■本城網彦のネットブック生活研究所■
dynabook UX |
ネットブック「東芝 dynabook UX」に、「WiMAX」搭載モデルが追加された。筆者はdynabook UXもWiMAXも試したことがなく、同時に使えるのは嬉しい限り。早速使用感などをレポートする。
●dynabook UX/27JBLMAの仕様
まずWiMAXの話に入る前に、搭載モデルである「dynabook UX/27JBLMA」のスペックなどに触れたい。基本的には夏モデルとして発表された「dynabook UX」に、WiMAXを内蔵したモデルとなる。
CPUはAtom N280を搭載している。クロックは1.66GHzでFSBは667MHzとN270より高速だ。チップセットはお馴染みIntel 945GSE Express(ビデオ機能内蔵)。液晶パネルは10.1型ワイドWSVGA(1,024×600ドット)で、同社は「ClearSuperView液晶」と呼んでいる。省電力LEDバックライトを使ったクオリティの高い光沢(グレア)パネルだ。
メモリは標準で1GB。空きスロットは1つで最大2GBとなる。HDDは160GB。SDメモリカードリーダ、音声入出力、Webカメラ、Ethernet、USB 2.0×3ポート、ミニD-Sub15ピンなどを備え、無線LANはIEEE 802.11a/b/g/nの対応だ。
サイズは約263×192.3×25.4~30.8mm(幅×奥行き×高さ)、重量は1.18kg。バッテリは標準タイプ(バッテリパック31Q-5)を搭載し駆動時間は約4時間となっている。Bluetoothは搭載していない。そしてOSはWindows XP Home Edition SP3と、Atom N280プロセッサを搭載した多くのネットブックとほぼ同じスペックとなっている。
唯一惜しい部分があるとすれば、内蔵スピーカが「モノラル」と言うところだろう。音量不足や音質に不満がありつつもステレオスピーカを内蔵したネットブックが多いだけに、この点だけは筆者的に残念だ。
キーピッチ。主要キーでは19mmと、一般的なネットブックの18mmより少し間が空いている | バッテリとACアダプタ。ACアダプタの電源端子はメガネタイプ。またアダプタ本体も小さい |
外観はブラックとシルバーを基調としたなかなかサイバーなデザインだ。Rがうまく使われており、全体的に安っぽい感じはしない。10.1型の液晶パネルを搭載したネットブックとしては重量が1.18kgとほぼ1kgなのも見逃せないポイントだ。超薄型ではないものの、これならカバンに入れて日頃持ち歩くには全く苦にならないだろう。
キーボードはキーとキーとの間が空いているアイソレーション・タイプだ。主要キーのキーピッチは19mmあり、このクラスで一般的な18mmと比較して、1mmほど広いため入力が容易だ。また以前ご紹介した「VAIO W」もそうだったが、アイソレーション・タイプの特徴なのか、たわむ部分が無くしっかり押せるのも好印象だ。ただ、スクエアなタイプではなく、やや縦につまった形なので好みはあるかも知れない。
液晶パネルは光沢パネルなので映り込みはあるものの、明るく高コントラストなので、使用中はあまり気にならない。特に赤の発色が印象的だ。他のネットブックも含め、最近のモデルは液晶パネルの品質向上が著しく、数年前のノートPCが霞んで見えてしまうほどだ。
タッチパッド、ボタン、そしてパームレストの部分も広く余裕のある配置になっている。ボタンもストロークが浅い割りにクリック感があるため、楽に押すことができる。HDDやメモリに関しては裏のパネルを外せば簡単にアクセスでき、メンテナンス性は高い。
ただパームレストに手を置くと振動が、そしてボディに耳を近づけると「ブーン」と言うノイズが出ているのが解る。とは言え、どちらも1スピンドルのネットブックとしては一般的なレベルだ。
以上のように、モノラルスピーカである以外、総じてネットブックとしては高い完成度であり、「dynabook」の冠に恥じない仕上がりだ。
●dynabook US/27JBLMAの使い心地プリインストールされているアプリケーションは「ウイルスバスター 2009 90日無料版」、デ辞蔵PC(旺文社 英和辞典・和英辞典・国語辞典・カタカナ語辞典)、同社オリジナルで文字サイズと同時に画像データも拡大/縮小できる「Smooth View」など。特に辞書が入っているのは、ネットを併用しつつ何かを調べる時などにありがたい。
また本体左側のUSB 2.0ポートは、電源OFF時(スタンバイ/休止/シャットダウン状態)にもUSB接続している機器に充電可能になっているのがうれしい。「東芝USBスリープアンドチャージ」で設定できる。
WiMAXのモジュールは、デバイスマネージャ/主要デバイスを見るとわかるように、IEEE802.16e-2005に準拠し、下り最大13Mbps/上り最大3Mbpsに対応する「Intel WiMAX/WiFi Link 5150」が使われている。
筆者は普段イー・モバイルを使っていることもあり、WiMAXに関してあまり調べていなかったのだが、UQコミュニケーションズのサービスエリアを調べると、今年12月末までには結構広がりそうな雰囲気だ。また料金体系も、使い放題の「UQ Flat」が4,480円/月、そして面白いのは一日だけ使用する「UQ 1Day」が600円/24時間と言うのがある。「UQ Flat」の価格に関しては他と比較しても同じレベルだ。「UQ 1Day」に関しては、普段は事務所や自宅でネットワークが使える状況、今日は外出もしくは出張なので1日だけ……と言うのはありがちな話。同単位で換算すると割高であるが、外出頻度が低い場合などで有効な料金プランと言えよう。
WiMAXの速度に関しては、仕様上「下り最大13Mbps/上り最大3Mbps」とある。とは言え、これは最大時の値であり、他と比較して速いか遅いかは通信状況にもよるため単純に比べるのは難しいところだ。実際、今回試したケースでは場所が悪かったのか、かなり転送速度が低くなっている。
しかしモジュールが内蔵されているため、余計なアダプタを持ち歩く必要はない。この点は圧倒的に内蔵タイプが有利だ。
iPhoneのように、Wi-Fiが使えるところではWi-Fiを優先、Wi-Fiが使えない場所では3Gを、と自動的に切り替わるように、Wi-FiとWiMAXが切り替われば意識せずネットへ接続できれば便利なのだが、このdynabook UX/27JBLMAでは、状況をユーザーが判断して、手動でWiFiとWiMAXを切替える必要がある。例えば事務所から出かけた時は出先でWiMAXへ切替、事務所へ戻ってWi-Fiへ切替と、この切替に数クリック必要となり、試してみると意外と面倒だ。iPhoneに似た、自動的に通信経路を切り替える仕掛けが望まれる。
本体の処理速度などはは、ベンチマークテストの結果を見る限り、Atom N280プロセッサ、そしてIntel 945GSE/GMA 950/SVGAのコンビネーションとしては一般的な値だ。若干違いが出るとすれば、搭載しているHDDの差程度となる。いずれにしてもネットブック的な用途であれば速度的に特に遅いと思う事はないだろう。
以上のように、WiMAXを内蔵したdynabook US/27JBLMAは、WiMAXの電波さえあれば、どこでもネットに接続可能なネットブックとなる。Atom N280プロセッサを搭載しているためネットブックとしてはパフォーマンスも高い。Wi-Fiでもイー・モバイルでもなく、新しい選択肢である、もう1つの無線ネットワーク=WiMAXでネットブックを楽しむのもまた良いのではないだろうか。