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年間30万件の対応を支えるマウス埼玉サポート拠点の裏側、AI活用と整備済PC再生も

左から株式会社マウスコンピューター 埼玉サービスセンター長の小沼孝幸氏、サービス本部長の飯沼茂樹氏、3R推進室室長の佐藤謙氏

 マウスコンピューターの埼玉サービスセンターは、東日本における同社のアフターサービス拠点だ。同社創業の地でもある春日部市に所在し、現在の建物に移転して13年になる。

 同センターは国内生産のBTO PCメーカーとして製品開発、製造、販売に並ぶ「サービス本部」部門に属するアフターサービスの中核拠点だ。修理対応だけでなく、直接の顧客対応を行なうコンタクトセンターのほか、現場支援のためのデータ分析や自営保守などの支援機能も有している。

 近年はパートナー販売店に正規修理店として修理対応を任せる取り組みや、いわゆる3R(リデュース/リユース/リサイクル)推進の活動もここで行なっており、対外支援や製品再生も埼玉サービスセンターが担う役割の1つとなっている。

 現在、修理やサポート業務を行なっている建物は2階建てで延床面積1,000坪強。同センターではパートナー企業のサポート業務も実施しているが、直近でサポート拠点の一部移転や人員の移動などによって利用できるスペースが増えたため、各業務フロアのリニューアルを実施したという。

 本記事ではリニューアル後の埼玉サポートセンターと、近年におけるサポート業務ならびに3R推進活動の内容についてお伝えする。取材に協力いただいたのは、株式会社マウスコンピューター サービス本部長の飯沼茂樹氏、3R推進室室長の佐藤謙氏、埼玉サービスセンター長の小沼孝幸氏だ。

埼玉サービスセンターのエントランス
埼玉サービスセンターで保管されている保守部材のマザーボード群

 マウスコンピューターの国内サポート拠点は埼玉、米子、広島、沖縄の4カ所。このうち修理は埼玉と広島が担い、埼玉サービスセンターは大阪より東の地域を担当する。3年前まではすべての修理サポートを埼玉サービスセンターで担っていたが、広島のサポート拠点を立ち上げてからは、広島の割合を徐々に増やして負荷の分散を図っている。これによって修理品輸送のリードタイムも短縮できたという。

 修理の流れは「受付」「入荷」「診断」「連絡」「修理」「最終チェック」「出荷」の7工程。修理品の滞留を早期に解消する目的で担当者の多能工化を進めており、業務量や修理工程の目詰まり具合に応じて人員の配置に柔軟性を持たせている。修理サポート用のPCパーツ部材については、標準で3年、有償で5年の延長保証を提供していることから、同センターにおいて最長5年間のサポートを支えるPCパーツの保管を行なっている。

 今回のリニューアルでは業務で使えるスペースが増えたことによって、スタッフの動線や作業効率の面で改善が図れたと同センター長の小沼氏は話す。

 「一番大きな変化は、作業台をより広くとれるようになったことでしょうか。具体的には、これまで同時に3台までだったところが、4台まで修理できるようになり、単純に作業効率が向上しました。

 細かいところですが、デスクトップPCのケースを回して内観検査もしやすくなりました。通路も広くしたので人の往来がスムーズになって、職場環境自体が良くなりました」(小沼氏)。

埼玉サービスセンター長の小沼孝幸氏
埼玉サービスセンターの機能。2026年4月からは製品再生を担う3R推進室を設置した
顧客から修理を受け付けてから返却するまでの7工程
国内サポート拠点。埼玉サービスセンターは大阪より東の修理を担当する

 コンタクトセンターでは顧客からの修理依頼を受けて、サービスセンターとの連携により早期の問題解決を図る。委託に頼らず、すべて国内の自社スタッフが携わっている。聞き取りにより問題が軽微と判断した場合は、まず顧客自身での問題解決を支援する方針だ。サポートサイトを起点にドライバなどの掲載情報やFAQを整備し、類似の過去事例などにアクセスしやすくしている。

 ここではハードウェアやドライバなどソフトウェア情報を蓄積しており、手元にPCがある場合は製品のシリアルナンバーを入力することで、過去に問い合わせのあった症状や事例から解決策の検索が行なえる。

 聞き取りからPCの症状を切り分けた結果、修理が必要な状態であればサービスセンターに引き継ぐ。この時点で症状や考えられる原因について伝えるが、実際にPCを受け取り詳しく調べたときに当初の見立てとは異なる原因が出た場合は顧客に連絡をとる。ものよっては保証外の内容もあるので、有償修理になる旨をこの段階で伝えるという。

 受け付けた修理の情報はリアルタイムで共有しており、修理の進捗については顧客向けマイページの「my mouse」から顧客自身で確認することも可能だ。

 「PCのサポートの難しさは、OSだけでなく、PCに接続している他社の周辺機器に起因した問題である可能性が常にあることです。相性問題もありますし実際に触ってみないと分からないことも多いです。

 マウスコンピューターのコンタクトセンターでは、他社製品のことも可能な限り調べて相性問題やドライバの問題も調べて回答しています。場合によっては該当する製品を購入して再現性の検証を行なうこともあります」(飯沼氏)。

 最近多い相談内容としては、USB規格の複雑化に伴う「動作しない」「映らない」系のトラブルだという。どのような使い方をしているのか、どのような機器をどのように接続しているのか、聞き取りの時点でしっかり把握できていないと対応が長引く可能性も高く、解決の難易度が上がっている実感があるそうだ。

 このほか新型コロナ以降の在宅ワークに関連する相談も多く寄せられている。たとえば、会社と自宅を行き来する回数が増えた結果生じた物理的な損傷や、自宅でコーヒーをこぼしてしまったなどの事例がある。

サービス本部長の飯沼茂樹氏
自社スタッフの多能工化やシフト編成の柔軟な変更などの工夫を積み重ねて修理時間の短縮を図っている
コンタクトセンターとサービスセンターの連携
サービス本部も他部署との連携を重視している
埼玉サービスセンター内の修理連絡サポートグループ
修理サポート部署の一角に置かれた検証用の機材

 このほかの連携の一環としては社内で最新の製品や技術についての勉強会を実施している。販売前の製品情報も扱うので、品質管理や開発の部署とサポート内容について検討もしている。

 ここ最近のトピックはなんといってもAIだ。サポートのニーズとしてはワークステーションやサーバーの知識を求められるケースもあるので、キャッチアップに力を入れているところだという。

 スタッフの多能工化に関連した取り組みとしては、スキルの底上げとして社内検定を作って実施していることを挙げた。コンタクトセンター/サービスセンターともに新しいスタッフを増やしているが、一人前になるには3年から5年はかかるので、OJTだけでなく、知識やスキルを体系的に身につける点でこの制度は有用だとした。

 コンタクトセンターが年間で受け付ける取り扱い件数は約30万件で、電話のほかメールやLINEでも受け付けている。ただしこのうち4割は電話。修理依頼は約4万5,000件。うち6割を埼玉サービスセンターが担う。法人/個人問わずメーカーに寄せられる要望は多様化しており、特に昨年から続いているPCパーツ価格の高騰を背景に、3年間のサポート保証という価値の強みは増している。

 「以前は論点が定まりやすくて、ノートPCなら『持ち運び』だし、ゲーミングPCなら『パフォーマンス』でした。最近はより長く使うためのアドバイスを求められることが増えたように思います。数年前なら買い替えのハードルは比較的低かったのですが、この1年でPC部材の価格が上がったことで、買い替えを控える動きがあるのは確かです。

 今使っているPCを直して使おうという意識は拡大している傾向があります。PCの販売数量も右肩上がりで伸びているので断言はできませんが、それでも今年は修理の依頼が明らかに多くて、前年比で数%は増えている傾向。すでに5万件近くに達しています」(飯沼氏)。

 サービスとサポートの品質や解決の迅速化を図る取り組みの一環として、AIの活用も進めている最中だ。具体的には問い合わせ音声を自動でテキスト化し、AIの学習/訓練データとする試みを始めているという。

 「これまでの診断/修理事例からデータはあるので、これらをどのように活用するかを検討しています。まだ表立って言えることは少ないですが、将来的には学習させたデータをもとにLINEのAIチャットボットやFAQの回答精度向上に役立てたいですね。これができるようになると、AIを実用的なレベルで顧客対応に活かせる可能性が出てきます」(飯沼氏)。

入出荷エリア。シャッターを開けるとすぐトラックヤードが広がっている
開梱後に状態確認を待つ修理受付品
直近の自然災害被災者の生活再建支援として実施している特別修理対応で引き取ったPCもあった
診断グループ。入荷後に故障箇所の診断を待っているPCが見える
症状などを記載した修理品整理カード
法人のサポート専門のグループを2025年に設立した
故障した部品を交換する交換グループ
交換作業を行なっている様子
清掃を行なうクリーンルーム
修理が完了したPCの動作チェックなどを行なうQCグループ
交換後の不良パーツを回収するスペース
交換部品の保管と管理を行なう在庫管理グループ。販売終了したモデルの部材もある
大量のPCパーツが棚に収められている。写真はノートPCのバッテリ
ノートPCのメモリ棚。かなり古いメモリも見える
こちらはデスクトップ用PCの棚
ノートPC用液晶ユニットは吊り下げて保管
キーボードも同様に吊り下げている
ACアダプタの棚
iiyamaブランドの液晶モニター
海外サプライヤーから運び込まれた未開梱のパーツがうず高く積まれている
法人向けPC「MousePro」の在庫

 埼玉サービスセンター2階の一角に位置する3R推進室では、中古PCの再生を行なっている。2026年4月にアフターサービスの人員を選抜して立ち上げた部署であり、現在は複数名で業務を回している。

 リファービッシュPCは「マウス整備済パソコン」として店頭展示品や返品されたPCをメーカーとして回収/点検/整備のうえ再度製品化したPCだ。再生処理をメーカー自身が行ない、1年間の保証を付けて売り出す点が特徴となっている。

 修理工程のうち「受付」を除く6工程をすべて行なう必要がある点は同じだが、入ってきたPCのシリアルを廃止し、新品として新たに型番を作る。そのためいわゆるアウトレット品やワケあり品とも異なる。

 この施策を始めるまで、回収したPCについてはパーツ取りの後廃棄することが多かったそうだが、資源活用の観点から、新たに部署を立ち上げて再生に取り組むことにしたのだという。

 「中古PCといえば、クリーニングや初期化のみ行なってほぼそのまま再度売りに出すイメージがありますが、マウスコンピューターの整備済みPCではまず診断と点検を行ない、パーツに問題があれば交換し、不具合がなくてもストレージやメモリなど一定の基準まで劣化していれば交換します。

 パーツは一定の基準をクリアしていればそのまま使いますが、そうでないものは交換して中身はほぼ新品になります。内部クリーニングの上、ストレージは完全フォーマット、OSを再導入して、動作確認後は機能検査を始めとした独自のチェックを実施したのち、最終的な清掃と梱包をワンストップで実施しています。特に店頭展示品に関しては整備品として集約する方針で、ほぼ全数を再生する態勢を構築しました」(佐藤氏)。

 交換対象となる主要パーツはSSD、HDD、バッテリ、ODD(光学ドライブ)。交換の基準が決まっており、SSDであればチェック時点での使用経過時間や書き込み容量、バッテリであればウェアレベル(劣化レベル)、ODDであればリージョンの書き込み回数などを確認している。HDDは輸送中の振動などによる品質の変化が不明なため現在のところ整備済みPCには非搭載としている。

 再生できない例もある。レアケースではあるが、臭いがあるものや水没したものなどはリファービッシュの対象外だ。

 2026年4月末に始めたばかりの取り組みだが、取材に伺った9月下旬時点で約半年弱が経過している。実数は非公開とのことだが、整備済PCの生産/販売ともに着実に伸びており、保証期間に差はあるものの、性能に対して割安な価格が目を引いて、狙い目と考えて選ぶ人も多いのだという。

 「外装の状態はSからCまで等級があります。値付けは店舗に一任していますが、おおむね新品と比べて10~20%ほど安価になります。多くはBTO PCの再生品であり一品物という扱い。これまでは店頭のみで販売していましたが、今後はオンラインで購入できるよう準備を進めているところです。日頃、他部署とも密接に連携していますが、この取り組みでサービス本部として直接売上に貢献できる点は特別な意味のあることだと考えています」(佐藤氏)。

3R推進室室長の佐藤謙氏
「マウス整備済パソコン」では、返品されたPCや展示品を回収/整備して割安で販売する
再生工程の概要。外観はSからCの4等級で分類する
3R推進部。埼玉サービスセンターには2026年春から設置した
梱包を完了して出荷を待つ整備済みPC
S等級の外装は非常に珍しいという
現在は店頭での販売のみだが、ECサイトでの販売も準備中だという
PC再生工程を行なうエリア
近隣に所在する春日部ダイレクトショッププラス
売り場の様子
「マウス整備済パソコン」のコーナー
掘り出し物があるかも
店内のサイネージでも案内を流している

 最後に、今回の取材にご協力いただいた御三方に今後の目標を伺った。

 「『マウス整備済パソコン』はこれまで当社の製品が出せていなかった魅力を引き出したブランドだと思いますので、1年保証で安心して買ってもらえる製品として生産台数や販売台数をもっと伸ばしていきたいですね」(佐藤氏)。

 「埼玉サービスセンターは修理を担当する拠点ではありますが、そもそも壊れないPCがベストだと思いますので、製品の品質に関して現場からも適切なフィードバックをして、製品のさらなる品質向上を目指していきたいです」(小沼氏)。

「サポートに関しては、今ある品質をもっと高めていって、さらなる品質とスピードを追求していきたいです。PCはコモディティ化して久しく、製品の差がつきにくい中で、サポートの質で選ばれるメーカーを目指していきたいです。今後もマウスならではの新しいサービスをうたっていけたらいいなと思います」(飯沼氏)。