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【懐パーツ】マニアに定評? のATI製Rage 128 VR搭載の「XPERT 99」

XPERT 99

 今回ご紹介するのは、パワレポコレクションに収蔵されている、ATI Technologies製チップ「RAGE 128 VR」を搭載したビデオカード、「XPERT 99」である。国内では1999年3月末に発売され、価格は14,800円だった。

 RAGEシリーズは、2Dウィンドウアクセラレータ「Mach」シリーズの後継、ハードウェアT&Lエンジンを備えた「Radeon」シリーズの前身に当たる。最初は「3D RAGE」で、続いてDirectX(DX) 5対応の「3D RAGE II」、DX6対応の「3D RAGE Pro」へと進化した。これらのチップをベースとした低価格向けのバリエーションモデルは多数存在する。

 RAGE 128シリーズは、3D RAGE Proをベースに、性能を向上させるために内部処理を128bit化させたモデル。これも多くのバリエーションがあるようだが、今回紹介するRAGE 128 VRは、3D RAGE Proとピン互換パッケージを採用し、メモリバス幅が64bitになるモデルである。

 1998年~1999年頃はWindowsで走る3Dゲームが台頭し始めたころで、ビデオカードの3D性能が重視され、時代をリードしたNVIDIAに追従できなかったメーカーは淘汰されつつあった。そう言った意味でRAGE 128 VRは、3Dの性能面では特に目を見張るほど素晴らしいものではなかった。

 しかしRAGE 128搭載ビデオカードは比較的安価で提供されたほか、DVD再生支援機能が非常に強力であった。RAGEシリーズではDVDプレーヤーソフトの対応が進み、Pentium II 300MHz以上のCPUを搭載したPCと組み合わせれば、専用のハードウェアデコーダカードを持ちいらずともソフトウェアでDVDビデオを再生できる。これが他社にはないアピールポイントとなった。

 XPERT 99の実装は比較的シンプルである。メインはRAGE 128 VRとSamsung製SDRAM「KM416S1020CT-G7」(512Kワード×16bit×2バンク=2MB)×4(合計8MB)で構成されている。

 BIOSチップの付近に見える新日本無線(JRC)の「NJM723」は高精度電源用レギュレータ、Texas Instruments製の「HB541(SN54AHCT541)」は3ステート出力対応のオクタルバッファ/ドライバ、Fairchild製の「74LVT754」は3ステート出力対応の低電圧オクタルDタイプフリップフロップである。

 また、TI製の2入力エクスクルーシブORゲート「SN74ACT86」や、Frequency Electronics製の29.498MHz水晶発振器、TI製の可変高精度シャントレギュレータ「TL431」などの実装も見える。

 おっと、タイトルに“マニアに定評”と書いたが、その理由を書いてなかった。当時ATIはビデオチップをオンボード向けに出荷していたものの、ビデオカードに関してはMatroxと同じくドライバも含めて基本的に内製であった。つまりある程度画質が担保されたのである。もちろんMatroxのカードほど高解像度には強くなく、あくまでもポピュラーな解像度での話。TV出力を備えたモデルは、TV出力の品質にも定評があった

 で、Matroxのビデオカードの出力は「正確」であったのに対し、ATIのビデオカードは赤みがかった、暖色系に振った色だという。つまり、人間の肌の露出が多いムフフな写真/動画の再生やゲームのプレイに好適ということで、マニアの間ではMatroxよりもATIを選ぶ人が多かったとか。あくまでも人から聞いた話であり、筆者が実際に見聞きしたものではないのだが。

XPERT 99表面
背面。サンプル品のようだ
出力はミニD-Sub15ピンの1系統のみ
3D RAGE Proとピン互換で30ドルのRAGE 128 VR
メモリはSamsung製の「KM416S1020CT-G7」
F.E.I製水晶発振器とTI製の可変高精度シャントレギュレータ「TL431」
新日本無線の「NJM723」は高精度電源用レギュレータ、TI製「HB541(SN54AHCT541)」は3ステート出力対応のオクタルバッファ/ドライバ、Fairchild製の「74LVT754」は3ステート出力対応の低電圧オクタルDタイプフリップフロップである