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なぜシンガポール?AMD GPU製造の心臓部に潜入してきた

AMD Singaporeは3つの拠点を構えている

 AI/データセンター向け製品で市場の存在感を高めるAMD。それを支えているのは社員の約9割をエンジニアが占めるシンガポールの拠点だ。中でも、1984年に量産拠点として誕生したChai Cheeの拠点は、現在ではデータセンター向け全製品のテストや評価を主導する「エンジニアリングの心臓部」へと進化を遂げている。本稿では、4月22日に開催されたワークショップから「Chai Cheeラボツアー」の模様をお届けしよう。

シンガポールは高品質な製品に欠かせない重要な拠点

 ツアーの冒頭では、AMD Senior Director for Product Development Engineering, Head of Global Device Analysis Team, Chai Chee and Tai Seng Campus Site LeadのJM Chin氏が、AMD Singaporeに関する説明を行なった。

 AMD Singaporeは、ラボツアーが行なわれたChai Cheeの拠点で1984年に設立。現在はこのChai Cheeに加え、Changi Biz Park、Tai Seng Exchangeの計3つの拠点がある。社員は1,000人以上にのぼり、内訳はエンジニアが88%、次いでビジネスサービスが9%、セールス&マーケティングが3%と、エンジニアがその多くを占める。

JM Chin氏
社員の約9割はエンジニア

 設立当時は大量生産を行なう拠点としてスタートしたが、現在では、半導体製造のプロセスのうち、設計フェーズ(プレシリコン)から検証フェーズ(ポストシリコン)の幅広い領域を主導する。Instinctをはじめとしたデータセンター向けの全製品のテストや信頼性/特性評価を実施するチームや、設計検証の一部を行なうチームなどがあり、製品のエンジニアリングや不具合の検証とフィードバックといった、高品質で信頼性に優れる製品の製造において、重要な役割を果たしているという。

 また、適切な品質やコスト、確実な製品製造を実現するため、設計/検証フェーズにおいて同社が直接主導していない領域についても影響力を持つ構造となっているほか、製造部門のサポートも行なうなど、エコシステム全体に貢献している拠点と説明した。

 AMD Singaporeがこうした役割を担う1つの要因として、シンガポール政府が半導体産業を積極的に後押ししていることが挙げられる。人材育成や研究開発にも重点を置いており、現在のシンガポールは半導体サプライチェーンにおける重要地域だ。

半導体製造におけるAMD Singaporeの役割。赤い部分が主導する領域、黄色が影響力を持つ領域、青色がサポートする領域

 ラボツアーでは、施設内の5つのエリアを見学することができた。なお、今回は残念ながら施設内部での撮影が禁止されていたため、ここからはAMDから提供された写真とともに紹介する。

System Level Test(SLT)

 SLTでは、顧客の使用環境を再現した試験機を使って検証を行なう。OSの起動、診断テスト、AI推論を含むROCmベースのワークロードを実行し、電力供給や熱管理、システムレベルの信号伝送に負荷をかけてデバイスをテストする。ポストシリコン検証の後半段階や大量生産前の品質ゲートにあたる。

SLTの試験機(SLT Handler)
試験機の内部
サーマルヘッドが並ぶ
外にはサーマルコントロールパネル
試験機が動く様子(正面)
試験機が動く様子(側面)

Active Thermal Station(ATS)

 ATSは、デバッグやプログラム開発、検証などのエンジニアリング作業向けの単一ユニットテスト環境。熱挙動など生産システムにおける重要な条件を再現でき、内部のGPUのホットスポットをリアルタイムで監視しながら、目標条件を維持する正確な温度コントロールが行なえる。

サーマルコントローラ
コントロールパネル

Burn-In

 このテストでは、高温動作寿命試験(HTOL)などの加速試験を通じて、製品の長期的な耐久性をチェックする。高温/高電圧で連続的に通電し、数週間から数カ月かけて数年間相当の経年劣化をシミュレート。大量生産前やリリース前に、設計マージンの検証や潜在的な欠陥の特定、製品寿命全体での性能の安定性確保を図る。

デバイスを取り付ける台車
複数のデバイスを取り付けられる
デバイスを取り付ける台車(BIBカート)を操作する様子

Automated Test Equipment(ATE)

 ATEは、シリコンレベルでの電気的機能を直接検証する装置。スキャン、MBIST(Memory Built-In-Self-Test)、インターフェイス検証など決まったテストパターンを実行しながら、電力、タイミング、信号を制御する精密な計測機器を使ってテストが行なわれ、リーク電流やタイミングの不具合、電力異常などの欠陥を早期に検出する。ローダーでデバイスを入れると、内部ではロボットにより自動で作業が進められる。歩留まり最適化に向け、ポストシリコン製造テストの初期段階で欠陥のあるユニットをふるい落とす。

ATE
ロボットが自動で作業を進める
内部
ATE内部でデバイスが自動でテストされていく様子

デバイス/故障解析(Device Analysis, Failure Analysis)

 デバイス/故障解析では、非破壊検査と破壊検査を組み合わせて、チップが故障した原因を解析。超音波顕微鏡と3D X線顕微鏡による構造的欠陥の特定、走査型電子顕微鏡法によるナノメートル単位での検査と材料分析などを行なう。ここで得られた結果は、設計や製造、テストプロセスの改善に向けてフィードバックされ、歩留まりや信頼性の向上に役立てられる。

超音波顕微鏡
超音波顕微鏡による解析の様子
走査型電子顕微鏡での解析
3D X線顕微鏡による解析の様子