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移動中でも使える無料Wi-Fi、いくつ知ってる?

 2024年のシルバーウィークは9月14日~16日と9月21日~23日で、“3連休が2週連続続く”ことになる。このタイミングで旅行に出かけようと考えている読者もいると思うが、旅行先ではついついスマートフォンなどでデータ通信をいつもよりも多く使いがち。

 今回は、旅の重要な場面でモバイル通信が低速化してしまわないよう、移動中の交通機関で使える公衆無線LANスポットについて、主に国内の飛行機、新幹線、船、バス+便利なアプリ/サービスの順に紹介していく。うまく活用できれば通信費用を節約できるはずだ。

記事目次

 (1) 飛行機
 (2) 新幹線
 (3)
 (4) バス
 (5) 便利なアプリ/サービス
 (6) 最後に

通常速度へ戻す場合、割高になってしまう……(Pocket WiFiの表示例)

飛行機

 まずは飛行機だ。フライト中は携帯電話の電波が届かないエリアとなるため、日本の場合、飛行機に搭載された衛星回線を経由してインターネットにアクセスすることになる。

 国内線に関しては、FSC(フルサービスキャリア)の一部機材でインターネット接続が無料となる。LCC(ローコストキャリア)については非対応と考えておいた方が良いだろう。

インターネット接続は上空でシートベルト着用サインが消えるタイミングから使えるようになることが多いが、離陸前から利用できることもある。混雑する前に認証までは終わらせておきたい

ANA

 ANA(全日空)の国内線では、以下の機材が機内Wi-FiインターネットやWi-Fiエンターテイメントに対応している。料金は無料だ。

 インターネットについては概ね対応済みだが、地方路線で使われる「Dash 8-400」といったターボプロップ機の場合、インターネットには接続できず、機内のサーバーから配信される機内Wi-Fiエンターテイメントのみ対応となるため注意したい。

 パナソニックアビオニクスがサービスを提供している。

機材機種コード機内Wi-Fiインターネット機内Wi-Fiエンターテイメント
ボーイング787-1078K
ボーイング787-9789、78G
ボーイング787-878P
ボーイング777-300773
ボーイング777-200772、722
ボーイング767-30076P
ボーイング737-800738
エアバス A321A321/321
デ・ハビランド・カナダ Dash 8-400Q4A/Q84×
ボーイング787-8(国際線機材)78M×
エアバス A320(国際線機材)32P×

 Wi-Fi対応については、ANAの公式サイトで検索すれば対応しているかどうか確認ができる。

 AIRDOやスターフライヤー(A320neoの32SはWi-Fi対応表示されないが、実際は対応している)、ソラシドエアといった別会社が運航するコードシェア便の場合はANA便名で予約しても機材やサービスはANAではないため、インターネットには接続できない。

たとえばANA4719のようなAIRDOのコードシェア便についてはWi-Fi非対応となる

 国際線についてはファーストクラス、ビジネスクラスは無料で接続できるが、プレミアムエコノミーやエコノミーについては執筆時点では有料となる。ただし、2024年度中にテキスト通信は無料化されるという。

 機種は「ボーイング787」の一部と、「ボーイング777-300ER」が対応する。

 ボーイング777-300ERのTHE Room非搭載機種のみインマルサット、それ以外についてはパナソニックアビオニクスがサービスを提供している。

JAL

 JAL(日本航空)の国内線では、以下の機材が機内Wi-FiインターネットやWi-Fiエンターテイメントに対応している。ANAと同様に料金は無料だ。

 機内Wi-Fiインターネットについては概ね対応済みだが、主に地方路線を運行するJ-AIR(一部機材)、JAC、RAC、HACそして国際線機材では機内Wi-Fiサービスを利用できない。

 「エアバスA350-900」やボーイング787-8など座席モニターを搭載した機材ではパナソニックアビオニクス、それ以外はインテルサットがWi-Fiサービスを提供している。

機材機種コード機内Wi-Fiインターネット機内Wi-Fiエンターテイメント
エアバスA350-900359×(座席モニター搭載)
ボーイング787-8788×(座席モニター搭載)
ボーイング767-300ER763
ボーイング737-80073H
エンブラエル170E70×
エンブラエル190E90
デハビランド DHC-8-400 カーゴコンビDH4××
ATR42-600ATR××
ATR72-600AT7××
航空券を検索するときに便名の下にWi-Fiアイコンが付いていれば機内インターネット接続サービスが利用できる

 国際線については有料で、ボーイング737-800のみインテルサット、それ以外はパナソニックアビオニクスがサービスを提供している。

AIRDO

 北海道路線を運行するAIRDOでは機内Wi-Fiインターネットは対応しないが、機内Wi-FiエンターテインメントとなるDo Sky On-Demandを提供している。オーディオ、動画、機内誌・電子書籍、フライトマップが利用できる。

機内エンターテインメント - AIRDO
https://www.airdo.jp/service/entertainment/

スターフライヤー

 北九州を拠点とするスターフライヤーは、2023年にデビューした「エアバスA320neo」のみインマルサットを使った機内Wi-Fiインターネットが無料で利用できる。

 それ以外のエアバスA320ceoの場合はWi-Fiサービスは利用できないが、機内液晶モニターを搭載しており、ビデオプログラムやフライトマップが楽しめる。

スターフライヤー公式サイトで機種が32Sの場合はWi-Fiサービスに対応していることが分かる

A320neo特設ページ – スターフライヤー
https://www.starflyer.jp/inboard/airbus/a320neo/

ソラシドエア

 主に九州・沖縄路線を運行するソラシドエアでは機内Wi-Fiインターネットは対応しないが、機内Wi-Fiエンターテインメントとなるソラタイムを提供している。

 オーディオ、動画、機内誌・電子書籍、フライトマップが利用できる。

機内エンターテインメント ソラタイム – ソラシドエア
https://www.solaseedair.jp/service/inflight/solatime.html

スカイマーク

 スカイマークの場合、残念ながらWi-Fiは非対応となる。以下のページを参照されたい。

【国内線】機内でのWi-Fiサービスはありますか? - スカイマーク
https://faq.skymark.co.jp/app/answers/detail/a_id/1817/

フジドリームエアラインズ

 こちらも残念ながらWi-Fiは非対応となる。

Peach(LCC)

 機内Wi-Fiインターネットは対応しないが、Peachが提供する商品の購入やフライトマップを楽しむことができる。

機内販売・サービス
https://www.flypeach.com/lm/ai/inflights/inflight_digital_service

ジェットスター・ジャパン(LCC)

 Wi-Fiは非対応となる。

スプリング・ジャパン(LCC)

 Wi-Fiは非対応となる。

 そのほか、地方路線の航空会社は省略するが非対応となる。

【13時40分追記】記事初出時、PeachはWi-Fi非対応としておりましたが、機内販売・サービスに対応しておりましたため追記いたしました。

新幹線

 新幹線の場合は、携帯電話の電波を使った公衆無線LANスポットを展開している。

東海道/山陽/九州/西九州新幹線

 東京から鹿児島中央まで結ぶ東海道/山陽/九州新幹線と武雄温泉から長崎まで結ぶ西九州新幹線では、「Shinkansen Free Wi-Fi」を提供している。1回あたり30分利用することができる(再度認証すれば何度も利用可能)。

 SSIDこそ共通だが、車両の所属によってサービスを提供する会社が異なる。JR東海とJR九州の車両についてはNTTBPが担当し、NTTグループの回線を利用している。JR西日本の車両についてはKDDI系のWi2が担当し、auのLTEネットワークを利用している。

 N700Sに限られるが、ビジネスパーソン向けとなる7号車のS Work車両と8号車のグリーン車では「S Wi-Fi for Biz」が利用できる。こちらはShinkansen Free Wi-Fiの2倍の通信容量で、接続時間制限がないとのことで、家族や友人とワイワイするよりXにポストするようなインターネット愛好家におすすめだ。

JR東海所属の場合はアドレスがNTTBP(wifi-cloud)になっている
JR西日本所属の場合はアドレスがWi2になっている
S Wi-Fi for Biz は暗号化されており、パスワードは座席で確認する

北海道/東北/上越/山形/秋田新幹線

 東京から北へ向かう北海道/東北/上越/山形/秋田新幹線については、JR-EAST FREE Wi-Fiのサービスを展開している(E2系を除く)。1回あたり3時間利用することができる。

 JR北海道の車両となるH5系もJR-EAST FREE Wi-Fiが使用される。こちらはNTTBPがサービスを担当している。

NTTBPの一般的な公衆無線LANスポットと同じ仕様

北陸新幹線

 東京から長野、富山を経由し敦賀まで向かう北陸新幹線では、JR東日本の車両となるE7系はJR-EAST FREE Wi-Fi(NTTBP)、JR西日本の車両となるW7系はJR-WEST FREE Wi-Fi(Wi2)のサービスをそれぞれ提供している。

 東海道/山陽/九州/西九州新幹線とは違い、車両の所属によってSSIDが異なるため注意したい。どちらも1回あたり3時間利用することができる。

東海道/山陽/九州/西九州新幹線と同じくJR西日本の車両はWi2のサービスだ。

 長距離フェリーから離島への高速船など、日本各地に船のネットワークが構築されている。フェリーなどには公衆無線LANスポットを搭載していることが多く、船内でもインターネットに接続することは可能だ。

 船のネットワークは主に2つの方法で接続される。1つは携帯電話の電波を使用するもの。もう1つは衛星回線を使うものだ。

 携帯電話については、海上もエリア化されており、時々不安定になるものの通信することは可能だ。ただ、基本的に岸側から電波が飛んでくるため大型フェリーの場合、「岸側は電波をつかむことができるが、反対側は圏外」ということもありうる。そういった場合、船内に公衆無線LANスポットがあれば誰でもインターネットへアクセスすることができるようになる。

 また、海上エリア外の場合は当然圏外になってしまうが、衛星回線で通信できるようにしている場合もある。最近はStarlinkが海上用のプランを提供していることもあり、導入やトライアルを実施している旅客船も増えてきた。

今回の記事作成にあたり筆者が試した座間味島へ行くフェリー「ざまみ3」の公衆無線LANスポットへ接続する様子。NTTBPによるサービスとなる。なお、出港時は使えたがそれ以降は復路も含め通信は不調だった
NTTドコモのサービスエリアマップで、水色の部分が海上エリアである。通信方式は基本LTEだ
Cruising Resortこと東京九州フェリーの航路。携帯電話の電波を使った公衆無線LANスポットがあるが、ドコモのサービスエリアマップと見比べると分かる通り、一部圏外となるエリアが発生する

バス

 長距離移動の高速バスから日常使う路線バスまで、さまざまなバスが日本中を走っているが、特に長距離移動やインバウンド需要のある観光地へ向かうバスでは、携帯電話の回線を使った公衆無線LANスポットを設置していることが多い。

 筆者がよく利用するJRバス関東、JR東海バスではファイバーゲートがサービスを行なっている。同じJRバスでもたとえばJRバス中国はNTTBPを使っていたり、京成高速バスではWi2を使ったりとさまざまだ。

JRバス関東は、ファイバーゲートが提供するWi-Fi BUSを利用。回線は楽天と表示される。
JR東海バスもファイバーゲートが提供するWi-Fi BUSを採用。JRバス関東とは違いデザインがカスタムされている。回線は同じく楽天と表示される。

便利なアプリ/サービス

 続いて、公衆無線LANスポットを使う上で便利なアプリやサービスを紹介する。

Japan Wi-Fi auto-connect

 公衆無線LANスポットと言えば、使うためにキャプティブポータル(接続したタイミングで自動的に表示されるページ)を開き、規約を確認。次にSNSやメールアドレスなどでログインしてようやく使えるというのが一般的だが、“メールアドレスに届いた認証コードを確認して入力しようとしたらキャプティブポータルのページが閉じてしまった”など慣れていないとイライラすることも多い。

 NTTBPのサービスを使った公衆無線LANスポットに限られるが、「Japan Wi-Fi auto-connect」をスマートフォンへインストールし、ユーザー登録をすれば、あとは対応Wi-Fiサービスエリア内に入るだけでキャプティブポータルを省略し自動接続してくれる(iOSの場合、一度設定から手動でアクセスポイントへ接続する必要がある)。

 勝手に接続されても困る読者もいると思うが、OS側から自動接続をオフにしたり、不要になればアンインストールしたりすれば良いだろう。

iOSは設定画面から対応するSSIDを直接タップして手動で接続させる。対応するSSIDの下にJapan Wi-Fi auto-connectと表示されているため分かりやすい。2回目以降は公衆無線LANスポットの圏内に入れば自動で接続するようになる
Androidの場合は初見の公衆無線LANスポットにも自動的に接続する。また、電波状況のよい対応Wi-Fiに、優先的に接続する機能はAndroidだけとなる。
自分がどれくらいサービスを使ったか確認ができるため、ゲーム感覚で利用もできる。

au Wi-Fiアクセス・auスマートパスプレミアム

 公衆無線LANスポットで心配になる点としては、多くの場合「暗号化されていない」ということだろう。そもそも暗号化が必要なのかどうかは別として、利用開始前のキャプティブポータルでは必要に応じてVPNなどで自衛するよう案内されている。

 数あるVPNサービスの中で、筆者がおすすめするのはauスマートパスプレミアムの特典の1つである「au Wi-Fiアクセス」のフリーWi-Fi自動保護機能(VPN)だ。この機能は、au Wi-FiやWi2といったau Wi-Fiアクセスが対応する公衆無線LANスポットに限らず、暗号化されていないスポットへ接続すると、自動的にVPNをオンにしてくれる。スマートフォンに加えて+1台、たとえばPCなどでもVPNが利用できるため便利だ。

 auスマートパスプレミアムは月額548円だが、少なくとも毎月ローソンで使える250円分のクーポンがもらえること考えると、アリかなと考えている。

au IDは必要になるが、auユーザー以外でも利用することができる。

最後に

 ここまで交通機関で使用できる公衆無線LANスポットについて紹介してきたが、インバウンド需要もあり、一昔前では特定の携帯キャリアのユーザーしか公衆無線LANスポットが使えなかったような場所でも、今では無料でインターネットが使えるようになってきた。

 ただ、手軽に使える反面、機材の不調も日常茶飯事ということも覚えておきたい。

 インターネットが使える前提で期待してしまうとその分落胆も大きいため、筆者は「ここWi-Fiが使えるんだラッキー」くらいの心持ちで活用している。

 ほかにもpovoのようなランニングコストがほぼかからない予備回線や、日頃からオフライン時でも楽しめる動画、電子書籍のような「プランB」を各自準備しておくことを忘れないようにして欲しい。

 読者の皆さんが楽しいシルバーウィークを過ごせますように……(なお筆者はノープラン)。