パソコン工房新製品レビュー
1kg切りでゲーミングPCブランド「LEVEL∞」のノートが登場
ディスクリートGPU非搭載、Iris Xeのモバイルノートでどこまで遊べる?
2022年10月27日 06:28
ディスクリートGPU非搭載の「LEVEL∞」ノートPC
パソコン工房を展開するユニットコムより、ゲーミングPCブランド「LEVEL∞」の14型ノートPC「LEVEL-14FH120-i7-UXSX」が発売された。
本機は1kgを切る軽量でありながら、ゲーミングPCブランド「LEVEL∞」を冠した製品となっている。ディスクリートGPUは搭載しておらず、CPU内蔵のIris Xe Graphicsでグラフィックス処理をまかなう。
昨今はPCゲームの幅も広く、2Dゲームはもちろん、3Dゲームでもかなり軽量な動作のものが多くある。またCPU内蔵グラフィックスの性能もかなり上がっており、ディスクリートGPUなしでも遊べるゲームが増えてきているのは確かだ。
そういった事情も踏まえつつ、実際のパフォーマンスや製品の手触りも含めてレビューしていきたい。
1kg切りの筐体でIris Xeがグラフィックス処理
「LEVEL-14FH120-i7-UXSX」のスペックは下記のとおり。
【表1】LEVEL-14FH120-i7-UXSX
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CPU Core i7-1255U(2-Pコア+8-Eコア/12スレッド、Pコア4.7GHz+Eコア3.5GHz)
GPU Iris Xe Graphics(CPU内蔵)
メモリ 16GB DDR4-3200(オンボード8GB+メモリスロット8GB×1)
SSD 500GB(NVMe)
光学ドライブ なし
ディスプレイ 14型非光沢液晶(1,920×1,080ドット)
OS Windows 11 Home
汎用ポート Thunderbolt 4×1、USB 3.1×1、USB 3.0×1
カードスロット microSD
映像出力 HDMI×1、Thunderbolt 4×1
無線機能 Wi-Fi 6、Bluetooth 5
有線LAN なし
その他 前面200万画素カメラ、内蔵マイク、ヘッドセット端子
本体サイズ(幅×奥行き×高さ) 約322×218×19.6mm
重量 約0.94kg
価格 167,800円
CPUに10コア12スレッドのCore i7-1255Uを搭載。CPU内蔵のIris Xe Graphicsでグラフィックスを処理する。メインメモリは16GB、SSDはM.2 NVMe接続の500GBと、ゲーミングPCの標準的なラインは押さえている。
ディスプレイは14型のフルHD。リフレッシュレートは標準的な60Hzとなる。有線LANは非搭載で、Wi-Fi 6に対応する。
フットプリントはA4ファイルサイズに近く、厚さは底面のゴム足を含めても19.6mmというコンパクトさ。約0.94kgという重量も含めて、軽量モバイルノートPCのスペックだ。
動作モード切替による性能変化が大きめ
次に実機のパフォーマンスをチェックする。ベンチマークテストに利用したのは、「PCMark 10 v2.1.2563」、「3DMark v2.22.7359」、「VRMark v1.3.2020」、「PHANTASY STAR ONLINE 2 NEW GENESIS Character Creator」、「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「CINEBENCH R23」、「CrystalDiskMark 8.0.4」。
本機にはカスタマイズツール「Control Center 3.0」がプリインストールされており、「Power Modes」で動作モードの切り替えができる。設定は標準の「エンターテイメント」のほか、「パフォーマンス」、「静音」、「省電力」の計4つが選べる。今回は「PCMark 10 v2.1.2563」と「3DMark v2.22.7359」で4つのモードを切り替えてテストを実施した。
【表2】ベンチマークスコア
動作モード エンターテイメント パフォーマンス 静音 省電力
「PCMark 10 v2.1.2563」
PCMark 10 4,915 5,193 2,861 3,905
Essentials 9,640 9,649 6,381 8,888
Apps Start-up score 12,643 12,725 8,319 12,639
Video Conferencing Score 7,644 7,636 5,482 6,553
Web Browsing Score 9,272 9,247 5,698 8,478
Productivity 6,194 6,733 4,683 6,483
Spreadsheets Score 6,122 6,566 4,173 6,251
Writing Score 6,267 6,906 5,257 6,725
Digital Content Creation 5,398 5,849 2,128 2,806
Photo Editing Score 9,307 9,873 3,784 4,478
Rendering and Visualization Score 2,887 3,389 1,120 1,407
Video Editing Score 5,855 5,982 2,275 3,509
Idle Battery Life 10時間49分 - - -
Modern Office Battery Life 7時間51分 - - -
Gaming Battery Life 1時間46分 - - -
「3DMark v2.22.7359 - Time Spy」
Score 1,395 1,511 304 494
Graphics score 1,253 1,340 274 433
CPU score 3,909 5,480 831 2,619
「3DMark v2.22.7359 - Fire Strike」
Score 3,451 3,629 887 1,417
Graphics score 3,842 3,899 993 1,474
Physics score 12,981 17,284 3,728 10,723
Combined score 1,205 1,343 302 548
「3DMark v2.22.7359 - Wild Life」
Score 9,477 9,911 2,445 3,807
「3DMark v2.22.7359 - Night Raid」
Score 12,514 13,927 3,525 5,665
Graphics score 15,873 16,331 4,457 6,179
CPU score 5,691 7,594 1,614 3,852
「3DMark v2.22.7359 - CPU Profile」
Max threads 3,807 3,947 634 2,034
16-threads 3,284 3,169 638 1,800
8-threads 2,218 2,722 604 1,616
4-threads 1,732 2,092 590 1,322
2-threads 1,402 1,708 495 1,095
1-thread 856 931 432 721
「VRMark v1.3.2020 - Orange Room」
Score 1,724
Average frame rate 37.57FPS
「VRMark v1.3.2020 - Cyan Room」
Score 1,243
Average frame rate 27.09FPS
「VRMark v1.3.2020 - Blue Room」
Score 256
Average frame rate 5.58FPS
「PHANTASY STAR ONLINE 2 NEW GENESIS Character Creator」(簡易設定6)
1,920×1,080ドット 419
「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」(最高品質)
1,920×1,080ドット 2,570
「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」(高品質)
1,920×1,080ドット 1,122
「CINEBENCH R23」
CPU(Multi Core) 5,159pts
CPU(Single Core) 1,579pts
CPUについては、シングルスレッドはモバイル向けとしては良好な結果だが、マルチスレッドではやや伸び悩んでいる。「CINEBENCH R23」のMP Ratioは3.27で、2基のPコアの数こそ超えてはいるが、8基のEコアの分の伸びが物足りない。
「3DMark」の「CPU Profile」で詳しいデータを見ると、シングルスレッドでは4GHz前後出ているが、2スレッドで3.3GHz前後、4スレッドで2.9GHz前後と、落ち幅が大きい。ただ動作モードを「パフォーマンス」に切り替えると、2スレッドで約4.1GHz、4スレッドでも3.5GHz前後と大幅な性能アップが見られた。モバイルノートがベースなだけに、冷却には少々苦労しているようだ。
ゲーム系のベンチマークテストは、フルHDで最高画質の設定では厳しい結果に。「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」では、最高画質では「設定変更を推奨」と低評価になる。ただ画質設定を「標準品質(ノートPC)」に下げると、4,374点で「普通」まで上がる。画質をある程度落とせば何とかなるゲームが多そうだ。
動作モードに関しては、「3DMark」の結果を見るに、動作モードの変更で10%程度の性能向上は見込める。それでもゲームの画質はある程度は落とした方がよさそうだ。
バッテリ持続時間は、アイドル時で約11時間、オフィスユースで約8時間となっており、モバイル用途としても十分活用できる。ゲームに関しては2時間弱となっており、こちらは充電しながらの利用を前提と考えた方がいいだろう。
SSDはIntel(現在はソリダイム)製の「SSDPEKNU512GZ」が使われていた。3D QLC NAND採用の「670p」シリーズの製品で、シーケンシャルリードは3GB/sを超えている。実使用でも起動が早く、読み書きともストレスなく快適だ。
また実際のゲームプレイのテストとして、「Fortnite」のバトルロイヤル1戦と、「Apex Legends」のチュートリアル1周のフレームレートを、NVIDIA FrameViewで計測した。解像度はディスプレイと同じフルHD。画質は最高設定にするとかなり重い状態だったため、適切に画質を落としている。
【表3】ゲームのフレームレート
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「Fortnite」(クオリティプリセット:中)
平均 31.545
下位90% 25.503
下位95% 22.705
下位99% 8.9
「Apex Legends」(最低画質)
平均 39.27
下位90% 28.687
下位95% 26.521
下位99% 22.481
「Fortnite」ではクオリティプリセットを中とした(低も選べるが、画質が悪すぎてプレイに耐えないと判断)。平均で30fps強となっているが、プレイ中はもう少し高めの印象で、それほど違和感なく操作できている。下位99%の8.9fpsというのは、最初にバトルバスから飛び降りるシーンだけが妙に重かったのが影響していると思われる。
「Apex Legends」では画質を最低に設定。平均で40fps程度と、「Fortnite」よりもフレームレートは稼げている印象だ。また最低画質にしても解像度は落ちないので、プレイ感覚はそれほど損なわれない。
ディスプレイやサウンドも高品質
続いて実機を見ていく。筐体は全面がマットブラックで統一されている。天面には「LEVEL∞」のロゴがあるほかは自己主張するデザインはなく、ベーシックなモバイルノートPCというたたずまいだ。
本体はスペック通りにとても薄く軽い
ディスプレイはフルHDの非光沢液晶。パネル種別は非公開ながら、視野角は十分に広く、どの角度から見ても色相変化は感じられない。色味や表面処理にも違和感はなく、十分な品質を確保している。またディスプレイ部はほぼ180度開くのも特徴だ。
キーボードはアイソレーションタイプ。カーソルキーが縦方向に半分ほどのサイズに潰されている以外は、ほとんどのキーが正方形を維持している。特に右側のエンターキー付近の文字キーもほとんど正方形を維持しているのは好印象だ。キー配列もオーソドックスで使いやすい。
キーストロークはモバイルノートだけあってごく浅い。代わりにしっかりしたクリック感があり、打鍵感はしっかりしている。キーボードバックライトは非搭載。タッチパッドは筐体サイズに比べると大きめだ。
端子類は、左側にThunderbolt 4とUSB、HDMI、電源端子。右側にはUSBとヘッドセット端子、microSDカードスロットを備える。電源ボタンも右側面にある。ちなみに電源端子の近くには小さなLEDインジケータがあり、電源ランプと充電ランプを兼ねている。最近のノートPCには電源絡みのインジケーターがないものも多いが、本体を畳んだ状態で確認できる場所にあるのは重宝する。
スピーカーは底面左右に内蔵されている。音質は全体的に若干こもり気味ながら、サイズ的に出づらいであろう低音を引き出そうとがんばっているのがわかる。中高音はしっかりと聞こえており、ステレオ感もそれなりにある。音楽鑑賞には厳しいかもしれないが、ゲームサウンドとしては十分使える音質だ。
エアフローは吸気が背面左、排気が背面右で行われる。風量は小さく、背面方向への温風が行くことは考えないでいい。
騒音はアイドル時にはほぼ無音。高負荷になるとファンの騒音が鳴るが、ゲームの音を出してしまえばある程度は紛れてしまう程度だ。高負荷時にはキーボードの上段中央付近がやや温かくなるが、W/A/S/Dキー付近はほとんど気にならない。リストレスト部も冷えた状態だ。
ACアダプタは65W出力。ACアダプタ自体はコンパクトで軽量なのだが、ケーブルがやや短め。コンセントからACアダプタまでは約1mあるが、ACアダプタから本体までが約50cmと短いのが少し気になる。
仕事にも使える落ち着いたデザイン。ゲーム機としてはサブの位置づけで
一通り使ってみてわかったこととしては、本機のベースはやはりモバイルノートPCであるということ。「LEVEL∞」ブランドの製品なのでゲームプレイを想定はしているはずだが、十分な冷却が難しいモバイルノートの筐体だけにヘビーな3Dゲームは荷が重い。本機であらゆるゲームをフルに楽しもうというのは無理がある。
ただ、ゲームが動作しないということはない。今回実施したベンチマークテストや3Dゲームは全て問題なく動作している。また画質設定次第では3Dゲームもプレイ可能なのも確かで、むしろ1kg切りのモバイルノートPCでこれだけ動かせれば立派なものだ。ゲームマシンとしてはあくまでサブ機として、出張などでの一時的な利用を想定するのがいいだろう。
また本機には動作モードの切り替え機能がある。ファンの騒音は増してしまうものの、冷却性能を高めて処理能力を上げるという手が使える。逆に騒音を出さないよう静かにする設定もあり、状況によって使い分けられるのが本機のゲーミングPCらしい部分と言える。
外見はビジネス用途にも使える落ち着いたデザインなので、用途を選ばず活用できるのも強み。ゲームの利用なら、処理が軽めのゲームを選ぶか、オンラインゲームに顔を出す程度に使うなどするのが良さそうだ。