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Sandy Bridgeおじさん「やけにPCパーツ高くなってない?」。見ると分かるCPU/GPU/マザーの価格推移のエグさ

DOS/V POWER REPORT 2016年2月号の表紙写真より流用

 PCパーツは昔に比べて高くなったとよく言われる。それは本当なのか。そうだとすれば、どのタイミングからなのか。昨今は為替の影響も大きいとよく語られるが、そもそもメーカー希望小売価格(MSRP)はハイエンドとミドルレンジでどう変化しているのか。今回は2000年から2025年のCPU、ビデオカード、マザーボードの価格を追ってみた。

【CPU編】円高&低価格が合わさったCore i7-2600Kが改めて輝く

 まずはCPUだ。取り上げたのはIntelの製品。ドルベースのメーカー希望小売価格が分かるモデルは記載し、発売日の1ドルあたりの為替レートも合わせて掲載する。価格変化の目安になるはずだ。なお、価格は発売日のものを参考にしているが、最安値ではなく、真ん中あたりのものを採用した。

 「Extreme Edition」や「i9」など最上位クラスはエンスージアスト、「i7」など上位CPUはハイエンドと分類している。

エンスージアストCPU

エンスージアストCPUの価格推移
発売日CPU日本円ドル当時の為替レート
(1ドルあたり)
2000年7月1日Pentium III 1GHz13万8,000円990ドル105.5円
2001年9月1日Pentium 4 2GHz7万3,000円562ドル119.25円
2006年7月29日Core 2 Extreme X680013万円999ドル115.97円
2008年11月16日Core i7 965 Extreme Edition11万5,000円999ドル97.17円
2011年11月14日Core i7-3960X Extreme Edition8万5,000円999ドル77.25円
2017年10月25日Core i9-9980XE Extreme Edition24万6,000円1,999ドル113.92円
2019年11月25日Core i9-10980XE Extreme Edition13万8,000円979ドル108.81円
2020年5月20日Core i9-10900K7万2,000円499ドル107.98円
2021年11月4日Core i9-12900K8万円589ドル114.14円
2024年10月25日Core Ultra 9 285K11万6,000円598ドル152.16円

 まず注目したいのは、2000年のPentium III 1GHzだろう。この頃はAMDとクロックの向上合戦が繰り広げられており、AMDのAthlonがは2000年3月6日にx86プロセッサとして初めて1GHzに到達を発表。IntelのPentium III 1GHzはその2日後に発表となった。

Pentium III 1GHz

  Intelでは最上位モデルは1,000ドル前後という時代が長く続いたが、開発コードネーム「Cascade Lake-X」のCore i9-10980XE Extreme Editionで、Extreme Editionシリーズは終了。最上位クラスは500~600ドルへと変化する。 Core Ultra 9 285Kは2024年の円安影響もあって598ドルでも11万6,000円となり、高価なイメージが付いてしまった。

ハイエンドCPU

ハイエンドCPUの価格推移
発売日CPU日本円ドル当時の為替レート
(1ドルあたり)
2006年8月5日Core 2 Duo E67007万円530ドル115.24円
2008年11月16日Core i7 9406万4,000円562ドル97.17円
2011年1月8日Core i7-2600K2万9,000円317ドル83.36円
2015年8月5日Core i7-6700K5万円350ドル124.31円
2020年5月20日Core i7-10700K5万6,000円375ドル107.98円
2021年11月4日Core i7-12700K5万8,000円419ドル114.14円
2024年10月25日Core Ultra 7 265K7万9,000円394ドル152.16円

 ハイエンドCPUに目を向けると2008年から2011年の円高時代はかなり安く見える。特にCore i7-2600Kは発売日の1ドルあたりの為替レートが83.36円ということもあって、317ドルが2万9,000円前後で発売スタート。しかも、Core i7-2600Kは前世代から飛躍的な性能向上もあって爆発的な人気になった。

  そしてCore i7-2600Kは長期間現役で使える性能があったことから、「Sandy Bridgeおじさん」を大量に生み出すことになる。 筆者はどちらかと言えば、Ivy Bridgeおじさんであったが……。

Core i7-2600K

  2万9,000円で最先端、最高クラスのスペックを入手できた時代を知っている人からすれば、現在はやっぱり高いと感じてしまうだろう。Core Ultra 7 265Kは発売時、7万9,000円前後なのである。

【ビデオカード編】上位モデルが5万円台から20万円台に変化

 次にGPUを見ていこう。今回はNVIDIAのGeForceシリーズにスポットを当てる。ハイエンド系は主に下二桁が「80」のものを選んでいる。

ハイエンドビデオカード

ハイエンドビデオカードの価格推移
発売日GPU日本円ドル当時の為替レート
(1ドルあたり)
2000年10月14日GeForce 2 Ultra5万円499ドル107.85円
2004年5月29日GeForce 6800 Ultra7万円499ドル110.82円
2010年4月10日GeForce GTX 4806万円499ドル93.63円
2012年3月22日GeForce GTX 6806万円499ドル83.40円
2015年6月1日GeForce GTX 980 Ti11万円649ドル124.2円
2018年9月27日GeForce RTX 2080 Ti18万5,000円999ドル112.89円
2021年9月1日GeForce RTX 3080 Ti22万円1,199ドル110.19円
2022年11月16日GeForce RTX 408024万円1,199ドル139.57円
2025年1月30日GeForce RTX 508023万円999ドル154.76円

 改めて比較すると驚かされるのが、 GTX 680までは最上位クラスのメーカー希望小売価格が499ドルであること。2010年のGTX 480や2012年のGTX 680は円高もあって6万円前後で購入できたのは今ではちょっと考えられないところ。

GeForce GTX 680

 価格が一気に上がったのは、RTXシリーズからだ。RTX 2080 Ti以降は1,000ドル級に。RTX 4080、RTX 5080は円安が進んだこともあって20万円を大きく上回っている。

ミドルレンジビデオカード

 ミドルレンジは下二桁が「60」のものを選んだ。

ミドルレンジビデオカードの価格推移
発売日GPU日本円ドル当時の為替レート
(1ドルあたり)
2000年7月22日GeForce 2 MX1万6,800円107.75円
2004年9月18日GeForce 66001万9,000円149ドル109.58
2010年7月17日GeForce GTX 4602万円199ドル87.45円
2012年9月13日GeForce GTX 6602万5,000円229ドル77.77円
2015年1月22日GeForce GTX 9603万円199ドル118.13円
2019年1月15日GeForce RTX 20604万5,000円349ドル108.40円
2021年2月26日GeForce RTX 30605万5,000円329ドル106.25円
2023年6月29日GeForce RTX 40605万3,000円299ドル144.35円
2025年5月20日GeForce RTX 50605万6,000円299ドル145.32円

 ミドルレンジGPUも同様だ。 GTX 460は199ドルで2万円前後、GTX 660は229ドルで2万5,000円前後だ。円高の影響も大きい。こちらもRTX以降は300ドル前後に上昇。RTX 4060/5060は299ドルだが、発売時は5万円を大きく超えた。

GeForce GTX 660

 時代的な背景にも触れておこう。ビデオカードで大きなニュースになったのは、2021年のマイニングブームだろう。1月から品薄が進み、2月にはショップにビデオカードの在庫がほぼなくなるという状態になる。発売時よりも価格が高くなるという状況まで起きた。GeForce RTX 3090など最上位クラスは5万円以上も値上がったケースも。

 そして2021年後半にはビットコインの暴落、マイニング難易度の上昇もあってビデオカードの購入費用や電気代の回収が難しくなったため、一気に終息となった。

【マザーボード編】回路の大規模化で価格も上昇

 最後にマザーボードの価格も見てみよう。今回はASUSのゲーミングブランド「ROG」シリーズに属するものと、メインストリームに位置するモデルをピックアップした。近いグレードで時代が進むごとに、どう価格が変化するのか注目したい。

ハイエンドマザーボードの価格推移
発売日製品名チップセット電源回路日本円
2007年1月17日ASUS COMMANDOP9658フェーズ3万1,000円
2011年6月25日ASUS Maximus IV Extreme-ZZ688+2フェーズ4万1,000円
2015年8月12日ASUS MAXIMUS VIII HEROZ170非公開3万7,000円
2020年5月20日ASUS ROG MAXIMUS XII HERO (WI-FI)Z49014+2フェーズ5万3,000円
2021年10月28日ASUS ROG MAXIMUS Z690 HEROZ69020+1フェーズ8万円
2024年10月25日ASUS ROG MAXIMUS Z890 HEROZ89022+2+1+2フェーズ12万5,000円

 COMMANDOは、Intelプラットフォームでの初となるROGブランドのマザーボード。電源回路は8フェーズでハイエンドモデルという位置付けだが、価格は3万1,000円前後だった。

ASUS COMMANDO

  Z170までは3万円台だったが、同じHEROシリーズでもZ690になると回路規模は20+1フェーズと大規模になり、価格も8万円前後に。Z890では22+2+1+2フェーズで12万5,000円前後に達する。 CPUの消費電力向上に合わせて回路規模も大きくなり、価格もアップした形だ。

ROG MAXIMUS Z890 HERO

メインストリームマザーボード

メインストリームマザーボードの価格推移
発売日製品名チップセット電源回路日本円
2001年6月27日ASUS TUSL2-Ci815EP1万7,000円
2007年1月27日ASUS P5BP9653フェーズ1万9,000円
2011年5月21日ASUS P8Z68-VZ6816フェーズ2万円
2015年8月5日ASUS Z170-AZ1708+2+1フェーズ2万3,000円
2020年5月20日ASUS PRIME Z490-AZ49012+2フェーズ2万8,000円
2021年10月28日ASUS PRIME Z690-AZ69016+1フェーズ3万8,000円
2024年10月25日ASUS PRIME Z890-P-CSMZ89014+1+2+1フェーズ4万4,000円

  メインストリームもハイエンドほど極端ではないが、同じ傾向と言える。Z170は8+2+1フェーズで2万3,000円前後だったが、Z890では14+1+2+1フェーズで4万4,000円前後まで上昇している。 過去のハイエンドよりも電源回路の規模が大きくなっているので仕方がないと言えるが、このクラスのマザーボードも手頃とは言いにくくなったのは確かだ。

P5B
PRIME Z890-P-CSM

トータルコストが高くなったのは確か

 2011年から2012年ならば、CPUがCore i7-2600K(2万9,000円)、マザーボードがASUS P8Z68-V(2万円)、GPUがGeForce GTX 660(2万5,000円)でミドルレンジ以上と言える構成が7万4,000円で済む。

 しかし、2025年ではCPUがCore Ultra 7 265K(7万9,000円)、マザーボードがASUS PRIME Z890-P-CSM(4万4,000円)、GPUがGeForce RTX 5060(5万6,000円)だと17万9,000円になる。基本価格の向上と円安のダブルパンチと言えるだろう。

 とはいえ、改めて時代を追ってみると2011年は異質だったと言える。Core i7が317ドルというのがそもそも安く、1ドルが77.25円だったのだ。この先、価格&性能でCore i7-2600Kの再来を夢見たいところだが、CPU、ビデオカード、マザーボードとも回路規模がとてつもなく膨大になった現在、それは難しいだろう。

 長年この業界にいると、時代ごとの価格と性能のバランスがよいポイントを探っていくのが自作PCの醍醐味と感じる。また、何年か経過したら改めて価格の推移を追ってみたい。