イベントレポート
“メッシュの大衆化”を目指すエレコムの「e-Meshルーター」
~高コスパのMediaTekのSoCを採用して廉価にメッシュを実現
2019年5月30日 20:01
エレコム株式会社は5月27日、「e-Meshルーター」と呼ぶメッシュネットワークに対応したWi-Fiルーターを発表した(僚誌Internet Watchの「エレコムがメッシュWi-Fiルーターを今夏発売、独自の“e-Mesh”、専用中継器も」参照)。
それを受けてエレコムは、5月28日にe-MeshルーターにSoCを提供している台湾MediaTekのスイート(関係者だけが入れる展示ブース)に製品を展示し、製品の解説を行なった。
比較的高価格にとどまっているメッシュネットワーク対応Wi-Fiルーターに対して安価で、既存のメッシュ未対応のWi-Fi 5ルーターと同程度の価格帯になる見通しで、同社では「メッシュネットワーク」の大衆化を目指している。
エレコム独自のメッシュネットワークの設定を簡単に行なえる「e-Mesh機能」を搭載したWi-Fiルーター
メッシュネットワークとは、複数あるWi-Fiアクセスポイントをグループ化し、デバイスからはあたかも1つのネットワークがあるように見える仕組み。
たとえば、戸建ての3階建ての家庭で、1階に光回線が来ているとして、3階にいるときにスマートフォンやPCからアクセスする場合、電波が届きにくく、低速でしか通信できないということがある。
メッシュネットワークを使うと、1階にルーターを置き、2階に中継器となるアクセスポイントを置くと、中継器が1階のルーターと通信しつつ、3階にも電波が届くようになるので、安定して通信することが可能になる。
メッシュ(網)というぐらいなので、中継器となるアクセスポイントはいくらでも増やすことができ、増やせば増やすほどカバーできる領域は増える。また、どこを中継してルーターまで届くかは、メッシュネットワークが自動で最適な経路を設定していくので、どこにいても安定したWi-Fiネットワークが利用可能になる。
都心のマンションなどではそもそも面積が小さいため、こうしたメッシュのメリットは小さいとも言えるが、最近の新築の分譲マンションなどは鉄筋がしっかりしていたりすることもあり、奥の部屋まで届かないということも少なくないようだ。そうした時にもメッシュネットワークに対応したWi-Fiを構築しておくメリットがあると言える。
今回エレコムが展示した「e-Meshルーター」も、そうしたメッシュネットワークに対応した製品となる。e-Meshルーターには、Wi-Fiルーター「WMC-M1267GST2-W」、中継器「WMC-S1267GS2-W」、およびそのセット製品「WMC-DLGST2-W」という3つのSKUが用意されている。
対応するWi-Fiの規格は、Wi-Fi 5(IEEE 802.11ac)で、2x2のアンテナを備えており、2.4GHz利用時には400Mbpsで、5GHz利用時には867Mbpsで通信できる。
エレコムによれば、このe-Meshルーターには組み込み型のホームネットワークセキュリティ機能「Trend Micro Smart Home Network」が用意されており、最長で5年ないしはエレコムがサービスを行なう期間利用することができる(最長でも2026年12月末まで)。
Trend Micro Smart Home Networkはファイヤウォールの強化版で、ホームネットワーク内に接続されているIoT機器やPCなどが外部から攻撃されることを防ぐ機能となる。
最大の特徴は、同社が「e-Mesh」と呼ばれる独自のメッシュネットワークを自動で構成する機能で、難しいことを考えなくても、ほとんど置くだけで自動で構成が行なわれるという。
このため、ITのことにはあまり詳しくないというユーザーであっても、簡単にメッシュネットワークが構築できることがメリットとなる。なお、このe-Meshはエレコムのプロプライエタリ機能であり、エレコムのe-Meshに対応した機器同士でしか使えない。
MediaTekの高コスパのチップを採用することで、同クラスのメッシュ非対応のWi-Fiルーターと同程度の価格を実現
こうしたe-Meshルーターだが、メッシュネットワークに対応したルーターというと、ハイエンドなWi-Fiルーターという扱いになり、値段がやや高い製品が少なくない。
しかし、エレコムの関係者によれば、e-Meshルーターはメッシュネットワークに対応したWi-Fiルーターとしては、現時点では具体的な価格は明らかにされていないが、比較的安価に設定されるという。具体的には、Wi-Fi 5(2x2)という同クラスでメッシュネットワークに対応していないルーターと同程度の価格になる見通しだ。
エレコムによれば、そうした低価格が実現できそうな最大の理由は、MediaTekのSoCを利用しているからだという。
一般的にWi-Fi向けのSoCと言えば、BroadcomやQualcomm Atherosなどの米国勢のSoCがハイエンドのルーターでは一般的だが、これらの米国勢のSoCは品質は折り紙付きだが、その分コストの面ではやや高いとされている。
それに対してMediaTekのSoCは、スマートフォン用SoCもそうであるように、品質に関しては米国勢に迫りながら、価格は安めに設定されており、コストパフォーマンスが良いとされている。今回のe-Meshでは、MT7621AというSoCと、MT7615DというWi-Fiコントローラが利用されて実装されており、ほかの製品に比べて安価にメッシュネットワークを構築できているとエレコムは説明した。
なお、MediaTekのスイートでは、MediaTekのそのほかの製品も展示されていた。たとえば、Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)の4x4ルーター用SoCとなる「AX3200/3600」、2x2のWi-Fi 6とBluetoothの「AX1800」などのほか、将来向けのデモではWi-Fi電波を利用した動体検知センサーが展示されていた。
この動体検知センサーは、Wi-FiのAPとデバイスの間に人が立ったりすれば、Wi-Fiの感度が変化したりするが、その変化を検出して防犯に活用したりということを実現するために開発しているという。
防犯カメラをつければ良いのではないかと思うかもしれないが、たとえば防犯カメラをつけられないトイレや風呂といった場所など、プライバシーの観点から部屋にセキュリティカメラは導入したくないが、侵入者の検知はしたいといったニーズのために開発しているとのことだ。