大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

マウスコンピューター小松社長に聞く

~「日本品質」を牽引する法人向けPC「MousePro」の3年目

 マウスコンピューターの法人向けPCブランド「MousePro」が、2013年2月に2周年を迎えた。「この2年間で、法人ビジネスは着実に成長している。その中で、MouseProシリーズが果たす役割は大きい」と、マウスコンピューターの小松永門社長は語る。

 中でも、日本で生産し、日本でサービスを行なう安定した品質の実現が、ユーザー企業から高い評価を得ており、それがビジネス拡大の原動力になっているという。2011年10月以降、同社では「日本品質」を掲げているが、その牽引役に位置付けられるのがMouseProである。「日本人が求める日本品質を実現するMouseProによって、3年目以降の法人向けビジネスもアクセルを踏みたい」とする小松社長と、MousePro事業を統括する同社コーポレート営業部・金子覚マネージャーに、3年目に突入したMouseProの事業戦略について聞いた。

着実な成長を成し遂げているMousePro

 国内のビジネスPC市場は厳しい状況にあるが、マウスコンピューターの法人向けビジネスは着実な成長を遂げているという。同社によると、2012年の法人向けビジネスの成長率は前年比約20%増。中でも、法人向けPCブランドの「MousePro」は、前年比約40%増という高い成長を維持している。

MousePro製品ラインナップ

 それにはいくつかの理由がある。

 1つは、製品ラインアップの広がりである。同社は、2012年において、デスクトップPC「MousePro i/iSシリーズ」およびノートPC「MousePro NBシリーズ」に加え、MouseProブランドのサーバーである「MousePro SVシリーズ」、省スペースボックス型PCの「MousePro Mシリーズ」、オールインワンPCの「MousePro Aシリーズ」を追加。提案の幅を広げるためのラインアップ拡充に取り組んできた。

 「中小企業、SOHOといったMouseProで狙ったメインターゲットだけでなく、教育機関、官公庁のほか、ハイパフォーマンスを求めるクリエイターなどにも広く導入されています。オールインワンPCは、発売前には法人向け製品としてのどれぐらいの可能性があるのかといった議論もありましたが、PC教室向けに導入が決定するなど、需要層の広がりにも貢献しています」(金子覚マネージャー)という。

 2つ目には、営業体制の強化である。MouseProは、中小企業やSOHOなどでの利用を想定して開発された製品だ。そのため、量販店店頭などには展示されず、同社インターネットサイトを通じた販売のほか、同社法人直販部門および同社ダイレクトショップでの販売、ディストリビュータを経由したシステムインテグレータなどでの販売に限定される。

金子覚マネージャー

 スタート時には、直販が中心となっていたMousePro事業だが、この1年で、システムインテグレータなどを通じた販売比率が上昇しているという。「ディストリビュータを通じた2次店での取扱量が増加しています。1年目に比べて、確実に販路が拡大しています。また、ディストリビュータ主催の内覧会やイベントなどへの出展回数が増えており、2012年は年間60回の出展計画であったのに対して実績は約70回。こうした活動を通じて、販売店に対する認知が高まっています」(金子マネージャー)という。

 MouseProは、BTOが基本になる。そのため、販売店にとって、単価上昇につなげやすい商材として認識されはじめたことも、ディストリビュータの販売比率拡大につながっているといえよう。

 販売店を通じた入札案件も増加しており、「数百台単位の入札案件も出ている」という。小松社長は、「今後のビジネス拡大にあわせて、法人ビジネスの組織の陣容拡大にも取り組みたい」と語る。

日本人に要求されるレベルを満たすための5つの品質施策

小松永門社長

 そして、MousePro事業拡大の最大の要因は、高い品質が評価され、それが法人ユーザーの間に着実に浸透しはじめている点といえよう。「日本で開発し、日本で生産し、日本でサポートしているのが当社の製品の特徴。特にMouseProは、部品検査やエージング検査工程が多岐にわたっており、他の製品に比べても着荷不良率が大幅に低くなっています。ユーザー企業、販売パートナーから、安心して扱えるPCとして、MouseProが認知され始めました」(小松社長)。

 続けて、小松社長は、「手前味噌になるが」と前置きしながら、「MouseProを導入したお客様からはネガティブな話を聞くことがありません。また、販売後に大きなトラブルになったという事例もありません。そして、修理センターをみても、MouseProが修理ラインに並んでいることが少ない」とする。

 企業で利用するPCとして、安定した品質を提供していることが、導入したユーザー企業から高い評価を得ているというわけだ。「2012年には、最初に1台だけを導入した企業が、追加購入するリピーターが増えています」(金子マネージャー)という点も、品質に対する評価を裏付けるものだといえよう。

 マウスコンピューターでは、2011年10月から、「日本品質」という言葉を使っている。日本品質は、日本人が求める品質を実現していること、そのために、日本で開発し、日本で生産し、日本でサポートすることにこだわる、マウスコンピューターの基本的姿勢を示したものだ。

 そして、この日本品質の牽引役となるのが、MouseProである。実際、MouseProで実現し、高い評価を得た品質基準の一部は、コンシューマ製品などに移植され、同社製品全体の品質水準を高めることにつながっている。

 その「日本品質」について、小松社長は、「5つの柱で構成する」と語る。それは、「製品品質」、「営業品質」、「機能品質」、「応対品質」、「修理品質」の5つだ。

 「製品品質」は、着荷不良率や初期不良率の低減など、製品づくりを通じた品質の向上を指す。そして、「営業品質」とは、カタログやウェブ、あるいは営業担当者の説明と、実際に手元に届いた製品がイメージ通りのものであるという点での品質を指す。「カタログの写真がやけにきれいであるとか、箱を開けたときに思っているものと違うものが届いたという、ガッカリ感を与えてはいけないので、ちゃんと伝えるべきことを伝えられているか、求める水準のものを提供できているのかということも、品質面では重要な要素の1つです」と小松社長は語る。

 また、機能品質では、キーボードの打鍵感や、マウスの操作感など、スペック表には表れないような使い勝手、使いやすさにおける満足度の追求を目指す。さらに、応対品質とは、コールセンターなどにおける質問に対して、的確に回答をすることによる満足度向上を図ることを指し、修理品質では、万が一、故障した際にも迅速な対応を行なうことや、不具合が再発しないように製品開発や生産に反映させるといった取り組みを示す。

 「これらの5つの柱を、日本のお客様の視点から、徹底的に追求していくことが、日本品質の実現につながります」と小松社長は語る。

 MouseProでは、専用生産ラインを構築。他の製品で実施している基本品質検査に加え、高温環境下での連続稼働試験を実施するといった取り組みを行なっている。その点でもMouseProは、同社が掲げる日本品質をリードする代表的製品と位置づけられる。

2013年の取り組みは

 では、発売から3年目に突入する2013年のMouseProの取り組みはどうなるのだろうか。

 小松社長は、「2012年のMousePro事業を振り返れば、自己採点は90点。やりたいと思っていたことのすべてができなかったことが10点の減点です。MouseProのチームは、さまざまなことを考えており、それを2013年に具現化していきたいです」とする。

 それを受けて、MousePro事業を統括する金子マネージャーは次のように語る。「MouseProのビジネスは、スタート時に3年間を1つの括りで考えていました。その点からも、MouseProの原点でもある、高い品質の提供にもう一度こだわっていきたいです」とする。

 PC業界では、2014年4月に、Windows XPのサポート期間が終了することが、注目される課題となっている。日本国内の法人ユーザーのうち、Windows XPを利用しているケースは依然として50%以上に達するとの試算もあり、2014年4月までにリプレース対象となるPCは、数千万台規模に及ぶともみられている。

 マウスコンピューターのユーザーをみても、MousePro発売前に、同社製品を購入した法人ユーザーは、圧倒的にWindows XPが多い。「MouseProならではの信頼性を知っていただくには、これからが最適なタイミングになってきます」と、金子マネージャーは語る。

 同社では、2月4日から、「MousePro 誕生 2周年記念キャンペーン」を開始した。

 このキャンペーンは、Windows XPからのリプレースを促進するとともに、MouseProの品質の高さを強調する狙いがある。まさに同社の原点回帰の姿勢を具現化するものとも位置づけられよう。内容の1つとして、Windows XP搭載PCの下取り価格を3,150円に値上げし、さらに、正常に起動し、リカバリメディアが付属した場合には2,000円分の商品券をプレゼントする。

 また、Windows 8 Pro、Windows 7 Professional、Windows 7 Ultimate搭載製品を対象に、着荷後30日以内であれば返品、返金を受け付ける。品質に自信を持つMouseProだからこそ、実現するキャンペーンだといえる。

 小松社長は、「MouseProといえば、品質が高いと言われるように、品質には徹底してこだわります。継続は力です。この姿勢はこれからも変わりません」と強調してみせる。

 さらに、MousePro購入者を対象に、ソフトウェアのインストール設定などのデュプリケートサービスを無料で行なう「パソコン導入時の作業コストを大幅削減!」、Windows Small Business Server 2011 Essentials + Xeonプロセッサを搭載したサーバー製品を100台限定ながら、5,250円引きで販売する「生産性とセキュリティを同時にUP!」、ブラザーの法人向けプリンターのジャスティオプロとMouseProとの同時購入で、10,500円引きとする「高品質コラボレーション!」といった特典も含まれる。

 マウスコンピューターの金子マネージャーは、「2013年は、MousePro事業で、前年比1.5倍の成長を計画しています」と語る。これは、2012年の1.4倍をさらに上回る計画値となる。

バッテリ内蔵のオールインワンPCを持つ小松社長

 それを実現するために1つのポイントとなるのが、ノートPCのラインアップ強化だ。現在、ノートPCのラインアップは、15.6型液晶ディスプレイを搭載した標準モデルのみとなっているが、これにGPU搭載モデルの追加や、17型液晶ディスプレイ搭載製品、薄型軽量化を図ったノートPCの投入なども検討材料にあがっている。

 「ノートPCの製品ラインアップは増やしていくことになります。ユーザーの需要動向を見ながら強化していきたいと思います」(小松社長)という。

 また、デスクトップPCでは、NVIDIA Quadro搭載製品の販売強化なども注目されることになろう。

 なお、MouseProブランドのタブレット製品については、「タブレットはソリューションとしての提案が中心になるため、あえてMouseProブランドで展開するよりも、現行ラインアップの延長戦上での提案の方が適しているでしょう」(小松社長)として、当面、投入の予定はなさそうだ。

 2つ目のポイントは、営業支援体制の強化だ。特にディストリビュータを通じた販売網の拡充に取り組む考えだ。これは、MouseProの認知度を高めていくという点でも重要な施策だと位置づける。

 3年目突入したMouseProは、これまで積み上げてきた実績をもとに、さらなる事業拡大を目指すことになる。そのベースとなるのは、1年目から打ち出した品質重視の姿勢を継続することだ。原点回帰の3年目がスタートした。

(大河原 克行)