大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

シャープ新型ネットウォーカーの狙い



 シャープのネットウォーカーが進化した。

 2009年9月に発売したネットウォーカー第1弾となる「PC-Z1」に続き、第2弾として、2010年5月から「PC-T1」を発売することを発表した。Z1とT1は併売される形になり、用途に応じて、クラムシェル型のZ1と、フルタッチ型のT1とを選択できるようになる。

パーソナルソリューション事業推進本部パーソナルソリューション事業部商品企画部 参事 笛田進吾氏

 「フルタッチ型の製品は、Z1の発売当初から製品化を考えていたもの。Z1同様に、ケータイPlus Oneというコンセプトには変更がない」と、シャープ パーソナルソリューション事業推進本部パーソナルソリューション事業部商品企画部・参事の笛田進吾氏は語る。

 シャープでは、ネットウォーカーの開発当初に、ノートPCのような形状のクラムシェル型のほかに、キーボード搭載型の携帯電話で利用されているようなスライダー型、iPhoneに代表されるようなフルタッチ型の3種類を形状を検討していた経緯がある。

クラムシェルのPC-Z1に続き、PC-T1はフルタッチ型 インターネットに接続したところ 専用のケースとペン

 だが、モバイルPCと電子辞書という位置づけで、新たな商品として登場させること、さらにPCの機能を、持ち運びが可能なコンパクトな筐体に埋め込むという基本的な考え方から、ノートPCを小型化したようなクラムシェル型を第1弾の形状に選んだ。

 「Zの型番は、究極のモバイルノートを目指すという意味を込めたもの」という点でも、その狙いがあったからだ。

 しかし、「企業ユーザーの間からの引き合いが増えるのに従って、クラムシェル型では営業現場などで使いにくいといった声があがってきた。法人需要という観点から考えれば、フルタッチ型の製品の方が応用範囲が広い」として、新たにフルタッチ型を追加投入したのだ。

 確かに、使い勝手や相手との商談シーンを考えると、クラムシェル型よりも、フルタッチ型の操作手法の方が、操作しながら、画面内容を相手に見せやすいという点でメリットといえよう。

 「T-1のTには、タッチ機能で操作できることを意味する型番とした」というように、新たなネットウォーカーの最大の特徴を型番に込めてみせたのだ。

 2つの異なるネットウォーカーをラインアップすることで、ネットウォーカー売り場の雰囲気も、これまで以上に賑やかさが出てくることになるだろう。


●これまでの半年

 新製品のPC-T1の取り組みに触れる前に、PC-Z1のこの半年間の成果を総括しておく必要があるだろう。

 笛田氏は開口一番、「この半年の取り組みのよって、PCとは、ちょっと離れた製品カテゴリとして、新たな使い方を提案する糸口が見えた」と総括する。

 その言葉を裏付ける要素はいくつかある。

 たとえば、家電量販店などのPOSデータを集計するGfKジャパンの調べによると、発売から半年以上を経過しているのにも関わらず、ネットウォーカーは依然としてミニノート分野で20位以内に入っているという。また、発売以来、ネットウォーカーの継続展示をする店舗が多いことも見逃せない。販売店にとっても注目せざるを得ない商品というわけだ。さらに、購入者の間からも、1,024×600ドットの5.0型ディスプレイ表示が見やすいこと、入力デバイスとしてキーボードの評価が高いこと、3秒起動という高速性がモバイル環境に適しているといった声などがあがっているという。


 三重県亀山高校では授業で利用するためにネットウォーカーの一括導入が決定するなど、教育分野での活用も始まっており、「モバイルPCと電子辞書との中間を埋める商品としても存在感は高まっている」と自負する。

 また、企業からの引き合いが徐々に増加しているという点でも、企業市場開拓に貢献できるものといえよう。シャープ社内でも、ネットウォーカーを営業端末として、100台単位で活用するという動きがすでに見られている。

 だが、その一方で反省材料もある。

 すでに首都圏で2回の交通広告を展開するなど、積極的な告知展開を行なってきたものの、ネットウォーカーの認知度はまだまだ低い。

 「出荷実績という点でも、まだまだ満足できるレベルにはない。単純にPCの機能をコンパクトにしたというだけではなく、どんな用途に使えるか、もっとソリューションの観点から提案しなくてはいけない」。

 新たに投入したPC-T1は、企業での利用をかなり意識している。

 笛田氏は、「できれば半分の構成比にまで高めたいと考えている」と目論む。これまでのZ1では、個人向け販売構成比が9割を占めていたのに比べると、狙いの差は歴然といえる。


●PC-T1のターゲット

 では、PC-T1は、なにを狙って開発された製品なのだろうか。

 笛田氏は、「手帳スタイルで、軽快にネットを活用できる端末。とくに、いつでも自在にメモが取れる手書きという点にこだわった」とする。

 文庫本サイズで約280gという軽量化およびコンパクト化を実現。3秒での瞬速起動、6時間駆動、高解像度表示といった基本性能の実現に加えて、スタイラスペンで操ることに力を注ぎ、モバイル環境でも軽快にネットを活用できるということを重視したという。

 これらの性能と手書き機能を活用して、PDFファイルへの直接書き込みを行なうといった使い方もできる。

 そして、12コンテンツの辞書と、および手書き機能を活用することで、読めない漢字も手書き検索をすることが可能だ。

PC-T1の収録コンテンツ
電子ブックとしても利用できる

 つまり、スタイラスペンを利用した手書きノート、あるいは電子辞書での使い方のほか、電子ブックとして、文庫本を読む感覚で使うといったことも可能になのが、T1の大きな特徴となっているのだ。

 さらにサードパーティーの外付けキーボードを使用すれば、タッチタイピングでの入力も可能になる。

 「手書きメモの使い方、あるいは辞書としての使い方など、まさに文房具として、どの提案できるのが、新たなネットウォーカーの使い方提案につながる。それだけの可能性を持ち、市場の拡大を期待させる製品T1だといえる」。


●ネットウォーカーへの意気込み

 ところで、ネットウォーカーのビジネスそのものに対しては、シャープのどのぐらい本気ぶりなのだろうか。

 失礼ながら、実は、我々が想定している以上に、シャープはネットウォーカーに本気である。

 まず、シャープは、この製品を投入するに当たって、ネットウォーカーという新ブランドを立ち上げた。それだけでもシャープがこの製品に強い想いを持って取り組んでいることがわかる。

ネットウォーカーの新ロゴ バッテリは本体後部に収納し、交換できる仕組みだ

 実はそれだけではない。昨年12月、シャープは、ネットウォーカーに新たなロゴマークを追加して発表した。指がまるで歩き出すようなロゴマークである。

 ここまで踏み込むのはシャープとしては異例だ。それだけ経営層もこの製品に対して、強いコミットをしていることの証だといえよう。

 そして、笛田氏は次のようにも語る。

 「T1では、バッテリを取り外し可能にし、予備バッテリを持っていれば、モバイル環境でさらに長時間利用できるという使い方も可能にした。これはネットウォーカーの声を反映したもの。ぜひT1も多くの人に使っていただき、これを次の製品開発に生かして生きたい」。

 このように、すでに次を見据えた動きも開始しているのだ。

 今後、ネットウォーカーに対するシャープの本気ぶりを、どう成果につなげていくのか。いずれにしろ、第2弾製品の投入によって、求められる成果としての「ハードル」は、さらに一段上ったことになるのは確かだ。