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フルレイトレ対応の超大作アクション「黒神話:悟空」に最適なGPUは?エントリーからハイエンドまでの7種類でベンチ

2024年8月20日に発売されたアクションゲーム「黒神話:悟空」(Black Myth: Wukong)。Steamでの価格は7,590円だ

 2024年8月20日、中国のGameScienceが「黒神話:悟空」(Black Myth: Wukong)を発売した。西遊記を題材にしたアクションゲームで、PC版の見どころはフルレイトレーシングに対応した美麗なグラフィックスだ。それだけに描画負荷も気になるところ。

 ここでは、エントリーからハイエンドまで7種類のビデオカードを用意し、3種類の画質設定をフルHD/WQHD/4Kの解像度でフレームレートを測定。これからプレイを考えている人の参考になれば幸いだ。

 「黒神話:悟空」は、孫悟空に似ている「天命人」を操って西遊記の後日談を追っていくというもの。ジャンルとしては“ソウルライク”や“死にゲー”と呼ばれる部類ではあるが、それほど高難易度ではなく、数多く存在するボスの攻撃パターンを読んで回避する楽しさ、スキを突いて如意棒による攻撃を叩き込む爽快感が特徴的だ。

 Unreal Engine 5で作られた美しいグラフィックスも注目点。光の屈折と反射を正確を描くフルレイトレーシングに対応し、照明や影、水面への写り込みのリアリティはすさまじい。それだけに、描画負荷は非常に重く、DLSS、FSR、XeSSと主要なアップスケーラーに加えてフレーム生成にも対応。多彩な描画負荷軽減技術も導入されている。

 今回テストに使うビデオカードとしてNVIDIAからは、GeForce RTX 4090/4070 Ti SUPER/4070/3070、GeForce GTX 1650(GDDR5版)、AMDからはRadeon RX 7900 XTX/RX 6900 XT、IntelからはArc A770を用意した。型番は以下の通りだ。

  • NVIDIA GeForce RTX 4090 Founders Edition
  • Palit GeForce RTX 4070 Ti SUPER JetStream OC 16GB
  • NVIDIA GeForce RTX 4070 Founders Edition
  • MSI GeForce RTX 3070 VENTUS 2X OC
  • ASUS GTX1650-O4G-LP-BRK
  • Radeon RX 7900 XTXリファレンスカード
  • Radeon RX 6900 XTリファレンスカード
  • Intel Arc A770 Limited Edition

 検証環境は以下の通りだ。CPUのパワーリミットはPL1=PL2=253Wに設定。ドライバはGeForce系は「Game Ready 560.94」、Radeon系は「Adrenalin 24.7.1」、Arc系は「32.0.101.5972」を使用している。

【検証環境】
CPUIntel Core i9-14900K(24コア32スレッド)
マザーボードASRock Z790 Nova WiFi(Intel Z790)
メモリMicron Crucial DDR5 Pro CP2K16G56C46U5(PC5-44800 DDR5 SDRAM 16GB×2)
システムSSDWestern Digital WD_BLACK SN850 NVMe WDS200T1X0E-00AFY0(PCI
CPUクーラーCorsair iCUE H150i RGB PRO XT(簡易水冷、36cmクラス)
電源Super Flower LEADEX V G130X 1000W(1,000W、80PLUS Gold)
OSWindows 11 Pro(23H2)

 テストには無料で配信されている「黒神話:悟空 ベンチマークツール」を使用した。平均フレームレートのほか、最高/最低/95パーセンタイルのフレームレート、ビデオメモリ使用量も確認できる。画質設定は、「フルトレーシング“超高”、画質レベル“最高”」、「フルトレーシング“低”、画質レベル“高”」、「フルトレーシング“OFF”、画質レベル“低”」の3種類。

 アップスケーラーについては、GeForce RTX 4090/4070 Ti SUPER/4070/3070は「DLSS+フレーム生成」、そのほかは「FSR+フレーム生成」を利用している。サンプリング解像度は「50」に固定した。GeForce GTX 1650は、フルレイトレーシングに対応していないので、「フルトレーシング“OFF”、画質レベル“低”」のみの掲載になる。

「黒神話:悟空 ベンチマークツール」。無料で配信されている
GeForce RTX 4090での設定例。フルトレーシング“超高”、画質レベル“最高”、サンプリング解像度は“50”、DLSS+フレーム生成を有効化している
フルトレーシング“超高”、画質レベル“最高”、サンプリング解像度は“50”の画質。水面への反射が非常にリアルだ
フルトレーシング“低”、画質レベル“高”、サンプリング解像度は“50”の画質。影の表現が多少簡略化され、草木の数もちょっと減る
フルトレーシング“OFF”、画質レベル“低”、サンプリング解像度は“50”の画質。明暗の表現が簡易的になり、表示される草木はさらに減っている

 アップスケーラーとフレーム生成を利用しても、最高画質設定は非常に描画負荷が高い。4K解像度で快適にプレイできるフレームレートを出しているのは、GeForce RTX 4090/4070 Ti SUPERだけだ。Radeon RXシリーズはレイトレーシングに対する弱さが出ており、快適なプレイの目安と言える平均60fps以上が出せるのはRX 7900 XTXのフルHDだけ。レイトレーシングへの最適化はGeForce RTXシリーズのほうが進んでいるのが分かる。

 なお、ビデオメモリの使用量をGeForce RTX 4090でチェックしたところフルHDで7.5GB、WQHDで8.1GB、4Kで9.8GBとかなり高かった。また、サンプリング解像度を100にしてアップスケーラーを無効化すると、GeForce RTX 4090でも平均フレームレートはフルHD/119fps、WQHD/81fps、4K/42fpsまで下がる。最上級に描画負荷が高いゲームと言ってよいだろう。

 画質とレイトレーシングの設定を下げると、一気に描画負荷は軽くなる。GeForce RTX 4070でも4Kで平均70fpsと快適に遊べるフレームレートが出ている。GeForce RTX 3070でもフルHDなら平均72fpsだ。Radeon RXシリーズもWQHD解像度までは平均60fpsオーバーとなった。それでもRTX 40シリーズとの差は大きいと言える。

 フルレイトレーシングをオフにすると力関係は一気に変わる。一番高いフレームレートを出したのRadeon RX 7900 XTXだ。Radeon RX 6900 XTのフレームレートもGeForce RTX 4070 Ti SUPERを上回っている。全体を見てもレイトレーシングをなければ、それほど描画負荷が高くないのが分かる。

 画質レベル設定が「低」というのもあるが、GeForce GTX 1650でもフルHDなら快適にプレイが可能だ。黒神話:悟空を遊びたいけど、エントリークラスのビデオカードで大丈夫かな?と思っている人には参考になるだろう。GeForce RTX 3070やArc A770でも4K解像度で十分プレイできるフレームレートが出ている。

 フルレイトレーシングが生み出す影や反射の美しいグラフィックスを体験したければ、GeForce RTX 40シリーズを選びたいところ。ただ、ゲームをプレイしたいということならば、レイトレーシングをオフにすれば、多くのビデオカードでプレイできるレベルまで描画負荷を軽くできる。主要なアップスケーラーに対応し、サンプリング解像度も細かく調整できるだけに、ビデオカードに合わせて画質設定を詰めてみるのもよいだろう。