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ミニPCはなぜ人気なのか?搭載CPUやメモリなど、ミニPC選びで知っておくべきこと

一口にミニPCと言っても、さまざまなタイプが登場しているので選びにくい状況に

 「ミニPC」とは、手のひらに載るようなコンパクトなデスクトップPCのことだ。実は昔からこうした小型のデスクトップPCは存在していたが、基本的には非力でクセのあるモデルが多く、メインPCとして使うのは難しかった。しかし最近のミニPCは、ノートPC向けの強力なCPUを搭載しており、性能も大幅に向上している。

 また種類もここ2、3年で爆発的に増えており、「気にはなっているが、どのモデルを選んだらよいのか分からない」という人が多いのではないだろうか。そこで今回は、こうしたミニPCの特徴から選ぶ上でのチェックポイント、その導入方法などを分かりやすく解説していこう。

コンパクトで性能が高く、そして安いミニPC

  ミニPCの最大の特徴は、第一に非常に小さいことだろう。 いわゆるタワー型デスクトップPCはもちろん、液晶モニターの脇に置いて使うことが多いスリム型デスクトップPCと比べても圧倒的に小さい。CDやDVDのケースを置く程度のスペースがあれば、十分なのだ。

ノートPCと比べても、ミニPCの底面積は小さい

 また、 ノートPCと比べれば比較的安い。 一般的に、今回取り上げるミニPCで利用されている最新の高性能CPU(AMDはAPUとも言うがここではCPUに統一する)を搭載したノートPCは、15~20万円台が普通で、さらに高価なモデルも多い。しかし、 ミニPCでは10~12万円前後で購入できる。 メモリやSSD、Windows 11などを自分で用意できるなら、もっと安いベアボーンモデルもある。

 液晶モニターやキーボードは自分で用意する必要があるが、今まで使ってきた機器を流用するなら追加コストはかからない。

 加えて、 最新の高性能CPUを搭載するモデルから、省電力型CPUを搭載する買い得感の高いモデルまでラインナップも豊富 で、予算に合わせて自由に選択できる。

キーボードや液晶モニターは、自分の好きなものを組み合わせて利用する

  最新の高性能CPUを搭載しているにも関わらず、非常に静かに利用できることにも注目したい。 アイドル時はもちろん、Webブラウズや音楽再生、動画配信サービスなど軽作業中心なら、ほぼ無音と言ってもよいモデルが多い。

 もちろんPCゲームや動画エンコードなど負荷の高い作業をする場合はそれなりに動作音は大きくなるが、そうした作業が終われば静かな状態に戻る。ノートPC向けのCPUを利用しているのでもともと発熱が小さく、ミニPCのようなコンパクトな筐体でも熱源を冷却しやすいのだ。

  コンパクトで高性能、しかも非常に静かに利用でき、価格もそれなりに安い。PCに要求される要素を高いレベルで兼ね備えるミニPCが注目されるようになったのも、当然と言ってよいだろう。

性能を決めるのは搭載しているCPU、買い方にも注意

 次に、ミニPCの選び方のコツを簡単に解説していこう。

CPU

 大半のミニPCではディスクリートGPUが搭載されておらず、CPUに内蔵されたGPUとなるため、それによって性能が決まってくる。

 たとえばIntelのCPUを搭載しているモデルの場合、世代が新しくなるほど性能が高くなるし、Core i7搭載モデルのほうがCore i5搭載モデルより性能が高い。このへんはデスクトップPCや一般的なノートPCと同じで、あまり迷うことはない。最近のミニPCに搭載されることが多いIntelのCPUの性能を簡単に整理したのが下の表だ。

ミニPCによく搭載されるIntel CPU
CPU名コア/スレッド数CPU性能グラフィックス性能ミニPCの価格帯
Core i7-13700H14コア/20スレッド比較的高い
Core i5-13500H12コア/16スレッドミドルレンジ
Core i7-1360P12コア/16スレッド比較的高い
Core i7-12650H10コア/16スレッドミドルレンジ
Processor N1004コア/4スレッド安い

 一方で、ちょっとややこしいのがAMDのCPU(だ。最新モデルは「Ryzen 7000」シリーズなのだが、Ryzen 7000シリーズだからと言って必ずしもCPUや内蔵GPUが最新版とは限らない状況になっている。また、古い世代の「Ryzen 5000」シリーズや「Ryzen 6000」シリーズを搭載するミニPCも、普通に販売されていたりする。

 そこでAMD製CPUでも、今までテストしたAMDのCPUを搭載するミニPCのベンチマーク結果をもとに、おおよその性能感と価格帯を下の表で整理した。購入時の参考にしてほしい。

ミニPCによく搭載されるAMD CPU
CPU名コア/スレッド数CPU性能グラフィックス性能ミニPCの価格帯
Ryzen 9 7940HS8コア/16スレッド比較的高い
Ryzen 7 7735HS8コア/16スレッドミドルレンジ
Ryzen 7 5800H8コア/16スレッドミドルレンジ
Ryzen 5 5625U6コア/12スレッド比較的安い
Ryzen 5 5500U6コア/12スレッド比較的安い

 ちなみにAMDのCPUは内蔵GPUの性能がIntel製のCPUより高く、フルHD解像度なら設定を調節することでPCゲームを楽しめるモデルも登場している。とは言え限界はあるので、高精細なグラフィックスを多用する最新のPCゲームをプレイしたいなら、数は少ないがディスクリートGPUを搭載するミニPCにしよう。

メモリ

 メモリは、「DDR4」対応メモリと「DDR5」対応メモリを利用するモデルがあり、容量は最低でも16GB、容量が大きいモデルなら32GBを搭載する。メモリ容量に関しては16GBでも十分だし、現状ではDDR4メモリとDDR5メモリで性能に顕著な違いが発生するということもないので、あまりこだわる必要はない。

 今後は全体的にDDR5対応メモリへの移行が進むと予想されるため、今後容量をアップグレードしたくなったタイミングでDDR4対応メモリの入手性が問題になる可能性はあるが、まだ後2年くらいはDDR4対応メモリも安く購入できるはずだ。

DDR4メモリとDDR5メモリでは規格が異なり、メモリスロットの形状も異なるため、流用することはできない

ストレージ

 ストレージは、スタンダードモデルなら500GB前後を搭載することが多い。容量が大きめな1TBモデルもある。写真や動画などを大量に保存するなど、用途によっては容量が大きいモデルを選ぶ必要はある。

 ただ高速なUSBポートを利用して外付けのSSDを追加すれば、ファイルの保存容量を補うことは難しくない。それにM.2 SSDや2.5インチSSDを追加搭載可能なモデルもあり、ストレージの拡張は融通が利くほうだ。

サポートに注意

 最後に「買い方」について簡単に解説しよう。Amazon.co.jpでは、非常に多くのミニPCがラインナップされている。また値引きセールも頻繁に開催されており、運がよければかなり安く購入できるのも事実だ。ただAmazon.co.jpに出品している販売業者の多くは、日本国内の流通を主体とする販売業者ではない。

 購入直後ならAmazon.co.jpに頼ることもできるが、長く使った後に起きたトラブルだと、自分で海外の販売業者とやり取りしなければならないこともある。

 こうしたサポート面を重視するなら、リンクスインターナショナルが代理店となっているMINISFORUMのミニPCがおすすめだ。Amazon.co.jpだけではなく、大手家電量販店やPCパーツショップでも取り扱いがあるため、実際に手に取って製品をチェックできるのはうれしい。

リンクスインターナショナルではMINISFORUMのミニPCの販売代理店になっており、1年間のサポートを受けられる

おすすめミニPC 2モデル、そしてプラスワン

 これらのことを踏まえて、今回は2台のミニPCをおすすめしよう。

MINISFORUM Venus NPB5

 まず1台目は、MINISFORUMのバランスと使い勝手に優れるMINISFORUMの「Venus NPB5」を紹介したい。搭載CPUはゲーミングノートPCで利用されることが多い「Core i5-13500H」で、高性能コアは4個、高効率コアは8個搭載しており、12コア/16スレッドに対応している。

MINISFORUMのNPB5では、第13世代Core i5シリーズを搭載する
MINISFORUM Venus NPB5のスペック
OSWindows 11 Pro
CPU(コア/スレッド数)Core i7-13500H(12コア16スレッド)
GPUIntel Iris Xe Graphics(CPU内蔵)
搭載メモリ(空きスロット、最大)DDR5-4800 SO-DIMM 16GB×2(なし、64GB)
ストレージSSD 512GB(PCI Express 4.0)
拡張ベイ2.5インチシャドー×1
通信機能Wi-Fi 6、Bluetooth 5.2
主なインターフェイス2.5Gigabit Ethernet×2、HDMI×2、USB 4.0×2、USB3.2 Type-C×1、USB 3.2×2、USB 3.1×2
本体サイズ(幅×奥行×高さ)127.5×127×54.7mm
重量(実測値)約570g

 Core i5-13500HはIntelの第13世代Coreシリーズに属する最新CPUであり、Windows 11の各種操作はもちろん、アプリの起動や操作でもた付く場面はない。メモリは16GB、ストレージは512GBのモデルの実売価格は11万円前後だ。

 映像出力端子としてはHDMIを2基装備するほか、USB 40Gbpsポートを2基装備しており、すべてのポートでリフレッシュレート60Hzの4K対応モニターが利用できる。2.5Gigabit イーサネット対応の有線LANポートやWi-Fi 6への対応、前述のUSB 40Gbpsポートも含めた多数の高速USBポートなど、デスクトップPCに求められる要素を高いレベルでまとめ上げている。

背面には2.5Gigabit イーサネットポートやHDMI、USB 40Gbpsポートをそれぞれ2基備えるなど、充実したインターフェイスを備える。

 しかも天板手前をグッと押し込むだけ天板を外せる構造を採用しており、メンテナンスやメモリ、SSDの交換などが簡単に行なえる野もうれしい。インターフェイスの構成はほぼ同じで、より高性能な「Core i7-13700H」を搭載する「Venus NPB7」もラインナップしており、メモリが32GBでストレージが512GBのモデルは実売価格13万円前後。

天板手前にあるロック部分を押し込むと、簡単に天板が外れて内部にアクセスできる

MINISFORUM Neptune HX99G

 PCゲームはプレイしたいが、どでかいミドルタワーケースを部屋に置く気にはなれないというユーザーなら、別途GPUを搭載するMINISFORUMの「Neptune HX99G」に注目したい。これは、AMDの「Ryzen 9 6900HX」をCPUとして採用するほか、AMDのノートPC向けGPU「Radeon RX 6600M」を搭載するミニPCだ。32GBのメモリと512GBのストレージを搭載するモデルの実売価格は18万円前後。

GPUを搭載してグラフィックス処理を強化した「Neptune HX99G」
MINISFORUM Neptune HX99Gのスペック
OSWindows 11 Pro
CPU(コア数/スレッド数)Ryzen 9 6900HX(8コア16スレッド)
GPUAMD Radeon RX 6600M
搭載メモリ(空きスロット、最大)DDR5-4800 SO-DIMM 16GB×2(なし、64GB)
ストレージSSD 512GB(PCI Express 4.0)
拡張ベイPCI Express 4.0対応M.2スロット×1
通信機能Wi-Fi 6、Bluetooth 5.2
主なインターフェイス2.5Gigabit Ethernet×1、HDMI×2、USB 4.0×2、USB 3.2×1、USB 3.1 Type-C×1、USB 3.1×3
本体サイズ(幅×奥行×高さ)205×203×69.3mm
重量(実測値)約1.4kg(スタンド含まず)

 ミニPCとしてはかなり高い部類に入るのは間違いないが、それだけに性能は非常に高い。このCPUとGPUの組み合わせは、高性能ゲーミングノートPCで採用例が多く、GPUを搭載しないミニPCと比べるとグラフィックス性能は圧倒的だ。WQHD(2,560×1,440ドット)クラスまでの解像度であれば、「サイバーパンク2077」など描画負荷が高めのPCゲームもプレイできる。

 またHX99Gでは7本のヒートパイプと多数のアルミフィン、そして2基の冷却ファンを組み合わせた冷却システムを搭載しており、CPUとGPUをしっかりと冷却できる。PCゲームのプレイ時など負荷が高いときは「サー」というファンの回る音が聞こえるが、うるさいと感じるレベルではなく、負荷が低い状態になればすぐに大人しくなる。

M.2対応スロットを2基備えており、拡張性に優れることも特徴の1つ

もっと安いモデルを購入しても問題なし?

 ここで紹介している2モデルは、どちらも実売価格は10万円を超える。もうちょっと安く買いたい、ということなら直販サイトを利用するのも1つの手だ。メモリやストレージの容量を自分の好みに合わせて変更できるほか、さまざまな値引きクーポンを用意している。

 メモリやストレージ、OSが別売りになったベアボーンPCモデルも用意されている。ベアボーンPCだと価格はグッと下がるので、手持ちのメモリやストレージ、OSのライセンスを流用できるなら、こうした直販サイトでの購入もおすすめだ。

ミニPCに積極的なMINISFORUMやBeelinkでは、直販サイトも用意している

 また、Intelの「Intel Processor N100/N95」を搭載するミニPCが気になっているユーザーは多いだろう。これらは第12/13世代Coreシリーズが搭載する高効率コアのみで構成されたCPUで、各社からさまざまなミニPCが登場している。実売価格は3~4万円前後、セール期間だと2万円台半ばで購入できることも珍しくないため、入門用にと考える人は多いようだ。

 Windows 11の操作やWebブラウズ、書類作成、動画配信の視聴といった作業なら、問題なくこなせる程度の性能はあるため、軽作業主体なら選択肢としてはアリだ。用途が限定されるため、おすすめモデルからは外したが、こうした低価格なモデルも1つの選択肢にはなる。

Intel Processor N100を搭載するASUS JAPANの「ExpertCenter PN42」。実売価格は43,000円前後

ミニPCを実際にセッティングしてみよう

 最後に、ミニPCのセッティングについて簡単に解説していこう。小さいとは言えデスクトップPCなので、基本的なセッティング方法はデスクトップPCのそれと同じだ。モニターケーブルで液晶モニターと接続、マウスやキーボードをUSBポートに接続すればよい。

 また多くのミニPCでは、液晶モニターが装備する「VESAマウンタ」を利用して、液晶モニターの裏側にミニPCを吊るすようにして設置できる機能がある。この機能についても解説していこう。これらの解説では、MINISFORUMの「Venus NPB7」を使って行なう。

ミニPCのセットアップ
【手順1】パッケージの中には、本体のほかにACアダプタや電源ケーブル、HDMIケーブルなどが入っている。これらを取り出してひとまとめにしておこう
【手順2】付属のHDMIケーブルか、今まで使ってきたケーブルなどを使って、本体と液晶モニターを接続する。Type-Cケーブルで接続する場合は、別途用意する
【手順3】有線LANで接続する場合はLANケーブルを接続し、さらにキーボードやマウスを接続しよう。Bluetooth接続のタイプを使う場合でも、最初のペアリング時に何かしら必要になるので、USB接続のものを用意しておく
【手順4】最後にACアダプタと電源ケーブルを接続する。先に電源が入る状態にしておくと、こうしたセッティング中にうっかり電源ボタンを押してしまう可能性があるからだ
【手順5】電源ボタンを押してミニPCを起動し、Windows 11の初期設定などを行なう。ハードウェア的な作業はこれで終了だ

 VESAマウンタを使った背面への取り付け方法は、今回のNPB7では非常に簡単だ。NPB7付属のVESAマウンタキットを液晶モニター側に取り付け、マウント用のネジを使ってNPB7を挿し込むだけでよい。

 ただしVESAマウンタを使って付属のスタンドを取り付ける液晶モニターだと、ミニPCを取り付けるスペースはなくなってしまうので、背面の状況を確認したい。

液晶モニターへの取り付け
【手順1】NPB7のパッケージに含まれるVESAマウンタキットと取り付け用のネジ、NPB7側に付けるマウント用のネジを取り出しておく
【手順2】VESAマウンタキットを、液晶モニターのVESAマウンタ部分にネジ止めする。上向きの矢印があるので、その矢印が上を向くように固定しよう
【手順3】NPB7の底面にあるネジ穴に、VESAマウンタ固定用のネジを取り付ける。いっぱいまで挿し込む必要はない。余った部分を使ってVESAマウンタキットに挿し込む構造だ
【手順4】NPB7の底面にある固定用ネジを、VESAマウンタキットのガイドに従って挿し込めば、NPB7を液晶モニターの背面に固定できる