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外出先でも普段の作業環境を!ミニPCを「モバイル」で使うためのコツとは?

ミニPCを出先でも快適に使うための方法を紹介

 最近のミニPCは、高性能なCPUを搭載することが多い。特にAMDのRyzen 7000シリーズでは、設定次第とはいえ最新のPCゲームでも動かせるレベルのGPUを内蔵している。書類作成や情報収集などの軽作業はもちろん、動画視聴やゲームプレイといった息抜きまで軽々とこなせるようになった。筆者も、こうしたミニPCをメインPCとして使うための準備を進めているところである。

 また最初にも書いたがミニPCは小さく、そして軽い。旅行や出張で宿泊するホテルなどで利用するのもよいだろう。こうした用途でまず想定するのはモバイルノートPCだが、アプリをインストールしたり、データをコピーしたりといった作業が必要になる。しかし普段からメインPCとして使っているミニPCを旅先にそのまま持ち込むなら、そうした手間は必要ない。

 とまあそんなことを考えながら今年(2023年)の夏に、旅行先へミニPC一式を持ち込んで作業できるかどうかをテストしたのだが、なかなか厳しい結果となった。その経験も踏まえ、ホテルなどにミニPCを持ち込んで快適に利用する方法を、トラブルの内容に沿って解説していこう。

液晶モニターのサイズは欲張らない方がいいかも

 ミニPCに接続する液晶モニターは、画面サイズが大きい方が視認性や作業性が向上する。そうしたこともあり、手持ちの中では一番サイズが大きいASUSTeKの15.6型モバイル液晶モニター「MB16A」を持ち込んだ。

 ところが宿泊先のテーブルがソロキャンプで使うような小さい物だったため、スタンド部分がテーブルから大きくはみ出して不安定な状態になってしまった。

MB16Aは、カバー部分を三角柱のように折ってスタンドとして使うため、安定して使うには広いテーブルが欲しい

 今回のような小さなテーブルで使う場合、13~14型などもうちょっと小さいパネルサイズのほうが安心して使えそうだ。また、Microsoftの「Surface」シリーズのようなキックスタンドを背面に装備するモデルのほうが、狭い場所でも安定して設置しやすい。ということで、背面にキックスタンドを装備する14型のモバイル液晶モニターを改めて購入した。

 もちろんホテルで利用できるテーブルが大きいことが分かっているなら、今回持ち込んだ15.6型の液晶モニターでもまったく問題ない。また最近は17型など、さらに大きなモバイル液晶モニターもあるので、こうしたモデルを選んでも良いだろう。

Amazon.co.jpで購入したVisionOwlの14型モバイル液晶モニター。製品名はよく分からないが、1万6,799円と安い上にIPSパネルなので、とりあえず問題なし
背面には無段階調整の可能なキックスタンドを装備
75mmのVESAマウント穴を装備しており、小さいモニターアームに付けて運用できることも購入の決め手となった

 またホテルで行う作業内容にもよるが、今回はかなり集中してテキストを書く必要があった。こうした状況だと、目線を下に向けたままだと肩が凝るので、目線に合わせて液晶モニター自体の高さを調整できるスタンドがあると便利だと感じた。

 モバイル液晶モニターやタブレット、スマホで利用できる簡易型スタンドの中には、ある程度高さを調整できるものがある。そうした物を組み合わせると、長時間モニターを眺めても疲れにくいだろう。

こちらもよく分からないメーカーWAIYAIKAのタブレットスタンドで、Amazonで1,899円だった。タブレットを置くスタンド部分の高さと角度を調整できる
スタンド部分を折りたためるので、コンパクトに収納できるのも気に入った

ワイヤレスキーボード&マウスは独自タイプがオススメ

 ケーブル接続を最小限にするため、今回はBluetooth接続のキーボードとマウスを持ち込んだ。事前に自宅では普通に使えることを確認していたのだが、現地では頻繁に操作のラグが生じ、かなりイライラさせられた。おそらくは、2.4GHz帯の無線LANしか利用できないホテルだったため、無線LANとBluetoothで干渉が発生したのだろう。自宅では5GHz帯の無線LANしか使わないため、これは想定外だった。

持ち込んだのはLenovoの初代「ThinkPad トラックポイント キーボード」と、ロジクールの超薄型マウス「ウルトラスリム タッチマウス T630」。正直、ちょっと古すぎたということもある

 だからといって有線だとさすがに煩わしいので、ホテルなど出先で快適に作業したいなら、メーカー独自規格に対応するワイヤレスマウス&キーボードを組み合わせるとよいだろう。

 たとえばロジクールでは、「Logi Bolt」というワイヤレス機能に対応したマウスやキーボードを用意している。Logi BoltはBluetoothや無線LANなどとの干渉に強く、安定した操作が可能という。

 実際にこのLogi Bolt対応のコンパクトキーボード「MX KEYS MINI」と、「M650 SIGNATUREワイヤレスマウス」を借りて試してみた。キーボードにはUSBレシーバーは付属しないが、マウスに付属するLogi Bolt対応のUSBレシーバーにペアリングできるので問題はない。

 キーボードのMX KEYS MINIは、しっとりと手になじむタイプ感が快適で、タイプがかなり早くなっても取りこぼしや遅延はなかった。コンパクトなので収納性も高く、今回のような用途にはぴったりだろう。

 M650 SIGNATUREワイヤレスマウスは、比較的コンパクトなMサイズを選択した。筆者のような男性だと、両側から軽くつまんですいすい動かすような、そんな使い方になる。旅行や出張用としてはちょうどいいサイズ感だ。

ロジクールのMX KEYS MINI。枠も小さく場所を取らない。キーの中央には小さなくぼみがあり、触感でタイプを補助する
キートップにはバックライトが仕込まれており、暗い場所でも利用しやすい
左右対称のデザインにスクロールボタン、2つのファンクションボタンを装備するM650 SIGNATUREワイヤレスマウス。単3乾電池1本で24カ月も使えるという

 このほかにも、メーカー独自のワイヤレス機能をサポートするワイヤレスマウスやキーボードはあるので、サイズ感や打鍵感などを店頭で試し、好みのモデルを選択したい。ちなみに普段は英語配列のキーボードを使っているのだが、モバイル向きの小型キーボードだと「これ!」というモデルがなくて、なかなかさみしい状況ではある。

USB PD対応モデルなら全体的に荷物が少なくなるかも

 ノートPCで作業する場合、ホテルなどに持ち込む荷物は本体とACアダプタ程度で済む。しかしミニPCは曲がりなりにもデスクトップPCなので、本体とACアダプタのほか、モバイル液晶モニターやキーボード、マウス、各種ケーブルなどが必要だ。今回の旅行でも普段より機材が増えたことで、スーツケース内部の配置を考え直す必要があった。

今回のテストで使ったBeelinkの「SER6 Pro 7735HS」に付属するミニPC本体とACアダプタ。本体はコンパクトなのにACアダプタはかなり大きめだった

 特にミニPCに付属するACアダプタは、性能が高いモデルほど大きく、重くなる。今回のようなモバイルでの利用も考慮するなら、ACアダプタのサイズも気になるところだ。この点でオススメなのは、USB PD対応の充電器を同梱するミニPCである。こうした充電器はACアダプタと比べると二回りくらい小さい上、ミニPC自体のサイズも小さい傾向がある。

MINISFORUMの「Mercury EM680」は、手のひらに収まるほどの非常にコンパクトなミニPCだ。本体に給電するためのコンパクトなUSB PD対応充電器を付属している

 こうしたACアダプタの形状は、基本的に製品の紹介欄やスペック欄で確認できることが多い。そこに記載されていない場合でも、筆者だけでなく本誌でレビューしているほとんどのライターが取り上げるチェック項目なので、そうしたレビューをチェックするのも有効だ。

 また最近では、高性能なミニPCでもUSB PD給電に対応するモデルが増えている。そのミニPCが要求する電力に対応するUSB PD対応充電器を用意する必要があるが、ACアダプタに比べればUSB PD対応充電器はコンパクトな傾向にあり、荷物を減らしたい場合は有効な手段の1つだ。

MINISFORUMの「Venus UN1256」では背面に、USB PD給電やDisplayPort Alt Modeに対応するUSB 3.1 Type-Cポートを装備する

 ただメインPCとして使うことが前提なので、性能やインターフェイスの種類によっては目的にマッチした特定のモデルを選ぶしかない、という状況はある。またホテルで使うならACアダプタがジャマになるということもあまりないし、スーツケースに入るならとりあえず問題にはしないという考え方もある。あまりこだわらなくてもいい部分かもしれない。

ミニPCならセキュリティボックスも使いやすかった

 以上、今回の旅で気になったポイントと、その解決方法をまとめた。こうした反省を踏まえて機材も準備したし、次の旅行や出張では、ミニPCで快適に仕事を続けられるはずだ。旅行の前には仕事を終えているべき、というのはよく分かってはいるのだが、仕事が詰まっているとなかなかそうも行かない……。

 実はもう1つ、今回ミニPCをモバイルすることで得られたちょっとしたメリットとして、「セキュリティボックスが使いやすい」ということもあった。

 昔は、ビジネスマンの出張を想定していたのか、14~15型のノートPCがそのまま入るサイズのセキュリティボックスを用意しているホテルが多かった記憶がある。しかし最近はホテルに持ち込まれる機材の変化があるのか、10型のタブレットが入ればギリギリというサイズ感のセキュリティボックスが多い。

 特に13~14型のモバイルノートPCでもNGというホテルが増えており、ちょっと困っていたのだ。しかしミニPCであれば、問題なくセキュリティボックスに収納できる。ささやかではあるが、これもPCのサイズが小さくなることで享受できるメリットの1つといえるかもしれない。