トピック

ゲーミングPCのエントリーモデルとハイエンドモデル。その違いは何なのか?実ゲームで徹底検証!

~パソコン工房の「LEVELθ」と「LEVEL∞」の代表モデルで比較

コスパ重視の「LEVELθ iiyama PC LEVEL-M17M-144F-RLX-BLACK」(左)と性能重視の「LEVEL∞ iiyama PC LEVEL-M7P5-R57X-UL5X」(右)それぞれの特徴と性能をチェックしていく

 ビジネス向け、ゲーマー向け、クリエイター向けと多彩なBTOパソコンを展開しているパソコン工房だが、デスクトップ型のゲーミングPCとしてコストパフォーマンスを重視した「LEVELθ」と、性能を重視した「LEVEL∞」の2種類を展開しているのをご存じだろうか? 製品ラインナップが豊富なのはいいことなのだが、逆にどのモデルを購入すればいいか、迷うこともある。

 そこで、両者の見た目や選択できるパーツの幅や、描画負荷の異なる10タイトルのゲームがどの程度快適にプレイできるかや、配信時ながらのプレイも可能なのかなど、多角的にチェックした。パソコン工房のゲーミングPCの購入を検討している人にとって、参考になるはずだ。

コスパ重視でも見た目を凝れる楽しさがある「LEVELθ」

LEVELθのブラックモデル。赤のLEDを内蔵している。シンプルでスマートなデザインも目を引く

 パソコン工房のデスクトップ型ゲーミングPCでコストパフォーマンスを重視しているのが「LEVELθ」(レベルシータ)だ。価格帯は10~20万円でCPUはRyzen 5 4500/Ryzen 5 7500F/Core i5-14400Fの3種類、GPUはGeForce RTX 3050(6GB)/RTX 4060/RTX 4060 Ti(8GB)/RTX 4070の4種類から組み合わせたモデルをラインナップしている。

 モニターがフルHD解像度(1,920×1,080ドット)で、240fps超など、それほど高いフレームレートを求めないならRyzen 5 4500+GeForce RTX 3050(6GB)の組み合わせで104,800円からと、かなりお手頃価格を選択できる。一方で、高フレームレートでのプレイや描画負荷の高いゲームをWQHD(2,560×1,440ドット)程度の解像度でも遊びたいニーズに応えられるGeForce RTX 4060 Ti(8GB)/RTX 4070も用意するなど、なかなかに絶妙なパーツチョイスだ。

 今回パソコン工房よりお借りした評価機(製品名: iiyama PC LEVEL-M17M-144F-RLX-BLACK)の主な仕様は、Core i5-14400F、メモリ16GB(8GB×2)、SSD 500GB、GeForce RTX 4060(8GB)となっている。価格は15万9,800円。

今回紹介する筐体以外にピラーレスモデルもある

 価格追求だけではなく、本体のカラーリングとしてブラックとホワイトを用意しているのに加え、ブラックでは冷却ファンに赤のLEDを内蔵、ホワイトではピンクと青のLEDモデルを用意と、ゲーミングPCらしさもしっかりと確保している。左側面は強化ガラスなのでLED映えする内部の様子をいつも楽しめる。さらに前面も強化ガラスのピラーレスモデルも用意されている。見た目にこだわりたい人にオススメだ。

左側面には強化ガラスを採用しており、内部が見えるのもゲーミングPCらしいところ
サイドパネルは手で簡単に開けられる
内部はスッキリしている。背面と天面の両方にファンが付いており、低価格でもエアフローをしっかり確保している点は好感が持てる
上部にはUSB 3.0×1、USB 2.0×2、マイク入力、ヘッドフォン出力が用意されている

 コスパを追求するため、BTOで選択できるパーツは厳選されている。メモリは最大32GBまで、ストレージは容量の変更は可能だが、2台目の追加はできない。拡張性という点では、LEVELθはある程度の割り切りは必要と言える。動画編集や本格的な配信を意識して、もっと上位のパーツや大容量のメモリ、ストレージを求めるなら、次に紹介する「LEVEL∞」の導入を検討したい。

本体サイズからパーツまで自由に選べる「LEVEL∞」

LEVEL∞のミニタワーモデル「M-Class」。スッキリとしたスマートなデザインで両サイドは内部の見えないスチールタイプだ

 ほぼ現行のCPUとGPUの組み合わせを網羅しているのが「LEVEL∞」(レベルインフィニティ)だ。そのため、価格帯も15万円~60万円オーバーと非常に幅広い。4K解像度でのゲーミングに加えて、配信や切り抜き動画制作などのクリエイティブワークも対象とし、Ryzen 9 7950X3DとGeForce RTX 4090という超強力な組み合わせを選ぶこともできる。予算、目的に合わせて柔軟に対応できるのが大きな強みだ。

 BTOで選べるパーツも豊富だ。モデルによって多少異なるが、メモリは128GBの大容量も選択でき、ストレージはSSDとHDDを3~4台も搭載できる。大量のゲームインストールや動画編集をするなら、ストレージ容量はいくらあっても困らない。ゲームだけではない、細かなニーズに応えられる点はLEVELθと大きく異なるところだ。

 今回パソコン工房よりお借りした評価機(製品名: iiyama PC LEVEL-M7P5-R57X-UL5X)の主な仕様は、Ryzen 7 5700X、メモリ32GB(16GB×2)、SSD 1TB、GeForce RTX 4070 Ti(12GB)となっている。標準の16GBモデルの価格は24万9,800円で、32GBを搭載した試用機は25万9,800円となる。

ハイエンドなCPUとGPUを組み合わせたモデルもズラリと揃えるLEVEL∞
メモリ容量の組み合わせだけでも幅広い選択した用意されている

 LEVEL∞には、ミドルタワーのR-ClassやフルカラーLEDを備えるRGB Buildなど複数の筐体を展開しているが、今回はミニタワーの「M-Class」を紹介する。メインストリームという位置付けで、LEVELθのケースよりも若干コンパクトながら300mmのビデオカード、24cmクラスの簡易水冷クーラーが搭載可能。3.5インチベイもあるので大容量のHDDも取り付けられるとしっかり拡張性が確保されている。フロント、天面、底面にはホコリの侵入を防ぐフィルターが装着されているが、いずれも簡単に取り外しが可能とメンテナンス性も良好だ。

フロントパネルは手前に引くだけで簡単に外れる。そのため内部のダストフィルターも手軽に掃除が可能だ
天面のフィルターもマグネット固定なので、簡単に取り外しができる
高さはないが、奥行きは長めなので内部にはゆとりがある
上位のビデオカードを搭載するモデルにはホルダーが装着される。安心のポイントだ
ケースの上部にはUSB 3.0×2、ヘッドセット端子が備わっている

ゲーム10タイトルで性能を徹底比較

 ここからは、LEVELθとLEVEL∞ M-Classの性能を比較していく。ゲームベンチについては、さまざまなユーザーの指標になりやすいよう、フルHD、WQHD、4Kの3つの解像度で実施している。それぞれのスペックは以下の通りだ。今回の評価機では、CPUのコア数こそLEVELθのほうが上だが、GPUはLEVEL∞ M-Classが圧倒的に格上、メモリ容量も上回っている。これがどこまで性能差につながるか注目してほしい。

【表1】両製品の主な仕様
型番LEVEL∞ M-Class(LEVEL-M7P5-R57X-UL5X)LEVELθ(LEVEL-M17M-144F-RLX-BLACK)
CPURyzen 7 5700X(6コア12スレッド)Core i5-14400F(10コア16スレッド)
ビデオカードGeForce RTX 4070 Ti(GDDR6X 12GB)GeForce RTX 4060(GDDR6 8GB)
メモリDDR4-3200 32GB(16GB×2)DDR5-4800 16GB(8GB×2)
ストレージ1TB (NVMe SSD)500GB (NVMe SSD)
価格25万9,800 円15万9,800 円
【表2】各GPUの主な仕様
GPU名RTX 4070 TiRTX 4060
CUDAコア数7,6803,072
ベースクロック2310MHz1830MHz
ブーストクロック2610MHz2460MHz
メモリサイズGDDR6X 12GBGDDR6 8GB
メモリバス幅192bit128bit
RTコア第3世代第3世代
Tensorコア第4世代第4世代
アーキテクチャAda LovelaceAda Lovelace
DLSS33
NVENC第8世代×2第8世代
カード電力 (W)285115
システム電力要件 (W)700550
電源コネクタ8ピン×2または300W以上の12VHPWR×18ピン×1または12VHPWR×1

 ゲームの前に基本性能を見ていこう。CGレンダリングでCPUパワーをシンプルに測る「Cinebench 2024」とWebブラウジングや表計算などPCの一般的な処理をエミュレートする「PCMark 10」を実行する。

Cinebench 2024の結果
PCMark 10の結果

 Cinebench 2024はコア数が多く世代的にも新しいCore i5-14400Fを搭載するLEVELθが上回った。この処理はGPU性能が関わらないだけに、LEVEL∞ M-Classが弱い部分だ。

 その一方でPCMark 10のスコアはほとんどがLEVEL∞ M-Classが上回った。特にクリエイティブ性能を測るDigital Content CreationではGPUの性能差もあってスコア差が大きく開いている。

 では、実ゲームではどうだろうか。まずは軽めのFPSとして「VALORANT」、「Apex Legends」、「オーバーウォッチ2」を試した。VALORANTはプラクティスモードの屋外射撃場で一定コースを移動した際のフレームレート、Apex Legendsはトレーニングモードの一定コースを移動した際のフレームレート、オーバーウォッチ2はbotマッチを実行した際のフレームレートをそれぞれ「CapFrameX」で測定してる。

VALORANTの結果
Apex Legendsの結果
オーバーウォッチ2の結果

 ゲームでは、LEVELθとLEVEL∞ M-Classの性能差は明らかだ。Apex Legendsは最大で300fpsのゲームだが、LEVEL∞ M-ClassではWQHDまでほぼ上限に到達し、4Kでも高いフレームレートを維持できる。VALORANTとオーバーウォッチ2も、どの解像度でも高いフレームレートを出しており、軽めのゲームなら4Kでもプレイできるパワーを持っているのが分かる。

 一方のLEVELθは4Kになるとフレームレートが大きく落ちる。特にオーバーウォッチ2では快適なプレイの目安と言える平均60fps以下になっており、GeForce RTX 4060の限界が見える部分だ。やはり、この製品はフルHD~WQHDでのプレイに向いていそうだ。

 続いて最大60fpsしか出ないゲームから人気格闘ゲームの「ストリートファイター6」とDLC発売で人気再燃中の「エルデンリング」を試してみよう。ストリートファイター6はCPU同士の対戦を実行した際のフレームレート、エルデンリングはリムグレイブ周辺の一定コースを移動した際のフレームレートをそれぞれ「CapFrameX」で測定している。なお、どちらもアップスケーラーなど描画負荷を軽減する技術を導入していないゲームだ。

ストリートファイター6の結果
エルデンリングの結果

 ストリートファイター6は、LEVEL∞ M-Classなら4Kまで上限の60fpsでプレイが可能だ。LEVELθもWQHDまでは60fpsを維持しており快適にプレイできるが、4Kになると平均30.2fpsまで下がり、対戦は難しくなる。

 エルデンリングはレイトレーシングを有効化すると非常に描画負荷が高くなり、LEVELθはフルHDでもカク付きが目立ち平均48.5fpsしか出ない。その一方でLEVEL∞ M-Classなら、WQHDまでほぼ上限に達しており、美しい画面で快適にプレイが可能だ。4Kだと平均46fpsとちょっとカク付きが見られるようになる。もちろん、レイトレーシングをオフにしたり、描画設定を下げればLEVELθでも快適にプレイできる。

 次に、アップスケーラーとフレーム生成を組み合わせたDLSS 3に対応する中量級ゲームとして「Call of Duty Modern Warfare 3」と「ディアブロIV」を実行する。Call of Duty Modern Warfare 3はゲーム内のベンチマーク機能を利用、ディアブロIVはキヨヴァシャド周辺の一定コースを移動した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定した。

Call of Duty Modern Warfare 3の結果
ディアブロIVの結果

 Call of Duty Modern Warfare 3は性能差が顕著に出るゲームだ。LEVEL∞ M-Classなら、4Kまで十分快適にプレイできるが、LEVELθは平均60fpsを下回る。ディアブロIVは、最大400fpsまで設定可能だが、130fps前後で頭打ちになるようで、フルHDではどちらもほぼ同じ性能を出せる。4Kとなると差は明らかで、LEVELθは半分以下になってしまう。高解像度になるほど、性能差が開いていく傾向はここでも同じだ。

 最後にDLSS 3に対応する重量級ゲームから「ドラゴンズドグマ2」(5月31日のアップデートでDLSS 3に対応)、「Starfield」、「サイバーパンク2077」、を試そう。ドラゴンズドグマ2は国境監視団宿営地の一定コースを移動した際のフレームレート、Starfieldはジェミソンのロッジ周辺の一定コースを移動した際のフレームレートをそれぞれ「CapFrameX」で測定、サイバーパンク2077はゲーム内のベンチマーク機能を利用した。

ドラゴンズドグマ2の結果
Starfieldの結果
サイバーパンク2077の結果

 ドラゴンズドグマ2は、今回の環境では105fps付近で頭打ちになるようでLEVEL∞ M-ClassではフルHDとWQHDでフレームレートがほとんど変わらなかった。4Kでも平均91fpsと高く、描画負荷が重いと言われてきたドラゴンズドグマ2だが、DLSS 3に対応したこともあってかなり遊びやすくなったのは確かだ。LEVELθだとWQHDまでは60fpsを超えるが、4Kは平均37.5fpsとなった。

 Starfieldも同じ傾向だ。LEVEL∞ M-Classなら4Kまで快適、LEVELθは4Kだと厳しいという結果。

 サイバーパンク2077はより厳しく、LEVEL∞ M-Classなら4Kまで十分プレイできるが、LEVELθはWQHDの時点で平均31.7fpsともうプレイが難しくなる。2020年発売のサイバーパンク2077だが、いまだに最重量級ゲームと言える描画負荷の高さだ。

ゲームをプレイしながらの配信は可能なのか2タイトルで検証した

 ここからは、ゲームの配信を試してみたい。OBS StudioでYouTubeにゲームをフルHD解像度でライブ配信(エンコーダはNVENCで8Mbps設定)している画面に、Adobe Character Animatorで作成したキャラクターをWebカメラでリアルタイムに動かしている映像を合成した上で、Discordも実行するという非常に負荷の高い状況を作り、ゲームへのフレームレートがどう変わるのかチェックしてみた。VTuber的な配信を実行してみたわけだ。まずは、Apex Legendsの配信から。

LEVEL∞ M-ClassでApex Legendsを配信しているところ。メモリの使用率は44%とまだまだ余裕がある。CPU、GPUの使用率もそれほど高くない
LEVELθでは同じ配信を実行するとメモリ使用率は87%とほとんど余裕がなくなっている。メモリが16GBだとちょっと厳しくなる場面だ
Apex Legends配信中のフレームレートの変化

 LEVEL∞ M-Classは、配信を行ないながらプレイしても平均フレームレートはほとんど下がらなかった。その一方でLEVELθは平均が20fps以上低下した。マシンパワーの差が見える部分だ。次はより負荷の高いサイバーパンク2077で同じく配信を実行した。

LEVEL∞ M-Classはメモリ使用率は51%とまだ余裕がある。ただ、ゲームの負荷が高いためCPU使用率は高くなっている
LEVELθはメモリ使用率が96%とほぼ使い切っており、CPU、GPU負荷ともに高い。余力がほとんどなくなっているのが分かる
サイバーパンク2077配信中のフレームレートの変化

 Apex Legendsとは異なり、CPU負荷が高まったこともあって、LEVEL∞ M-Class、LEVELθとも大きく平均フレームレートを落とした。それでもLEVEL∞ M-Classは平均60fps以上をキープできているのに対し、LEVELθは平均53.1fpsまで低下。重量級ゲームの配信を行なうなら、メモリは32GB以上、GPUはなるべく上位にしたいところだ。

ゲームだけならLEVELθでもOK! 配信や動画編集まで考えるならLEVEL∞を

 以上の通り、フルHDでの快適なゲームプレイを求めるなら、Core i5-14400FとGeForce RTX 4060を組み合わせた15万円台のLEVELθでも人気/定番タイトルを十分に動かせる能力がある。ただ、メモリが16GBなので、ゲームをプレイするだけなら問題ないが配信まで行なうと余力がなくなってしまう。

 絶対的な馬力という点ではRyzen 7 5700XとGeForce RTX 4070 Tiを組み合わせ、メモリが32GBあるLEVEL∞ M-Classの方が上回る。多くのゲームを4Kでも遊べるパワーがあり、同時に配信を行なっても、性能もメモリもまだまだ余裕がある。その分、LEVELθとの価格差は9万円ある。

 いずれのシリーズもよい製品だが、自分がどのゲームをどの解像度、どれくらいの画質設定でプレイしたいのかが選ぶ際のポイントとなる。今回の検証結果がその参考となれば幸いだ。