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Microsoft、Windows 8.1の新SkyDriveを解説

Dharmesh Mehta氏
8月6日 開催

 米MicrosoftでSkyDriveのシニアダイレクターを務めるDharmesh Mehta氏は6日、Windows 8.1でさまざまな機能追加がなされるSkyDriveについて概要を解説した。

 なお、以下に紹介する新機能は、Windows 8.1プレビューに実装済みで、すぐにでも試用することができる。

SkyDriveはWindows以外の主要なプラットフォームにも対応

 SkyDriveは、Microsoftが提供するクラウドストレージサービス(7GBまでは無償)で、同様のサービスとしてはGoogle DriveやDropboxなどがある。2007年よりサービスを開始しており、現在ではWindows以外にもAndroidやiOS、Mac OS Xにもサービス/アプリを提供している。

 利用するコンピューティングデバイスがPC 1台だけだった時代は、ファイルはローカルに保存しておけば、あまり不自由はしなかった。しかし、カメラ機能を持ったデバイスを複数所有し、それ単体、あるいはルーターを通じていつでもネットにアクセスできる現代では、クラウドに保存することで、端末や場所の制限を受けずにアクセスできるメリットがあり、実際にそういった利用形態は増加している。

 しかし、クラウドストレージには課題もある。1つは、その性格上ネットワークアクセスが必須な点。3Gや4G端末が普及し、テザリングも当たり前になりつつある昨今、時間や場所を問わずネットワークにアクセスできるようになったが、それでも飛行機の中など電波が利用できない場所はまだある。

 その解決手段としては、クラウドストレージとローカルストレージを同期させるという方法がある。しかし、PCと違ってスマートフォンやタブレットなどは、ストレージの空き容量が少ないため、数十GBクラスのファイルを保存している場合、その全てを同期させることは不可能となる。

ブラウザで現行のSkyDriveにアクセスしたところ
ストアアプリでアクセスしたところ
デスクトップアプリをインストールすると、フォルダの同期が利用可能となる

 そういった課題に対する1つの答えが、Windows 8.1で生まれ変わるSkyDrive(以下、新SkyDriveと呼称)だ。

 新SkyDriveでの大きな変更点の1つが、OSへの統合性。Windows 8でもSkyDriveは標準で利用できるが、あくまでも付随サービス的な位置付けだ。また、同期を行なうデスクトップアプリは、プリインストールされていない。これに対し、Windows 8.1では、新SkyDriveが、ファイルの標準の保存先となり、同期機能も標準で実装され、他のアプリからも透過的にアクセスできる。

 Windows 8.1から新SkyDriveにアクセスすると、大量の写真があるフォルダでも即座に内容が表示され、OSの検索機能で検索を行なうと、キーワードが含まれるSkyDrive上の文書も即座にヒットすることに気付くだろう。これは、新SkyDriveが、クラウド側のバックエンドインデックスに加え、ローカルにもサムネールや、メタデータなど、1ファイルごとに数KB程度のキャッシュファイルを作成することによるものだ。

 デモを例に説明すると、エクスプローラーでMehta氏の新SkyDriveのプロパティを表示すると、実容量(クラウドに保存している量)は140GBとなっているが、その下にローカルディスク上のサイズとして1.29GBが表示される。また、31.5KBのWordファイルのプロパティを見ると、実容量は31.5KBだが、ローカルディスク上では3KBのみを占有している。このように、ユーザーから見ると、新SkyDrive上のファイルはあたかもローカルに存在するようにシステム上に表示され、実際に検索などもできるが、その実態は小さなキャッシュなのである。

 そしてこれらのファイルは、アプリで開く時に初めてローカルにダウンロードされる。これにより、ドキュメントの作成はデスクトップPCで行ない、後でタブレットPCで閲覧するといった場合に、場所/端末を変えても即座にファイルを確認できるし、編集を行なうまでは、ローカルストレージを不必要に圧迫することもない。

 さらに、旧SkyDriveで同期設定できるのはフォルダ単位だったが、新SkyDriveでは、ファイル単位で明示的に同期の有無を設定できる。これにより、電波の届かない場所で作業する必要があるファイルは、それだけあらかじめ同期させるようにしておけば、オフラインで編集し、その内容はオンラインになると即座にクラウドに反映される。

 なお、一度同期したファイルは、実態のコピーがローカルにも以降居続け、余り使われないものは再度キャッシュだけに戻すような機能はない。ただし、明示的にオンラインオンリー(キャッシュだけ)に戻すことは可能。動画については、デスクトップエクスプローラーでファイルを開くとローカルにダウンロードされるが、ブラウザでアクセスした場合は、ストリーミング再生となる。

新SkyDriveにWindows 8.1のエクスプローラーでアクセスしたところ。このようにローカルファイルのように写真のサムネールも表示されるが、
新SkyDriveのプロパティを見ると、ローカルストレージの占有率は実ファイルの100分の1程度に過ぎない
Wordファイルのプロパティを見ても、ローカルの占有量は小さい
ファイルを選択した状態で、エクスプローラーの下のステータスバーを見ると、初めてアクセスするファイルは「オンラインのみで利用可」というように表示されている。これがキャッシュの状態
任意のファイル/フォルダーは、オフライン(同期あり)に設定可能
SkyDriveを標準の保存先とするかなどはユーザーが変更できる

 こういったクラウドストレージの運用は、これまでのSkyDriveや他のサービスでも、明示的にファイル/フォルダーを同期指定することでできる。だが、新SkyDriveでは、ユーザーが意識をせずとも、自動的に必要なファイルだけが同期扱いとなるべく設計されている点が異なる。これにより、PCのリテラシーが低いユーザーも便利に利用できるだろう。一方、SkyDriveの利用が標準となることに反感を覚えるユーザーもいるかもしれないが、SkyDriveの利用は無効にすることもできるし、必要があればファイル単位での同期の有無や、従量制ネットワークでは同期をオフにするなど、細かく指定できるため、上級者も柔軟に運用できるだろう。

(若杉 紀彦)