山田祥平のRe:config.sys

ARROWS Tab Wi-Fiで予感する次世代Ultrabookへの期待

 いよいよ今年も残りわずか。震災の翌年ということもあり、本当にいろんなことがあったし、いろんなことを考えた。PCシーンに目を向ければ、やはり、激動であり、Windows 8の出荷開始と、そこに至るまでの波瀾万丈、さらにはiOSやAndroid OSなどの動きも顕著だった。

周辺機器としてのカメラ

 iPhoneの「周辺アクセサリ」のうち、もっとも高価なものは、BMWなどの高級車なんだそうだ。いくらなんでも、そんなに高いものは買えない。でも、カメラくらいなら何とか手が届く。というわけで、キヤノンのEOS 6Dを買ってきた。購入したのは焦点距離24-70mmズームレンズとのセット製品だ。発売された直後だったが、いつも買い物をする量販店に立ち寄ったところ、運良くその場で入手することができた。

 なぜ、このカメラに食指が動いたのかというと、GPSを内蔵していること、iOS/Android/Windowsと、常用しているすべての環境からWi-Fiを使ってリモートコントロールができる点につきる。

 GPSについては、これから買うカメラには必須の装備だと思っている。EOS 6Dの場合、更新間隔を設定しておき、電源がオフのときにもずっと測位し続ける仕様だ。バッテリ消費とのトレードオフにもなるのだが、カメラの電源をオンにしたときに、すぐに現在地がレディ状態になるのがいい。

 リモートコントロールについては、iOS、Android用にEOS Remoteというアプリが無償配布されている。それぞれのデバイスでライブビューしながら撮影したり、カメラ内の画像を確認したり、デバイスに転送したりすることができる。Windows環境ではEOS Utilityを使ってセッティング、PC画面でのライブビュー撮影はもちろん、カメラ本体を使って撮影した直後の自動データ転送までをこなせる。また、Wi-Fiについてはルーターなどへ接続するインフラストラクチャモードと、カメラ本体がアクセスポイントになるモード、双方が用意されているのもいい。

 ちなみに、スマートフォンでWi-Fiテザリングを有効にして、そこにインフラストラクチャモードのカメラを接続しても、スマートフォンとカメラの接続はできなかった。このため、ルーターがない環境では、カメラをアクセスポイントにするしかないのだが、スマートフォンをカメラに接続してしまうと、接続している間は、スマートフォンがインターネットに出て行けなくなってしまう。こんな具合にそれぞれのソフトウェアの使い勝手は、さらなる向上を期待したいが、「できること」という点では今のところぼくにとっての理想のスペックを持ったカメラだ。

 冒頭の写真も、この機能を使って取り込んだものだ。撮影してメモリカードを抜いてPCに装着して取り込んでといった手順は意外にめんどうなのだが、これならレリーズ直後に原稿を書いているPCで画像を確認できてラクチンだ。

ARROWS Tab Wi-Fiが見せる可能性

 こうした周辺機器の母艦となるデバイスは、今やよりどりみどりといってもいい。特に2012年はバリエーションが充実した。

 将来のPC環境を先取り体験という点では、今、富士通のARROWS Tab Wi-Fiに注目したい。仕上がりは秀逸だ。Clover Trailこと、 Atom Z2760搭載の10.1型タブレットだが、32bit版とはいえ、フルWindows PCだ。メモリ2GBでストレージ64GBというので心配はあったが、SkyDriveの同期フォルダを必要最低限にしたり、メールのオフラインストレージを限定するなどしてしのぎ、思った以上に軽快に使えている。

 Micro USBで充電ができるというのも便利だ。自宅では付属のクレードルに立てかければ充電ができるし、出先で困ったときには、スマートフォンの充電環境があれば用が足りる。そもそも、出先での充電を考える必要がないくらいにバッテリが保つので、日常的にはその必要性を感じないのだが、出張時にクレードルや電源アダプタを持ち出す必要がないというのはうれしい。

 難点は標準的なUSB端子が用意されていないことだろうか。さらに、メモリカードスロットがmicroSDなので、カメラのメモリカードデータの転送や、ちょっとしたデータのやりとりに不便を感じる点くらいだろうか。

 ただ、付属しているケーブルは、単なるUSBホストケーブルのようで、保証外かもしれないが市販の廉価なものが使える。スマートフォンでも使えるケーブルなので、カバンの中に常備しておいてもいいかもしれない。スリープ中にこのケーブルを使ってスマートフォンの充電もできるので、29Whの巨大なモバイルバッテリだと思うと、かなり可用性は高い。

 また、この製品には、富士通の電子辞書がプリインストールされていて、コンテンツそれぞれを別当購入することを考えるとかなりお買い得感があるのだが、そのユーティリティのタッチ対応が不十分で検索結果一覧や、説明をタッチ操作でスクロールできず、スクロールバーの操作が必要になる。ここは惜しいところだ。

 防水防滴という点もうれしいが、パッキン付きのカバーがあまりにも簡単に開閉できるので、ちょっと不安にもなる。

 文字入力については、標準的なWindows 8のSIPを使うしかなく、そこはガマンといったところだろうか。だから、長文入力のためにMicrosoft Wedge Mobile Keyboardをいっしょに持ち歩くことが多い。ARROWS Tab Wi-Fiが540gで、キーボードが250g、合計で790gというのは、まともなWindows 環境としてはけっこうなインパクトがある。

 このキーボードはタブレットスタンドにもなるカバーが付属していて、それが205gだ(いずれの重量も実測値)。相対的にカバーが重すぎるので、100均ショップで数十gの使いやすそうなスタンドを物色中だ。カバーの脱着とキーボードの電源オン/オフは連動するので、それなりに便利なのだが、ちょっと重すぎる。電源についてはFn+ESCの長押しで手動でオン/オフできるので、キーボードを裸でカバンに入れておいても問題はなさそうだ。

 ただし、この組み合わせが、コンバーチブル型などのWindowsノートPCと完全代替できるかというと、ちょっと微妙だ。というのも、机のない環境、たとえばイス席のみの記者会見会場や、立ったままの電車の中で外付けキーボードを使うのは現実的に無理だからだ。

ずっとつながっている

 ARROWS Tab Wi-Fiがどうして将来のPC環境を先取りしているかというと、Windows 8のConnected Standbyをサポートしているからだ。来年リリースされることになっているHaswellこと、次世代のCoreシリーズでもサポートが始まるが、それに先立ち、まず、Atomでというわけだ。

 Connected Standbyでは、PCをスリープさせても、接続が維持される。この状態では、デスクトップアプリは完全に停止、ストアアプリの一部がOSに通信パターンを登録し、OSが30秒おきに起きて必要な通信をまとめて行なうようになっている。BluetoothのDUNでスマートフォン経由でインターネットに接続した状態で、スリープさせたまま持ち運んでみると、スリープから復帰したときに、すぐにインターネットが使えるのが便利だ。

 まだ、ストアアプリが充実していない現時点で、Connected Standbyがどのような役にたつのかは未知数だが、たとえば、LTE内蔵ARROWS Tabなどがあれば、モバイルルーターとして使えるようになったりするかもしれない。現時点でも、たとえば標準のミュージックアプリでは、再生中にスリープさせても、再生はそのまま続く。まさにスマートフォン、iPod感覚だ。

 とはいえ、スリープ中には、外部からPingを打っても応答しないし、ファイル共有などもうまくいかない。30秒おきというタイミングにうまく合えばよさそうなものだが、まだ、呼ばれることには慣れていないようだ。

 プロセッサの処理能力については、出荷当初、バッテリ運用時50%に抑止されていたので、多少の不満はあった。だが、これは先日、富士通からパッチのアップデートが出てバッテリ使用時にも100%での運用が可能になって解消した。まるで生まれ変わったようだ。このあたりの詳細については、ARROWS Tab ヘビーユーザーのブログ「ふぃおの至高のデジライフ」に詳しい。

よいお年を

 将来のPC環境を先取りしたARROWS Tab Wi-Fiを使えば使うほど、近い将来のHaswell登場も待ち遠しくなる。次世代のUltrabookは、あらゆる点でPCシーンを刷新するに違いないと見ているのだが蓋を開けてみないことには何ともいえない。だからこそ、期待は高まる。いい年になってほしい。

 今年もご愛読ありがとうございました。来年2013年も、引き続き、よろしくどうぞ。

(山田 祥平)