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スマホが1日100万トークンを処理する時代へ、Qualcommの答えはHBC

Qualcommはデータセンター用のHBCをスマートフォンやPC向けにも採用する開発意向表明が行なわれた

 Qualcommは、9月22日から9月24日にかけて年次イベントのSnapdragon Summitを、米ハワイ州マウイ島で開催している。初日となる9月22日には同社 CEO クリスチアーノ・アーモン氏など同社幹部やゲストなどによる基調講演が行なわれた。この中でQualcommは、CPUのブースト時のクロック周波数が5GHzを超える「Snapdragon 8 Elite Extreme Gen 6」などのスマートフォン向け新SoCを発表し、XiaomiやMotorolaが発売予定の同SoCを採用したスマートフォンを公開した。

 また、アーモン氏は、同社がデータセンター向けプロセッサ用に発表した「HBC(High Bandwidth Compute)」を、データセンター向け製品だけでなく、スマートフォンやPCなどのクライアントデバイス向けにも導入する計画を明らかにした。

アプリの時代からエージェント型AIの時代へと変わっていく中で、スマートフォンも形を変える

Qualcomm CEO クリスチアーノ・アーモン氏

 Snapdragon Summitは、Qualcommが例年9月下旬に行なっている年次イベント。参加者は同社のパートナー企業、メディア関係者、Snapdragon Insiderと呼ばれている同社のインフルエンサーなどで、そうした参加者に新しいSnapdragonの特徴などを伝える場として利用されている。

Snapdragonはエージェント型AI時代のスマートフォンを実現するSoCに
エージェント型AI時代に求められる要素

 その基調講演に登壇したのは、同社CEOのクリスチアーノ・アーモン氏。アーモン氏は「これまでスマートフォン上のAppsが人々の生活の中心だった。しかし、これからはエージェント型AI/AIエージェントが人々の生活の中心になっていく」と述べ、6月のCOMPUTEXの基調講演でも説明した、スマートフォン中心の生活から、エージェント型AI/AIエージェントが人々の生活の中心となる時代が到来するというQualcommのビジョンを繰り返した。

 そうしたエージェント型AI/AIエージェントの時代に備えて、スマートフォンの役割が減退するわけではなく、「スマートフォンは、PCやスマートウォッチなどさまざまなデバイスの中心ではあり続ける。そうしたスマートフォンの周辺デバイスに認知(presence)、文脈(context)、接続(connection)などを提供するハブの役割を果たすようになる」と述べ、スマートフォンがPC、スマートウォッチ、自動車などにエージェント型AI/AIエージェントを実行する際に、クラウドと接続する際のハブとして動作するというビジョンを説明した。

 エージェント型AI/AIエージェントの時代に必要になることは「信頼であり、プライバシーの重視であり、ユーザーが自分でコントロールすることだ。ただし、何度もユーザーに「いいか」と聞くべきではなく、高い応答性でユーザーの好みに応じた選択ができるエージェント型AI/AIエージェントであるべきだ」と述べ、スマートフォンはそうしたことを実現する「AIスマートフォン」に進化すべきだと指摘した。

Dragonflyに採用されるHBCがスマートフォン向けSnapdragonなどクライアント向け製品でも採用される計画

AIの処理には、CPU、GPU、NPU、ISPなど異なる種類のプロセッサの能力を活用する必要があり、メモリアクセスが重要になる

 そうしたAIスマートフォンを実現する新しい技術要素として、データセンター向けの半導体製品で採用しているHBC(High Bandwidth Compute)を、クライアントデバイス(スマートフォン、PC、スマートグラス、車載システム)などに採用するという意向表明が行なわれた。

 Qualcommが6月に発表したデータセンター向け製品「Dragonfly」に採用されているHBCは、ざっくりいうと、DRAMのパッケージ側に演算器(compute Die)を入れ、SoCとやりとりをしながら、SoCが必要なときにだけDRAMにアクセスするようにして、DRAMにアクセスする頻度を下げる役割を果たすもの。それにより、SoCからDRAMへアクセスするときに必要になる帯域幅を下げることが可能になり、通常のDRAM(たとえばLPDDRやDDR5など)でも十分対応可能にする。

 通常データセンター向けのAIアクセラレータ(たとえばGPUなど)は、メモリ帯域幅がボトルネックになるため、HBM(High Bandwidth Memory)のような、SoCとメモリ間のバスが広帯域幅になっているメモリを利用する。しかし、HBMはメモリチップを3D方向に積層することを前提とした設計になっているためコストが高く、AI用GPUのコストが高止まりする要因になっている。そこで、QualcommはHBCを開発して、HBMの代わりにLPDDR5やDDR5などを採用することで、低コストだがAI処理に適した大容量メモリを実現する。

 今回アーモン氏が発表したのは、そのHBCをクライアントデバイスにも採用するという構想で、まずはスマートフォン向けのSnapdragonに採用する計画であることを明らかにした。

HBCをクライアント向けにも投入すると開発意向表明

 「データセンター向けに設計した技術を、いまスマートフォンにまでスケールダウンして持ち込もうと考えている。今後エージェント型AIが実行されるデバイスでは、1日に最大100万トークンをオンデバイスで処理しつつ、1日中利用可能な状態を維持しないといけないかもしれない。これは現状の予測であって、今後さらに増える可能性が高い。

 我々はそうした処理を可能にするため、HBCをSnapdragon用のコプロセッサとして開発した。これにより、メモリとAIの処理を引き上げ、次世代のAIスマートフォンに求められる速度/効率/性能を実現する」と述べ、Snapdragonと組み合わせて利用するHBCのコプロセッサを開発し、それをSnapdragonと一体になって提供すると述べた。

 アーモン氏によれば、このHBCはスマートフォン専用というわけではなく、PC用、スマートグラス用そして自動車用などにも横展開されていくと説明しており、今後Qualcommのクライアント向けデバイス全体へと波及していくとも述べた。

 アーモン氏は「詳細は来年(2027年)のMWCで説明する計画だ」と述べ、来年の3月上旬に予定されている「MWC27 Barcelona」で詳細を説明すると述べた。

新任の上席副社長 兼 モバイルコンピューティング・XR事業本部長 セルジオ・ボニアック氏(右)を紹介するアーモン氏(左)

 また、アーモン氏は、2026年の春まで同社の上席副社長でモバイル事業の事業本部長だったが、QualcommからIntelに移籍したアレックス・カトージアン氏の後任として、同社の上席副社長 兼 モバイルコンピューティング・XR事業本部長 セルジオ・ボニアック氏を紹介した。アーモン氏と同じくブラジル出身のボニアック氏は、Qualcommに入社する前はMotorola Devices社の社長を務めており、モバイル業界では30年のキャリアがあるという。

 ボニアック氏は「Qualcommに加入できたことを光栄に思っている。世界はアプリからエージェントへと移行しており、AIはデバイスを再定義している。その時代にSnapdragonというプラットフォームを皆さんと一緒に作っていけることが、私がここにきた理由だ」と述べ、アーモン氏が語ったアプリからエージェントへと移り変わる時代に合わせてSnapdragonを作り替えていくことに取り組んでいくと抱負を述べた。

XiaomiとMotorolaのSnapdragon 8 Elite Extreme Gen 6搭載スマートフォンが公開される

Xiaomi 上級副社長 兼 国際ビジネス開発担当 事業本部長 アダム・ザン氏が手に持つのがXiaomi 18シリーズ
Xiaomi 18シリーズは9月23日 19時(中国時間)に北京で発表され、グローバル向けは今年中に発表される予定

 基調講演の後半は今回のSnapdragon Summitに合わせて発表された「Snapdragon 8 Elite Extreme Gen 6」などの新製品に関する説明が行なわれた。

 この中でQualcommは、Snapdragon 8 Elite Extreme Gen 6を採用する2つのOEMメーカーのゲストをステージに呼んだ。それが中国のXiaomiと、米国のMotorolaの2社だ。

 Xiaomi上級副社長兼国際ビジネス開発担当事業本部長アダム・ザン氏は、同社が9月23日に北京で発表する予定の「Xiaomi 18」シリーズを紹介。Snapdragon 8 Elite Gen 6を搭載した製品が「Xiaomi 18 Pro」で、Snapdragon 8 Elite Extreme Gen 6を搭載した製品が「Xiaomi 18 Pro Max」になる。ザン氏は、それがProとPro Maxのどちらなのかは明らかにしなかったが、その実機を公開した。

Motorola Mobility 上席部長 兼 グローバル製品マーケティング責任者 ニコール・ハーゲン氏
signature 27

 また、Motorola Mobility 上席部長 兼 グローバル製品マーケティング責任者 ニコール・ハーゲン氏は、MotorolaのSnapdragon 8 Elite Extreme Gen 6を搭載した「signature 27」の実機を公開した。

 Qualcommによれば、Snapdragon 8 Elite Extreme Gen 6を搭載したデバイスはグローバルに年内に販売が開始される予定になっている。今回紹介された2社以外にも、HONOR、OPPO、RedMagic、STEPX、vivoなどがQualcommの製品発表を歓迎するコメントを寄せており、それらのメーカーからも販売される可能性が高い。