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「タウンページ終了のお知らせ」。104番の番号案内も使用不能に
2024年7月22日 06:22
NTT東日本およびNTT西日本は、2026年3月31日に、職業別電話帳である「タウンページ」と、番号案内の「104番」サービスの提供を終了すると発表した。電話帳と番号案内の135年の歴史が幕を閉じる。
2024年7月20日に、オンラインで会見を行なったNTT東日本サービス 営業推進本部デジタルオペレーション部基盤サービス部門長の種村則明氏は、「今では電話帳を利用したことがない、あるいは番号案内サービスを利用したことがないという人が多い。時代の変化やテクノロジの進化とともに、これらのサービスが、ほぼ役割を終えたため、提供を終了する」と説明した。
電話帳および番号案内は、利用者の減少に伴い、いずれも年間数10億円の赤字だという。
同社によると、タウンページについては、2024年12月までは全職種を掲載した紙媒体によるタウンページを発行。2025年1月から2026年3月までの最終版は、緊急性の高い職種や利用機会が多い177の職種を中心に、紙冊子として発行および配布する「タウンページ冊子版」と、インターネット上で閲覧可能で、すべての職種を掲載した「タウンページWeb版」として提供する。
冊子の最終版の入手方法については、NTT東西から電話契約者に送られる請求書の封筒などを通じて知らせる。エリアによって発行月が異なり、最終版の配布および閲覧は最長で2027年8月までとなる。
各地域で発行する電話帳や電話番号照会記録サービス、データをCD-ROMで提供するCD-ROM電話帳も、2026年3月31日に終了する。
また、タウンページの掲載情報を、データベースとして提供するタウンページ情報販売サービスも同日に終了するが、「iタウンページデータベース」として継続して提供することになる。同サービスは、カーナビゲーションシステムの目的地検索や、警察および消防の通信指令システムにおける通報場所特定の一部で活用されているという。
なお、個人名を掲載した50音順電話帳の「ハローページ」は、すでに2023年2月に発行を終了している。
目の不自由な人を対象にした点字電話帳は提供を継続する。点字電話帳は、官公庁や福祉施設、公共サービス、医療機関、交通機関などを独自に収録した電話帳で、関係団体や地方自治体などを通じて、希望者に無料で配布している。
1983年に誕生したタウンページ
タウンページは、企業の電話番号を調べるための冊子として、全国で1年半ごとに発行。電話契約者に無料で配布している。業種別に、企業の連絡先(企業名、住所、電話番号、職業分類)を掲載しているほか、広告により、サービス内容や営業時間、地図情報などを掲載できる。
電話帳は、電話が開通した1890年(明治23年)に、「電話加入者人名表」として、1枚の紙で発行されたのが最初で、197人の加入者を電話番号順に縦書きで記載していた。1971年に「電話番号簿」から「電話帳」に改称。職業別電話帳と50音別電話帳が用意された。1983年からは愛称として、職業別電話帳を「タウンページ」、50音別電話帳を「ハローページ」と呼ぶようになった。
だが、電話帳の広告掲載件数は減少傾向にあり、2000年度には1,810件だったものが、2023年度には116件へと94%も減少している。「スマートフォンの急速な普及や、検索手段の多様化により、紙の電話帳を使って、電話番号を調べるよりも、インターネットで店舗や施設の電話番号を検索する人が増加。これにより、電話帳に掲載される広告が減少した」と振り返った。
固定電話の契約者数の減少も、電話帳利用の減少に影響している。
電話帳には多くの紙を使っており、2023年の発行部数は2,660万部となり、年間6,800トンの紙を使用。NTT東西の紙使用量の77%を電話帳が占めている。紙の電話帳の提供を終了することで、これがゼロになり、地球環境への負荷低減の観点からも効果があると見ている。
104番のサービスも終了
一方、104番の番号案内サービスは、2026年3月31日23時59分59秒までに受け付けた問い合わせを最後に終了する。NTTファクス104も同日に終了する。
なお、電話帳の利用が困難な視覚障がい者などを対象に、番号案内を行なう「ふれあい案内」は継続するが、今後受付電話番号を変更し、案内時間も見直す予定だという。
番号案内は、104番にかけて、氏名や企業名、住所から、電話番号を音声で案内するもので、24時間365日の利用が可能であり、料金は、月間利用件数や利用時間帯に応じて、1案内あたり66円~165円かかる。
電話帳と同様に、1890年に、東京と横浜で、電話交換業務が開始されたのに併せて、最初の197人の加入者を対象に番号案内サービスを開始。1953年には市内番号案内が104番、市外番号案内が105番となり、紙の番号簿を利用してオペレータが回答していた。1986年にはコンピュータによる案内業務が開始された。1989年には全国の電話番号を104番で受け付けるようになり、この時期が問い合わせ件数ではピークになっていたという。
「1989年度には12億8,000万回の利用があったが、2023年度はそこから99%も減少し、1,600万回となっている。インターネットやスマートフォンの普及により、電話番号の検索方法が多様化し、誰もが簡単に検索できる環境が整ったことで、番号運内サービスの利用が減少した」と分析。「現在の利用の95%は法人や自治体の問い合わせであり、これらの電話番号はインターネット上のサービスであるiタウンページで検索ができるようにしている」と述べた。
代替サービスの「iタウンページ」とは?
同社では、電話帳および番号案内の終了後に、電話番号を調べる方法として、iタウンページの利用をすすめている。
NTTタウンページ 常務取締役 カスタマソリューション事業部長の三隅浩之氏は、「電話帳の提供終了後の後継サービスがiタウンページになる。インターネット電話帳であり、固定電話の移動情報をもとに、データベースを更新しているため、常に最新データを掲載している。エリアに新規店舗が出店したり、移転や閉店したりといった場合にもタイムリーに反映している」という。
iタウンページは、1996年に紙の電話帳のデータを、インターネット上で検索できるサービスとしてスタート。約570万件の店舗や企業が掲載されており、約8,000の詳細業種に分類し、あらゆる業種を網羅。弁護士や行政書士などの業種では、資格確認なども実施し、信頼性の高い情報を掲載しているのが特徴だという。
2024年秋には、iタウンページをリニューアルする予定で、これまでの「インターネット電話帳」という位置付けから、「総合ライフポータル」に刷新。操作性の改善や掲載情報の充実によって、地域のくらしを便利にし、全国のあらゆる業種を網羅する企業情報を掲載するという。
これまでの利用方法が、業種による検索や、業種に関連するキーワードでの検索となっていたが、リニューアル後は、利用者の好みや条件に併せた検索および比較を可能にすることができるようにする。フリーワードの入力で検索が可能になるため、「Wi-Fi接続が可能な店舗」、「駐車場がある店舗」といった検索や、レストランでは食材をもとにした検索も可能になるという。
また、自治体の情報や、暮らしのお役立ち情報なども提供。地域社会の課題解決に資する情報基盤(iタウンページデータベース)を目指す。個人名の検索サービスは行なわない。
「電話帳利用者には高齢者がいたり、インターネットやスマートフォンには不慣れな利用者がいたりする。文字フォントを16ポイント以上にし、ユニバーサルデザインによる色彩配置も工夫する」とする。
リニューアルの詳細については、今年秋に発表予定。
若い世代を中心に、紙の電話帳や番号案内を使ったことがないという人が増えているのは事実だ。だが、紙の電話帳で番号を調べたり、104を利用したことがある世代にとっては、少し寂しさを感じるニュースと言える。