特集
Sandy Bridgeおじさん「やけにPCパーツ高くなってない?」。見ると分かるCPU/GPU/マザーの価格推移のエグさ
2025年6月20日 06:16
PCパーツは昔に比べて高くなったとよく言われる。それは本当なのか。そうだとすれば、どのタイミングからなのか。昨今は為替の影響も大きいとよく語られるが、そもそもメーカー希望小売価格(MSRP)はハイエンドとミドルレンジでどう変化しているのか。今回は2000年から2025年のCPU、ビデオカード、マザーボードの価格を追ってみた。
【CPU編】円高&低価格が合わさったCore i7-2600Kが改めて輝く
まずはCPUだ。取り上げたのはIntelの製品。ドルベースのメーカー希望小売価格が分かるモデルは記載し、発売日の1ドルあたりの為替レートも合わせて掲載する。価格変化の目安になるはずだ。なお、価格は発売日のものを参考にしているが、最安値ではなく、真ん中あたりのものを採用した。
「Extreme Edition」や「i9」など最上位クラスはエンスージアスト、「i7」など上位CPUはハイエンドと分類している。
エンスージアストCPU
年 | 発売日 | CPU | 日本円 | ドル | 当時の為替レート (1ドルあたり) |
---|---|---|---|---|---|
2000年 | 7月1日 | Pentium III 1GHz | 13万8,000円 | 990ドル | 105.5円 |
2001年 | 9月1日 | Pentium 4 2GHz | 7万3,000円 | 562ドル | 119.25円 |
2006年 | 7月29日 | Core 2 Extreme X6800 | 13万円 | 999ドル | 115.97円 |
2008年 | 11月16日 | Core i7 965 Extreme Edition | 11万5,000円 | 999ドル | 97.17円 |
2011年 | 11月14日 | Core i7-3960X Extreme Edition | 8万5,000円 | 999ドル | 77.25円 |
2017年 | 10月25日 | Core i9-9980XE Extreme Edition | 24万6,000円 | 1,999ドル | 113.92円 |
2019年 | 11月25日 | Core i9-10980XE Extreme Edition | 13万8,000円 | 979ドル | 108.81円 |
2020年 | 5月20日 | Core i9-10900K | 7万2,000円 | 499ドル | 107.98円 |
2021年 | 11月4日 | Core i9-12900K | 8万円 | 589ドル | 114.14円 |
2024年 | 10月25日 | Core Ultra 9 285K | 11万6,000円 | 598ドル | 152.16円 |
まず注目したいのは、2000年のPentium III 1GHzだろう。この頃はAMDとクロックの向上合戦が繰り広げられており、AMDのAthlonがは2000年3月6日にx86プロセッサとして初めて1GHzに到達を発表。IntelのPentium III 1GHzはその2日後に発表となった。
Intelでは最上位モデルは1,000ドル前後という時代が長く続いたが、開発コードネーム「Cascade Lake-X」のCore i9-10980XE Extreme Editionで、Extreme Editionシリーズは終了。最上位クラスは500~600ドルへと変化する。 Core Ultra 9 285Kは2024年の円安影響もあって598ドルでも11万6,000円となり、高価なイメージが付いてしまった。
ハイエンドCPU
年 | 発売日 | CPU | 日本円 | ドル | 当時の為替レート (1ドルあたり) |
---|---|---|---|---|---|
2006年 | 8月5日 | Core 2 Duo E6700 | 7万円 | 530ドル | 115.24円 |
2008年 | 11月16日 | Core i7 940 | 6万4,000円 | 562ドル | 97.17円 |
2011年 | 1月8日 | Core i7-2600K | 2万9,000円 | 317ドル | 83.36円 |
2015年 | 8月5日 | Core i7-6700K | 5万円 | 350ドル | 124.31円 |
2020年 | 5月20日 | Core i7-10700K | 5万6,000円 | 375ドル | 107.98円 |
2021年 | 11月4日 | Core i7-12700K | 5万8,000円 | 419ドル | 114.14円 |
2024年 | 10月25日 | Core Ultra 7 265K | 7万9,000円 | 394ドル | 152.16円 |
ハイエンドCPUに目を向けると2008年から2011年の円高時代はかなり安く見える。特にCore i7-2600Kは発売日の1ドルあたりの為替レートが83.36円ということもあって、317ドルが2万9,000円前後で発売スタート。しかも、Core i7-2600Kは前世代から飛躍的な性能向上もあって爆発的な人気になった。
そしてCore i7-2600Kは長期間現役で使える性能があったことから、「Sandy Bridgeおじさん」を大量に生み出すことになる。 筆者はどちらかと言えば、Ivy Bridgeおじさんであったが……。
2万9,000円で最先端、最高クラスのスペックを入手できた時代を知っている人からすれば、現在はやっぱり高いと感じてしまうだろう。Core Ultra 7 265Kは発売時、7万9,000円前後なのである。
【ビデオカード編】上位モデルが5万円台から20万円台に変化
次にGPUを見ていこう。今回はNVIDIAのGeForceシリーズにスポットを当てる。ハイエンド系は主に下二桁が「80」のものを選んでいる。
ハイエンドビデオカード
年 | 発売日 | GPU | 日本円 | ドル | 当時の為替レート (1ドルあたり) |
---|---|---|---|---|---|
2000年 | 10月14日 | GeForce 2 Ultra | 5万円 | 499ドル | 107.85円 |
2004年 | 5月29日 | GeForce 6800 Ultra | 7万円 | 499ドル | 110.82円 |
2010年 | 4月10日 | GeForce GTX 480 | 6万円 | 499ドル | 93.63円 |
2012年 | 3月22日 | GeForce GTX 680 | 6万円 | 499ドル | 83.40円 |
2015年 | 6月1日 | GeForce GTX 980 Ti | 11万円 | 649ドル | 124.2円 |
2018年 | 9月27日 | GeForce RTX 2080 Ti | 18万5,000円 | 999ドル | 112.89円 |
2021年 | 9月1日 | GeForce RTX 3080 Ti | 22万円 | 1,199ドル | 110.19円 |
2022年 | 11月16日 | GeForce RTX 4080 | 24万円 | 1,199ドル | 139.57円 |
2025年 | 1月30日 | GeForce RTX 5080 | 23万円 | 999ドル | 154.76円 |
改めて比較すると驚かされるのが、 GTX 680までは最上位クラスのメーカー希望小売価格が499ドルであること。2010年のGTX 480や2012年のGTX 680は円高もあって6万円前後で購入できたのは今ではちょっと考えられないところ。
価格が一気に上がったのは、RTXシリーズからだ。RTX 2080 Ti以降は1,000ドル級に。RTX 4080、RTX 5080は円安が進んだこともあって20万円を大きく上回っている。
ミドルレンジビデオカード
ミドルレンジは下二桁が「60」のものを選んだ。
年 | 発売日 | GPU | 日本円 | ドル | 当時の為替レート (1ドルあたり) |
---|---|---|---|---|---|
2000年 | 7月22日 | GeForce 2 MX | 1万6,800円 | - | 107.75円 |
2004年 | 9月18日 | GeForce 6600 | 1万9,000円 | 149ドル | 109.58 |
2010年 | 7月17日 | GeForce GTX 460 | 2万円 | 199ドル | 87.45円 |
2012年 | 9月13日 | GeForce GTX 660 | 2万5,000円 | 229ドル | 77.77円 |
2015年 | 1月22日 | GeForce GTX 960 | 3万円 | 199ドル | 118.13円 |
2019年 | 1月15日 | GeForce RTX 2060 | 4万5,000円 | 349ドル | 108.40円 |
2021年 | 2月26日 | GeForce RTX 3060 | 5万5,000円 | 329ドル | 106.25円 |
2023年 | 6月29日 | GeForce RTX 4060 | 5万3,000円 | 299ドル | 144.35円 |
2025年 | 5月20日 | GeForce RTX 5060 | 5万6,000円 | 299ドル | 145.32円 |
ミドルレンジGPUも同様だ。 GTX 460は199ドルで2万円前後、GTX 660は229ドルで2万5,000円前後だ。円高の影響も大きい。こちらもRTX以降は300ドル前後に上昇。RTX 4060/5060は299ドルだが、発売時は5万円を大きく超えた。
時代的な背景にも触れておこう。ビデオカードで大きなニュースになったのは、2021年のマイニングブームだろう。1月から品薄が進み、2月にはショップにビデオカードの在庫がほぼなくなるという状態になる。発売時よりも価格が高くなるという状況まで起きた。GeForce RTX 3090など最上位クラスは5万円以上も値上がったケースも。
そして2021年後半にはビットコインの暴落、マイニング難易度の上昇もあってビデオカードの購入費用や電気代の回収が難しくなったため、一気に終息となった。
【マザーボード編】回路の大規模化で価格も上昇
最後にマザーボードの価格も見てみよう。今回はASUSのゲーミングブランド「ROG」シリーズに属するものと、メインストリームに位置するモデルをピックアップした。近いグレードで時代が進むごとに、どう価格が変化するのか注目したい。
年 | 発売日 | 製品名 | チップセット | 電源回路 | 日本円 |
---|---|---|---|---|---|
2007年 | 1月17日 | ASUS COMMANDO | P965 | 8フェーズ | 3万1,000円 |
2011年 | 6月25日 | ASUS Maximus IV Extreme-Z | Z68 | 8+2フェーズ | 4万1,000円 |
2015年 | 8月12日 | ASUS MAXIMUS VIII HERO | Z170 | 非公開 | 3万7,000円 |
2020年 | 5月20日 | ASUS ROG MAXIMUS XII HERO (WI-FI) | Z490 | 14+2フェーズ | 5万3,000円 |
2021年 | 10月28日 | ASUS ROG MAXIMUS Z690 HERO | Z690 | 20+1フェーズ | 8万円 |
2024年 | 10月25日 | ASUS ROG MAXIMUS Z890 HERO | Z890 | 22+2+1+2フェーズ | 12万5,000円 |
COMMANDOは、Intelプラットフォームでの初となるROGブランドのマザーボード。電源回路は8フェーズでハイエンドモデルという位置付けだが、価格は3万1,000円前後だった。
Z170までは3万円台だったが、同じHEROシリーズでもZ690になると回路規模は20+1フェーズと大規模になり、価格も8万円前後に。Z890では22+2+1+2フェーズで12万5,000円前後に達する。 CPUの消費電力向上に合わせて回路規模も大きくなり、価格もアップした形だ。
メインストリームマザーボード
年 | 発売日 | 製品名 | チップセット | 電源回路 | 日本円 |
---|---|---|---|---|---|
2001年 | 6月27日 | ASUS TUSL2-C | i815EP | - | 1万7,000円 |
2007年 | 1月27日 | ASUS P5B | P965 | 3フェーズ | 1万9,000円 |
2011年 | 5月21日 | ASUS P8Z68-V | Z68 | 16フェーズ | 2万円 |
2015年 | 8月5日 | ASUS Z170-A | Z170 | 8+2+1フェーズ | 2万3,000円 |
2020年 | 5月20日 | ASUS PRIME Z490-A | Z490 | 12+2フェーズ | 2万8,000円 |
2021年 | 10月28日 | ASUS PRIME Z690-A | Z690 | 16+1フェーズ | 3万8,000円 |
2024年 | 10月25日 | ASUS PRIME Z890-P-CSM | Z890 | 14+1+2+1フェーズ | 4万4,000円 |
メインストリームもハイエンドほど極端ではないが、同じ傾向と言える。Z170は8+2+1フェーズで2万3,000円前後だったが、Z890では14+1+2+1フェーズで4万4,000円前後まで上昇している。 過去のハイエンドよりも電源回路の規模が大きくなっているので仕方がないと言えるが、このクラスのマザーボードも手頃とは言いにくくなったのは確かだ。
トータルコストが高くなったのは確か
2011年から2012年ならば、CPUがCore i7-2600K(2万9,000円)、マザーボードがASUS P8Z68-V(2万円)、GPUがGeForce GTX 660(2万5,000円)でミドルレンジ以上と言える構成が7万4,000円で済む。
しかし、2025年ではCPUがCore Ultra 7 265K(7万9,000円)、マザーボードがASUS PRIME Z890-P-CSM(4万4,000円)、GPUがGeForce RTX 5060(5万6,000円)だと17万9,000円になる。基本価格の向上と円安のダブルパンチと言えるだろう。
とはいえ、改めて時代を追ってみると2011年は異質だったと言える。Core i7が317ドルというのがそもそも安く、1ドルが77.25円だったのだ。この先、価格&性能でCore i7-2600Kの再来を夢見たいところだが、CPU、ビデオカード、マザーボードとも回路規模がとてつもなく膨大になった現在、それは難しいだろう。
長年この業界にいると、時代ごとの価格と性能のバランスがよいポイントを探っていくのが自作PCの醍醐味と感じる。また、何年か経過したら改めて価格の推移を追ってみたい。