シャープ「NetWalker PC-Z1」
〜重さ約409gのLinux搭載モバイルインターネットツール



NetWalker PC-Z1

発売中
価格:オープンプライス



 シャープから登場した「NetWalker PC-Z1」は、OSとしてLinuxを搭載した小型軽量のモバイルインターネットツールだ。

 サイズやスペックは、ネットブックとスマートフォンの間に位置し、MIDやスマートブックと呼ばれる分野の製品だ。シャープは以前、Linux搭載PDA「Zaurus」を発売しており、NetWalker PC-Z1(以下PC-Z1)は、その流れを汲む製品ともいえる。実勢価格は4万円台となっている。

 今回は、PC-Z1を試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。今回、試用したのは10月下旬に発売が予定されている本体色「レッド」の試作機であり、製品版とは細部が異なる可能性があることをご了承いただきたい。

●Freescale製CPU「i.MX515」とUbuntuを搭載

 PC-Z1は、OSとしてLinuxのディストリビューションの1つであるUbuntu 9.04を採用した。Ubuntuは、インストールが容易で、使い勝手もよいことから、人気を集めているディストリビューションである。Ubuntuは、x86対応版だけでなく、ARM版スマートブックリミックスも提供されており、PC-Z1には、それをベースにシャープがカスタマイズしたものが搭載されている。

 CPUとしては、Freescale Semiconductorの「i.MX515」が搭載されている。i.MX515は、ARM Cortex-A8テクノロジを採用したCPUコアに、2D/3Dグラフィックスコアを統合したマルチメディアアプリケーション・プロセッサであり、スマートブック向けに開発された製品だ。メモリは512MB固定で、増設はできない。また、ストレージとして4GBのフラッシュメモリを搭載しており、ユーザーエリアは約2GBとなる。底面には、microSDカードスロット(microSDHC対応)が用意されており、ストレージ拡張用として利用できる。

 PC-Z1のサイズは、約161.4×108.7×19.7〜24.8mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約409gである。官製ハガキのサイズが148×100mmなので、フットプリントはハガキよりも多少大きいが、ネットブックやサブノートPCに比べれば格段に小さくて軽い。ボディカラーは、ホワイト、ブラック、レッドの3種類が用意されており(レッドのみ10月下旬発売予定)、好みに応じて選べるのも嬉しい。ボディの表面には光沢があり、質感も良好だ。サイズや重量は、工人舎から発売された超小型Windows PC「PM」に近い(PMのサイズは約158×94.2×13.5〜22mm(同)、重量約345g)。ここからはPMとも比較しながら、特徴を見ていこう。

PC-Z1の上面。試用機のボディカラーはレッドだったが、他にホワイトとブラックがある 「DOS/V POWER REPORT」誌とのサイズ比較。PC-Z1の小ささがよくわかる 官製ハガキとのサイズ比較。ハガキよりも多少大きい
PC-Z1の底面。microSDカードスロットが用意されている。バッテリは交換できない 試作機の重量は実測で403gであった

●高精細で見やすい5型ワイド液晶を搭載

 液晶サイズは5型ワイドで、解像度は1,024×600ドットだ。通常のネットブックと液晶の解像度は同じだが、タッチパネルを搭載している。タッチパネルは感圧式で、付属のスタイラスペン(本体への収納はできない)や指先などで操作を行なえる。なお、PMは、タッチパネル以外のポインティングデバイスを搭載していなかったが、PC-Z1はキーボードの上部に、光学式ポインティングデバイスを搭載しており、タッチパネルとの使い分けが可能だ。

 液晶は、発色、コントラストともに優秀で、バックライトの輝度も明るく見やすい。液晶の表示品位も良い。もちろん、ノートPCなどに比べるとドットピッチが狭く、文字はかなり小さく表示されるので、視力の弱い人はやや辛いかもしれない。PMは、液晶のヒンジの可動範囲がやや狭かったが、PC-Z1ではかなり水平に近いところまで開くようになっているので使い勝手は良い。

液晶は5型ワイドで、解像度は1,024×600ドットで、タッチパネルを搭載する クリップ型のスタイラスペンが付属するが、スタイラスペンを本体に収納することはできない PM(左)に比べて、PC-Z1(右)は液晶のヒンジの開く角度が大きい

●キーボードには難があるが、ポインティングデバイスは秀逸

 PC-Z1のようなモバイルインターネットツールは、本体サイズが小さいため、キーボードにそのしわ寄せがきがちだ。PC-Z1のキーボードは、一般的なノートPCのキーボードと同じ6列配列になっているが、キーピッチを確保するために、キーの数が全68キーとかなり少なくなっており(通常のノートPCは86キー前後)、1つのキーに割り当てられている機能が多い。

 例えば、「_」(アンダーバー)を入力するには、Fnキーとシフトキーと「/」キーの3つを同時に押す必要がある。慣れるまで記号入力にはやや戸惑いそうだ。

 キーボードがボディの左右一杯に配置されているため、本体サイズの割にキーピッチは広く、主要キーのキーピッチは約14mmを確保している。キーピッチはこのサイズにしては広いが、キータッチがペチペチとした感じで、キートップがぐらぐらするため、キーの中央を正確に押さないと入力されないことがある。

 ノートPCなどのキーボードでは、パンタグラフ構造を採用しているものが多く、キーの端を押しても、キートップがそのまま沈み込み、キーが入力されるが、PC-Z1の場合、キーの端を押すとそのままキートップが傾いてしまう。シャープは電子手帳などでも定評のあるメーカーだが、残念ながらPC-Z1のキーボードはあまり使いやすいとはいえない。

 もちろん、キータッチの好みやキーボードの打ち方は、個人によって違うので、PC-Z1でも快適に入力できるという人もいるかもしれない。キータッチはカタログスペックだけではわからないので、PC-Z1の購入を考えている人は、実際に店頭でデモ機を触るなどして、確認することをお勧めしたい。

PC-Z1のキーボード。6列で全68キーだ。キー配列は一般的なPCのキーボードとはやや異なる。上部には、タッチ式のクイックスタートボタンが用意されている 主要キーのキーピッチは約14mmだ キートップの端を押すと、キートップが傾き、うまく入力できないことがある
 
立って両手で本体を持ち、両手の親指でタイピングをしているところ。正確にキーの中央を押すようにしないと、入力されないことがある

 キーボードの上部には、タッチ式のクイックスタートボタンが4つ用意されており、デスクトップ画面、Webブラウザ、メールソフト、オプティカルポイントのモード切替(後述)の各機能が割り当てられている。

キーボードの右上に、光学式ポインティングデバイスのオプティカルポイントを搭載。指を載せて滑らせることで、ポインティング操作が可能

 PC-Z1は、ポインティングデバイスとしてキーボードの右上に、光学式のオプティカルポイントを搭載している。光学式マウスを裏返したようなデバイスであり、マウスを動かす代わりにセンサーの上に載せた指を滑らせることで、ポインティング操作を行なう。キーボード左上には、左右のクリックボタンが用意されており、基本的に両手で本体を持って、両親指で操作することになる。

 オプティカルポイントの操作性はよく、思った通りに操作できる。また、オプティカルポイントには、マウス代わりに使うカーソルモードとスクロール操作に使うホイールモードの2種類のモードが用意されており、クイックスタートボタンの右端のボタンをタッチするか、Fnキー+「9」キーで、モード切替が可能だ。オプティカルポイントのおかげで、立ったままのWebブラウズなども非常に快適だ。


●標準サイズのUSBポートとminiUSBポートを搭載

 インターフェイスとしては、USB 2.0×2とヘッドフォン出力、microSDカードスロットを搭載している。PMでは、搭載しているUSB 2.0ポートは1つだけで、しかもコネクタがmini仕様であったが、PC-Z1では、左側面に標準サイズのUSB 2.0ポートが、右側面にminiUSB 2.0ポートが搭載されている。変換アダプタを使わずに、USBメモリなどの機器を直接装着できるのは便利だ。なお、miniUSB 2.0ポートも、ホスト機能のみをサポートしており、PC-Z1をPCからストレージとして認識させることはできない。

 無線機能としては、IEEE 802.11b/g準拠の無線LAN機能を搭載している。残念ながらBluetoothには非対応だ。USBポートに通信アダプタを装着して、通信を行なうことも可能だ。ただし、現時点でサポートされている通信アダプタは、イー・モバイルの「D02HW」、「D12HW」、「D21HW」、「D22HW」、「D23HW」の5機種のみだ。

 バッテリは内蔵式で、ユーザーによる交換はできない。公称バッテリ駆動時間は約10時間と長く、この種のデバイスとしては優秀だ。ACアダプタも小さくて軽く、気軽に持ち運べる。ちなみに、本体重量はPMのほうが軽いが、ACアダプタはPC-Z1のほうが軽く、本体+ACアダプタの重量(試作機を実測した結果)は、PC-Z1が613gなのに対し、PMが596gで、ほとんど変わらなくなる。

左側面には、USB 2.0とヘッドホン出力が用意されている 右側面には、microSDカードスロットとminiUSB 2.0が用意されている。microSDスロットにはカバーが付いている microSDカードスロットのカバーを開けたところ
microSDカードスロットにmicroSDカードを装着したところ USBポートにイー・モバイルの通信アダプタ「D21HW」を装着したところ オプティカルポイントの上部に、バッテリ状況と無線LANの状況を示すインジケーターが用意されている
ACアダプタは、小さくて軽い CDケース(左)とACアダプタのサイズ比較 ACアダプタの重量(ケーブル込み)は、実測で210gと軽い

●動作速度はまずまずだが、スタンバイからの復帰は高速

 通常のWindows PCであれば、いくつかのベンチマークテストを行なうのだが、PC-Z1は、Ubuntu搭載マシンなので、Windows用ベンチマークプログラムは動作しない。そこで今回は、ベンチマークプログラムではなく、起動時間や実際の使用感をお伝えする。

 まず、シャットダウンからの起動は、約1分16秒だった。Windows PCと比べても、あまり高速だとはいえない。WebブラウザとしてFirefoxがプリインストールされているが、Firefoxの起動にかかる時間は約11秒であり、やや待たされる感覚だ。いったん起動してしまえば、動作速度はまずまずで、Atom+Windows XPのネットブックほどではないにしても、一般的なWindows Mobile搭載スマートフォンよりも快適だ。

 また、オフィススイートのOpenOffice.org 3.0がプリインストールされているので、OpenOffice.org 3.0 Writerの起動時間を計測したところ、約34秒であった。こちらも起動はやや時間がかかるが、起動後はそれなりの速度で動作する。

 メディア再生に関しては、HD動画を扱うのはPC-Z1には荷が重く、VGAクラスの動画でも、再生はギリギリという印象である。

 シャットダウン状態からの起動にはやや時間がかかるが、スタンバイからの復帰時間はかなり高速で、約3秒で復帰する。標準では電源スイッチを押すとスタンバイ状態になるため、シャットダウンせずに、常にスタンバイ状態にしておけば、すぐに復帰できるので便利だ。

 そのほか、Ubutuでは、対応アプリケーションの一括管理・導入が可能であり、「アプリケーション」→「追加と削除」から、各種フリーソフトなどをダウンロードできるのも便利だ。

PC-Z1のデスクトップ画面。3×3に配置されたアイコンをダブルクリックすることで、アプリケーションが起動する ファイル管理を行なう「ファイル・ブラウザ」。機能やUIは、Windowsのエクスプローラによく似ている メールソフトとして「Thunderbird」がプリインストールされている
Officeスイートとして「OpenOffice.org 3.0」がプリインストールされている 「アプリケーション」→「追加と削除」から、アプリを選んでダウンロード、インストールが可能だ

●モバイルインターネットツールとしての機能は十分

 PC-Z1は、シャープが満を持して投入したモバイルインターネットツールであり、キーボード以外の不満点は少ない。逆にいえば、キーボードの出来さえ良ければ、さらに高い評価をつけられる製品だ。

 また、Windowsを採用せずUbuntuを採用したことについては、メリットとデメリットの両面があるが、Webサービスを中心に使うのなら、PC-Z1の仕様は、必要にして十分である。Windowsにはこだわらず、街角や旅先で気軽にインターネットアクセスしたり、メモを取ったりしたいというのなら、本製品は魅力的だろう。

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(2009年 10月 1日)

[Text by 石井 英男]