レビュー

手のひらPC「Pantera Pico PC」とセットになる超小型プロジェクタや折りたたみキーボードを試してみた

Pantera Pico PCとXDOの周辺機器

 「Pantera Pico PC」は、スタートアップ企業のXDOが繰り出す超小型PCだ。現在クラウドファンディングサイトのIndiegogoで出資を募る予定となっており、価格は139ドルからとなっている。

 先日Pantera Pico PC単体での短評をお届けしたが、今回、同じXDOブランドを冠した小型のプロジェクタやキーボード、マウスといった周辺機器のセットが届いたので、簡単にレポートをお届けしよう。

PicoProjecterでできること

PicoProjecter

 PicoProjecterは、Pantera Pico PCより一回り小さい筐体を実現したプロジェクタだ。バッテリを内蔵しているほか、Android 7.1.2ベースのOSも組み込まれているため、単体で動作する点がユニークである。

 起動すると独自UIのランチャーが起動する。本体上部はタッチパッドとなっており、それをなぞることでマウスポインタを動かす仕組み。タッチパッド奥には音量調節、手前にはAndroidのナビゲーションボタンが用意されており、直感的に操作できる。

 タッチパッドのサイズはやや窮屈だが、本体後部はUSBポートも用意されているため、マウスやキーボードを繋げて操作することもできる。また、リモコンが付属するので、こちらでカーソルを駆使して操作することも可能だ。使い始めの際のネットワークやGoogleアカウントの設定はタッチパッドやリモコンだけだとかなりしんどいので、別途マウスとキーボードを接続することをおすすめする。

 本体にはIEEE 802.11ac無線LANも内蔵しているため、ネットワーク設定を一通り済ませたら、YouTubeやNetflixといった動画サービスを視聴したりできるし、Google Playストアで好きなアプリをインストールして使用することもできる。

左右に通気孔があり、ファンも内蔵している
本体背面に3.5mmステレオミニジャックとUSBポート、DC入力を装備
左側面にHDMIを備える
本体上部のタッチパッドで操作する
ピントは手動調節
三脚が付属する

 ただ本製品のプロセッサは4コアのRK3128(Cortex-A7 1.2GHz)、メモリは1GB、ストレージは16GBしかないため、高度なことはできない。基本的にビューワといった軽量アプリ専用だ。USBメモリに保存しておいた画像や動画の投影ができるので、どちらかといえば小規模なプレゼンや家でエンタメ用だろう。

 プロジェクタとしての性能だが、投影方式はDLP、光源はLED、解像度は854×480ドット、輝度は70lm、コントラスト比は350:1。1m離れた場所から投影した場合37.5型相当となる。輝度は低いため、部屋をかなり暗くしたほうがいい。バッテリ内蔵で、約1.5~2時間駆動できる。ピント調節は手動だ。

PicoProjecter起動後の画面

 本体にはジャイロセンサーを内蔵しており、これによって台形補正もできる。本製品は三脚が付属しており、その上に乗せて投影することができるが、やや上向きに投影しても台形補正されるので便利である。またジャイロで画面の反転などもできるのがユニークだ。

 Mini HDMI入力も備えており、Pantera Pico PCを接続してWindowsのデスクトップを映し出すこともできる。が、筆者が試したところなぜかこのモードでは台形補正が効かない。もしかしたらファームウェアのアップデートで改善できるかもしれないが、現状だと高い三脚などを別途利用して、まっすぐ投影するしかなさそうだ。

 入力解像度はWindows 10に1,360×768ドットが推奨されるが、ネイティブだと先述の通り854×480ドットのため文字はかなりぼやける。よって、やはり動画鑑賞用やレトロゲームのプレイ向けだろう。PowerPointの資料を投影するなら、字を大きくしたほうがいい。いずれにしても、Pantera Pico PCとの組み合わせは、正面から投影できる環境が整うのであれば十分利用価値はある。

Mini HDMIでPantera Pico PCと接続したところ
Windowsを接続したところ1,360×768ドットが推奨された。ネイティブは854×480ドットのためかなりぼやける。また、台形補正も効かなくなる
Netflixを鑑賞する用途なら問題ない

 筐体は小型ながらファンも内蔵しており、それなりの甲高い騒音はするが、サイズを考えれば致し方ない。ちなみにスピーカーも内蔵のため、ナレーションや効果音程度なら本体のみで十分対応できる。

 プロジェクタのメリットは、やはり設置スペースや手間を節約しながら大画面を実現できる点なので、設備が整っていない小規模な室内でのプレゼンやプライベートな空間でのエンタメなどに向くと言える。

Bluetoothキーボードとマウス

 今回送られてきたキーボードはBluetooth接続で二つ折りに折りたたんで持ち運べる「XDO-F1KB64」というモデルである。なお、XDOではこのXDO-F1KB64以外に、観音開きで折り畳めるテンキー付きの「XDO-F2KB100」や、メカニカルキースイッチの「XDO-KB64」、「XDO-KB100」、「XDO-KB100BK」なども用意している。

 筆者にとって最初の折りたたみキーボードと言えば、過去にFILCOから発売された「パピヨン」(FKB66PU)だったのだが、いかんせんキータッチが良くなかった上に、ESCキーの場所が特殊だったりと、購入してすぐに使うのを諦め、以降折りたたみ式とは敬遠してしまった。

 一方で本製品はどうかというと、まずまずの完成度だ。英語配列なのは致し方ないが、キータッチは比較的しっかりしており、キーの端を押しても均一に押下されるので、おそらくパンタグラフだろう。ただ筐体の割にはストロークが深いので、慣れないうちは深く押すことを意識する必要があると感じた。

 配列的には残念ながらファンクションキーは独立しておらず、Fnと数字の同時押しとはなるし、右側の記号キーはやや窮屈で、カーソルの右にハテナがあるといった変則な配列だが、サイズを考えれば致し方ないだろう。ユニークなのは、Windows、Android、iOS各々に適したモードがある点で、FnキーとQ/W/Eで切り替えられること。ただし残念ながら接続先は1デバイスだけで、3台ペアリングできるわけではない。

折りたたみ式BluetoothキーボードXDO-F1KB64
配列はやや特殊だが、タッチ感はいい
ほかにも4種類のキーボードが用意されている

 今回送られてきたマウスは、手を縦にして握るタイプのBluetooth接続のもの。このタイプは手首をひねらず握れるため手に優しいとされているのだが、筆者は一般的なマウスに慣れているため特別使いやすいとは思わなかった。

 このタイプは、クリックした際に力が横方向に入ってしまうため、本体が倒さないよう、親指でギュッと握って支えることになる。逆にこれをストレスに感じることがあるため、このあたりは好みが分かれそうだ。

 ちなみに個人的には、もっと小さいマウスを用意してほしかった。このサイズだとせっかくのPantera Pico PCやPicoProjecter、折りたたみキーボードといったポータブル性が失われるからである。

マウスは縦に握るタイプのものが用意された。なお周辺機器の紹介スライドには本製品の紹介がなかったため不明

キャリングケースなども用意される

 ここまで小型だと何がなんでも持ち運びたくなるのがガジェッターの本性だが、そこはXDOも理解しているようだ。

 前回のPC短評の際に一緒に送られてきたのは「Medium EVA Case」と呼ばれるもので、厚みのあるしっかりとした緩衝材に本体とACアダプタが収まるようになっている。これでは大きすぎるというユーザーのために用意されたのが「Small EVA Case」で、緩衝材はほとんどないがよりポータブルで場所も取らない。PicoProjecterとそのACアダプタを収めるのにも最適だ。

 一方で本体やPicoProjecter、ACアダプタやケーブル一式、キーボードやマウス、そして12V出力対応のモバイルバッテリ「XDO Power Bank」をセットにし、一式を収められる「XDO FULL SET」なるものもあり、デスクトップとプロジェクタを持ち運びたいという夢を叶えてくれる。

 さらに今回、USB 3.0ポートを3基、Gigabit Ethernetを1基備えたHubも送られてきた。Pantera Pico PCのインターフェイスがそれでも足りないと思うユーザーに最適だろう。

Medium EVA Case(左奥)、Small EVA Case(手前)、XDO-F1KB64キーボード収納ケース(右奥)
Gigabit EthernetがついたUSB Hub

周辺機器で初めてわかったXDOの世界観

 Pantera Pico PCの性能もさほど高くないが、せっかくの安価なPCなので、高価なソフトとの組み合わせはややもったいない。そこで活用したいのはフリーソフト。例えばオフィススイートには「LibreOffice」を使い、画像編集は「GIMP」などがあるといい。

 もちろん慣れ親しんできた操作という意味では、有償ソフトから移行するのはなかなかしんどいが、近年これらのフリーソフトでもかなり機能面で充実してきており、基本的にできることは有償ソフトとほとんど一緒だ。

 ただやっぱりというか、Gemini LakeにとってWindows Updateは荷が重い。裏でWindows Updateが走っていると、CPUの半分のリソースは持っていかれ、長い時では20分も続いたりする。もちろんフォアグラウンドの作業に影響があまりないようにはなっているが、少なくともその時間に電源を切ることはできず、おとなしく待つしかない。このあたりは設定などでうまく乗り切ってほしい。

 Pantera Pico PC単体でもそこそこ面白い製品なのだが、Gemini Lake世代のCeleronを搭載した小型PCは他社からも多数登場しているので、大きく差別化するのは難しい。短評でも述べているが、CHUWIのLarkBoxやGMKのNucBoxと比較すると「USBポートが2つ多くて、ブルーLEDイルミネーションが付いている」という以外大きく違わない。カラバリが用意されていたり、購入時に予算や用途に合わせてメモリやSSDが選べる点はメリットではあるが、このサイズに過剰なスペックを求める人は少数だろう。

 ただ今回、Androidを内蔵したPicoProjecterやBluetoothマウス、キーボード、ポーチなどが届いて初めて、「同社が力を入れているのはPCのみならず、それ中心としたソリューションと統一化された世界観なんだ」とわかった。

 第1弾はGemini Lakeとなっているが、これがJasper Lakeや組み込み向けRyzen、低電圧版のTiger Lakeに進化すれば、さらに用途と世界が広がるのではないかと思う。多くの競合が存在する中、周辺を含めて展開をしようとしているXDOの今後の動きから目を離せない。