特集
KVMスイッチを買う前に試したい。複数PCを1つのマウスで操れるPowerToysの便利機能
2025年7月10日 06:12
複数のPCを並行運用するような場合、KVMスイッチやUSB切り替え器のようなデバイスがあると便利、というのは皆さんご存じの通り。1セットのキーボード・マウスで複数PCの操作をまかなえるため、デスク上のスペースに余裕を作りつつ、操作性の統一を図ることもできる。
しかし、そうした切り替え器の導入はコストゼロというわけにはいかない。切り替えたいPCが3台、4台となれば、対応する切り替え器もそれに応じて高額になっていったりもするだろう。そこで代わりに試してみてほしいのが、Windows用のユーティリティ集、PowerToysの「境界線のないマウス」という機能だ。
初期設定の手順と活用時の注意点
PowerToysに含まれる「境界線のないマウス」機能は、1セットのキーボードやマウスで、ネットワーク越しに複数台のPCを操作できるようにするもの。切り替え器のような物理デバイスを追加することなしに、同一のLANに接続しているPC同士であれば、キーボードとマウスを共有できる。
機能を使い始めるための具体的な設定手順は下記の通り。ここでは2台のPCで利用できるようにする方法を説明している。設定には少しコツが必要というか、分かりにくい部分もあるので参考にしてほしい。なお、ここでは2台のPCで共有するケースを想定している。
画面ロック時も操作できるようにする設定
あらかじめ設定をしておくことで、他方のPCが画面ロックされていても操作が可能だ。設定するためには、まずはPowerToysを管理者として起動する必要がある。
以上の設定が完了すれば、あとはPowerToysが起動している限り、マウスカーソルを画面の端に移動させるだけで別のPCに操作対象が移り、キーボード・マウス操作が可能になる。もしくは、「Ctrl+Alt+F1~F4」キーなどのショートカットキーで即座に別PCの操作に切り替えることもできる。
なお、「境界線のないマウス」の設定時や、その機能を活用していくうえでは、以下の4点について注意しておきたい。
- 切り替えできるPCは最大4台まで。それ以上は物理的な切り替え器などを組み合わせるのがおすすめ
- 少なくとも一方のPCがWi-Fi接続だとマウスカーソルがスムーズに動作しないことがある。その場合は可能な限り有線LAN接続にする
- 2台以上のPCでPowerToysの設定画面を開いていると「デバイスのレイアウト」が反映されないことがある。その場合は1台のPCのみで設定画面を開くようにする
- ネットワークがなんらかの理由で切断されると、再接続しても別PCの操作ができないままになることがある。その場合は「接続を更新する」をクリックする
操作切り替えだけでなく、クリップボードの共有も可能
このように「境界線のないマウス」を有効にしておくことで、1セットのキーボード・マウスを最大4台までのPCで常に共用できる。切り替えのためのボタン操作などなしに、複数台のPCをシームレスに利用できるため、マルチタスクな作業が一段と効率的になる。
頻繁に操作することはないが起動しておきたいサブPCがある、といったようなシチュエーションでも確実に役立ってくれるだろう。そのためだけにキーボードとマウスをもう1セット用意したり、切り替え器を導入するのは避けたいと考えられるからだ。
ところで「境界線のないマウス」ではもう1つ、便利な機能がある。それはクリップボードの中身を共有できることだ。一方のPCでコピーしたテキストやファイルなどを、特別な操作をすることなく通常のコピー&ペーストでもう一方のPCに貼り付けられる。
たとえば一方のPCでURLをコピーし、もう一方のPCのWebブラウザのアドレスバーに貼り付ければ、すぐさまそのWebサイトを開くことができる。長文のコピー&ペーストももちろんOKだ。
また、PC間でファイルをコピーしたいときも、エクスプローラーなどでファイルを選択してコピーし、別のPCでペースト操作するだけ。いちいちUSBメモリを抜き差ししてファイル移動することも、ネットワークドライブや共有フォルダの設定をすることも不要だし、操作の仕方としても直感的だ。
コピー&ペーストできるファイルは100MB以下かつ1つずつという制約があるものの、100MBを超える大きなファイルであっても、マウス操作でファイルを一方のPCからドラッグし、別PCのデスクトップ上でドロップすればコピー(転送)可能。複数台のPC間でしばしば課題になるファイルのやりとりは、この「境界線のないマウス」である程度解決できそうだ。
切り替え器やキーボード・マウスを追加する前にぜひともトライ!
「境界線のないマウス」機能で代替できるのは、あくまでも物理キーボードとマウスの切り替えのみ。ノートとデスクトップの組み合わせではあまり問題にならないかもしれないが、映像の出力先となるモニターについては、各PCに1台ずつ用意するか、物理的なモニター切り替え器を用意するなどして別途手動で切り替えられるようにしておく必要がある。複数PCを1台のモニターに接続して、モニター側の入力切り替え操作で対応する、という形もアリだ。
類似の仕組みとしてリモートデスクトップソフトもあるが、そちらは名前に「リモート」とあるように、デスクトップの視認が困難な離れたところにあるPCを操作したいときに使うもの。対して「境界線のないマウス」は、すべてのPCが身近にあり、デスクトップがいつでも視認できる環境で(キーボード・マウスを何セットも用意したくないときに)役に立つもの、となる。使い分けをしっかり意識したいところだ。
最大4台までのPCを1セットのキーボード・マウスで扱えるようになる「境界線のないマウス」は、PowerToysの中でも強力な機能の1つと言える。複数台PCの操作方法に悩んでいる人、デスク上のスペースを有効活用したい人は、物理的な切り替え器の導入を検討する前にぜひ試してみてほしい。


























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