Intel Montevina Plusを正式発表
Intel 副社長兼モバイルプラットフォーム事業本部 事業部長 ムーリー・イーデン氏 |
会期:6月2日~6日(現地時間)
会場:Taipei World Trade Center Nangang Exhibition Hall
Taipei World Trade Center Exhibition Hall 1/3
Taipei International Convention Center
COMPUTEX TAIPEIの初日に、Intelはショーン・マローニ上級副社長による基調講演(別記事参照)を行なったが、それに引き続いて、同社のモバイル関連の製品を紹介する記者会見を会場に隣接するGrand Hyatt Hotelにおいて行なった。
その中でIntel 副社長兼モバイルプラットフォーム事業本部 事業部長 ムーリー・イーデン氏は、同社がMontevina Plus(モンテビーナプラス、開発コードネーム)として開発を続けてきた新しい「Centrino2プロセッサー・テクノロジー」の改良版を正式に発表したほか、今年の後半に投入が予定されている統合型CPU「Pineview」(パインビュー、開発コードネーム)とIOHのTigerPoint(タイガーポイント、開発コードネーム)から構成される次世代ネットブック向けプラットフォームPinetrail-Mの実働デモを公開した。
●モバイルPCへの需要は今後も続く、携帯電話のように一人一台が当たり前になるIntel ムーリー・イーデン氏は現在の経済状況に触れ、「言ってみればタービュランス(乱気流)に入ってしまったようなもので、確かに厳しい。しかし、一方でモバイル機器の需要は衰えていない」と述べ、モバイル機器への需要は衰えておらず、むしろ今後も上がっていくだろうという見通しを披露した。
「先進国ではすでに携帯電話はほぼ1人1台というところまできている。みなさんの中に配偶者の方と携帯電話を共有している奇特な方がいるだろうか? そういう例はほとんどないと思う。それと同じ事が今後PC市場でも起こるのではないだろうか」と述べ、今後人々が持ち歩くPCが1人1台になると予想し、それに併せてモバイルPCにはまだまだ潜在的な成長率があるのだと指摘した。
さらに、「その前提となるのは、人々のインターネットへの興味だ。すでにインターネットの帯域はビジネスよりも、一般消費者による占有が圧倒的になりつつある」とし、ユーザーがインターネットへの興味の強さがあがればあがるほどモバイルPCへのニーズも上がっていくのだと説明した。
その上で「歴史上さまざまな製品がより軽くなってきた。電話しかり、TVしかり、そして書籍は今やKindleのような電子ブックになっている。モバイルPCもまた同様で、今後もより軽くなっていくだろう」と、前述のような人々がノートPCを持ち歩きたいというニーズに応えるためにはより軽いノートPCを提供していく必要があると指摘した。
現在の経済状況は乱気流に入っているようなものだと表現 | そうした状況にもかかわらず、ノートPCへの需要は衰えていない | PCは一家に1台から1部屋に1台、そして1人1台へ |
現在のモバイルPCがたどっている道はかつて携帯電話がたどってきた道 | インターネット帯域の大部分はすでにコンシューマにより占められている | 電話やTVがたどってきた道と同じようにPCもより小さく軽いという方向性を目指す |
●新しいMontevina Plusにより性能が向上し、バッテリー駆動時間も長くなる
そうした魅力的なモバイルPCを実現する要素として、イーデン氏はIntelがこれまでMontevina Plusというコードネームで開発してきたCentrino2プロセッサ・テクノロジ向けの新しいプロセッサ、チップセットなどを追加したことを明らかにした。
Montevina Plusは、昨年の夏に発表されたMontevinaプラットフォームの改良版で、新たに以下のプロセッサのSKUと新チップセットGS40が追加されているほか、従来製品のチップセット(GM45/GS45/PM45など)にもいくつかの新機能が追加されている。
Core 2 Duo T9900(3.06GHz、6MB L2、TDP35W)
Core 2 Duo P9700(2.8GHz、6MB L2、TDP28W)
Core 2 Duo P8800(2.66GHz、3MB L2、TDP25W)
Celeron T3100(1.9GHz、1MB L2、TDP35W)
Celeron T3000(1.8GHz、1MB L2、TDP35W)
GS40は、従来GS45として提供されてきたSFFノートPC向けの小型パッケージ版チップセットの廉価版で、外部PCI Expressなどをサポートしない代わりに安価に提供されることになる。
イーデン氏によれば、こうした新しい製品により「ユーザーはより高性能、より長いバッテリ駆動時間という相反する2つのメリットを享受することができる」と話し、実際に新しいCore 2 Duo T9900(3.06GHz)とCore Duo T2700(2.33GHz)を利用したパフォーマンス比較を行ない、同じ処理をさせると新しい製品が少ない消費電力でより高速に処理できる様子をデモした。
新しいMontevina PlusによりCentrino2プロセッサー・テクノロジーの性能がさらに改善される | 新しいプロセッサの投入により、処理能力が向上し、かつバッテリ駆動時間も延びるという |
こちらはCore 2 Duo T9900(3.06GHz)を利用したベンチマークの結果。Core 2 Duo T2700(2.33GHz)に比べて高速に処理が終了し、かつ使って電力も少なくてすむ | こちらはCore Duo T2700(2.33GHz)の結果 |
●Mobilin 2.0で動作するAndroidのテクノロジーデモ
さらにイーデン氏はIntelのネットブックソリューションについて触れ、日本の広告記事を例に挙げ、「ネットブックとノートPCはそれぞれ用途が違う。ノートPCが何にでも使える掃除機のようなものだとすれば、ネットブックは用途が限定されたハンディクリーナーのようなものだ」と例え、決して競合するようなものではないというIntelの姿勢を再度強調した。
そして、今後のネットブックの展開について触れ、今後IntelのAtomベースのネットブックのOSチョイスとしてはWindowsだけでなく、Linuxに関してもサポートしていくのだという姿勢を明らかにした。「我々はエンドユーザーに対して選択肢を提供していく。もちろんWindows 7をサポートしていくが、それと同時にMobilin 2.0のサポートもしていく」とし、実際にステージにおいてMobilin 2.0を搭載したネットブックを披露した。「このMobilin 2.0上でGoogleのAndroidが動作している。現時点では最終製品ではないが、すでにこうしてAtomで動いているのだ」と、Mobilin 2.0上で動くAndroidのテクノロジーデモを行なった。
ノートPCとネットブックでは用途が異なるのだと、日本の広告記事を例に説明 | Intelの調査によればユーザーはネットブックを2台目と位置づけており、性能はあまり必要ないのだとのこと | AtomではWindowsだけなく、Mobilin 2.0も同じようにサポートされる |
Mobilin 2.0をインストールしたAtom搭載ネットブックをデモ | Mobilin 2.0のユーザーインターフェイス |
●Pinetrail-Mを実働デモで公開
最後にイーデン氏は、Intelのネットブック向けの次世代プラットフォームとなるPinetrail-Mに関するデモを行なった。Pinetrail-Mは、AtomクラスのCPUに、GMA950相当のGPUとメモリコントローラを統合した統合型CPUのPineview-Mと、従来のサウスブリッジに相当するIOH(I/O Hub)と呼ばれるTigerPointから構成される次世代プラットフォームで、従来の3チップ構成(CPU、ノース、サウス)から、さらに2チップ構成(CPU+IOH)に減るためコスト削減の効果がある。
今回はこのPinetrail-Mプラットフォームを採用した、Acer、ASUSの試作機がステージで公開され、実際にWindows 7やWindows XPが動作する様子がデモされた。
IntelはPinetrailのリリース時期について具体的には語らなかったものの、OEMメーカー筋の情報によれば、今年の第4四半期が予定されているとのことで、今年の年末商戦にはPinetrail-Mを搭載したネットブックが市場に出回る可能性があるようだ。
Pinetrail-Mのブロックダイアグラム | Pinetrail-Mを搭載したネットブックの試作機。Acer、ASUSなどが試作 | ASUS Eee PCのPinetrail-M搭載試作機 |
(2009年 6月 3日)
[Reported by 笠原 一輝]