レビュー

980 Ti並みの性能で圧倒的コスパを見せるGeForce GTX 1070

GeForce GTX 1070のリファレンスボード。GTX 1070の型番刻印以外、見た目はGeForce GTX 1080のリファレンスボードと変わらない

 6月10日発売予定のGeForce GTX 1070。今回、そのリファレンスモデルをNVIDIAより借用することができたので、ベンチマークテストで性能をチェックする。

GeForce GTX 1080の下位モデルとなるハイエンドGPU

 GeForce GTX 1070はGP104をベースにしたハイエンドGPU。GP104は、先立って発売されたGeForce GTX 1080にも採用されたGPUコアであり、最新のPascalアーキテクチャを採用、16nmプロセスで製造されている。GeForce GTX 1070はGeForce GTX 1080の下位モデルであり、GeForce GTX 970の後継モデルにあたる。

 GeForce GTX 1070のGP104コアは、1,920基のCUDAコアと120基のテクスチャユニットを備える。ベースクロックは1,506MHz、Boostクロックは1,683MHz。メモリには8GHz相当で動作するGDDR5メモリ8GB搭載。メモリとGPU間のメモリインターフェイスは256bitで、メモリ帯域幅は256GB/sec。TDPは150W。

【表1】GeForce GTX 1070の基本的なスペック
GeForce GTX 1070GeForce GTX 1080GeForce GTX 980GeForce GTX 970
アーキテクチャPascal(GP104)Maxwell(GM204)
製造プロセス16nm28nm
GPU ベースクロック1,506MHz1,607MHz1,126MHz1,050MHz
GPU ブーストクロック1,683MHz1,733MHz1,216MHz1,178MHz
CUDAコア数1,920基2,560基2,048基1,664基
テクスチャユニット120基160基128基104基
メモリ容量8GB GDDR58GB GDDR5X4GB GDDR5
メモリクロック8.0GHz10.0GHz7.0GHz
メモリインターフェイス256bit
ROPユニット64基56基
TDP150W180W165W145W

 今回借用したGeForce GTX 1070は、Founders Editionと呼ばれるNVIDIAリファレンスデザインを採用したモデル。見た目はGeForce GTX 1080のリファレンスボードと同じで、金属フレーム採用のGPUクーラー、基板背面を覆うバックプレートを搭載。ディスプレイ出力端子はDVI-D×1、HDMI×1、DisplayPort×3。

基板背面にはバックプレートを装備
補助電源コネクタは8ピン1系統
ディスプレイ出力端子はDVI-D×1、HDMI×1、DisplayPort×3

テスト環境

 GeForce GTX 1070のベンチマークテストは、前回GeForce GTX 1080のベンチマークレビューで用いた環境をそのまま流用して実施した。また、機材調達の関係から、比較用スコアについても同レビューでの結果を流用している。

 ベンチマークスコアを比較するのは、上位モデルであるGeForce GTX 1080。Maxwell世代のハイエンドGPUであるGeForce GTX 980。Maxwell世代のウルトラハイエンドGPUであるGeForce GTX 980 Tiを大幅にオーバークロックして搭載したZOTAC GeForce GTX 980 Ti AMP! Extreme。以上の3製品だ。

【表2】テスト機材
GPUGTX 1070GTX 1080GTX 980 Ti/GTX 980
CPUIntel Core i7-6700K
マザーボードASUS Z170-A
メモリDDR4-2133 8GB×2(15-15-15-35、1.20V)
ストレージ256GB SSD(CFD CSSD-S6T256NHG6Q)
電源Antec HCP-1200(1200W 80PLUS GOLD)
グラフィックスドライバGeForce 368.19 DriverGeForce 368.13 DriverGeForce 365.19 Driver
OSWindows 10 Pro 64bit
GeForce GTX 1080のリファレンスボード
GeForce GTX 980のリファレンスボード
GeForce GTX 980 Tiを大幅にオーバークロックして搭載したZOTAC GeForce GTX 980 Ti AMP! Extreme。GeForce GTX TITAN Xを超える性能を持つ、Maxwell世代のシングルGPUカードで最速の製品の1つ

ベンチマーク結果

 それでは、ベンチマークテストの結果を確認する。実行したテストは、3DMark(グラフ1、2、3、4、5)、アサシンクリード シンジケート(グラフ6)、Witcher 3(グラフ7)、ダークソウルIII(グラフ8)、ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク(グラフ9)、MHFベンチマーク【大討伐】(グラフ10)。

 3DMarkのFire Strikeにおいて、GeForce GTX 1070は上位モデルのGeForce GTX 1080の82~85%程度のスコアを記録。ZOTAC GeForce GTX 980 Ti AMP! Extremeのスコアに対しては約90%程度で、GeForce GTX 980の約1.3倍という結果だった。

 残るSky Diver、Colud Gateでも、GeForce GTX 1080とZOTAC GeForce GTX 980 Ti AMP! Extremeに次ぐ3番手のスコアとなっている。各テストのGraphics Scoreを見ると、GeForce GTX 1080との間にはおおよそ2割程度のスコア差が存在している。ZOTAC GeForce GTX 980 Ti AMP! Extremeを1割程度下回り、GeForce GTX 980には3割の差を付けて上回る。

【グラフ1】 3DMark - Fire Strike (1,920×1,080ドット)
【グラフ2】 3DMark - Fire Strike Extreme (2,560×1,440ドット)
【グラフ3】 3DMark - Fire Strike Ultra (3,840×2,160ドット)
【グラフ4】 3DMark - Sky Diver
【グラフ5】 3DMark - Cloud Gate

 アサシンクリード シンジケートのフレームレートでもGeForce GTX 1070は比較製品中3番手の数値を記録しており、各GPUとの差も3DMarkの結果に近いものとなっている。ただ、最高描画設定で2,560×1,440ドット以上の画面解像度ではメモリ容量不足でGeForce GTX 980とZOTAC GeForce GTX 980 Ti AMP! Extremeがフレームレートを大きく落としており、VRAM使用量が大きな条件ではGeForce GTX 1070が有利になっている。

 GeForce GTX 980やZOTAC GeForce GTX 980 Ti AMP! Extremeがメモリ不足に陥る設定は、GeForce GTX 1070や上位のGeForce GTX 1080でも60fpsを維持するのは困難な設定だが、GPU性能の不足はSLIで改善が図れることを考えると、8GBのVRAMを搭載したGeForce GTX 1080/1070には、より高画質でゲームを楽しめる可能性が存在していると言える。

【グラフ6】 アサシンクリード シンジケート

 Witcher 3でも比較製品とのフレームレート差はこれまでのベンチマークテスト結果と同じ傾向だ。60fps以上でのプレイが期待できるのは1,920×1,080ドットまで、垂直同期を30fpsに落として画質を多少調整すれば、4K解像度でのプレイも期待できそうだ。

【グラフ7】 Witcher 3

 フレームレートの上限が60fpsとなっているダークソウルIIIでは、2,560×1,440ドットまでは60fpsを維持し、3,840×2,160ドットで39fpsという結果になった。GeForce GTX 980は2,560×1,440ドットで60fpsを割り込んでいるため、最高描画設定の2,560×1,440ドットで60fpsが期待できるGPUとしては、GeForce GTX 1070が下限となる。

【グラフ8】 ダークソウルIII

 ファイナルファンタジーXIVの画面解像度1,920×1,080ドットでは、各GPUともCPUがボトルネック気味でややスコア差が詰まっているが、2,560×1,440ドット以上の画面解像度では、各GPUのスコア差がほかのベンチマークテストと同程度の差となっており、GeForce GTX 1070は比較製品中3番手のスコアを記録している。

 MHFベンチマークでもGeForce GTX 1070の比較製品中3番手という順位は変わらず、スコア差も3,840×2,160ドット時にGeForce GTX 980との差がやや拡大しているものの、ほぼほかのベンチマークテストと同じと言える結果だ。

 GeForce GTX 1070が備える、8GBというメモリ容量と256GB/secのメモリ帯域幅が、フルHDから4Kまでの解像度で安定した性能を実現している。SLI構成でさらなる性能アップを狙おうとする時、GeForce GTX 1070のVRAMの容量と帯域幅は心強いものとなるだろう。

【グラフ9】 ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク
【グラフ10】 MHFベンチマーク【大討伐】

 最後に消費電力の測定結果を紹介する。消費電力の測定はサンワサプライのワットチェッカーで行なった。

 アイドル時の消費電力はPascal世代のGeForce GTX 1070/1080が40Wで横並び、続いてGeForce GTX 980の45W、ZOTAC GeForce GTX 980 Ti AMP! Extremeの57Wと続く。

 フレームレートに制限のないダークソウルIII以外のテストでは、GeForce GTX 1070が比較製品中最も低い消費電力を記録した。GeForce GTX 1080との電力差は30W程度で、両GPUのTDP差とほぼ一致する結果となっている。多くのテストで2~3割のスコア差を付けて上回ったGeForce GTX 980の消費電力をはっきりと下回っており、改めてPascalアーキテクチャと16nmプロセスを採用したGP104コアの電力対性能比の優秀さを感じさせられる。

 フレームレートが60fpsに制限されるダークソウルIIIでは、GeForce GTX 1070搭載システムが1,920×1,080ドット時に消費した電力はわずか123Wで、133WのGeForce GTX 1080をさらに10W下回った。しかし、2,560×1,440ドットになると、GeForce GTX 1070が210Wまで増加したのに対し、GeForce GTX 1080は172Wと逆転している。

 210Wという消費電力は、ほかのテストでGeForce GTX 1070に最高負荷が掛かっている際の電力に近い数値であり、ダークソウルIIIを2,560×1,440ドットの最高描画設定で60fpsを維持するという状況では、GeForce GTX 1070がほぼフルロードで動作しており、使わないGPUコアの電力をカットできるほどの余裕がないことが伺える。

【グラフ11】 システム全体の消費電力

省電力で高性能なGeForce GTX 1070。449ドルという価格にも期待。

 GeForce GTX 1070は、GeForce GTX 980とGeForce GTX 980 Tiのオーバークロックモデルの中間程度の性能を実現しながら、消費電力を大幅にカットしたGPUだ。Founders Editionの販売価格である449ドルという価格はもちろん、消費電力が低いことで電源ユニットへの要求も少なくて済むため、より安価で高性能なゲーミングPCの構築が可能となる。

 Maxwell世代のウルトラハイエンドGPUを凌ぐ性能を持つGeForce GTX 1080は非常にインパクトのある製品であったが、リファレンスモデルであるFounders Editionの価格は699ドルという、GeForce GTX 980 Ti発売時の649ドルより高価であり、GeForce GTX 980の後継としては高めの価格設定だ。性能を考えれば妥当だが、日本での販売価格が10万円近いビデオカードとなると、購入を即決できる層は限られるだろう。

 250ドル安い価格が設定されたGeForce GTX 1070は、GeForce GTX 1080より多くのPCゲーマーにとって選び安いGPUとなる。GeForce GTX 1070の優れたGPU性能と、8GBという余裕あるVRAM容量、そして449ドルという価格は、PCでゲームを本格的に楽しみたいユーザーにとって大いに魅力あるものとなりそうだ。

【お詫びと訂正】記事初出時、販売価格を499ドルとしておりましたが、正しくは449ドルとなります。お詫びして訂正させていただきます。