サービス」を搭載した「T303UA-512S」、本体カラーがチタニウムグレーで「KINGSOFT Office Standard」を搭載した「T303UA-6200GY」、本体カラーがシャンパンゴールドで「KINGSOFT Office Standard」を搭載した「T303UA-6200GD」の3つのモデルが用意されている。
今回はシャンパンゴールドカラーのT303UA-6200GDを借用したので、そのレビューをお届けしよう。
Thunderbolt/USB Type-C、フルサイズHDMIなど充実した端子類
T303UAは、台湾では「ASUS Transformer 3 Pro T303UA」という製品名で販売されているが、日本では前述の通りASUS TransBook 3 T303UAという製品名でリリースされている。また、台湾ではCPUやストレージなどの構成をいくつか選べるが、日本販売モデルのハードウェア構成はCore i5-6200U、8GB SDRAM、512GB SSD(SATA 6Gbps)、Windows 10 Home 64bitの1モデルのみとなっている。
タブレット時の本体サイズは298.8×210.1×8.35mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約790g、タブレット+キーボードドック時の本体サイズは299.14×225.27×14.35mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約1,100g。ディスプレイサイズは12.6型で、12.3型のSurface Pro 4より0.3型大きい分、T303UAの方がフットプリントは大きいが、タブレット時の高さはわずか0.05mmではあるが薄く仕上げられている。
TransBook 3 T303UA | TransBook 3 T303UA(キーボードドック装着時) | Surface Pro 4 | Surface Pro 4(Type Cover装着時) | |
---|---|---|---|---|
サイズ(幅×奥行き×高さ) | 298.8×210.1×8.35mm | 299.14×225.27×14.35mm | 292.1×201.4×8.4mm | 295×207.5×13.3mm※奥行きは実測 |
重量 | 790g | 1,100g | 786g | 1,081g |
ディスプレイ | 12.6型2,880×1,920ドット(275dpi) | 12.3型2,736×1,824ドット(267dpi) |
本体カラーはチタニウムグレーとシャンパンゴールドの2色。筐体はマグネシウム合金とアルミニウム合金で構成されており剛性感は高い。例えば角を持って団扇のように扇いでみても、わずかなキシミ音は聞こえるものの頼りなさは感じない。あくまでも持ち比べてみた時の印象だが、T303UAはSurface Pro 4と同等の剛性感・堅牢性を実現しているようだ。
スタイラスペン(ASUS Pen)の実測重量は約21.5g、キーボードカバーの実測重量は約343.5g。Surface Pro 4のスタイラスペン(Surfaceペン)の実測重量は約21g、キーボードカバー(Type Cover)の実測重量は約307.5gなので、T303UAのキーボードカバーの方がやや重い。なお、Surface Pro 4はキーボードカバーが別売りとなっているが、T303UAは標準で同梱されている。もし両者のどちらを買うか悩んでいる場合には、アクセサリも含めた価格で比較して欲しい。
インターフェイスは、Thunderbolt 3(最大40Gbps)/USB 3.1 Type-C(最大10Gbps)、USB 3.0、HDMI、microSDカードスロット、IEEE 802.11a/b/g/n/ac無線LAN、Bluetooth 4.1、マイク/ヘッドフォン端子、キーボードカバー接続端子を装備している。なおキーボードカバー接続端子はSurface Pro 4などで利用されているSurfaceConnectと接点の数は同じだが、大きさが異なるので互換性はない。
T303UAのSurface Pro 4に対する最大の優位点が、Thunderbolt 3/USB 3.1 Type-Cと、ディスプレイ出力としてフルサイズHDMIを搭載していること。、Thunderbolt 3/USB 3.1 Type-Cは電源供給にも利用するが、いざという時の高速インターフェイスとして便利に活用できるはずだ。
スタイラスペン、キーボードカバーの使い勝手はSurface Pro 4と同等
T303UAに標準で同梱されているスタイラスペン「ASUS Pen」は、Surfaceペンと同様に1,024段階の筆圧感知性能を備えている。配置は異なるが2ボタン構成で、アプリ側でツールを切り替えなくても、ペン先側のボタンを押しながらペン先を走らせれば消しゴム機能などを利用できる。
ただし、1つ大きく異なる点がある。それは書き味。ASUS Penの書き味は、Surfaceペンより硬めだ。Surfaceペン用には2H、H、HB、Bと硬さの異なる4種類のペン先が用意された「ペン先キット」が発売されているが、ASUS Penの書き味は2Hに相当すると筆者は感じた。書き味の好みは人それぞれだが、個人的にはSurfaceペンのペン先キットで言えばHBが適度に抵抗感があって、もっとも疲れを感じずに長時間文字などを書ける。
なお、SurfaceペンはT303UAでも使用可能だった。もしASUS Penの書き味に慣れることができなかったら、Surfaceペンを追加購入してもいいだろう。ただし保証外の組み合わせとなるので、自己責任でご利用いただきたい。
T303UAとSurface Pro 4のキーボードカバーの使い勝手はまったく同じと言っていいレベルだ。キーピッチはT303UAが実測約19.5mm、Surface Pro 4が実測約19mmとほぼ同等。本体との接続端子の大きさが異なるので互換性はないが、着脱機構やキーボード面に角度を付ける構造もまったく同一な作りとなっている。もちろん、どちらもLEDバックライトを内蔵している。タッチパッドはT303UAが実測約105×62mm(幅×奥行き)、Surface Pro 4が実測約102×54mm(同)と、T303UAの方が大きいぶん使いやすいぐらいだ。
キーボード面に角度を付けると、キーボードカバー全体の微妙なたわみが、タイピング時のショックを吸収してくれる打鍵感まで非常にそっくりだ。打鍵音は微妙に異なるようだが、ブラインドで使い比べてみたらおそらく違いは分からないだろう。ひょっとしたらどちらのキーボードカバーも同じODMが製造していると思えるほど、T303UAとSurface Pro 4のキーボードカバーは高い品質を実現している。
ただし、キートップの配列や大きさには細かな違いがある。まずT303UAのキーボードカバーはSurface Pro 4よりカーソルキーが小さいが、その代わりカーソルキー左にCtrlキーが設けられている。またF1~F12キーの横に「pause/break」、「prt sc/sysrq」、「insert」キーが独立して配置されている。さらにファンクションキーに、スリープモード、機内モード、画面オフ、タッチパッドオフなどの機能が割り当てられている。キーの数が多い分、ファンクションキーは小さくなっているが、T303UAのキーボードカバーの方が使い勝手が良いと感じる人も多いはずだ。
ディスプレイ解像度・発色は申し分なし、最大ボリュームではビビリ音が発生
T303UAが搭載する12.6型ディスプレイの解像度は3K(2,880×1,920ドット)。画素密度は275dpiとなるので、高倍率ルーペでも使わない限りドットを判別できないほどの精細さを備えている。発色も非常に鮮やかだ。T303UAはsRGB比で121%、NTSC比で85%の色域をカバーしているが、緑系、赤系の発色ともに階調豊かで、不自然な色味の変化は見られない。
ただし、ディスプレイではアナログTV向けの色域規格であるNTSCよりも、Adobeにより定義されたAdobe RGBや、デジタルシネマ規格であるDCI-P3のカバー率を公表するのが一般的だ。今後クリエイター向けにT303UAを訴求していくのであれば、Adobe RGBとDCI-P3のカバー率を公表していただきたいところだ。
一方、本製品はサウンド面にも注力されており、オーディオブランド「Harmon Kardon」とのコラボレーションが謳われている。2W+2Wのステレオスピーカーは音量が大きめで、YouTube動画の「PPAP(Pen-Pineapple-Apple-Pen Official)ペンパイナッポーアッポーペン/PIKOTARO(ピコ太郎)」を最大ボリュームで再生したところ、T303UAは90.7dB、Surface Pro 4は80.2dBという結果だった。しかし、タブレットの筐体に90.7dBの音は大きすぎるのか、最大ボリュームではビビリ音が目立った。無理なく音楽を楽しむのであれば80%ぐらいのボリュームに設定するといいだろう。
背面カメラは十分な描写力、前面カメラは少々力不足
T303UAは、1,258万画素の背面カメラと192万画素の前面カメラを搭載している。両カメラがどの程度の描写力を備えているのか、800万画素の背面カメラと500万画素の前面カメラを搭載しているSurface Pro 4と比較してみた。
まず背面カメラの解像感については、T303UAとSurface Pro 4ともに不満はない。少々T303UAはピントが合いづらい傾向があったが、被写体をタッチすれば正確にフォーカスを合わせられる。色の再現性については、建物はT303UA、花と植木はSurface Pro 4の方が自然だが、どちらにしてもWindows 10の「フォト」アプリで十分補正できるレベルだ。
気になったのは前面カメラの解像感の差。今回撮影した写真では色味はT303UAの方が自然だが、やはり192万画素では解像度が足らないというのが率直な感想だ。12.6型という大きな画面で見るからこそ、もう少し解像度の高い前面カメラを搭載して欲しかったところだ。
必要十分な性能、連続動作時間にはやや不満あり
最後にT303UAの性能をチェックしてみよう。
今回使用したベンチマークソフトは、「PCMark 8 v2.7.613」、「PCMark 7 v1.4.0」、「3DMark v2.1.2973」、「CINEBENCH R15」、「Geekbench 3.4.1」、「モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】」、「CrystalDiskMark 5.1.2」。合わせて実アプリの性能を計測するために「Adobe Photoshop Lightroom」、「Adobe Premiere Pro CC」、連続動作時間を計測するために「BBench」も使用している。
なお、比較対象モデルとして、Core i5-6200U(2.3~2.8GHz)を搭載するT303UAともっとも性能の近いモデルとして、Core i5-6300U(2.4~3GHz)を搭載する「Surface Pro 4 CR3-00014」を使用している。なお、Surface Pro 4 CR3-00014は10カ月使用しておりバッテリが劣化している可能性があるため、連続動作時間のベンチマークは、「追加投入されたCore i7版「Surface Pro 4」。Core i5版との性能の違いを探る」の結果を流用している。
ASUS TransBook 3 T303UA | Surface Pro 4 CR3-00014 | |
---|---|---|
CPU | Core i5-6200U(2.3~2.8GHz) | Core i5-6300U(2.4~3GHz) |
GPU | Intel HD Graphics 520(300MHz/1GHz、EU24基) | Intel HD Graphics 520(300MHz/1GHz、EU24基) |
メモリ | LPDDR3-1866 SDRAM 8GB | LPDDR3-1866 SDRAM 8GB |
ストレージ | 512GB(Serial ATA 3.0接続) | 256GB NVMe SSD(PCI Express 3.0 x2接続) |
OS | Windows 10 Home 64bit | Windows 10 Pro 64bit |
PCMark 8 v2.6.512 | ||
Home Accelarated 3.0 | 2749 | 2913 |
Creative Accelarated 3.0 | 3496 | 3834 |
Work 2.0 | 3565 | 3610 |
PCMark 7 v1.4.0 | ||
PCMark score | 4696 | 4910 |
3DMark v1.5.915 | ||
Fire Strike Ultra | 200 | 203 |
Fire Strike Extreme | 336 | 367 |
Fire Strike | 701 | 801 |
Sky Diver | 2821 | 3416 |
Cloud Gate | 4954 | 5317 |
Ice Storm Extreme | 32168 | 32401 |
Ice Storm | 43759 | 42865 |
CINEBENCH R15 | ||
OpenGL | 35.46 fps | 39.77 fps |
CPU | 242 cb | 306 cb |
Geekbench 3.3.2 Intel(32-bit) | ||
Single-Core Score | 2891 | 3047 |
Single-Core Score Integer | 2787 | 2963 |
Single-Core Score Floating Point | 2724 | 2916 |
Single-Core Score Memory | 3435 | 3481 |
Multi-Core Score | 6113 | 6516 |
Multi-Core Score Integer | 6652 | 7126 |
Multi-Core Score Floating Point | 6699 | 7261 |
Multi-Core Score Memory | 3863 | 3808 |
Geekbench 3.3.2 Intel(64-bit) | ||
Single-Core Score | 2978 | 3147 |
Single-Core Score Integer | 2943 | 3160 |
Single-Core Score Floating Point | 2779 | 3036 |
Single-Core Score Memory | 3449 | 3482 |
Multi-Core Score | 6216 | 6697 |
Multi-Core Score Integer | 7013 | 7481 |
Multi-Core Score Floating Point | 6663 | 7388 |
Multi-Core Score Memory | 3730 | 3751 |
モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】 | ||
1,280×720ドット | 3728 | 3782 |
SSDをCrystalDiskMark 5.1.2で計測 | ||
Q32T1 シーケンシャルリード | 549.047 MB/s | 1466.762 MB/s |
Q32T1 シーケンシャルライト | 485.771 MB/s | 313.621 MB/s |
4K Q32TI ランダムリード | 258.384 MB/s | 233.910 MB/s |
4K Q32TI ランダムライト | 234.606 MB/s | 204.627 MB/s |
シーケンシャルリード | 463.465 MB/s | 772.960 MB/s |
シーケンシャルライト | 422.632 MB/s | 313.741 MB/s |
4K ランダムリード | 12.771 MB/s | 37.255 MB/s |
4K ランダムライト | 70.228 MB/s | 105.555 MB/s |
SDカードをCrystalDiskMark 5.1.2で計測(SanDisk Extreme Pro 95MB/s microSDXC UHS-I) | ||
Q32T1 シーケンシャルリード | 35.625 MB/s | 82.217 MB/s |
Q32T1 シーケンシャルライト | 31.611 MB/s | 80.426 MB/s |
4K Q32TI ランダムリード | 4.465 MB/s | 7.323 MB/s |
4K Q32TI ランダムライト | 2.370 MB/s | 2.921 MB/s |
シーケンシャルリード | 35.023 MB/s | 87.447 MB/s |
シーケンシャルライト | 31.670 MB/s | 82.216 MB/s |
4K ランダムリード | 3.968 MB/s | 8.243 MB/s |
4K ランダムライト | 2.315 MB/s | 1.994 MB/s |
「Adobe Photoshop Lightroom」で50枚のRAW画像を現像 | ||
4,912☓3,264ドット、自動階調 | 3分12秒69 | 3分0秒55 |
Adobe Premiere Pro CCで実時間5分のフルHD動画を書き出し | ||
1,920×1,080ドット、30fps | 7分53秒44 | 7分0秒94 |
BBenchにより連続動作時間を計測(ディスプレイの明るさ40%) | ||
バッテリ残量5%まで | 5時間20分28秒 | 7時間23分4秒 |
今回のベンチマークにはクロック周波数の差がそのまま順当に表われたが、CPU、GPUの性能については使い勝手が大きく変わるほどの差ではない。また、SSDのシーケンシャルリードの速度差も、T303UAがSATA 6Gbps接続、Surface Pro 4 CR3-00014がPCI Express 3.0 x2接続なので当然の結果だが、ほかの転送速度は極端に開いていないので、体感的に大きな速度差を感じることはないと思われる。
ベンチマーク実施時に、サーモグラフィーカメラ「FLIR ONE」で温度もチェックしてみた。
23℃と低めの室温ながら、T303UAの背面温度は33.5℃に留まっていた。実はT303UAはベンチマークなどの高負荷時、かなり盛大に冷却ファンが回る。それなりの音量となるのだが、その分冷却性能は高いようだ。
拡張性でSurface Pro 4を超える2in1
Surface Pro 4より後に発売されただけに、Thunderbolt 3/USB 3.1 Type-Cなどの高速インターフェイス、使い勝手のいいフルサイズHDMIを搭載したT300UAは、拡張性という点では元祖2in1よりも魅力的なモデルだ。連続動作時間が約2時間短い点も、大容量26,800mAhバッテリ「ASUS ZenPower Max」を入手すれば、十分補える。
スペックの近いSurface Pro 4 CR3-00014がキーボードカバー込みで直販価格190,296円。2016年11月13日まで2万円のキャッシュバックを受けられるとしても、Surface Pro 4 CR3-00014の2倍のストレージ容量を搭載するT300UAはお買い得感が高い。2in1というパッケージングに魅力を感じているのであれば、元祖を超えた拡張性を備えた本製品は有力な選択肢となり得るだろう。