ASUS JAPANシンシアの「華華(ふぁふぁ)通信」

ブラッド・ピット→布莱徳彼特、辛西亜→シンシアというお話

 ニイハオ! ASUS JAPANマーケティング兼広報担当のシンシアです。今回からPC Watchで私の出身地である台湾に関するコラムを連載することになりました! もっと台湾を好きになってくれたらと思い、いろいろお話ししていきますのでよろしくお願いします。

 “シンシア(Cynthia)”って聞くと、青い目に金髪の西洋人と思われるかもしれません。でも、私は台湾・台北市で生まれ育った生粋の台湾人で、写真の通り東洋人です。すると「では、なぜシンシアという洋風な名前なの?」という疑問が湧くでしょう。今回はその理由を説明します。

 アジア圏企業の人と仕事をしたことがある方や、そこで働いている方、あるいは台湾などに友人がいる方はご存じかと思いますが、実は、台湾ではほとんどの人が本名とは別にイングリッシュネーム、すなわちアメリカ人のような英語名を持っているのです。私達にとってはあまりにも当たり前の文化なので、台湾にいる限り「なぜあなたはシンシアと名乗っているの?」などと聞かれることはまずありません。でも、多くの日本の方はそうではないと思います。これは、距離が近く、言語も近しいけど、2つの地域で大きく異なる文化の1つですね。

 では、なぜ私がシンシアと名乗るようになったのでしょうか。以下は、あくまでも私個人の体験なので、全ての台湾人に当てはまらないかもしれません。私の世代(日本で言うと団塊ジュニアぐらいの年かな)では、英語の勉強は中学から始めました。私の本名は“滕 婉華”(とう・わんふぁ)です。英語では“Teng Wanhua”と書きます。“婉華”と“Wanhua”の発音はほぼ同じで、英語を喋っている感じがないですね。そういうこともあってか、当時の私の先生は、最初の英語の授業で、全生徒に順番にそれぞれのイングリッシュネームを書いた紙を配っていったのです。

 1番はAnnie、2番はMary、3番はNancy……、と50番ぐらいありました。ちなみに台湾の座席順番は名前の五十音順などではなく、誕生日順です。今でも鮮明に覚えていますが、私は33番で、私に与えられたイングリッシュネームは“Diana”(ダイアナ)でした。Dianaと言えば、あのイギリスの元皇太子妃。私はそんなエレガントじゃないし、イメージがあまりにもかけ離れすぎ。なので、このイングリッシュネームはとてもとても嫌でした……。でも、幸いなことに、先生は「その名前が嫌なら、次の授業までに好きな名前に変えていいよ」と言ってくれたのです。

 当時はまったく英語ができないし、あれこれ思いつくほどのレパートリーがないし、親も英語はできないし、インターネットもない状況だったので、私が参考にしたのは映画雑誌でした。日本と違い台湾や中国では西洋人の名前も漢字にされます。例えば、Brad Pitt(ブラッド・ピット)は“布莱徳彼特”(ぶーらいどぅ・びぃとぅ)となります。映画雑誌に載っていた漢字の名前をいろいろと見ていて、私は“辛西亜”(しんしーや)と言う名前の中国語の響きと、Cynthiaのアルファベットの見た目のかわいさを気に入り、自分のイングリッシュネームをCynthiaに決めました。ちなみに辛の漢字は、日本語では「つらい」、「からい」を意味しますが、中国語ではそれ単体では意味を持ちません。ただ、たくさんの映画雑誌を参考したので、俳優の“Cynthia・誰”さんから参考したのかは全く覚えていないのです……(笑)。

 というように、私は英語の先生に付けられそうになりましたが、台湾では自分のイングリッシュネームを自由に付けられます。ニックネームみたいなものなので、しょっちゅう変える人もいれば、持ってはいるけど全く使わない人もいます。私も当時はほとんど使っていませんでした。ちなみに、パスポートなどの証明書類にも、本名と別にイングリッシュネームを登録することも可能です。ただ、私の知る限り、ほとんどの人は登録していないはずです。

 私のいるPC業界では、ほとんどの台湾人がイングリッシュネームを持っており、それでお互いを呼び合っています。でも、それまではイングリッシュネーム使っていなかったので、ASUSに入ったばかりの時は、シンシアと呼ばれることにどうしても抵抗があり、当時の上司だったAndrew(アンドリュー)に「どうしてもイングリッシュネームを使わないといけないですか?」と相談したほどです。すると、上司は「ASUSではイングリッシュネームを使うことによって、上下関係の壁をなくしているんだよ」、と回答してくれました。なるほど。確かに、上司をファーストネームの“アンドリュー”で呼ぶことによって、話しやすくなると感じ、以降は社内でシンシアと名乗るようになりました。今では、ASUS JAPAN社長のことを“Emilie”(エミリー)と呼んでいるし、本社会長のことも、Jonney(ジョニー)と呼び捨てで呼んでいます(笑)。

 でも、日本生まれの日本人社員はどうしても“シンシアさん”と、さん付けで呼びたがります。その辺の判断は本人達に任せていますが、私は本当は「さん付け」はいらないと思っているんですよ(笑)。

 ただし、今でも台湾にいる時、プライベートではこの名前を全く使いません。仕事の時だけシンシアを名乗っています。

 おそらくほとんどの日本の方は、イングリッシュネームを名乗ることに抵抗があると思いますが、英語圏の人にとって日本語の名前は発音がしにくく、また覚えにくいので、ビジネスではイングリッシュネームを持っていた方が便利な状況も少なくありません。

 ちなみにASUSは中国では“華碩電腦”と書き、“ふぁしょう・でんなう”と読みます。電腦はコンピュータですが、華碩は“華人之碩”の略です。華人とは中国文化を引き継ぐ中国人や台湾人、そして碩は優れているという意味です。

 そうそう、日本語ではアスースとかエーサスではなく、正式にはエイスースと読みます。これを機に覚えてくださいね。

 私は2002年8月にASUSに入社して、マザーボード、ビデオカードなど自作パーツの広報・マーケティング担当を経て、Eee PCを始めとしたノートPCや直近のタブレットなどほとんどの製品の国内マーケティングに関わってきました。

 今回は自己紹介として、シンシアの由来を知ってもらいました。今後も、少しずつ台湾のことを中心に、一般の方が知らないようなASUSの社内文化などについてもお話していきたいと思いますので、また付き合ってくださいね。それでは再見!

シンシア

台湾・台北市出身。2002年8月にASUS JAPAN入社。当社初の正社員です。自作パーツ担当を経て、現在はPC製品の全般マーケティングディレクター。人手不足のため、2014年3月から広報も兼任中です。今まで担当した製品の中でに一番印象に残ったのは「A8N-SLI Premium」です。ビデオカードの2枚挿しの感動は今も忘れられません。テクノロジーへの感動はそこから始まったといえるでしょう。愛用機はFonepad 6(ファブレット)、ZenFone 5、ZenWatch、iPhone 4S。趣味はドライブ(郊外限定)とおしゃべり(情報交換)。