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“ダイヤル”付きRyzenノートが登場!これはクセになる新操作感の高性能PCだ

~ASUS「ProArt Studiobook 16 OLED」をプロの映像編集者が検証

今回、プロの映像エディターである小林譲(Jo Kobayashi Bellamy)氏に、「ProArt Studiobook 16 OLED」を実際のクリエイティブワークに利用いただき、プロの目から見たインプレッションを伺っている

 ASUS JAPANは、CPUに8コア16スレッドのRyzen、ディスクリートGPUにGeForce RTXシリーズを組み合わせた16型ノートPC「ProArt Studiobook 16 OLED」を11月24日に発表、12月中旬に販売開始する。本製品は高性能なCPU&GPU、14型WQUXGA(3,840×2,400ドット)の有機ELディスプレイに加え、クリエイティブ系アプリの効率を加速するための「ASUS Dial」を採用しているのが特徴だ。

 ProArt Studiobook 16 OLEDの製品の主なターゲット層として、持ち運び可能な高性能マシンを必要とするクリエイターなどが想定されている。そこで今回、ドラマやCM、映画などで幅広く活躍する映像エディターの小林譲氏に実際にProArt Studiobook 16 OLEDを試用いただき、その感想を伺ってみた。

 なお、製品の詳細なスペックについては知りたい方は、以下の関連記事を参照されたい。

すぐに馴染むProArt Studiobook 16 OLEDの性能と使い勝手

 小林氏はプロの映像エディターであり、普段はコマーシャルの編集現場などで「Adobe Premiere Pro」などの編集ソフトを利用している。今回はProArt Studiobook 16 OLEDで編集、仮合成、トラッキング、キーイングなどの作業を実際に試していただいた。

 いつもはMacBook Proをあちこちに持ち運んで、その場でパッと開いて編集したり、残りは自宅で作業するというスタイルが身に染みついているので、WindowsというOS自体が久しぶりということもあり最初は少し不安もあったそうだ。

 しかし、すんなりとセットアップできて、触れたときの大きさや感触も普段のマシンに近く、違和感なく使い始められたという。ディスプレイの大きさ、ボディの感触にもMacBook Proに近いものを感じたとのことだ。

 小林氏は「 処理性能については申し分なかったです。動画編集の際にはPremiere Pro、Photoshop、After Effectsなどを全部立ち上げたままで作業しますが、これらのヘビー級アプリを切り替えつつ操作しても、まったくストレスなく作業できました 」と語る。具体的なパフォーマンスについては、後半でベンチマークを実施しているので、そちらをご覧いただきたい。

本職の映像エディターとして、すぐにでもProArt Studiobook 16 OLEDに乗り換えられるパフォーマンスを感じたと語る小林氏

有機ELは見栄えの点で圧倒的に有利

 ASUS JAPANは今回発表した全モデルにOLED(有機EL)ディスプレイを採用しており、ノートPCへの本格普及に向けて非常に力を入れている。その中のフラグシップであるProArt Studiobook 16 OLEDに搭載された有機ELディスプレイは、プロの目、用途に応えるレベルなのだろうか?

 まず画質については申し分ないという。「 すごいクッキリ、ハッキリとした発色ですね。特に小さな文字で多くのパラメータが表示されるアプリケーションで視認性が高いです 」とのこと。また、最近は4K、もしくはそれ以上の解像度で撮影される映像が主流なので、WQUXGA(3,840×2,400ドット)というディスプレイ解像度も作業しやすいそうだ。

 実際に映像の画質や色を厳密に検証する際には、カラーキャリブレーションを施した外部ディスプレイに出力することになるが、そのような機材がない出先の撮影現場では映像制作スタッフだけでなく、広告クライアントも小林氏の使うマシンの画面を覗き込むことが多いという。「 現場にはクライアントで映像に詳しくない方もいらっしゃることがあるので、そういった方に分かりやすい画を見てもらえるのは見栄えの点で有利ですね 」とのこと。

有機ELは発色がよく、黒が引き締まり、コントラストがハッキリしている

 なお、ProArt Studiobook 16 OLEDの有機ELディスプレイは、16:10という縦長のアスペクト比を採用している。この点について小林氏はPremiere ProやPhotoshopで映像、画像を表示しながら補足的なパラメータを上下に表示できれば便利だなと思ったという。

 ただ、現在の映像の世界では基本的に16:9の画角を取り扱う。実際にインターフェイスを配置してみるとどうしても上下に余白ができてしまい、せっかくの縦長ディスプレイを生かせないこともあったようだ。とは言え、解像度的には4K(3,840×2,160ドット)をカバーできているため、支障はきたさないそうだ。

ASUS Dialは映像業界に一石を投じるポテンシャルがある

 小林氏が高く評価したのが、今回の目玉と言えるダイヤル式インターフェイスの「ASUS Dial」だ。

 映像制作の現場では専用のインターフェイスとして、カラーグレーディング用のコントロールパネルや、ペンタブレットに付いているショートカットボタンにコマンドを設定し、両手を駆使して行なう作業が結構あるそうなのだが、ノートPCとは別にデバイスを設置するためにどうしても大がかりになってしまう。その点、ASUS Dialはパームレスト部に備え付けられているので、セットアップの煩わしさがない。

 映像を加工する際には、素早く感覚で操作するのが大事なときと、最終的に細かなパラメータの数値をしっかりと決め込むことが重要なときがあるそうで、ASUS Dialはその両方で使える操作性を備えているとのこと。「 映像は感覚でやっているように見えて、実は細かく数値を指定して作業するので、カチカチときめ細かくダイヤル調整できる点は大いにポテンシャルを感じました 」という。

 今回小林氏が試用した際には、Photoshopではカスタマイズできるオプションが多くあった一方で、Premiere Pro、After Effectsではまだまだ機能が限られていた。しかし、今後のアップデートで様々なパラメータを多くのアプリで調整できるようになれば、映像業界に一石を投じるようなアイテムになる可能性があるとのことだ。

ASUS Dialは、感覚で操作するとき、数値を細かく決め込むときのどちらにも使える操作性を備えている。外付けデバイスと異なり、手の移動が少ないのもメリットだ

新旧インターフェイスが充実しているのは非常に便利

 ProArt Studiobook 16 OLEDはUSB 3.2 Gen2 Type-Cを始め、最新のSD Express 7.0対応のメモリーカードスロットを搭載するなどインターフェイスが非常に充実している。この点もプロの現場では重要なポイントだ。

 と言うのも、まず現場ではどのインターフェイスが必要になるのか分からない。現在はType-Cでのやり取りが主流になりつつあるそうだが、USB Type-A、SDメモリーカードもまだ頻繁に利用されている。小林氏によれば「 現場でHDMIケーブルを渡されて、それは使えませんなどと言うと、せわしない現場なだけに空気がピリつきますね(笑)。あらかじめ豊富なインターフェイスを備えているのは本当にうれしいです 」という。

 アダプタやドッキングステーションを装着すればインターフェイス問題は解決できるが、ケーブルが断線して繋がらないとか、持っていくのを忘れてしまうというリスクもある。となると、やはりインターフェイスは充実しているべきだし、移動中にデータを取り込んですぐに編集することもあるので、転送速度は速いにこしたことはないわけだ。

撮影の合間にデータをマシンに取り込んで、山を登っていく車の中で映像を粗編集する過酷な仕事もある。いま使っているThunderboltしかないMacBook Proに比べると、「超便利!」とのことだ

プロが画面だけに集中できるシンプルでクールなデザイン

 ProArt Studiobook 16 OLEDはMIL規格に準拠した耐久性の高いボディを実現している。この点についても、プロの道具として高く評価できるそうだ。

 と言うのも、撮影現場はパイプ椅子と簡単な机で編集ブースが組まれていることが意外に多く、小林氏自身も以前ちょっとトイレに行っている間に、強い風で全部なぎ倒されてしまった経験があるという。同じシチュエーションでProArt Studiobook 16 OLEDが無事かどうかは分からないが、今回小林氏が試用した限りでは多少ラフに扱ってもへこたれない、頑丈さ、耐久性を感じられたとのこと。

 またサイズについては、ヘビー級のゲーミングノートPCに比べると半分ぐらいで、リュックに入れてもかさばらなかったとのことだ。

 小林氏は「 デザイン的にあまりデカデカとロゴが主張しているようなものは好きではないですが、プロが画面だけに集中できるような、余計な装飾、余計な色を使わないProArt Studiobook 16 OLEDのデザインは好きですね 」と述べていた。

ProArt Studiobook 16 OLEDの画面だけに集中できる簡素なデザインを気に入ったと語る小林氏

ProArt Studiobook 16 OLEDはプロから見ても総合点が高いマシン

 近年YouTubeの拡がりなどで、多くのアマチュアが思い思いの動画を作成、投稿するようになった。プロの目線から見て、ProArt Studiobook 16 OLEDはどのようなユーザー向けのマシンなのだろうか?

 「 例えばYouTuberでもいろんなタイプの方々が活動しており、外に出て、何かを撮影して、その場ですぐにアップロードしたいという人もいます。そういう活動的に動き回りたいという方には、機材がコンパクトにまとまり、性能も高いProArt Studiobook 16 OLEDは有力な存在だと感じました 」とのこと。

 もちろん、耐久性、インターフェイスの豊富さ、マシンパワー、ASUS Dialの操作性、高輝度な有機ELディスプレイもおすすめできるとのこと。ProArt Studiobook 16 OLEDはプロ目線から見ても、クリエイター向けのマシンとして総合点が高いと太鼓判を押していた。

「ProArt Studiobook 16 OLEDならアマチュアからプロまで高い満足感が得られる」と小林氏

CPU、GPU、メモリ、ストレージ容量の異なる3モデルが用意

 ProArt Studiobook 16 OLEDにはCPU、GPU、メモリ、ストレージ容量の異なる下記の3モデルが用意されている。

ProArt Studiobook 16 OLEDのラインナップ
型番H5600QR-L2155WH5600QM-L2150WH5600QM-L2149W
CPUAMD Ryzen™ 9 5900HX モバイル・プロセッサー + Radeon™ グラフィックス
(8コア16スレッド、3.3~4.6GHz)
AMD Ryzen™ 7 5800H モバイル・プロセッサー + Radeon™ グラフィックス
(8コア16スレッド、3.2~4.4GHz)
GPUGeForce RTX 3070 Laptop GPUGeForce RTX 3060 Laptop GPU
メモリDDR4-3200 32GBDDR4-3200 16GB
ストレージPCIe 3.0 SSD 1TB
店頭予想価格34万9,800円29万9,800円19万9,800円

 これ以外のスペックはすべて共通。ディスプレイは16インチWQUXGA 有機EL(3,840×2,400ドット、16:10、光沢、最大輝度550cd/平方m、DCI-P3カバー率100%、コントラスト比100万:1、応答速度0.2ms、HDR対応、Delta-E<2)を採用。PANTONE Validated、CalMAN認証を取得している。

 インターフェイスはUSB 3.2 Gen2 Type-C(10Gbps)×2、USB 3.2 Gen 2 Type-A(10Gbps)×2、HDMI 2.1、SD Express 7.0カードリーダ(985MB/s)、Gigabit Ethernet、3.5mmコンボジャックを用意。無線通信はWi-Fi 5とBluetooth 5.1をサポートする。

 本体サイズは362×264×19.9~21.86mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約2.35kg。90Whのリチウムポリマーバッテリを内蔵しており、バッテリ駆動時間は今回借用した最上位モデルの「H5600QR-L2155W」が約7.5時間と謳われている。

本体サイズは362×264×19.9~21.86mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約2.35kg
底面放熱口をグルリと囲む四角形のゴム足が特徴的
ディスプレイは16インチWQUXGA 有機EL(3,840×2,400ドット、16:10、光沢、最大輝度550cd/平方m、DCI-P3カバー率100%、コントラスト比100万:1、応答速度0.2ms、HDR対応、Delta-E<2)を採用
103キーの日本語キーボードを採用。タッチパッドには3ボタンが用意されている
別売りのデジタイザペン「ASUS Pen SA201H」を利用できる
右側面にはSD Express 7.0カードリーダ(985MB/s)、3.5mmコンボジャック、USB 3.2 Gen 2 Type-A(10Gbps)、Gigabit Ethernetを用意
左側面にはセキュリティロックスロット、USB 3.2 Gen 2 Type-A(10Gbps)、電源端子、HDMI 2.1、USB 3.2 Gen2 Type-C(10Gbps)×2を配置

 ProArt Studiobook 16 OLED独自の装備がダイアルコントローラの「ASUS Dial」。本デバイスはプッシュ操作と回転操作に対応。プッシュするとアプリケーションに応じた円形メニューが表示され、Photoshopであれば「Brush Group」、「レイヤーズームイン/アウト」、「取り消し(ヒストリー)」、「ドキュメントを繰り返す」などのよく使う機能をダイアル操作で実行できる。

 もちろん好みの機能を割り当てることも可能。ブラシの太さ、ズームイン/アウト、明るさなどダイアルに適したコマンドを割り当てておけば、クリエイティブワークを効率化できること間違いなしだ。

ASUS Dialはタッチパッド左上に配置。プッシュ操作と回転操作に対応している
ASUS Dialはアプリごとに異なるプリセットを利用可能。例えばPhotoshopであれば、「Brush Group」、「レイヤーズームイン/アウト」、「取り消し(ヒストリー)」、「ドキュメントを繰り返す」などがデフォルトで割り当てられている
「ASUS Dial」への機能割り当ては「ProArt Creator Hub」のコントロール設定から可能だ

ベンチマークではパフォーマンスを最大限に発揮

 今回ASUS JAPANからは、AMD Ryzen™ 9 5900HX モバイル・プロセッサー(8コア16スレッド、3.3~4.6GHz)/GeForce RTX 3070 Laptop GPU/RAM32GB(DDR4-3200)/SSD1TB(PCIe 3.0)という構成の最上位モデル「H5600QR-L2155W」を借用している。主要ベンチマークを実施したところ、下記の表のような結果となった。

 直近のレビュー機と比較すると、同じくAMD Ryzen™ 9 5900HX モバイル・プロセッサーを搭載した小型PC「EliteMini HX90」が、「Cinebench R23」のCPU(Multi Core)で11,340ptsを記録している。今回のProArt Studiobook 16 OLEDのスコアは約1.19倍に相当する13,495ptsを叩き出している。

 これにより独自の冷却システム「ASUS IceCool Proサーマルデザイン」を採用したProArt Studiobook 16 OLEDは、CPUパフォーマンスを最大限に発揮していると言えるだろう。

ProArt Studiobook 16 OLEDのベンチマーク結果
ベンチマーク項目スコア
Cinebench R23マルチコア13,495
シングルコア1,468
PCMark 10総合スコア6,844
Essentials10,160
Productivity9,008
Digital Content Creation9,505
3DMarkTime Spy Score8,947
Fire Strike Score18,972
Port Royal Score5,096
ProcyonVideo Editing score5,962
ベンチマークは、Windows 11の「電源プランの選択またはカスタマイズ」を「ASUS Recommended」、「電源モード」を「最適なパフォーマンス」、「ProArt Creator HUB」の「ファンモード」を「フルスピードモード」、「NVIDIAコントロールパネル」の「プレビューによるイメージ設定の調整」を「マイプレファレンスを使用する→パフォーマンス」、「GeForce Experience」の「ゲーム内のオーバーレイ」を「無効」に設定して実施している
「CrystalDiskMark 8.0.4」のシーケンシャルリード(SEQ1M Q8T1)は2,885.52MB/s、シーケンシャルライト(SEQ1M Q8T1)は3,111.08MB/s

Windows 11をプリインストールし、末永く活躍してくれるマシン

 ProArt Studiobook 16 OLEDは前述の通り、「Windows 11 Home」がプリインストールされている。メモリはSO-DIMM、ストレージはM.2スロットに装着されているので、ゆくゆくは換装して大容量化も可能だ(ユーザーによるメモリとストレージの換装は動作保証外)。

 独自の「ASUSあんしん保証」の対象となっており、万が一の故障の際にも最低限の出費でサポートを受けられる。ProArt Studiobook 16 OLEDはプロ、アマ問わずクリエイティブワークに末永く活躍してくれるマシンと言える。

2年後には有機ELが主流に。ASUSがOLEDモデルを一挙展開する狙い

 ASUSはここで紹介した「ProArt Studiobook 16 OLED」だけでなく、プレミアムノートのZenbookシリーズや、メインストリームのVivobookシリーズでもOLEDのモデルを投入している。

 OLEDは液晶と比べて映像表現に優れたデバイスだが、コストの差はまだ縮まっていない。なぜ他社に先駆けて、製品ラインナップをOLEDで拡充したのか、ASUS JAPAN代表取締役社長を務めるAlvin Chen氏は次のようにコメントしている。

ASUS JAPAN代表取締役社長のAlvin Chen氏

 「ASUSが初めてノートパソコンを市場投入してからおよそ20年が経ちました。近年弊社製品に導入したトレンドや技術の例として、イルミネートキーボード、狭額縁ベゼル、エルゴリフトヒンジなどが挙げられます。ASUSは常にユーザーの目線に立ち、ユーザーにとって利益になる新技術や機能を開発しています。

 製品の特徴だけではなく、“Easy to Work”、“Easy to Fun”も重要な開発する方向性になります。例えば、防菌加工、指紋認証、Webカメラプライベートシールドなどは、昨今必要な機能であり、ASUSは積極的にこれを採用してきました。ディスプレイへのOLEDの採用も、まさにこの考え方を元に検討され、搭載することとなった機能の一つです。

 今回のOLED搭載製品群について、最初からOLEDに注力して製品開発を行なったわけではありません。画面を見る時間が長くなったこの時代だからこそ、OLEDはユーザーにとって、確実に利益があると考え、採用に至りました」という。

 また、今回の新製品の見どころについて、次のように述べている。

 「ユーザー体験を高めるためにASUSが行なった、細かい製品機能の追加や使い勝手の工夫をぜひ見てください。例えば日本語キーボードの配置へのこだわりや、素材。熱の発生場所から筐体のたわみまでASUSはこだわって物作りを行なっており、“Start with people”の考えの元、技術を重んじる会社でありたいと思っております。

 ディスプレイに関して昨今の状況を鑑みても、2年後にはOLEDが主流になるとASUSは考えています。そんなOLEDの価値を一刻も早く、ユーザーに提供していきたいと私たちは考えています。ぜひみなさんの目でASUSの製品を実際に手に取っていただければ幸いです」。