やじうまPC Watch

ジャンクな500円シンクライアントで遊ぶ

~VIA C7搭載でレトロOSに好適?

Wyse C10LE

 先日、秋葉原でぶらぶらしていたところ、GENO QCPASSの秋葉原買取センターで、中古のWyse製シンクライアント端末「C10LE」が500円という価格で販売されているのを見かけた。“大量入荷のためジャンク”という訳あり価格だそうだが、面白そうだったので買ってみた。

 シンクライアントの実装方式はさまざまで、PXEを通じてネットワーク経由でOSをブートし、ローカルで処理する方式などもあるのだが、サーバー側でほとんどの処理を行ない、端末側はユーザーのキーボードやマウス操作をサーバーに送信し、画面を受信するタイプのものがほとんどである。いわばリモートデスクトップ専用端末だ。そのため、端末としての処理性能は最小限である。

 C10LEも後者に属する製品であり、2011年に製造されたものであるにもかかわらず、CPUは2005年にVIAが開発したC7 1GHz(本機に搭載されたものはEdenで、パッケージが若干異なるのだが)、メモリは512MB、128MB(!) SSDを搭載している。というわけで性能はまったく期待できないわけだが、特徴がいくつかある。

・無線ルーターと同じぐらいの大きさの筐体にx86 CPUを搭載
・ファンレス、SSD、ACアダプタ採用で完全無音
・ネジ1本外せば内部にアクセスでき、メンテナンス性は良好
・OSとしてWyse Thin OSを標準搭載しているだけで、それ以外はごく普通のx86 PC
・SSDは44ピンIDE接続で、IDE HDDに換装可能
・動作時の消費電力は8~10W程度(実測値)
・PCとして使うためのインターフェイスは比較的充実
・レガシーOSはとくに難なく動きそう。とくにWindows XP

横置きが前提の設計らしい。4本の足は華奢な作りだが、取り外し可能
メッシュ構造+銅製ヒートシンクで完全ファンレスだ
PS/2×2、DVI-I、Gigabit Ethernet、USB 2.0×2と、PCとして一通り使えるインターフェイスを備えている

 CPUとチップセットは基板に実装されているので換装はできないが、メモリはDDR2 SO-DIMMスロットを1基備えており、最大2GBまで装着できる。また、IDEも昔の一般的なノートPCで使われている44ピンコネクタ(ただしオス)なので、ケーブルさえ手に入ればストレージも換装できる。

 メモリは銅製ヒートシンクに挟まれており、放熱性は良さそうだが、後期のDDR2メモリはさほど発熱量が高くないため、換装してみて熱くないようなら外しても良いだろう。ストレージはIDE→CFやIDE→SD変換アダプタを利用してもいいし、薄いタイプのHGST製1.8インチHDDなら、メモリのヒートシンクを外せば筐体にそのまま収まるので挑戦してみても面白い。

 BIOSは「Del」キーで入れる。初期パスワードとして「Fireport」が設定されていた。設定項目はあまりないのだが、Bootのタブにお世話になるだろう。本機にはUSB機器のエミュレーション機能がついており、キーボード/マウス/USBメモリはDOS上からでもドライバなしでそのままアクセスできる。よって、USBメモリにインストールしたいOSを詰め込み、そこからブートしてインストールするのが一番手っ取り早い。

 本機のチップセットはVX855であり、対象OSはWindows XP以降となっている。そのためドライバもWindows XP以降でないと用意はないのだが、ハードウェアの全機能使うことを目標としなければ、Windows 9x系もインストールと起動が可能。ついでに言えば、Windows 95は128MB SSDにギリギリ収まる(インストールには大変な作業が付きまとうので、おすすめはしない)。

 頑張ってストレージを換装してWindows XPマシンに仕立ててもいいが、IDEケーブルやらHDDやらが手元にない人は、余計な出費がかさんでしまう。サウンド系は使えそうにないが、DOSのゲームを走らせるのにちょうどいいスペックなので、本体のストレージにFreeDOSを入れ、USBメモリにDOSゲームやプログラムを入れて遊んだほうがいいだろう。

 ちなみに、付属のACアダプタは12V/2.5A出力で、外径5.5mm/内径2.1mmのDCジャックタイプとなっている。電子工作などにも使えそうで、汎用性が高い。中古とは言え、ACアダプタだけでも1,000円ぐらいの価値があるといえるだろう。

ネジ1本外せば内部にアクセスできるメンテナンス性
メモリとストレージは換装できる
メモリとSSDともにApacer製。前者はDDR2-800で容量は512MB、後者はIDE接続で128MB。一般的なPCの容量関係とは逆だ
44ピンのIDEケーブルが手に入れば、2.5インチIDE HDDや1.8インチIDE HDDを接続できる
配置を工夫すればHDDをつけたまま筐体を閉められる
DDR2メモリも換装できる。試しに1GBモジュールを装着してみたが、問題なく起動した
マザーボード背面にも多くのチップが実装されている
Eden 1000/400+の刻印がなされたCPU。C7ベースで、1GHz駆動。FSBは400MHzだ
ノースブリッジとサウスブリッジを統合したVX855チップセット。残念ながらSATAは非サポート
オーディオコーデックは「VT1702S」。24bit/192kHzの再生が可能だが、Windows XP以降のみサポートされている
ネットワークコントローラはVIAの「VT6122」
DVIトランスミッターもVIA製の「VT1632A」
ルネサス テクノロジーの「ISL6218」はシンクルフェーズバルクPWMコントローラだ。Intelのモバイル向け電圧ポジショニングであるIMVP-IVおよびIMVP-IV+に対応している
Texas Instrumentsのデュアルシンクロナスステップダウンコントローラ「TPS51120」
ACアダプタは12V/2.5Aとなっており、これだけでも500円以上の価値はある
BIOSでは標準でパスワード「Fireport」がセットされている。必要ないのであればSecurityのタブで空欄にしておくといい
ブートデバイス順序の変更。なお、USBメモリもHDDとしてエミュレートされるので、いろいろ自由度は高い
DOSを入れてDOSゲームに興じるのが一番の使い方だろう(ただし音楽や効果音はなし)
Windows 95なら128MBのフラッシュメモリにギリギリ収まるが、公式ドライバがないためあまりおすすめしない