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NPUでAI処理が超高速に!内蔵GPU性能も爆上がり!! Meteor Lakeこと「Core Ultra 7プロセッサー155H」搭載のMSI「Prestige 16 AI Evo B1M」を試す

MSIの16型ノートPC「Prestige 16 AI Evo B1Mシリーズ」(評価機はPrestige-16-AI-Evo-B1MG-1001JP)。CPUにCore Ultra 7プロセッサー155Hを搭載する。実売価格は239,800円前後

 12月14日(米国時間)Intelは、ノートPC向けの新CPU「Core Ultraプロセッサー」を発表した。開発コード名「Meteor Lake」と呼ばれていたもので、3種類のコアを採用、AIエンジンの搭載、内蔵GPUの性能向上などなど革新的なCPUになっている。今回はその中で、16コア22スレッドの「Core Ultra 7プロセッサー155H」を搭載するMSIのノートPC「Prestige 16 AI Evo B1Mシリーズ」を試用する機会を得た。

 クリエイティブ、AI、ゲームと、さまざまな処理で第13世代Core、第12世代CoreのノートPCと性能を比較していきたい。GPU性能においては単体GPUであるGeForce GTX 1650 Max-Qとの比較も行なう。

Prestigeシリーズはビジネス・クリエイター向けということもあり、シックで落ち着いたデザインを採用している。家庭で使うにしても地味すぎず、上質感のある仕上げが好ましい
【表1】
Prestige 16 AI Evo B1Mのスペック
CPUCore Ultra 7プロセッサー155H(16コア22スレッド/Pコア6、Eコア8、LP Eコア2)
メモリLPDDR5 32GB
ストレージ1TB NVMe SSD
GPUIntel Arc Graphics
液晶3,840×2,400ドット表示対応16型(60Hz)
OSWindows 11 Pro
インターフェイスThunderbolt 4(USB PD対応)×2、USB 3.2 Gen2、HDMI、SDカードスロット、Webカメラ、ステレオスピーカー、オーディオコンボジャック
ネットワークWi-Fi 7(現時点では日本ではWi-Fi 7は未認可のため6Eで利用可)、Bluetooth 5.4、Gigabit Ethernet
本体サイズ358.4×254.4×18.95mm
重量1.59kg

3種類のコアで構成されるCore Ultraプロセッサー

 MSIのPrestige 16 AI Evo B1Mは、16型で4K+(3,840×2,400ドット)の高解像度ディスプレイを搭載するノートPCだ。最大の特徴はCore Ultraプロセッサーをいち早く搭載していること。

 Core Ultraプロセッサーはさまざまな点で従来のCPUから大きな進化を遂げているが、なかでも電力効率にはとくに重点を置いている。「Intel 4」プロセスで製造され、従来からのパフォーマンス重視のPコア、効率重視のEコアに、省電力のLP Eコアが加わった。負荷の低い処理はLP Eコアが担当し、それ以上の性能が必要になった際にPコア、Eコアを呼び出すことで省電力性を高めている。

 さらに、Surface Laptop Studio 2などに搭載されていた、AI向けプロセッサであるNPUをCPUに内蔵。Intel初のAIエンジンを統合したCPUである点も大きな特徴だ。

 Core Ultraは、Core Ultra 5、Core Ultra 7、Core Ultra 9がラインナップされるが、本機に搭載されるのは「Core Ultra 7プロセッサー155H」だ。6基のPコア、8基のEコア、2基のLP Eコアの16コア22スレッドという構成。ブーストクロックは最大4.8GHz、3次キャッシュは24MB、TDPは28Wとなっている。

CPU-Zでの表示。6基のPコア、8基のEコア、2基のLP Eコアで16コア22スレッドなのが分かる
タスクマネージャーでの表示。NPUを内蔵しているため、使用状況が「NPU 0」という項目で表示される
AV1のハードウェアエンコードにも対応しており、OBS Studioの映像エンコードでも「QuickSync AV1」として選択可能だった

 CPU内蔵のGPUに「Intel Arc」が採用され、従来よりも大幅に性能が向上しているのも注目点だ。8基のXeコア、8基のレイトレーシングユニット、128基のベクトルエンジンというスペックを持っており、これはノートPC向けの外部GPUである「Intel Arc A350M」の6基のXeコア、6基のレイトレーシングユニット、96基のベクトルエンジンを超えるもの。その実力もチェックしていく。

【Core Ultraが動く姿を目撃せよ。MSI「Prestige 16 AI Evo B1M」をライブ解説【12月15日(金)20時開始】VTuber2名も参戦!】
大注目のCore Ultraを搭載したMSI「Prestige 16 AI Evo B1M」をライブ配信で解説します。Core Ultraの特徴やベンチマーク結果の解説、Prestige 16 AI Evo B1Mの実動デモなど盛りだくさんの内容でお届けします。出演は“秋葉原で生まれたハイスペック頭脳派デジタルおじさん”で、インテル公認「PCマイスター」"TOPマイスター"の称号を持つ、VTuberの「アキバ機土」さん、MSIノートPCイメージキャラクターのVTuber「美星メイ」さん、テクニカルライター芹澤正芳さん、MCはPADプロデューサーの佐々木と伊石真由さんが務めます。

Core Ultra 7プロセッサー155HのNPUはAI処理が爆速で省電力

 さっそく、一番気になる性能チェックに移ろう。比較用として、同じくMSIのノートPCから第13世代のCore i7-1360Pを搭載する「Summit E13 Flip Evo A13M」(GPUはCPU内蔵のIris Xe Graphics)と第12世代のCore i7-1280Pを搭載する「Prestige-14-A12SC-239JP」(GPUはGeForce GTX 1650 Max-Q)を用意した。CPU性能および、Iris Xe GraphicsとGeForce GTX 1650 Max-Qに対してゲーム性能はどうなのか注目してほしい。また、NPUに対応するAI処理に関するテストも行なう。それぞれのノートPCのスペックは下の表にまとめた。

【表2】検証機のスペック比較
製品名Prestige 16 AI Evo B1M(Prestige-16-AI-Evo-B1MG-1001JP)Summit E13 Flip Evo A13M(Summit-E13FlipEvo-A13MT-048JP)Prestige-14-A12SC-239JP
CPUCore Ultra 7プロセッサー155H(16コア(6P+8E+2LPE)22スレッド)Core i7-1360P(12コア(4P+8E)16スレッド)Core i7-1280P(14コア(6P+8E)20スレッド)
GPUIntel Arc Graphics(CPU内蔵)Intel Iris Xe Graphics(CPU内蔵)NVIDIA GeForce GTX 1650 Max-Q
メモリLPDDR5 32GBLPDDR5 32GBLPDDR4X 16GB
ディスプレイ16型(3,840×2,400ドット)13.4型(1,920×1,200ドット)14型(1,920×1,080ドット)
OSWindows 11 ProWindows 11 ProWindows 11 Home
Core i7-1360Pを搭載する「Summit E13 Flip Evo A13M」
Core i7-1280PとGeForce GTX 1650 Max-Qを搭載する「Prestige-14-A12SC-239JP」
動作モードに関しては、それぞれMSI Centerで「究極のパフォーマンス」に設定した
使用シーンをAIを活用して判断し、パフォーマンスを動的に調整する「MSI AI Engine」も搭載

 まずは、CGレンダリングでCPUパワーを測定する「CINEBENCH R23」、PCの基本性能を測定する「PCMark 10」をチェックしよう。

CINEBENCH R23の結果
PCMark 10の結果

 CINEBENCH R23については、Core Ultra 7プロセッサー155Hは16コア22スレッドだけあり、マルチコアでトップのスコアを獲得した。シングルコアのスコアでもトップで、13世代や12世代のCore PプロセッサーやCore Uプロセッサーと比べて基本性能の底上げが行なわれているのが分かる。

 アプリケーションを動作させてPCの総合的な性能を測定するPCMark 10でもCore Ultra 7プロセッサー155Hがトップだ。このベンチマークはCPUだけでなく、GPUやSSDの性能もスコアに大きく影響する。特にGPU性能がスコアに関係するDigital Content Creationで、Core i7-1280P+GeForce GTX 1650 Max-QのPrestige-14-A12SC-239JPを上回っている点に注目したい。

 続いて、定番3Dベンチマークの3DMarkだ。DirectX 11ベースのFire StrikeとDirectX 12ベースのTime Spyを実行している。

3DMark Fire Strikeの結果
3DMark Time Spyの結果

DirectX 11ベースのFire Strikeでは、GeForce GTX 1650 Max-Qを搭載するPrestige-14-A12SC-239JPがトップ。特にGPUパワーを見るGraphicsのスコアが高い。一方で、DirectX 12ベースのTime SpyになるとGraphicsのスコアはCore Ultra 7プロセッサー155Hが逆転する。DirectX 12ベースなら、Core Ultra 7プロセッサー155H内蔵のIntel ArcはGeForce GTX 1650 Max-Qを上回る、というわけだ。

 実際のゲームのフレームレートはまた後でチェックするが、エントリークラスゲーミングノートPCで定番の単体GPU、GeForce GTX 1650 Max-Qを内蔵GPUが上回るのはかなりのインパクトだ。

 続いて、Adobeの画像編集アプリである「Photoshop」と「Lightroom Classic」を実際に動作させて、さまざまな処理を行なう「UL Procyon Photo Editing Benchmark」を試してみよう。

UL Procyon Photo Editing Benchmarkの結果

 Core Ultra 7プロセッサー155Hは、順当にCore i7-1360Pを上回ったが、GPU性能の影響が大きいPhotoshop中心のImage RetouchingのテストはCore i7-1280P+GeForce GTX 1650 Max-QのPrestige-14-A12SC-239JPが強かった。Adobe系アプリの最適化という意味では、登場からかなり時間が経っているGeForceの方が現状では有利かもしれないが、Core Ultra 7プロセッサー155Hには今後の最適化による性能向上に期待したいところだ。

 次は、「UL Procyon AI Interface Benchmark」を試そう。これは、複数の推論エンジンを実行してAI性能を測るというものだ。ここではIntelのOpenVINOを指定し、CPUとNPUそれぞれで処理を実行した。

UL Procyon AI Interface Benchmarkの結果
処理にCPUを指定するとCPUに60%程度の負荷がかかる
処理にNPUを指定するとNPUの使用率が70%程度になり、CPUには負荷がほとんどかからなくなる

 Core i7-1360PとCore i7-1280PはNPUを搭載していないのでNPU利用時の結果はない。ポイントはCore Ultra 7プロセッサー155Hでは、CPUよりNPUの方が2.8倍もスコアが上であること。さらに、システム全体の消費電力を見るとCPU処理では最大83Wだったのに対して、NPU処理では最大42.7Wと半分近くになる。ワットパフォーマンスが非常に優秀だ。NPUで処理すれば、CPUやGPU負荷がないので別の作業も同時に進行できる。AIとNPUを活用したアプリの増加を非常に期待したいところだ。

内蔵GPUは実ゲームでGeForce GTX 1650 Max-Qに勝てるのか?

 ここからは、実ゲームでの性能テストに移ろう。解像度はフルHDで固定している。まずは、人気FPSから2本をピックアップ。「レインボーシックス シージ」はゲーム内のベンチマーク機能を利用、「Apex Legends」はトレーニングモードで一定コースを移動した際のフレームレートを「CapFrameX」で計測した。

レインボーシックス シージの結果
Apex Legendsの結果

 レインボーシックス シージはAPIにDirectX 11ではなく比較的新しいVulkanを選んでいることもあり、Core Ultra 7プロセッサー155HのIntel ArcがGeForce GTX 1650 Max-Qをわずかに上回った。逆にDirectX 11を使用しているApex Legendsは、約1.5倍もGeForce GTX 1650 Max-Qの方がフレームレートが高い。Intel Arcの特性が出ている。

 続いて、人気格闘ゲームの「ストリートファイター6」を実行しよう。CPU同士の対戦を実行した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定している。

ストリートファイター6の結果

 このゲームは最大120fpsまで設定できるが、対戦は60fpsまで。LOW設定なら平均60fps到達と快適にプレイが可能だ。このゲームはDirectX 12を使用していることもあり、Intel ArcがGeForce GTX 1650 Max-Qを最小フレームレートで上回っている点に注目したい。

 最後に描画負荷の非常に高い重量級ゲームの「サイバーパンク2077」を試そう。ゲーム内のベンチマーク機能を利用している。

サイバーパンク2077の結果

 画質低でアップスケーラーのXeSSをパフォーマンスに設定してもCore Ultra 7プロセッサー155Hは、平均49.2fpsと何とかプレイできるというレベル。快適なプレイの目安である平均60fpsには届いていないが、内蔵GPUでこのクラスのゲームを現実的にプレイできるというのは大きな進化を感じる。また、DirectX 12のゲームということもあってここでもGeForce GTX 1650 Max-Qを上回っている。

CPU以外も強力!新世代ノートの各部をチェック

 Prestige 16 AI Evo B1MはCPU意外の点でも魅力的な要素が詰まった最新型のノートPCだ。まずは注目したいのはディスプレイ。4K+(3,840×2,400ドット)という高解像度に加えて、OLED(有機EL)を採用しており、高い色の表現力を求めるデジタルシネマ向けのDCI-P3相当の広色域を実現。明部、暗部の両方ともハイレベルな表現が必要となるDisplayHDR True Black 600認証も取得とHDRコンテンツを楽しむだけでなく、CPU、GPUの性能と合わせて、動画や写真は編集はかなり快適に作業することができる。もちろんオフィスアプリはWeb会議とプレゼンソフトなど、複数を一度に動かしても軽々動作する。

 インターフェイスはThunderbolt 4にHDMI、SDカードスロットなどを搭載。出先でプレゼンする際に大画面ディスプレイやプロジェクタに接続することも容易だし、SDメモリーカードで写真や動画のデータを渡されてもすぐに対応できる。

 本体サイズは358.4×254.4×18.95mmで重量は1.59kgと16型としては軽い部類だ。JEITA 3.0に基づくメーカー公称バッテリ駆動時間はアイドル時で最大25時間、動画再生時で最大12時間と非常に長い。

16型のディスプレイはOLEDを採用し、色、明暗の表現力ともハイレベルだ
上部にはWebカメラも搭載。シャッター付きで物理的にカメラを隠せる
ディスプレイは180度開くのでプレゼンにも利用しやすい
キーボードは日本語配列でテンキー付きだ。キーボードは日本語配列で一部隣接キーに誤入力防止の段差を設けている。また、独立型のテンキーも備え、タッチパッドも大型で操作性が高い
白色LEDのバックライトも備えている
右側面にはヘッドセット端子、SDカードスロット、Gigabit Ethernetを備える
左側面は排気口とケンジントンロックスロットを装備
背面にはHDMI出力、USB 3.2 Gen2 Type-A、Thunderbolt 4×2が用意されている
ACアダプタは100Wで比較的コンパクト。Thunderbolt 4端子に接続して使用する
底面から吸気して効率よく背面と両側面から排気する冷却システム「Cooler Boost 3」によってCore Ultra 7プロセッサー155Hの長時間利用でも安定動作を実現している。静音性の面でも配慮があり、今回の先行評価機では調整中のため試すことはできなかったが、AIを利用してファンノイズを抑える設定も用意されたAmbient Silentというモードも備えている

新時代到来!Core Ultra 7プロセッサー155HはAIもゲームもイケる新時代CPU 搭載ノートPCを見逃すな

 ここまでCore Ultra 7プロセッサー155Hを搭載するMSI Prestige 16 AI Evo B1Mのレビューをお届けしてきたが、16コア22スレッドのCPUと、GeForce GTX 1650 Max-Qを時に上回る性能のGPUを100WのACアダプタで駆動できる電力効率の高さは注目に値する。

 この時点で大きな進化を感じるのだが、さらにNPUという大きな新要素もある。今後AIを活用した処理は増えると予想されているが、AI処理といっても生成系であればGPUが、即時性を求められる処理であればCPUが得意、などといった特性がある。そしてNPUはCPUやGPUのリソースを残したまま、かつCPUやGPUよりも省電力でAI処理を実行できる。AIを活用するさまざまなシーンにおいて、CPU、GPU、NPUを使い分けたり同時利用したりできるのがインテルCore Ultraプロセッサー、そしてそれを採用するPrestige 16 AI Evo B1Mのメリットと言える。

 これからノートPCの購入を検討するのであれば、新世代のPCの使い方を先取りできるPrestige 16 AI Evo B1Mは有力な選択肢となるはずだ。