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1万6,384レベル筆圧感知、Adobe RGB 97%の本格16型液タブが7万円台!? XPPen Artist Pro 16 (Gen 2)を漫画家ざら先生に試してもらった
~【オリジナル高解像度イラスト特典アリ】
- 提供:
- XPPen Japan
2023年12月22日 06:30
PCのユーザーインターフェイスとしては、マウスとキーボードだけ見ても使い勝手や好みは千差万別なわけだが、よりアナログに近い感覚が求められるペンタブレットともなると、長時間の作業性や応答性、追従性はもちろん、描き心地などという感覚的な部分も重要なポイントとなってくる。スペック表を見てただけでは分からないことだらけで、ペンタブ初心者ともなれば、実際に触ってみても善し悪しを判断しづらい。製品購入を検討する際には普段からペンタブを使い慣れている人の意見を聞いてみたいところだ。
そんなわけで、XPPenから登場した高性能液晶ペンタブレット(以下液タブ)「Artist Pro 16(Gen2)」のレビューをマンガ家のざら先生にお願いした。Artist Pro 16(Gen2)は16型液晶モニターを備えた液タブで、業界初という1万6,384レベルの高精細筆圧検知に対応した「X3 Proスマートチップ」搭載のスタイラスペンに加え、有線とBluetoothワイヤレスの両方に対応したショートカットキーデバイス「ACK05」や、替え芯一式の入ったペンケースも標準で付属している。
液晶ディスプレイとしても、sRGB 99%、DCI-P3 99%、Adobe RGBでも97%の広い色域をカバーし、2,560×1,600ドット表示(アスペクト比16:10)に対応した非光沢パネルを採用。PCとはUSB Type-Cケーブル1本で接続可能なほか、別売りケーブルでHDMI接続にも対応しており、液晶画面を使用しないペンタブレット(いわゆる板タブ)としても使用可能となっている。
同社の「Artist Pro 16」シリーズには、4K液晶で8,192レベル検知のペンが付属する「Artist Pro 16TP」や、先代Gen1にあたる「Artist Pro 16」が発売されているが、この「Gen2」は、そのいずれから見てもフルモデルチェンジと言って差し支えない内容だ。
しかし、ユーザーにとって一番気になるポイントは、これだけのスペックと装備を備えながら、7万6,980円という破格の値段になっていることだろう(2023年12月25日まで5%オフの7万3,130円)。本製品はその名の通りプロ向けモデルで、他社製品であればこのクラスの製品は2倍以上するのが当たり前なのだから、その性能には懐疑的になってしまうのも仕方のないところ。
はたしてその実際の使い勝手はどのようなものか、漫画原稿作成に1カ月ほど使ってもらったざら先生に聞いてみた。
(1) 16型液タブは大きいか? 小さいか?
(2) スタイラスペンが以前とは別モノに!
(3) ショートカットデバイスは単体でも買いたくなる出来!
(4) 使って分かる長時間での作業性
(5) 総評
16型液タブは大きいか? 小さいか?
――普段は板タブ派のざら先生ですが、最新の液タブを使ってみていかがでしたか?
ざら XPPenの液タブとしては数年前に21.5型液晶のArtist 22E Proという機種をレビューさせてもらったことがあるのですが、今回のArtist Pro 16(Gen2)はもう筐体からして洗練されたな~って感じました。メタルボディでかなり薄型なのにかっちりとした剛性感がありますし、スタンドを本体に収納できるので、しまうときにかさ張らないのはとてもいいです。スタンドの角度を調整できないのですが、私はこれくらいの角度で問題ないですね。
今、うちの作業環境は、自作PCに27型と24型のモニターをつなげているのですが、最近購入したノートPCとArtist Pro 16(Gen2)をUSB Type-Cケーブル1本でつなぐと、これだけで作業環境が完結してしまいます(笑)
さすがに板タブよりは重いし、かさ張りますけど、私の実用レベルの最小作業環境としてはこっちがいいですね。
――16型というサイズの使い勝手はいかがですか?
ざら 16型というサイズと、2,560×1,600ドットという解像度、そして16:10のアスペクト比がマッチしていると思います。自分が作画するときのメインのソフトとして使っている「SAI」と「CLIP STUDIO PAINT」だと、普段使うツールを画面左側に縦に配置していますが、アスペクト比16:10で縦1,600ドットだとムリなく配置できて動かしやすいですね。
デスクトップPC環境では24型で1,920×1,200ドットのモニターを使っていまして、これも16:10なんです。解像度と描画領域の兼ね合いを考えると、液タブとしてはこのサイズがピッタリだと思います。
――液晶の見え方はどうでしょうか?
ざら 液タブの液晶って本当にきれいになりましたよね。見た目的には普段デスクトップで使っているノングレア(非光沢)液晶と大きな差は感じないです。普段、線画の作業するときはモニターの輝度を落とすことが多いのですが、Artist Pro 16(Gen2)はデフォルトのままでも、なんだか目に優しい気がします。描いていてもペン先と画面のズレ(視差)を感じないし、直感的に使えます。これ、ズレが大きいと、細かい線を引いたり、狭いエリアの選択をしたりしているときにミスが増えるのですが、それが少ない時点で間違いなく優秀です。
sRGB 99%カバーだそうですが、最近色塗りするときの基準にしているDisplay P3モードもあるので使ってみたところ、普段使っている4KモニターのDisplay P3モードとそれほど大きな違いは感じられませんでした。そのままArtist Pro 16(Gen2)で作業して納品しても、少なくとも昔のように「印刷したら肌色が茶色だった」ということはないはずです。いい時代になりましたね……。
スタイラスペンが以前とは別モノに!
――業界初の1万6,384レベルの筆圧検知が謳われていますが違いは分かりますか?
ざら 最初は普段使っている8,192レベルの板タブと比べて格段に変わったという感じはしなかったんです。でも、使っているうちに、軽くペン先を置いただけのわずかな筆圧でも線が途切れないことに気が付きまして。あ、これが検知機能2倍ってことか! と理解しました。
グラデーション表現にはスクリーントーンを使ってしまう漫画家なので、性能を引き出しきれなくて申し訳ないのですが、絵を拡大せずに狭い範囲をマスキングしたり、ちょっとした細い線を引いたりといった細かい作業を感覚的にさっと行なってもミスなくできているのは間違いないです。実際はわずかでしょうけど、消しゴムの出番が減っている実感があります。
それから……この新しいスタラスペン、形状とか前後の重量配分とかが以前の物と変わっていて私は今回のほうが好感触です。ペン先の耐久性などはもっと使ってみないと分からないですが、描き心地というか、ペン先の沈み込む感覚とか、ほぼ違和感なく使えました。
ショートカットデバイスは単体でも買いたくなる出来!
ざら あとは、このショートカットデバイスのACK05! これは本当に使いやすいです。ダイヤルとボタン10個のシンプルなものですが、まさしく「こういうのでいいんだよ」って感じです。個人的にはあと数個ボタンがあってもよかったのですが、久しぶりにちゃんとボタンの数があるデバイスです。なぜこういうものがなかなか出なかったんでしょうか?
横向きでも縦向きでも設定ができますが、人差し指がダイヤルの位置に来る縦向きが私にはベストフィットでした。間違いなくこれは買います。
タブレット本体側にショートカットキーが付いてるものもありますが、使うときのスタンドの角度によっては使い難かったりして好みが分かれると思います。その点、これはワイヤレスでも使えるので楽ですね。バッテリも1回の充電で300時間持つそうですが、1週間くらい充電していなくても切れたことはなかったです。
これ個人的に左手デバイスとして、この10数年で一番の当たりデバイスですよ。ACK05って単体でも6,000円位で売られていて、XPPen以外のタブレットと組み合わせて使えるようにするドライバも用意されているので、ショートカットデバイスをちょっと試してみたいという方にも推したいです。
使って分かる長時間での作業性
――今回は1カ月使ってもらいましたが、何か気が付いたことは?
ざら ある程度使い続けて気が付いたのは、液晶パネルの表面がサラっとしていて、ベタベタしないことですね。気持ちよく作業を続けられます。もう少し使い込んでから気が付いたのは「画面がほとんど熱くならない」ことです。これは大事。タブレットPCとかだと、長時間使っていると本体の熱さが気になってくるものですが、このArtist Pro 16(Gen2)は、長時間作業していてもほとんど熱くなりません。
それに気が付いて本体をあちこち触ってみたら、画面の上のほうだけ熱くなっていました。そこはあまり触らないエリアというか、手のひらが触れるエリアではないので、使っていて全然気が付きませんでした。ユーザーの利用方法を良く理解して、うまい作りになっているなと感心しました。
ざら あとは作業性で言うなら、「板タブモード」にも電源長押しするだけですぐ切り換えられることです。いや、液タブのレビューで板タブモードはどうなのよ、と思われるかもしれませんが、最近、疲れてくると老眼が発動しましてですね……手元の液タブ画面にピントが合わなくなってくるんです。
もうそうなってくると集中力も切れてきているので、切り上げ時ではありますけど、もうちょっとやって終わらせようってときは心機一転。サッと板タブモードに切り換えて作業継続です。ACK05の効果もあって、これまで使い続けてきた板タブに持ち替えるより、Artist Pro 16(Gen2)ほうが馴染んでいます。
総評
――かなりお気に入りみたいですけど、そろそろ液タブ派に転向でしょうか?
ざら 16型の液タブで書き心地が申し分なく、発色もキレイ、しかも抜群に使いやすいショートカットデバイスがセットとなると、使い慣れた板タブの代わりとしても本当に問題ないものになっています。これはもう逃げられないかもしれません。
ざら先生的には本体、ペン、ショートカットデバイスといずれも高評価。コストパフォーマンスも高いので、興味のある方はぜひ一度試してみてはいかがだろうか。
以前、液タブのレビューで自身の腕が映る動画を公開したところ、その腕が太く見えるせいで、その後出会う人々から「思ったより痩せてますね!」と言われ続けたことがある。本人いわく、ちょっとだけわがままボディ。
芳文社『まんがタイムきらら』、講談社『good!アフタヌーン』などで連載歴がある。代表作に「ふおんコネクト!」、「ふたりでひとりぐらし、」、「しかくいシカク」など。インプレスDOS/V POWER REPORTにてPC自作漫画「わがままDIY」を長期連載中。今後の展開は近日公開だとか