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PCIe 5.0 SSDなのに爆熱じゃない!? しかもお手頃価格な「EXCERIA PLUS G4」

 PCIe 5.0市場が盛り上がっている。Intel、AMDとも最新のマザーボードでは一部のエントリーモデルを除き、多くがPCIe 5.0に対応。ビデオカードも最新世代ではGeForce、RadeonがどちらもPCIe 5.0対応となり、本格的な普及が進んでいる。 そのPCIe 5.0を活用するストレージとして注目したいのがキオクシアの「EXCERIA PLUS G4」だ

 現在市場に出回っているPCIe 5.0(Gen 5とも言う)対応のSSDは、10,000MB/s超の転送速度があるものの、発熱が大きく、価格が高いため導入のハードルが高かった。 しかし、EXCERIA PLUS G4は、10,000MB/sの速度でPCIe 4.0対応のSSDと変わらない低発熱を実現。さらに、これまでのPCIe 5.0対応SSDよりも2TB品なら1万円弱安い手頃な価格となっており、コスパを重視しつつワンランク上の高速ストレージを求める人にピッタリの製品と言える。 ここでは、実際にPCケースに組み込んだ上で、速度、温度の両面から実力をチェックしていく。

PCIe 5.0 SSDながら低発熱かつ低消費電力

EXCERIA PLUS G4
キオクシアのPCIe 5.0 x4対応NVMe SSD「EXCERIA PLUS G4」。1TB(実売価格1万7,000円前後)と2TB(同2万8,000円前後)をラインナップしている

 EXCERIA PLUS G4は、キオクシアの個人向けとしては初となるPCIe 5.0 x4接続のNVMe SSDだ。キオクシアの第8世代BiCS FLASH TLCフラッシュメモリと、PhisonのPCIe 5.0対応コントローラ「PS5031-E31T」を組み合わせることで、シーケンシャルリードで最大10,000MB/s、シーケンシャルライトで最大8,200MB/sの速度を実現している。キャッシュ用のDRAMを搭載しない、いわゆるDRAMレスの製品だ。後述するが、最近はSSDの性能が上がったことでキャッシュ搭載の優位性が出にくくなっている。

M.2 2280フォームファクタの片面実装タイプ
2TBモデルの全体。フラッシュメモリとコントローラで構成されており、DRAMは搭載されていない
裏面には何もない片面実装のタイプだ
シールの内側には放熱性を高めるための薄型のヒートシンクが備わっている
PCIe 5.0 x4接続で高速データ転送が可能
CrystalDiskInfoでの表示。PCIe 5.0 x4接続であることが分かる

  最大の特徴は、低発熱、低消費電力を重視したフラッシュメモリとコントローラを採用し、PCIe 4.0 x4接続では到達できない速度と扱いやすさを両立していること。 フラッシュメモリの第8世代BiCS FLASH TLCは、218層と前世代よりも記録密度を高め、高速化しながら消費電力の削減を可能にするCBA(CMOS directly Bonded to Array)という新しいアーキテクチャを採用している。

CBA技術を採用したキオクシアの「BiCS FLASH」第8世代について詳しく知りたい方は、動画の内容を参照(キオクシア公式YouTubeチャンネルより)

 PhisonのPS5031-E31Tは、DRAMレス対応のPCIe 5.0向けコントローラ。SSDはハイエンド向けでも12nmプロセスのコントローラが多い中、TSMC 7nmとかなり微細化したプロセスで製造されており、ハイレベルな低発熱、低消費電力を達成している。

低発熱と低消費電力を重視
フラッシュメモリには218層の第8世代BiCS FLASH TLCを採用している
コントローラはTSMC 7nm製造のPhison PS5031-E31Tを搭載。PCIe 5.0対応で4ch仕様

 SSDにおいてDRAMはランダムアクセス性能を高める役割があるので、DRAMレスである点は気になるかもしれない。しかし、 メインメモリの一部をキャッシュに割り当てるHMB(Host Memory Buffer)に対応しているのに加えて、コントローラの進化によって性能面での影響はかなり小さくなっている。DRAMを搭載しないことで消費電力もコストも抑えられるため、性能がそれほど変わらなければDRAMレスになるのは自然な流れと言える。

 そのほか主なスペックは以下の通り。

【表1】EXCERIA PLUS G4のスペック
容量1TB2TB
フォームファクタM.2 2280
インターフェイスPCI Express 5.0 x4
プロトコルNVMe 2.0c
NANDフラッシュメモリキオクシア BiCS FLASH TLC
コントローラPhison PS5031-E31T
シーケンシャルリード10,000MB/s10,000MB/s
シーケンシャルライト7,900MB/s8,200MB/s
ランダムリード130万IOPS
ランダムライト140万IOPS
総書き込み容量(TBW)600TB1,200TB
保証期間5年
実売価格1万7,000円前後2万8,000円前後

  価格の面でみると、PCIe 5.0 SSDは現在その多くが1TBで2万円台、2TBで3万円台後半から入手できる一方、EXCERIA PLUS G4は1TBが1万7,000円前後、2TBが2万8,000円前後と手頃だ。 ちなみに、PCIe 4.0 SSDだとそれぞれ1万円前後、1万円台後半からとなっているので、本製品はPCIe 5.0と4.0の中間の価格帯に位置していると言える。

 なお、 本製品はPCIe 5.0対応ではあるが、従来からのPCIe 4.0環境で利用しても、シーケンシャルリード/ライトの最高速度を引き出せないことを除き、多くのシーンで近い性能を発揮できる。 今回はそこも含めて検証しているのであわせて注目してほしい。

エアフロー最小限のPCケースでも余裕で運用可能

検証で使ったPCケースはZALMAN TechのT8。コンパクトでシンプルなケースだ

 ここからは性能をチェックしていこう。実際の利用を想定し、背面に120mmファンを1基だけ搭載しているシンプルなPCケースを用意して、そこにCore Ultra 9 285KとIntel Z890マザーボードの環境を組み込んだ。CPUクーラーは空冷を使用している。

 PCIe 5.0 SSDはその速度ゆえに発熱が大きいことで知られているが、エアフローがそれほど強力ではない環境でもEXCERIA PLUS G4は問題なく使えるのかを検証しようというものだ。

 比較対象として、同社のPCIe 4.0対応でメインストリームモデルの「EXCERIA PLUS G3」、ハイエンドモデルの「EXCERIA PRO」も用意した。EXCERIA PLUS G4については、マザーボードのUEFIメニューで動作を切り替えて、PCIe 5.0とPCIe 4.0の両方で検証している。検証環境は以下の通りだ。

【表2】SSDの検証環境
CPUIntel Core Ultra 9 285K
(24コア/24スレッド)
マザーボードMSI MAG Z890 TOMAHAWK WIFI
ビデオカードMSI GeForce RTX 3050 LP 6G
メモリCorsair VENGEANCE DDR5 CMK32GX5M2B6400C36
(PC5-51200 DDR5 SDRAM 16GB×2)
システムSSDPCIe 4.0 SSD、2TB
CPUクーラーDeepCool AK400
(サイドフロー、120mmファン)
電源Super Flower LEADEX V G130X 1000W
(1,000W、80PLUS Gold)
PCケースZALMAN Tech T8(ATX)
OSWindows 11 Pro バージョン24H2
PCIe 4.0対応のメインストリーム/ハイエンドと比較
EXCERIA PLUS G4のほか、比較用にEXCERIA PLUS G3、EXCERIA PROも用意した。すべて2TBモデルだ
【表3】比較検証に使用したSSDの仕様
製品名EXCERIA PLUS G4EXCERIA PLUS G3EXCERIA PRO
容量2TB2TB2TB
インターフェイスPCIe 5.0PCIe 4.0PCIe 4.0
シーケンシャルリード10,000MB/s5,000MB/s7,300MB/s
シーケンシャルライト8,200MB/s3,900MB/s6,400MB/s
ランダムリード130万IOPS68万IOPS80万IOPS
ランダムライト140万IOPS95万IOPS130万IOPS
シンプルなエアフローの環境で検証
このケースは前面にファンはなく、背面に排気用の120mmファンが1基あるだけ
補助電源不要のビデオカードを使っていることもあり、内部は比較的スッキリ
SSDはマザーボードのPCIe 5.0対応M.2スロットに装着してテストしている
ヒートシンクはマザーボード付属のものを利用している
ちなみにこのSSD用ヒートシンクは、PCIe 5.0対応マザーボードのものとしては、それほど分厚くないため冷却能力は低い。PCIe 4.0 SSDなら十分でも5.0になると、サーマルスロットリングが発生する可能性が高まる

CrystalDiskMark 8.0.6

 ここからは実際に性能をチェックする。まずは、データ転送速度を測る定番ベンチマークの「CrystalDiskMark 8.0.6」から実行しよう。

EXCERIA PLUS G4(PCIe 5.0接続)の結果
EXCERIA PLUS G4(PCIe 4.0接続)の結果
EXCERIA PLUS G3(PCIe 4.0接続)の結果
EXCERIA PRO(PCIe 4.0接続)の結果

 EXCERIA PLUS G4(PCIe 5.0接続)は、シーケンシャルリードが10,407.11MB/s、シーケンシャルライトが8,651.78MB/sと公称よりも若干速いスピードを記録。 PCIe 4.0接続でも、ハイエンドモデルのEXCERIA PROと変わらないシーケンシャルリード/ライト性能を見せている。

PCMark 10 Full System Drive Benchmark

 次は、Microsoft Office、PhotoshopやIllustratorといったAdobeのクリエイティブ系、オーバーウォッチといったゲーム系など、さまざまなアプリの動作をシミュレートするPCMark 10のFull System Drive Benchmarkを実行しよう。アプリに対するレスポンスのよさを確かめられるテストだ。そこから、ゲームの起動速度、Adobe製品の処理速度部分を抜粋した結果も掲載する。

PCMark 10 Full System Drive Benchmarkの結果
ゲーミングとクリエイティブ関連の結果

 EXCERIA PLUS G3に対して約23%、シーケンシャル性能では並んでいたEXCERIA PROに対して約43%も高いスコアを記録。 PCIe 4.0接続でもスコアはほとんど下がっておらず、アプリのレスポンスにおいて優秀なのが分かる結果だ。 個別の処理を見ても、ゲーミング、クリエイティブともトップに立ち、どのアプリでも高い性能を発揮できる。

3DMark Storage Benchmark

 続いて、ゲームの起動やロード、録画しながらのプレイなどゲーム関連のさまざまな処理をシミュレートする3DMarkのStorage Benchmarkを試そう。スコア2,500以上が高速モデルの目安だ。同じくゲーム系として「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク」のローディングタイムも測定する。

3DMark Storage Benchmarkの結果
ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマークの結果
ローディングタイムを計測し、比較している

 3DMarkはEXCERIA PLUS G3を約22%、EXCERIA PROを約27%も上回った。 こちらもPCIe 4.0接続でのスコア低下はわずか。ゲーミング系の処理にも強いことが分かる。 ファイナルファンタジーXIVのローディングについては、PCIe 5.0接続ではトップの早さ、PCIe 4.0接続ではEXCERIA PROとほぼ同じという結果になった。

シーケンシャルライト時の速度および温度

 続いて、シーケンシャルライト時の速度と温度の推移をチェックしたい。TxBENCHを使って10分間連続でシーケンシャルライトを行なったときの速度と温度をモニタリングアプリの「HWiNFO Pro」で追ったときの値だ。今回はすべて空き容量が100%の状態でスタートしている。

書き込み中の速度の推移

 ほとんどのSSDは、容量の一部をSLCとして扱うことで高速な書き込みを実現する「SLCキャッシュ」を採用している。このSLCキャッシュの容量は製品によって異なり、固定の場合あれば、空き容量にあわせて可変する場合もある。

 PCIe 5.0接続のEXCERIA PLUS G4は、約7,500MB/sの高速な書き込みが行なわれ、約417GB書き込みを行なった時点でSLCキャッシュが切れて、その後は平均1,482MB/sで推移した。 キャッシュが切れても比較的高い速度を維持しており、大容量のデータを扱っても不満を感じることは少ないはずだ。

書き込み中の温度の推移

 そして注目したいのは温度だ。シーケンシャルライトは負荷の高い処理だが、 PCIe 5.0接続のEXCERIA PLUS G4は4分過ぎからPCIe 4.0接続のEXCERIA PROを下回った。最大でも52℃とPCケースのエアフローが強力ではないことを考えると、非常に低い温度と言ってよい。薄めのヒートシンクでも問題なく運用できるだろう。

 さらに、PCIe 4.0接続ならば、速度が大きく下回るEXCERIA PLUS G3とほとんど変わらない温度になる。 ちなみに、参考用に検証した別メーカーのPCIe 5.0 SSDはこの環境では84℃に達し、高温による破損を防ぐため速度を落とすサーマルスロットリングが発生した。それだけに、EXCERIA PLUS G4は驚くべき低発熱だ。

価格よし、扱いやすさよし。10GB/sの速さを手軽に体験

 EXCERIA PLUS G4は、PCIe 4.0接続のSSD以上の性能を持ちながら、温度はほとんど変わらず、多くのPCに組み込みやすいのが最大の強みだ。さらに価格もこれまでのPCIe 5.0 SSDより安く、高速なストレージ環境を試してみたいと考えている人にマッチする。SSDはまだまだ進化できることを感じさせてくれる製品と言える。

※「BiCS FLASH」はキオクシア株式会社の登録商標です。
※各ベンチマークソフトを用いた測定結果は、著者が独自に測定したものであり、本測定結果について、各ベンチマークソフト作成元、ゲームメーカー等へのお問い合わせはご遠慮願います。